かつての上司
部下が上司になる。逆転現象が起こると、いろいろな問題が出てくるものです。
会議後。
廊下で足音が響く。
マグマリオンが立ち塞がる。
「閣下……いや、クロノ」
声が低い。
かつては直属の上司だった怪人。
クロノが主任だったころ、何度も怒鳴られた。
「お前は、優秀だ。お前のサポートがあったからこそ、我々は前線で死力を尽くすことができた。それには感謝している」
意外な言葉。
「だがな」
溶岩の瞳が揺れる。
「これまで命を賭けて戦ってきたのに、これからは“発電所”と言われて、すぐ飲みこめるほど単純ではない」
本音だった。
クロノは静かに答える。
「理解しています」
「ならばなぜ、そこまで冷静でいられる」
少しの沈黙。
「私は……戦場に立ったことがありません」
マグマリオンの目が細くなる。
「その代わり、後方で“損失報告書”を書き続けました」
何万人の戦闘員が消えたか。
何体の怪人が爆散したか。
どれだけの基地が吹き飛んだか。
「勝っても勝っても赤字でした」
マグマリオンは黙る。
「だから今度は、“減らさない”戦いをします」
しばらくの沈黙の後。
マグマリオンは鼻で笑った。
「気に入らんな」
クロノはうなずく。
「当然です」
「だが」
マグマリオンは背を向けた。
「やるからには徹底してやれ! 世界最大の地熱発電が作れなければ、貴様を首領から引きずり下ろす」
「期待しています」
軽く会釈。
溶岩の巨体が去る。
クロノは小さく息を吐いた。
(第一関門、突破……たぶん)
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