4.薔薇園
季節は巡り結婚式まであと三ヶ月。
相変わらずルートヴィッヒには番が見つからず、お互いを名前で呼び合うようになっただけで以前と変わらぬ水曜14時のお茶会が続いている。
もうルートヴィッヒに番は出来ないかもしれないわ。式が終われば、ルートヴィッヒには番がわからないようにする処置がされる。
ルートヴィッヒには可愛そうだけれど、どこかほっとしていた。
今日のお茶会は薔薇が見頃だからと王宮の薔薇園の四阿へセッティングされている。
その薔薇園は始祖たる神龍の番が薔薇を愛した為造られたという王族以外は入れない特別な庭だ。
薔薇園でのお茶会と聞いて、ユリアンナは楽しみにしていた。いつもは時間ぴったりに来て時間ぴったりに帰るユリアンナもこの日ばかりはかなり早めに来てしまったほどだ。
四阿へと向かう道すがら色とりどりの花を楽しむ。ふと。風上から華やかな薫りがした。
ルートヴィッヒだ。
早めに来た事を知られては薔薇園を楽しめなくなるとユリアンナは薔薇の生垣に隠れた。
長い髪をなびかせてシンプルな黒い軍服に身を包んだルートヴィッヒがそこにいた。均整の取れたしなやかな身体、薔薇を優しく愛でる優しい目つきがレアで、色とりどりの薔薇が霞むくらいの美しさだ。
咲き初めの暁色の薔薇を1つを手に取り、愛おしそうに口づけた。
咲き誇る薔薇の花々の中、神話から抜け出したような美しいルートヴィッヒの姿に息がとまる。あんな表情するんだ。
日頃、想わないように必死で抑えつけている恋心が首をもたげる。
ずるいなあ、ルーは。私といる時はいつも厳しい表情で睨みつけてくるのに、一人の時はそんな優しい顔で笑うんだ。
そっと踵を返そうとして、風にのってルートヴィッヒの呟きが聴こえた。
「愛おしい番に早く会いたい。結婚式まであと三ヶ月か…。」
その囁きの泣きたいくらいの切なさと、その言葉の暴力に打ちのめされる。
そうよね。王族が番を求めるのは当たり前の事。
わかっていたはずなのに。私の前では番の事忘れているかのように一切話さないから。
心の片隅でこのまま結婚するのかもなんて事までよぎっていたわ。
そんなに番を求めるのなら結婚まで三ヶ月しかないのは焦るわよね。
でもギリギリで覆されるなんて、まっぴらだわ。ルートヴィッヒなんてこちらから振ってやるわ。
乙女の恋心をこれでもかと踏みにじりやがって。ルーの馬鹿っ。




