9.龍は幕を上げる
遅くなりましたが続きです
数ヶ月後
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会議室・魔物対策課
「報告します。最初に出現した“人の魔物”以降を皮切りに、出現頻度が上昇しています」
重苦しい空気が会議室を満たす。
「そのため、今後この魔物を特殊な魔物として扱うことが決定しました。通常のランクでは計れない危険性を有しているため、特別区分を設けます」
「……特別区分?」
「はい。例としては――特S、特A。このように通常のランクの前に“特”をつける形で区別します」
ざわめきが広がる。
「つまり、既存のランク評価では不十分ということか」
「ええ。実際、Bランク魔法少女が重傷を負った前例もあります。政府としても、この存在を見過ごすことはできません」
「……魔物が進化している、そう考えるべきか」
「もしくは――」
言葉を切った瞬間、室内の妖精たちがわずかに身をすくめる。
「――誰かが、作り出しているのかもしれません」
重苦しい沈黙が会議室を覆った。
「………そのことについて、少し耳に入れて欲しい情報がある」
一人の中年の役人が口を開いた。
「なにかね……」
対策課のトップが聞き返す。
「……最近、我々が魔法少女を派遣する前に魔物が討伐されている事例が多発している。その“特殊な魔物”も含めて、だ」
「なに……?」
「しかも、討伐された痕跡を解析したところ……どうやら銃によるものだと判明した」
「「「「!!」」」」
会議室に激震が走る。
現在、この星の人類は魔物への対抗手段として魔法少女に依存していた。
現代の兵器は魔物にまったく通用せず、銃火器など無意味であるとされてきた。
「……そんな馬鹿な。魔物に銃が効くはずが……」
「だが解析結果は偽りようがない。通常の弾丸ではないだろう、なにかしら魔力的加工が施されているはずだ」
「誰がそんなものを……」
会議室は再びざわめきに包まれ、やがて一つの言葉に集約されていく。
「――正体不明の魔法少女もしくは魔物に効く兵器を作れるが存在いるのではないか」
――――――――――――
魔法少女たちの国営宿舎
二人の魔法少女が、ロビーの片隅で小声を交わしていた。
「ねえ、聞いた?」
「何を?」
「新しい魔物の特別区分。……“特”がつくやつ」
「ああ……最近よく出てくる、人が魔物化したやつね」
「怖いよね……。先輩たち、あれと戦って心を病んじゃったって」
「……仕方ないでしょ。元は人間だったんだもの。……助けられないって分かってても、迷いは出るよ」
沈黙が落ちる。二人とも目を伏せたまま。
そのとき――
「なになに? 暗い話してんなー」
軽快な声と共に、赤髪を揺らす魔法少女が現れた。
「! カリナさん!」
「烈火のカリナ……」
皇国が誇る三人のSランク魔法少女のひとり。その姿に、空気が一変する。
「特Bランクの討伐に行かれたんじゃ……?」
「行ったさ。……けどな」
カリナはにやりと笑い、拳を鳴らした。
「俺が着いたときには、もう終わってた。魔物は、もう死んでたんだ」
「えっ……!?」
「そんな……」
動揺する二人を前に、カリナは楽しそうに肩をすくめた。
「俺より先に仕留める奴なんて、ルミナくらいしかいなかったんだがな……。面白えじゃねぇか」
その瞳は、不安を押しのけるようにぎらぎらと輝いていた。
「燃えてきたぜ」
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「ふふ……疑問、不安、恐怖、興奮……そして好奇心。いいね」
夜の街を見下ろすビルの屋上。
ルナスは両手を広げ、煌めく街灯と人々のざわめきを愉快そうに眺めていた。
「政府も魔法少女も、もう気付いたろう? “異質”な存在の影に」
「さて……お披露目の時期だ」
月光に照らされたその顔に、悪戯を仕掛ける子供のような笑みが浮かぶ。
「さて、どっちからやろうか? ――“特殊な魔物の元凶”か」
「それとも……“新たな希望となる魔法少女”か」
ルナスの声は夜風に溶け、誰にも届かず闇に消えていく。
だが確かに、静かに幕は上がった。
この国を揺るがす――“新たな劇場”の幕が。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




