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教室に戻るとすでに長瀬の姿があった。普通に席に座っている。よく見たら、というかよく見なくてもなんだが俺の席の前じゃん…

今日は出席番号順だから自然と近くになるな。何しろ「長瀬(ながせ)」と「百鬼(なきり)」だ一文字目が同じ、2文字目は一字分違うだけ。

なんという悪運。

あ、目が合った。でもすぐ逸らしたな。

長瀬と一瞬目が合ったがすぐ目を逸らしてしまった。

先程のことを思い出す。 明らかにこいつは俺の血を狙ってきていたはずだ。

それがどうだ?今のこいつからはそんなことがあったという雰囲気が感じられない。

「よ、よう」

声が震えながらも話しかけてみた。なぜ話しかけた、俺。

長瀬は俺の発言を完全無視。どうやらこいつは俺に何か話す気は無いようだ。

今度は俺が連れ出してこいつを問い詰める、なんてことは出来ない。逆に先程のように襲われたら目が当てられないしな。

何も無かった。とりあえずそういうことにしておこう。少なくともこいつよりは相沢のほうが話しをしてくれそうだ。

と教室内で相沢の姿を探す。

が相沢いないな。まだ戻ってきていないのか。


立っていてもどうしようも無いので席に座り自分の世界に入る。

俺一体どれくらい血を吸われたんだろうな。血を吸われたなんて初めての体験だし、事例も聴いたことがない。

献血と同じで500mlくらいだろうか。それとももっと少ないんだろうか。

すぐ確認しても傷が分からないくらい傷跡が小さいのだから実は全然吸われていないのかもしれない。

首筋を触る。やはり傷の感触は無い。


「ちょっと」

不意に前の奴から声をかけられる。前の奴?長瀬じゃん…

恐る恐る目線をあげると長瀬がこちらを向いていた。

「何?」

長瀬が顔を近づけて囁くように喋る

「百鬼君さ、体か服にでも血を結構な量つけてるでしょ?」

「ああ」

そりゃそうだ。俺の服にはさっき血を吸われた時に垂れた血がついている。

結構気持ち悪いんだぞ。血が乾いてないのにそんな血が付いた服着てんだから

でもこいつはその場面(血を吸われた場面)の時には既に逃げ出していたはずだ。なぜ知っているのだろうか。

鼻が効くのかは知らんが、サメのような血を察知する能力でもあるのだろう。

吸血鬼の存在を信じた今の俺はそのくらいのこと簡単に予想できるぜ。


「その臭いの誘惑にさ。俺耐えるの結構辛いんだわ。相沢さんに言われたんだしホントはそんなことしたくないんだがちょっと刺激が強すぎるんだよ」

あの相沢という女生徒、何かすごいんだろうか?高位って奴か?

「そっちのほうは俺の理性でかなり抑えられるだろうがさ」

それに、と続けて。

「その臭いに他の奴らが気づくとちょっとヤバいってか」

「無理。だって服に血がついてて、服今着てるのしか持ってないし」

着替えられる状況ならば俺もさっさと着替えてるさ。

長瀬は困ったような苦笑いのような顔を浮べ

「気づかれなきゃいいがなあ」

といいながら体の向きを戻した。

こうやってこいつと話てみると、案外悪い奴じゃないような気がしてきた。

元気だし、人当たりも悪いように思えない。少なくとも俺は好きなタイプの人間だ。こいつが人間なのかは知らんが


それから程なくして時間になり、教師がやって来てHRとやらをはじめる。

中学まではHRなんて名前じゃなかったが、高校では朝とか帰りの前に担任から話しを聞く時間のことをHR(ホームルーム)というらしい。

直訳すると家の部屋。なるほど、わからん。

ちなみに授業時間を1時間分使ってやるHRのことをLHR(ロングホームルーム)だとさ。

「じゃ、出席とるぞー。まず出席番号1番。相沢。あれ、相沢?初日から遅刻か」

HRの時間になっても相沢は教室に来なかった。

その後は卒なく進む。この後体育館に全校集まって始業式をやるという説明を受け、そろそろ体育館に行こうかという頃。

「すいませーん、遅れましたー」

一人、遅刻していた生徒が入ってくる。

相沢…じゃないな。なんだお前か。初日から堂々と遅刻してくるとは良い度胸だ。

肩で息をしている、全力疾走でもして来たのだろう。服も少し乱れている。おいおい、女子高生がそんなだらしなくていいのかよ。

女子高生を神格視して異様な興味心を持っている全国のおっさんが泣くぞ。

担任教師の本田は頭を掻きながら

「あーそろそろ時間だから体育館へ行っててくれ。お前名前は?ちょっとこっちこい」

教師とそいつの会話には一切興味がないので俺は早々と教室を出て体育館へ向かう。

が、全校生徒一斉に移動してるので道は既に大渋滞。

急がば回れ、ってな。

少し遠回りになるが旧校舎を通り抜けても体育館につける。目に見える一番楽な道を選ぶのが人間だしな。そっちの道は人ほどんど通ってないだろ


人間、というか日本人は他の人を気にし、真似る。だから俺がそっちの道を使っているのを誰かが見ればそれを真似、次第にそっちの道も混む。

しかも現在人がほとんど通っているほうの道と合流することになるから今以上に体育館に入りにくくなるだろう。がそんな後の人間のことは俺には関係ない。


人の多い方の道をスルーし、旧校舎側に行く。やはり人の姿は無い。

なんだありゃ…?

なんとなく周囲を見ていた俺は奇妙な光景を目撃する。

それは校舎と旧校舎の通路の近くにあるプールの近くの木の近くだ。

なんだか長ったらしいな。

とにかくそこで なんだ、腰を振っている?女生徒。下半身、スカートから下だけが見えていて、上半身は木の葉に隠れている。

このまま見なかったことにしても、後で気になるだけなので近づく。後で気になるからだぞ、他に他意は無い。

何か困ってるのかもしれないしな。善は急げだ

そのまま近づいて…ってこの人すごい危ない姿勢だな。すぐ横は階段だぞ。

あと5メートルちょっとというところで急に茂みが動く。そこから飛び出してきたのは猫。

っておい、そっちはダメだ。

猫は手すりを飛び越えた。手すりの向こう側は階段の最下部。6~7mくらいある。

いくら猫といえどただでは済ま・・・そういえば猫が15mの高さから落りても無傷で生還!記事を見たことある気がするな。猫だってその先が何かくらい分かっているし、

自分で飛べると思っているからこそ飛んでいるんだろう。ま、問題ないか。

猫に続いて手すりに足をかけた女生徒もきっとそうなんだろうな。

んなわけあるか!

「危ない!」

咄嗟に叫ぶ。

「え?きゃあ」

しかし間に合わず。既に飛び越えた後だった。

クソッ間に合え。

全身に力を込める。俺の体か急に謎の加速。次の瞬間には俺は女生徒の手を掴んでいた。


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