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蒼色レガシー  作者: 羽八
7/13

2-3


 捜索を開始してから2週間が経過した。しかし、刻人(ときひと)たちは噂の現場に遭遇することはまだできていない。いつもの”セルフィッシュ”にはこの2週間の間に3回ほど戦闘を行ったが、彼らを倒しても噂は継続しているので、噂の怪物ではなかったのだろう。戦闘をこなすごとに刻人の能力は向上していく。最後の1体を倒したときなど、刻人の念動力の力押しで、敵を圧倒してしまった。(ひびき)は刻人の成長っぷりに驚きを通り越してなかば呆れていた。響の能力と比較したとき、刻人の能力の方が圧倒的に強くなっていた。


 変化は刻人の能力アップだけではなかった。噂の怪物の方も変化した。次第に、形成される蒼い平面が大きくなっているのだ。噂の出始めは、直径1m程度の円状であったが、今は直径3m程度の平面が目撃されている。それにともない、蒼い平面から出てくる”セルフィッシュ”の部位も腕だけではなく、足などまで出てきているらしい。直径3mでも全身を出すことができないことから、噂のヤツがどれだけ大きいかがわかる。いままで刻人たちが遭遇してきた”セルフィッシュ”は姿形は違えど、全長は2m程度のものがほとんどだった。能力アップが著しい刻人をもってしても、異常なまでに大きい噂の”セルフィッシュ”を倒せるか、不安がある。


 その日は響の自宅の最寄の志磨枝駅周辺を捜索していた。学校とネットでの噂を総合した結果、怪物の出現場所は、最初に調べた小池駅を含めた6ヶ所の駅周辺に絞られた。今回調べている志磨枝(しまえ)駅もそのひとつである。志磨枝駅前はここ10年くらいで発展した街だけあって、とても綺麗に整備されており、新しい店が目立つ。そのため人気も高く、平均よりも裕福な家庭が住む街という印象がある。最近共学化したとはいえ、由緒正しいすめらぎ高校に通う響の家庭も、この街に似合う裕福な家庭なのだろう。


 スタバやモスが並ぶ駅前から住宅地までの道のりをしらみつぶしに歩いて行く。学校や会社からの帰宅時間とかぶっているため、人通りは多かった。


「不幸中の幸いだけど、目撃される場所が路地裏とか人の少ない場所でよかったよね」


「おかげでテレビや新聞で取り上げられないでるわね。でも、それを偶然ととらえるのは楽天的すぎるんじゃないかな刻人くん」


「何が意味があると?」


「そう。噂の”セルフィッシュ”の栄養源は人の負の感情なんだから、人の多い所で栄養を貯めようと思うことが自然のはず。なのに人通りの少ないところでしか目撃談がないってことは、人の多い場所を避けていると考えたほうがいい」


「思考ができるってこと?でも今まで出会った”セルフィッシュ”はそんな知能はなかった」


「現実世界に干渉出来る時点で噂のヤツはイレギュラー。いままでって考えは捨てるべきよ刻人くん」


「そう、だね。なら噂のヤツは人目をさけて虎視眈々(こしたんたん)と蒼い世界から現実世界への完全に移動できないが挑戦していると」


「それが一番最悪で、いま一番有り得る可能性ね。2週間が経過して、片足まで出てきている。あとひと月もしないで全身がでてくるかもしれない」


 現実世界で、いままでに戦ったことのない大きさの”セルフィッシュ”が現れる。考えるだけでぞっとした。現実世界では蒼い世界のように能力”ウィル”を使うことはできない。噂のヤツが現実に現れた時点で刻人たちにできることはなくなる。あとは、自衛隊の戦闘機や戦車などの軍用武器を用いて倒すしかないだろう。しかし、それらの戦闘準備が整うまでにどれ位の時間がかかるか。死亡する人は計り知れないことになるはずだ。そうならないためには、ヤツが蒼い世界にいる間に刻人たちが”ウィル”を用いて倒すことが最善。


 そもそも、”セルフィッシュ”が現実世界に来た場合、物体として存在できるのだろうか。ヤツを目撃したという証言はあっても、ヤツに触られたや、攻撃されたといった証言は上がっていない。もしかしたら、現実世界に来ることはできても、ホログラムと同様の幽霊みたいな存在となるかもしれない。もちろん、これは希望的観測に基づいた考えであって、ただ自分への慰めみたいなものだ。被害が発生してしまった時点で俺たちの負けなのだから。


 状況が状況なだけに、どうしても響との会話は、暗くなってしまう。絶望的な状況で、俺たちの打てる手は限られていて、大きな効果も期待できない。仮にヤツが俺たちの居場所を感知できていたら、この鬼ごっこは一生終わらない。終わるとしたら、それはこの街が終わる時。胃がキリキリする。どう考えても普通の17歳の仕事ではない。


「刻人くんは好きな人いないの?もしくは彼女」


―――は?突拍子もない事を響きは口にした。今までの真剣な会話はどこへいってしまったのだ。いつもの、刻人をからかう顔をして響が言う。


「ほら、ハリウッドの映画だとこういう展開は王道じゃない。そのとき必要なのは愛の力でしょ。刻人くんは力の源を持ち合わせているのかな、と思って」


「残念ながら、愛の供給はありません。そういう響さんはどうなのさ」


「私?うーん。たっぷり受け取っているわよ。主に同性にだけど」


「もしかして、学校の後輩とかと百合展開ですか?」


「後輩に限らず、先輩や同級生からもね。元は有名な女子校だけあって百合百合しいというか、普通とは違う絡み方をしてくる輩は多いの。まぁ、本気の人はいないけどね」


「あー。なんとなく想像できる。響さんそういう関係似合いそうだもん」


 刻人くんとは一度真剣に話し合ってお互いの認識を確認しあう必要がありそうね、と怖い笑顔で響が言い放つ。その笑顔に怯えつつも、刻人は今の会話は響なりの気遣いだと感じた。もうちょっとやり方はないのかと呆れつつも感謝した。まだ捜査を初めて2週間程度。もっと頑張らなくては。歩みを力強くし、下を向きかけた視線を上に向ける。だって響さん格好よくて男勝りな性格だから女の子にもてるのわかるよ、と軽口を叩くことにする。


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