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蒼色レガシー  作者: 羽八
8/13

3-1


 捜査開始から3週間が経過した。何度目も捜査した小池駅周辺を、刻人(ときひと)たちはまた捜査していた。―――そして、ヤツと遭遇した。


 放課後すぐに合流し、一時間ほど捜査したあと、いつもの喫茶店で小休止して再び捜査に戻ろうとしている時である。路地裏に噂通りの蒼い平面を見つけた。大きさは直径3mにもおよび、そこから赤い身体の”セルフィッシュ”の半身が出てきていた。そいつは上半身が異様に大きく、全長の3分の2を占めている。十分に太い足が細く見えてしまうほど腕が太く、そこから恐怖を伴うプレッシャーが発していた。


 (ひびき)が真っ先に反応した。半径1kmほどの蒼い世界を形成し、ヤツが消えるのを阻止する。蒼い世界が広がったことにより、ヤツの全身を見ることができた。ヤツは全長5mもあり、現実世界に現れた部分からもわかったように、異常に上半身が発達していた。一番異彩を放っていたのは頭だ。黒いモヤがかかっているため、顔の上半分が見えなかった。


 「サポートよろしく」と言い、響はヤツの異様な容姿に怯むことなく全力疾走で近づいていく。自分の形成した蒼い世界が上書きされたのを気づいたのだろう、ヤツが異変を感じてキョロキョロしたあと、響の姿に気づいた。響とヤツとの距離は15mほどであったが、響はこれ以上は走って近づくのは無理と判断し、近づくまでに準備していた水弾を高速で放つ。


 50cm程度に圧縮された水弾は全て命中した。しかし、ヤツには全く効果がなかった。後退させることすらできない。怪物は身体の大きさから想像できないスピードで響に近づくと、右ストレートを打つ。響は慌てて防御のための水の盾を形成しようとするが、さきほどの水弾で水を使い切ったため、薄く形成するのがやっとだった。


 くそっとつぶやき刻人がフォローに走る。響とヤツまでの距離は10m。能力を全力でふるえるギリギリの距離だ。響の攻撃がまったく通じなかったことから、能力の使い方は注意すべきだ。ヤツは響に向かって走り攻撃をかけている。押し返すように能力を使えば、突進するエネルギーと打ち消し合いになり、響への攻撃を完全に防ぐことができないかもしれない。刻人はタイミングが難しくなるが、ヤツが攻撃を行うために拳を振りかぶったところで横殴りに全力で”力”を放った。


 ヤツは盛大に体制を崩されて、響の左側にぶっとぶ。


「響さん!生半可な攻撃は効かない。後方に下がって水を溜めて」


「わかった。それとごめん、ちょっと無茶したわ」


 ヤツの動きを見逃すまいとじっと見つめている視界から、響が外れていく。足音からちゃんと刻人の後方に下がったことがわかった。刻人の攻撃によってビルの壁に衝突した怪物が起き上がる。攻撃が効いているのか、頭を2、3回ふる。その動作がやけに人間くさくて違和感がある。頭の振りが終わった後、顔を刻人に向けた。目は見えないため視線が刻人を向いているか確認することはできない。しかし間違えようのない強さのプレッシャーを感じる。


―――先に動いたのは刻人だった。素早く軽めにヤツに向かって右への力を念動力で当てる。そしてすぐに逆の左へ全力の念動力を加える。最初の右への力に反応してふんばろうとしたヤツは直後の左への念動力に耐えられず数m飛ばされ、別のビルに衝突する。離れすぎると力が弱くなるため、刻人はヤツに近づき、フェイントを加えつつ何度も攻撃する。


 戦闘は一方的な展開となった。刻人はヤツの攻撃を受けないように、前後左右、さらに空中も使って逃げながら、念動力で攻撃した。ヤツも刻人の強力な念動力を無効化するほど強靭ではなく、何度も何度もぶっ飛ばされる。通常の”セルフィッシュ”より頑丈ではあるが、いつも通りに倒せそうだった。

 立ち上がるときの勢いも弱くなり、刻人はとどめを決めるために距離を大きめにとり、最大限の威力を出すため、力を収束させる。右腕を水平に持ち上げ、手のひらを開いてヤツに向ける。


 すると鏡合わせのようにヤツも弱々しい動作ながら、刻人と同じポーズをとった。


 刻人はその動作に疑問をもったが、ヤツを倒すことが優先だ。最大まで溜めた力をヤツに向かって放った。今までの比ではないほどの衝撃が発生する。大量の砂埃が巻き上がり、ヤツがいたところにはその身体よりも二回り大きなクレーターができた。ヤツが撃破されたことを確認するため、刻人は肩で息をしながら待つ。


 砂埃が晴れてでてきたのは、攻撃前と同じ片腕を上げたままの姿勢で、たたずむヤツであった。恐怖で全身がぞっとする。恐怖から逃げるため、自身へのダメージを気にせず、念動力を使って全速力で刻人は空中に躍り出た。一瞬前までいた場所に大きなクレーターができる。その大きさは、さきほど刻人が放った念動力でできたクレーターと同じだ。


 なんでだ?なぜヤツが念動力を使う?いままでの”セルフィッシュ”は物理攻撃しかしてこなかった。こいつだけが特別なのか?威力は自分以上か?ヤツが使えるのは念動力だけか?


「刻人くん!動きが止まってる!的にされるよ!撹乱しながら撤退して!」


 響の声にハッとした。また自分は答えの分からない問題を解こうと思考をぐるぐる回してしまっていた。ヤツはその手のひらを空中にいる刻人に向けている。慌てて牽制のための念動力を放ってヤツとの距離をとるためにさがった。ヤツはいとも簡単に刻人の念動力を自身の念動力で相殺した。ヤツと刻人の間の空間で幾度となく空気が激しくぶつかる音が響く。その音は次第に少なくなり、そしてなくなった。刻人と響は無事、ヤツから逃げた。




 完全に負けた。RPGでラスボスにレベルが足りずに負けたときのようだった。一段階目は攻撃が簡単に通るのだが、二段階目に変身した瞬間まったく歯が立たなくなるあれだ。

RPGの場合は、ゆっくりレベルを上げて再び戦えばいいのだが、俺たちにはそんな時間は残されていなかった。それに俺たちの能力が雑魚キャラを倒していけばレベルアップするとは限らない。


 そして気になることがあった。ヤツが俺と同じ能力で、かつ同じパワーだったことだ。まるで俺のコピーのようだった。


―――いや、むしろ俺の能力がヤツのコピーなのか?



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