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首筋に流れる血。体から何か抜けていくような感覚。

しかし何かが体に入ってくる…血と一緒に力があふれ出すような…

俺はそんな不思議な感覚に身を委ねた


舞台は数分前に遡る。そう、あれは2年のクラス発表を見て、そのクラス教室へ入った直後

「お前の…が欲しいんだ」

教室で突然寄ってきてそう言われ唖然としていた俺は強引に屋上に連れて行かれていた。

「ななななんだよいきなり」

お前とほとんどかかわりなんてなかったはずだが…

「俺にそんな趣味はねーぞ」

なぜ拒むのか。そいつが紛れもない男だからだ。男装とかそういうんじゃない。もう一度言う。男だ。

男が嫌いなわけじゃないがそんな趣味はねーよ。

俺は身の危険を感じさっさと退散しようとしたわけだが…

「いや、違うから」

「じゃあなんだんだよ俺が欲しいって…」

つまりあれか?なんかの部活に参加してほしいとか、手伝ってほしいとかそういうのか?

「俺が欲しいのは!お前の血だ」

「はああああああああああ?」

さて、俺は2つの可能性を考え付いたわけだ。

「俺の血が何か特別で、その血を輸血のためにほしいのか?」

俺の血が特別なんて聞いたことはないが、もしかしたら超珍しい血液型だったり?

「そう、君の血は特別なんだ!」

そういいながら明らかにヤバそうな顔してジリジリと近づいてくる

俺は無意識のうちに後退。

「君じゃなきゃダメなんだ!」

さらに近寄ってくる

整理してみよう


俺の血が特別で、俺の血が欲しい。つまりこいつの家族か…それとも恋人かは知らんがとにかくなんらかの病気になって輸血が必要なのだが血液型が特別だった__こんなところか。

よく考えてみたらこいつがちょっとヤバイ表情だって以外は大して問題なくね?俺の血で人が救えるならいいことだし。

「いいよ、俺の血をやる」

「ありがとう!」とか言いながら抱きついてきた。

一体どんな重病だっていうんだよ。あまりにうれしかったのかそいつは俺に抱きついたまま固まった。

「で、いつ俺の血がいるんだ?」

そいつが笑いながら俺を見る。何か違和感…妙に何か違うような

気持ち悪い笑顔を浮かべたそいつの顔。そして声を出す。

「い ま」


そして俺の首筋に顔を近づけて…

(首筋にッ!?)

身の危険を感じてさっと身を引…けない!?

しまったこいつに抱き着かれてたんだった。

「お、おい…何を言ってるんだよ」

こいつが吸血鬼なのかどうかはともかく雰囲気が俺に告げている。

逃げないとヤバい

ドッキリにしては度が過ぎているし、何より周りにドッキリのプラカードを持った人が待機してそうな気配が無い

「なんていうかね、百鬼君のその匂い。堪らない」

そんなヤバい言葉を聴いて力任せに叩いてその隙に逃げようとしたがビクともしなかった。

ビクともしないとしか表現しようが無いほど全く効いていないのだ。人間なのかこいつ。

全力ではないがかなり強い力でやったはずなのに。運動は別に得意じゃないがそんな生半可な力で叩いたつもりは無い。実際俺の手が痛い

「逃げられなーい。もう逃がさないからね」

そのまま押し倒される。そして両肩を思い切り押さえ込まれた。これでは身動きの取りようが無い。

しかもその抑え方が尋常じゃなく強いのだ。あきらめるしか無かった

「そうそう、痛くしないからね。じっとしてればすぐ済むよ」

どこのおっさんだよお前。

男子高校生が男子高校生を押し倒して首筋に顔を近づけいてる構図。もし他の誰かが見たらどう思うんだろうな。俺だったら見なかったことにして逃げる。


こうなったら叫ぶか。大事にしたくなかったから使いたくない手だったが仕方ない。いくら屋上といっても俺が全力で叫べば誰かにさすがに誰かに聞こえるだろう。思い立ったが吉日。

「うわあああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

これまで出したことが無いと思えるくらい全力で叫んだ。

_むぐっ

俺の口を強引に塞ぐと、まるで何も無かったかのような素振りで

「ああ、なんておいしそうなんだ。なぜ今日まで君に気づかなかったのか不思議だよ。こういうことするの初めてなんだよね、でも大丈夫。本能に任せれば勝手に終わらせてくれる」

ジリジリと顔が近づいてくる。いつ何かされてもおかしくない状況だ。

春の気持ち良い日光が照る屋上でこんなことになるなんて予想せず付いてきた俺を殴りたい。

ああ、俺襲われちゃうのか…、俺の力じゃこいつには勝てないどころか逃げ出せなかったしもうなす術が無い。


俺は目を瞑り、すべてを受け入れることにした。いやそうするしか無かった。

命だけは助かっていますように、そんなささやかな願いだけでも…

そんな俺があきらめる決心をした直後。ホントに数秒後だ。明らかに人の近づいてくる気配。というか足音

「間に合ったかー。どこにいるかわかんなかったから叫んでくれて助かったわ」

突如聞こえる女性の声。俺の叫びを聞いて助けに来てくれたのか。

助けに来てくれた女性にはあとで事情を説明して周りに他言させないようにしないとな。

つい数十秒前にはあきらめた俺だったが既に助かること前提の思考。


トントンと足音が近づいてくる。

「長瀬が急に変なことを言いながら一般生徒を連れて教室を出て行ったって聴いたから探して見たらこれか。あんた、何やってるかわかってるの?」

その声を聴いた途端、そいつがビクッと痙攣?みたいな反応を示した。

「あなたは…」

俺は押し倒されて体を押さえられているのでよくはわからないが明らかに怯えているような気がする。

段々と俺を押さえつける力が弱まって、そしてついに俺から離れた。

起き上がり周りを見回す。逃げるようにして屋上から去っていく姿。助かったらしい。

「あなた、大丈夫?名前は?」

俺を助けてくれたと思われる女性の声。手を差し伸べてくれる。その手を借りて立ちあがる。

「助けてくださってありがとうございます。俺の名前は百鬼有紀」

「百鬼君ね。私は愛華。相沢愛華」

相沢愛華。確かクラスわけで俺のクラスにいた気がする。あ行のトップ、つまり出席番号1だったから覚えている

「ありがとうございました。おかげで助かりました。一体何をされるかと」

「わたしも被害が無くて一安心してるわ、それにしても…」

相川がしきりに俺を観察している。一体なんだというのだ。


ただ俺を観察しているだけならいいんだが、その目つきがやらしいというかさっきの迫ってきた奴に近いというか…

1分くらいだろうか。相沢は俺の全身を舐めるように見て、答えた。

「長瀬の気持ちがわかるわ…、こんな感覚初めて」

長瀬、状況的に考えて俺を襲った奴の名前だろう。

「長瀬は追い払っちゃったけどいいよね。これから1年近く近くにいることになるんだから耐えられるわけない。それに私がツバつけておけば長瀬もそう簡単には近寄って来られないだろうし」

目が、目がヤバい。まるで獲物を見つけた猫のそれに近い。

本能的に危険察知再び。俺はさっさと屋上から退散しようと

「百鬼君、肩にゴミかなにか付いてるわよ、とってあげる。じっとしてて」

徐に俺の右肩を指差して言った。長瀬に押し倒された時に地面に落ちてたゴミでもついたんだろうか。

俺からは確認のしようが無い位置っぽいし素直に任せよう。そう考えた俺はそのままじっとした


そこからは一瞬だった。

俺の初めては奪われた。

唇?そんなもんなら幸せだっただろうな。奪われたのはそう。俺の首筋。そしておそらく俺の血だ。


俺に抱きつくと首を噛んできた。反応したり反撃する時間なんて無かった。それくらい一瞬だったのだ。

最初はイタズラか何かだと思ったさ。でもな。感触があるんだ。

俺の首に刺さる感触。しかし不思議と痛くは無い。だが確実になにかがソコにある。

耳を澄ますと聞こえる、何かを飲むような音。

これまで生まれてから感じたことの無かった不思議な感覚。


体から何か(おそらく血だが)が出ていく感覚だけではなく、何かが俺の中に入ってくる。そんな感覚。


体に入ってくる何かを言葉で表すなら、それは多分”力”だ。力といってもそれがどういうものなのかは不明だが。


それからどれだけ時間がたっただろうか。

まぁ体感1分ちょっとなんだが 

自然と抱きつかれていたのが緩み俺はその隙に脱出。

状況観察なんてせず一目散に屋上から撤退した。後ろに目もくれずとにかくダッシュ

「ん?」

動いて気づいた明らかな違和感。悪い意味ではなくよい意味で何かいつもの俺と違う。

何か今の俺はおかしい。吸血鬼?に血を吸われる前よりも確実に体調が良くなっている。

体調、なんてもんじゃない。とにかく元気いっぱい体から力が溢れてくるような不思議な感覚。

どこかのアニメ主人公が「力が溢れてくるぞ!」なんて言って謎のオーラを放ち急にチート能力に覚醒するような。現実的にはあり得ないほどの変化。

今の俺ならなんでもできる。そんな気までしてきた。

謎の体調変化を考えながらも教室に近づく。

教室まであとわずかというところで立ち止りあいつに噛まれた首筋を触ってみる。

水っぽい感覚。手を確認すると血がついていた。

「あっぶね」

このまま教室入ってたら色々追求されるところだったぜ。

回れ右してトイレへ向かう。もし運悪く誰かとカチ会うと面倒なので仕方なく隣にある障害者用のトイレに入る。

さてと水道で首を洗う。

といってもトイレの水道でそんなことかなりやりにくいので完全に血を落とすことは無理だろう。

しかし、噛まれた傷口?があると思っていたのにその感覚が無い。水も沁みない。今朝怪我した右手のほうがよほど痛むくらいだ。触っても血がついている、以外の感触(窪みとか)も無い。血さえ流してしまえば完全にいつもの俺だ。

血が服の外側を伝うのではなく、服の内側を伝ってくれてたのが不幸中の幸い。俺が不快ではあるが他人にバレることはない。

俺が今中に来ているTシャツは犠牲になるわけだが。血がついて時間がたつとそう簡単には落ちないと聞いたことあるし。

しかし俺は確実に血を吸われた。これまで俺がいるはずのないものだと思っていた吸血鬼。もしくはそれに近い何かが実在していた。それだけで身震いする。しかもその存在が2人も同じクラスにいるんだぜ?

警察に言ったって傷すら無いのだから信じてくれるはず無い。

「吸血鬼に血を吸われた!」とか通報がきたら前の俺なら精神科診断を勧める。現実世界に生きている人はとにかく自分が体験したこと以外のことを認めない。俺だってそうだ。吸血鬼なんて存在認めていたはずが無い。

とりあえず今のところ血が減った以外は俺に悪い変化は無いから不幸中の幸いだな。吸血鬼に血を吸われた人間も吸血になる。なんてことも可能性の中にあったがどうやらそれは無いようだ。


うっし、いい感じ。いつもの俺だ。

長瀬とかいう男に屋上に連れて行かれたのが10分ちょっと前だからまだ十分授業開始には間に合う。

「相沢と長瀬にどんな顔すればいいんだろう…」

鏡の俺にそう問いかけるが、当然そこにあるのは悩み顔の俺だった






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