57.決戦前
―――
ルナス視点
人類が魔界に攻め込み早3日
結果は……芳しくない
「まぁ、そうだろうね」
そうだ、当たり前だろう
敵の本拠地で戦っているんだ。勝てるわけがない、数は優っていても質が負けている
数より質の魔族
質よりも量の人類
拮抗しそうだが、戦闘の場所が場所なだけに苦戦を強いられる
「ぶっちゃけ、ここの戦いはどうでもいいんだけど」
そうだ、ルナスにとって重要なのは、魔王と虚無の少年だ
龍の誕生理由
管理者が死に世界が不安定になる
そこに龍神が介入し星の力が器に向かうように仕向ける
虚無は管理者の力と星の力を受け入る……それでも虚無は埋まらない、穴を埋める為器は更なる力を求める
……龍という最上の力を
もし、上手くいったら?
簡単、虚無を根源とする龍が生まれる
虚無はさらに広がり貪欲に全てを喰らい尽くすだろう
下手な神々や他の龍すらも飲み込む
そんな存在へと
「はぁ、めんどくさいことをしてくれたね」
イラつきとともに息を吐く
「………本当に面倒だ」
軽く殺意が湧く
その殺意は戦場にいた全ての存在に届いた
魔族、人間関係なくルナスの方向を向いた
「……悪いけど、不機嫌なんだ」
その一言は世界を震わせ、歴戦の戦士であろうと勇者であろうと息を止めさせた
「……嫌がらせにしかならないけど」
言葉を切る
「タイミングはこっちで決める」
―――
魔王視点
人類どもが攻め込んできて数日が経った
「今回の勇者達は強いな」
空に話しかける魔王
―そうでしょうね、かの存在がいるのもありますがいつになくレベルが高い―
何もないのにも関わらず返事が来る
魔王と謎の声
正体は明白だろう
「して、話とは?わざわざ我との同一化を解除してまで何を伝えたいのですか?」
―ええ、龍が……―
言葉が途切れる
何故か?
「お邪魔するよ」
ルナスだ
「貴公は……」
魔王が立ち上がり、すぐに動けるようにする
―なぜ、ここに……―
その言葉が続くことはなかった
既に二人の命はルナスに奪われていたからだ
「話す暇もないんだよごめんだけど」
頭部を消失し崩れ去る魔王を見る
「……なるほど、そういうことか」
管理者と魔王の力を集める
集めて分かった、こいつらは”眷属”に近い
上位者が自分の力を分け与えて存在する物
こいつらの力の根源は………龍神か
となると、ここを作ったのは龍神
随分と昔から計画を練っていたらしい
「おや」
その時扉が勢いよく開く
「魔王様!勇者たちが……」
扉を開いた魔族はことばを失う
眼に入ったのは頭部を消失し、膝をついている魔王
「貴様!よくも……」
そう言いかけた時に魔族の胸から剣が生えた
「ガハッ」
倒れる、その後ろにいたのは勇者……異世界の青年たちだ
「ルナス、何故ここに」
一人が話しかける
「ああ、事情が変わったね。安心しなよ魔王は殺したから」
すぐ横に倒れる魔王を指差す
「ふざけるな!」
別の勇者が声を荒げる
「そんなに強いなら最初からお前がやればよかっただろ!」
「お前が出ないから俺たちが戦ったんだぞ!何人かは死んだ!お前がお前が……」
怒りに震える
「お前のせいで!」
そして、ルナスに向かい剣を向け飛びかかる
「はぁ」
ルナスがため息をつく
「お前らの相手してる暇はないよ」
その言葉で全員が止まった……いや世界自体が
「この世界が龍神の手の内ならもう力を出し惜しみする必要もない」
歩く
何事もないようにそして
空白の少年の前で止まる
「聞こえてないだろうけど説明するよ。今から、君に管理者と魔王の力を注ぐ。君の中の虚無は少し埋まるだろうけど、完全には埋まることはない」
「そして穴を埋めるべくその力と似たような力を欲するだろう、まずはこの星だ」
ルナスは足元を見る、足で軽く叩くと
光が浮き出てくる
「これはこの星の力だ、こんなに近くにあるのならすぐに取り込めるだろう」
「取り込んだら君は、龍に近い存在に昇華する。その時に君自身の自我が残っているかは知らないけど」
そこからが勝負だ、この少年が龍に近くなると必ず龍神は出張ってくる
ルナスという自我を殺し最上の力だけを残すために
「じゃあまた会おう」
そう言い残しルナスは姿を消す
同時に世界は動き出した
―――
虚無の器視点
「?」
最初に出たのは、困惑だった。
さっきまで目の前にいたはずのルナスがいない。
剣を振り下ろそうとしていたクラスメイトも、周囲の仲間も、皆きょとんと立ち尽くしている。
時間が――飛んだ?
「何処行きやがった!」
怒号が玉座の間に響く。
誰も状況を理解できていない。
魔王は倒れている。
だが、決着の実感がない。
「……とりあえず、魔王の死骸を持ち帰ろう」
冷静に提案したのは、クラスのリーダー格。
「……分かった」
皆が動き出す。
緊張と興奮が混ざった空気。
俺も、足を向けようとした――その時。
「っ!」
視界が揺れた。
強烈な眩暈。
足元が歪む。
(なんだ……?)
倒れそうになる体を、無理やり踏みとどまらせる。
熱い。
同時に、凍えるように冷たい。
胸の奥で、何かが脈打っている。
ドクン。
ドクン。
心臓じゃない。
もっと、重い何か。
(おかしい……)
呼吸が浅くなる。
喉が焼ける。
内側から、何かが膨れ上がる。
押し出そうとする。
破裂しそうだ。
「お……い……大丈……」
誰かが駆け寄る。
声が遠い。
水の中にいるみたいに、くぐもって聞こえる。
視界の端が暗くなる。
(何が、起きて――)
胸の奥が裂けるように痛む。
だが血は出ない。
代わりに、光。
いや、闇。
両方だ。
何かが、俺の“中”に流れ込んでいる。
満たされる。
ほんの少しだけ。
けれど――
足りない。
全然、足りない。
もっと。
もっと、欲しい。
(……欲しい?)
その思考に、自分で驚く。
俺は、こんなことを考える人間だったか?
「あ……」
力が抜ける。
膝が折れる。
床に倒れ込む瞬間、誰かの手が伸びた気がした。
でも届かない。
世界が暗くなる。
音が消える。
意識が沈む。
その、最後の瞬間。
―やっとか―
声が聞こえた。
それは外からか。
内からか。
分からない。
ただ。
その声は、ひどく愉快そうだった。
そして。
闇の奥で、何かが目を開いた。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




