雪の降る日に花束を抱えて
しんしんと降り積もる雪の中を僕は歩いていた。
君の好きな花を集めた、君だけのための花束を抱えて……。
今、僕は君に会いに行く。
今日のように雪の舞う冬の日。君に出会ったのもこんな日だった。
最初はただの飲み友達。
それが酒の勢いも手伝って、お互いが本音を話していくうちに、いつの間にかお互いがかけがえのない存在になっていた。
春になって桜が咲く頃には、一緒に時間を過ごすのが当たり前のようになっていたね。
いつだって二人でいたいと思ったし、実際できる限り二人で過ごすようになってた。
君とともに過ごした最初の夏。二人で海に行ったっけ。
「また一緒にこれるといいな……」
そう呟く君の横顔が夕日に照らし出されて、とても綺麗だったのを昨日のことのように思い出せる。
秋、初めて君の両親に会いに行ったのもその頃だった。
その時のことはあまりに緊張していた所為か、ほとんど何も覚えていない。
唯一覚えていることといったら、カチコチに固まる僕の様子を君が可笑しそうに笑って見ていたことくらいだ。
そして二度目の冬。
ちょうど君と出会ったその日、僕は一つの決意を胸に、君を初めて出会ったあの場所に呼び出した。
僕のポケットには小さなダイアモンドのついた指輪が入っていた。それが僕の決意の証。
しかし、いくら待っても君がその場所に現れることはなかった……。
君の両親から君が事故にあったという連絡が入ったのは約束の時間から1時間ほどしてからだった。
大慌てで病院に駆けつけると、ちょうど君が手術室に運ばれるところだった。
僕が君の手を握ると君は朦朧とした意識の中で言ったよね。
「行けなくてごめんね」って……。
それが僕が聞いた最後の君の声だった。
あれから2年がたった。
僕の首にはあの夜に君に渡すはずだった指輪がぶら下がっている。
あの日、僕が君を呼び出さなければ、僕らは今でも一緒にいられたのだろうか。君を失わずにすんだのだろうか。
そう考えたのは一度や二度ではない。
それがどんなに無駄なことか、それはわかっているつもりだったがそう思わずにはいられなかった。
ようやく目的の場所が見えてきた。
周囲には僕以外に誰もいない。ただ雪だけがすべてを白く覆い隠すように舞い続ける。
彼女の眠る場所までもう少しだ。
僕は抱えていた花束に積もった雪をゆっくりと払い落として歩き続けた。
また来年も、再来年も、そしてその先もずっと僕は花束を持ってここに来るのだろう。今日のように雪の舞う冬の日に……。
雪は全くやむ気配を見せず、いつまでも降り続ける。
雪解けの春はまだずっと遠いようだ……。
些細な切っ掛けから、友人と『愛』をテーマに物語を書き合う状況に陥って書いたお話。
それまでに本格的に考えたストーリーを文章化したことがなかったので、色々ドキドキでしたが、なんとか書ききり一安心なリヴさん(この駄文の作者)です。
ストーリーや文章が稚拙な点は、笑って許してください(泣)