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 転送された先は自分の教室だった。クラスメイト達が騒ぎ出す。

 一瞬、現実世界に戻ってきたとも思ったが、まだみんなの頭の上にはライフバーが浮かんでいるため、それは違うのだろう。何しろ、高菜が居ない。それが決定的だ。

 ふと右を見ると、空間が歪んでいる。それは他のクラスメイト達も同じだった。俺は歪みに手を突っ込み、西洋剣を取り出した。教室が凶器で満たされる。やはり、あまり気持ちのいい光景ではない。

 ふと見ると、いつの間にか、俺の左に鷹木が薙刀を携えて立っていた。

「朝治、合成音声の言葉が嘘か本当か分からないけど、とにかくやられなければいいんだ。アンドロイド――非現実的だけど、プログラムならありえなくは無い。もしそいつら三百体が襲ってきたとしても、こっちには教師を含めて、倍近い人数が居る。勝てない勝負じゃないよ。それともう一つ――捨て身の攻撃はやめてくれ。ライフバーが零になれば死ぬって言ってたけど、それ以外で死なないとは言っていないからね」

「嘘であればそれに越したことはないんだけどな」

 鷹木は軽く笑ったが、硬い笑みだった。俺も笑い顔を浮かべていたが、同じような事になっているだろう。

 突如、教室の扉が開いた。クラス中がそちらへ視線を向ける中、無表情の男女が三人教室に入ってきた。全員同じ服装をして、同じ槍を持っている。やじりは平べったく、剣のようになっている。

 本当に出やがったか。俺は西洋剣をひときわ強く握り締め、歯を食いしばる。俺が隙をうかがっていると、クラスの端から一人、金髪の男子生徒がアンドロイドに向かって歩いていった。あいつは……渡辺(わたなべ)か。一体何のつもりなのか。そいつは意地汚い笑みを浮かべながら口を開く。

「ま、ようするにゲーム感覚で楽しんじゃえばいいんだよな。死ぬわきゃあねーんだし、よ!」

 渡辺は突然武器の木刀で男のアンドロイドに切りかかった。だが、槍で止められる。渡辺はそれに負けじと、連続で木刀を叩きつける。それでも全て回避されている。そのうち、机に木刀を引っ掛けてしまった。

 そうだ、教室で戦闘をするのは俺と鷹木くらいだ。体育館やグラウンドなどの広い場所でしか闘ったことの無い奴らにとって、教室での戦闘はハンデ以外の何者でもない。

 渡辺は木刀を引っ掛けたことによりバランスがくずれ、つんのめってしまっている。男のアンドロイドはその隙を見逃さず、槍で渡辺の腹を突き刺した。

 瞬間。

「っぐああああああああああああああああああああ!? 」

 耳を劈く大絶叫が響き渡った。俺は何が起きているか分からず、ただ呆然と立ち尽くす。突き刺された所からは血は出ていないが……まさか痛みを感じているのか!? そんなところまで書き換えられてしまっていたのか!?

 渡辺は荒い息をしながら槍を引き抜き、膝を突いた。

「痛ぇ……痛ぇ……クソ野郎が……か、体が動かねえ……うっ」

 渡辺は盛大に嘔吐した。これは確実に演技では無い。男のアンドロイドと共にもう一人女のアンドロイドが渡辺に近付いていき、二人そろって槍を構えた。

 切っ先は渡辺の頭に向いている。俺は一瞬で何が起きるかを把握し、叫んだ。

「渡辺! 前だ! 顔を上げろ!」

 震えながら涙と吐しゃ物に塗れた顔を渡辺が上げたが、その瞬間、顔面に槍が二本突き刺さった。後頭部まで貫通した攻撃に人間が耐え切れるわけが無く、渡辺の頭上にあったライフバーは一瞬で消滅した。

 倒れた渡辺が光りだした。だがそれも一瞬で、すぐに光の粒となって散乱していく。

 教室内は完全に沈黙した。

 だが、それも長くは続かなかった。他のクラスでも同じような状態に陥っているのか、すぐに至る所から悲鳴が聞こえてきた。段々と生徒達は放心状態から戻ってきたが、口元は引きつり、体は震えている。

 教室内の一人、また一人と恐怖が爆発し――大絶叫とともに、学校中が恐慌に包まれた。

 逃げ惑う生徒達は、教室の後ろにあるもう一つのドアに向かうが、さらに三体のアンドロイドがそこから出てきた。逃げ場を失った生徒達に容赦なく襲い掛かるアンドロイド。恐怖と悲痛の叫びの中で、生徒達はさらに冷静で居られなくなっていった。

 俺もパニックに陥っている。何もできず、慌てることしかできない。だが、そんな俺の耳に恫喝が聞こえてきた。

「諦めるな! 敵にもライフバーがあるんだから、絶対に倒せる! みんなだって死にたくはないだろう!」

 声の方向を見ると、鷹木がアンドロイド二体を同時に相手取っていた。

 この瞬間、俺はやっと冷静な判断を取り戻すことができた。すぐさま鷹木に駆け寄り、二対ニでアンドロイドと戦う。だが、クラスメイトの加勢は来ない。まだ心が恐怖に支配されているのか、と俺は内心いらだった。

 俺と鷹木はアンドロイドに対して引けをとらず、むしろ有勢にある。日頃戦ってきた鷹木の戦闘における癖は分かっているし、鷹木もそうなのだろう。我ながら息が合っていて、とても戦いやすい。

 槍での素早い突きを交わし、カウンターで斬りかかる。そんなヒットアンドアウェイを繰り返すうちに、一体のアンドロイドのライフバーが消滅した。倒れたアンドロイドは渡辺と同じように、体が光の粒になり、散乱していった。隣を見ると、鷹木の薙刀がアンドロイドの首を通過したところだった。俺と鷹木はダメージを一度も与えられずにアンドロイドを仕留めることができたのだ。俺は興奮して教室内に目を向けた。

「ほら、みんな! 戦って勝つこともできるん、だ……ぞ……?」

 そこには目を疑う光景があった。いや、正確には、無かったから目を疑ったのだ。

 クラスメイトの姿が。

 がらんとした教室の墨で、三人のアンドロイドの槍が、それぞれ一人ずつ人間の頭を穿っていた。ライフバーは消滅し、生徒の体も光となり、ちりぢりになって消えた。もうこの教室には、三人のアンドロイドと、俺、それに鷹木しか居ない。

 俺は愕然として膝を付いた。

 全滅。あんなに居たクラスメイトが、一人残らずに。俺と鷹木が戦っている間、俺達の力量を見極めたアンドロイドが、先に雑魚を始末し、その後全員で

戦闘能力の高い者を倒そうと考えたのだろう。だが、四対の内の一体は生徒にやられたようだ。残ったアンドロイドは、無表情に、無機質にこちらへ向かってくる。さらに、教室の扉からもう一体アンドロイドが入ってきた。

 二対四。これはだめだ。いくら鷹木が強くても、多勢に無勢というものがある。痛みを感じる以上、一撃でも食らえば集中力が持たなくなる。そんなハンデを背負った状態で勝つのは難しいだろう。

 せめて、あと一人居れば――。

 俺がそう思ったとき、突然、こちらへ向かっていたアンドロイドの内の一体が鈍い音と共に吹きとんだ。頭はひしゃげており、ライフバーは一撃で消し飛んでいる。残っているアンドロイド達は後ろを振り返った。俺と鷹木はその隙を逃さず、後ろからアンドロイドの胸に武器を突き刺し、上に向かって切り裂いた。急所を狙った攻撃になすすべも無く、二体のアンドロイドは消滅した。

 最後の一体の首を、鷹木と同時に切り裂く。光となって消えたアンドロイドの先には、見知った顔が見えた。

「伊藤!」

「先生をつけろ馬鹿者」

 先程俺達を救ってくれたのは、トンファーを携えた、数学教師の伊藤だった。

「二人とも、よく無事でいてくれた……だが、すまん、みんなを助けることができなかった」

 伊藤は唇を噛み締めた。その顔には悲しみと不甲斐なさが滲み出している。伊藤の普段は見せないような深い悲しみに染まった瞳を見て、俺は、この人は本当に生徒を大切に思ってくれていたのだと感じた。鷹木が応える。

「先生のせいじゃありませんよ。これは、どうしようもなかった。……伊藤先生、今生き残っている生徒がどの位居るかわかりますか?」

 伊藤は首を振る。

「いや……分からない。俺は――教師達は職員室に転送されたんだが、そこにアンドロイドが押し寄せてきてな。俺が教師達を代表して、生徒の様子を見に行くことになったんだが、何分、ここが職員室から一番近い教室だからな。他の教室はまだ見ていないが……ここを見る限り、他も大半がやられているだろう」

 俺は落胆した。例え一対一で戦えれば勝てる相手でも、集団でパニックに陥った人間達はやられてしまう。ふと教室の時計を見ると、九字三十分――教室に転送されてからまだ十五分しか経っていない。そんな短時間で、俺達が今まで生きてきた時間は、不条理に、消されてしまった。

 正直、まだ怖い。体は震えるし、息も荒い。だが、今はそんな事を言っている場合ではないことくらい俺にもわかっている。

「今は他の生存者を助け出すことが先決だよな。教室なんかにずっと留まっていたら、大量にアンドロイドがなだれ込んできた場合、対処の使用がないし。鷹木、先生、行こう」

 鷹木と伊藤は頷き、教室から出ようとした。しかし、突然耳元に音声が流れ出す。

『現状ヲ報告致シマス。残存プレイヤー数四十二、死亡プレイヤー数五百八十一』

 四十二人……もうこの学校に人間は一クラス分程度しか残っていないのか……あまりにも早すぎる。

 鷹木と伊藤も拳を握り締め、やるせ無いと言った表情をしている。しかし、音声はまだ終わりではなかった。

『残存アンドロイド数――二百九。次ノ報告ハ十五分後デス』

 俺は目の前が真っ暗になった。二百九? 二百九だって? 敵はまだ三分の一程度しか減っていないというのか。それなのに、俺達は既に十分の一以下の人数だ。

 勝てる気がしない。

 だが、敵は絶望する暇すら与えてくれなかった。

 教室後方の扉からアンドロイドが大量に進入してきたのだ。生存プレイヤー数が減ったことにより、俺達に割く人員が増えたのだろう。

 俺達は慌てて全方の扉から教室を飛び出す。そこには目を疑う光景があった。

「――っ!」

 俺は息を呑む。廊下はプレイヤーを殺し切って教室から出てきたと思われるアンドロイドであふれかえっていた。

 命を感じさせない瞳が、一斉にこちらを見つめる。

「逃げろ!」

 鷹木が叫ぶ。我に返った俺は、襲い来る槍をかわしながら全力で走った。これは不味い状況だ。逃げる先にも敵が居るため、どこへ逃げればいいか分からない。俺はとりあえず死なないことを第一に、ただ我武者羅に走り回った。


 十分位走っただろうか。荒い息をして、時折嗚咽をもらす。

 俺達は何とか生き延びていた。それに、途中ではぐれる事も無く、三人とも一緒に居る。逃げ回っているうちに、最初の転送で送られた体育館にたどり着いていた。逃げつつ倒せるアンドロイドは倒してきたため、敵の絶対数は着実に減っている筈だ。

『現状ヲ報告致シマス』

 不意に、耳元で声が聞こえる。どうやら走っていたのは十分どころではなく、十五分だったらしい。俺達は緊張して音声に耳を傾ける。

『残存プレイヤー数五、死亡プレイヤー数六百十八、残アンドロイド数百一。……訂正致シマス。只今プレイヤー二人死亡、アンドロイド一体消滅致シマシタ』

 俺は目を見開いた。

 今、誰か二人、人間が、アンドロイドを一体道連れにして死んだのだ。もう人間はここにいる三人だけ。

 今まで一緒に学園生活をおくって来た同級生、先輩がみんな死んだ。実感は全く無いのに、その数字が、その現実が俺の心に重くのしかかってきた。

「アンドロイド百体に対し人間三人……一人頭三十三体となると、些か厳しいね」 

 鷹木が悔しそうに言う。確かに難しい状況だ。

 だが、不思議と俺に恐怖はなくなっていた。今の俺にあるのは、俺の友人たちをを大量に虐殺した、この状況を作った相手に対しての――確かな怒り。

 絶対に生き残って現実世界に戻り、そいつを――殺してやる。

「いくぞ二人とも。体育館での――アンドロイド、百人斬りだ」

 俺はそれだけ言い、体育館の正面扉を開けた。 中には、気持ち悪いくらいの数のアンドロイドが見える。しかも、ここに居るだけが全部では無い。どんどんここに集まってくるだろう。

 俺達は中に向かって駆け出す。こちらに気付いたアンドロイドが襲ってくるが、攻撃を避けつつ、走りながら斬りつける。今まで戦ってきたアンドロイドは全て、似たような動き方をしていたため、アンドロイドの癖はもう把握した。そうやすやすと攻撃を食らう筈が無い。

 一撃で倒せるように、全て急所を狙い、攻撃をし続ける。俺が走り抜けた後には、アンドロイドによる光があふれかえっていた。

 いける。広い場所なら障害物も無いし、小回りもきく。問題は体力が持つかどうかだ。先程も全力疾走をしてきたばかりなため、俺達は相当疲弊していた。

 だが、ほぼ停止せずに動き続けないと囲まれる可能性があるため、止まる事はできない。一心不乱にアンドロイドを切り続ける行為を続けた結果、五分後には俺の体力は限界に近づいていた。

 もはや肩で息をしている状態。体育館を見回すが、アンドロイドの数は劇的に減少したりはしていなかった。俺達も相当数倒しているはずなのだが、校舎中に散らばっていたアンドロイド達が続々と集まってくるため、体育館内の敵の数はプラスマイナスゼロになってしまう。だが、敵も無限ではない。もうこの体育館内にいるアンドロイドで打ち止めだろう。

 俺はそう自分に言い聞かせ、足に鞭を打って走り出した。だが、足がもつれてバランスを崩した所に迫る槍を避けきれず、肩口を斬られた。

「っがああああああああああああっ!」

 声にならない悲鳴を上げる。肩が痛い。頭も痛い。吐き気もする。

 不味い、これは不味い。

 肩を押さえ、焦って立ち上がろうとするが、そこにアンドロイドの槍が迫る。

 どすり、という音と共に、アンドロイドの持つ槍が腹に突き刺さった。

「がふっ……」

 伊藤の腹に。

「伊藤……おま……何やって……」

 俺は伊藤に突き飛ばされ、槍をかわす事ができた。だが、代わりに伊藤が槍を腹に突き刺されてしまったのだ。

 突き飛ばされ倒れている状態の俺は、アンドロイドに腹を突き刺されている伊藤を驚愕の瞳で見つめる。

「お前……何で……」

「はっ、ばーか……。気にすんじゃ、ねーよ。生徒を守るのは……教師の、務めだ」

 伊藤を突き刺したアンドロイドは、腹に刺さったままの槍を横に凪いだ。腹を裂かれた伊藤は、悲痛の叫びを上げながら倒れ、ライフバーの消滅に伴って光になって、散乱した。

 俺は自分の痛みも忘れ、呆然と、散ってゆく光を見つめる。俺のせいで伊藤が殺された。その事実に動くこともできなくなっていた。

「朝治! 避けろ!」

 鷹木の声が聞こえる。俺の正面からアンドロイドが槍を持って迫ってくるが、動くことができない。

 俺の眉間に槍が迫り――。

 紙一重のところで――とまった。

 俺は訳が分からず、回りを見渡した。全てのアンドロイドがとまっている……? とまったアンドロイドの合間を縫い、訳が分からないと言った表情で鷹木がこちらへ歩いてきた。

 突然、キーンという音がした。スピーカーからノイズ交じりで音声が流れ出す。

『体育館にいる生存者二名に告ぐ』

 誰だ? いつもの合成音声ではない。人間の、男の声だ。まさか、黒幕か?

『今現在、アンドロイドは三十五体残っている。君らが生き残るのは絶望的だろう。だが――もし君たちのどちらかが自害をすれば……そうだな、アンドロイドは全て消滅させる。そちらに拳銃を送る。それで自害しなければカウントには入らないので、注意することだ。』

 体育館の中央から、カラン、という音がして、見ると拳銃が一丁、床に落ちていた。

 俺はまだ状況に理解が追いついていなかった。スピーカーをにらみつけながら考える。これは罠ではないのだろうか。だが、俺達を殺したいだけならアンドロイドで事足りた筈だ。

 それに、以前はバトルシュミレータ内に飛び道具など無かった。それなのに本当に拳銃が出現したということは、やはりこれはゲームルールを無視した、黒幕の提案なのだろう。

 なら――迷うまでもない。

 俺は決意し、拳銃が落ちた場所に向かうためにスピーカーから視線をそらし、そちらを見た。

 だがそこに拳銃は落ちてはい無かった。

「ごめんね、朝治」

 拳銃が落ちていた筈の場所には鷹木が立っており、その手には拳銃が握ってある。

 鷹木はその銃口をゆっくりと、自分のこめかみに押し当てた。俺は訳が分からなかった。

「ちょ、ちょっと待てよ鷹木。何でお前が死のうとしてるんだよ。嫌な冗談はやめてくれよ。俺よりお前のほうが、頭も良いし、運動神経も良いだろ? 俺が助かるより、お前が生き残って現実世界に戻って……この事件の原因と、二度と起こさない方法を探してくれよ。――これは正論だろ?」

「そうだね。正論だ」

「じゃあ何で――」

「ばっかだなあ、朝治。僕にとっては、君の――幼馴染で親友の君の命以上に大切なものなどないさ」

 鷹木は儚げな笑みを浮かべている。それがさらに俺に警告を告げる。

 鷹木は続ける。

「それにさ――」

 鷹木は俺を正面からみて、とても爽やかな笑顔を浮かべた。

「――その正論が、ムカつくんだ……ってね」

 ズガン。

 鷹木が倒れるていくが、まるでスローモーションのように見えた。血は出ていないが、ライフバーは既に消滅している。

 大きな音を立てて鷹木は倒れた。徐々に体が光に包まれ、空気中にただよい――ちりぢりになって、消えた。

 俺の目からはとめどなく涙があふれてくる。俺のせいで親友を死なせてしまった。俺のせいで教師を死なせてしまった。なのに何故俺は生きているのかが分からなくて、涙を流すままにした。

 体育館中のアンドロイドが消滅していく。

 無機質な体育館は金色の光に包まれる。光は、ただ一人残された俺の回りを漂っていた。

 光が消えゆく中、耳元から音声が流れ出してくる。

『現状ヲ報告シマス。残存プレイヤー数一、死亡プレイヤー数六百二十二、残アンドロイド数ゼロ。転送ヲ開始シマス転送開始マデ三秒……二秒……一秒……』

 耳元で音声が流れるが、何を言っているか、今の俺の耳には全く入らなかった。

 体育館に漂っていた光は、完全に消えた。

『開始』

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