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龍は世界を渡る  作者: 人外主人公大好き
2章 ファンタジーの世界
56/60

55.あと少し

―――

ルナス視点


あれから、色々あった。


魔族が各地で襲撃を仕掛け、

人類がようやく魔族の本拠地を特定し、

英雄譚が量産され、

同時に、数え切れないほどの名前が記録から消えた。


……まあ、いろいろだ。


「……ようやく、かな」


呟いた声は、やけに軽い。


体感としては、ほんの数時間。

だが実際には、数年が経過している。


これも、龍になってからの厄介なところだ。

時間が“伸び縮みする”というより、

意味のある瞬間だけが残り、他が削ぎ落とされていく。


「……あともう少し」


この世界の崩壊と、

龍の誕生まで。


「種は蒔いた。仕掛けも仕掛けた」

「予想外も、予想した……全部、無駄になるかもしれないけど」


そう言って、ルナスは小さく息を吐く。


――疼く。


否。

“疼いている”のは、もはやルナスではない。


龍だ。


龍は群れない。

というより、そもそも社会性を持つ存在ではない。


龍とは、個体ではなく現象。

世界に発生する“過剰解答”のようなものだ。


だからこそ、

自ら以外の龍が近づくと、反発が起きる。


世界そのものが軋むほどの拒絶。

同時に存在してはならない、という圧力。


「……器が、持たないかもね」


ルナスは、自分の腕を見る。


――いや。

それは“見る”という行為に、もう近くない。


元来、龍に肉体はない。

あるのは、力と概念と現象だけ。


それらが世界を壊さないように干渉するために、

仮初めに“形”を取っているにすぎない。


今、ルナスが宿っているこの肉体もそうだ。


龍の力に耐えられる物など、本来存在しない。

だから肉体は、常に調整され続けている。


細胞が書き換えられ、

構造が更新され、

生物としての定義から、少しずつ外れていく。


鏡に映しても、

そこに“人”は映らないだろう。


生き物として見られない。

生き物として、認識されない。


「……まあ、今さらか」


肩をすくめる。


龍の誕生は、もう近い。

世界は臨界点にあり、

因果は、張り詰めた糸のように震えている。


次に大きく動いた瞬間、

すべてが――決まる。


「さて」


ルナスは、ゆっくりと目を開いた。


「最後まで、付き合ってもらうよ」



――終わりは近い。

だが、物語はまだ、終わっていない。


―――

ルナス(分身)視点


明日、勇者たちは魔界へ送られるらしい。

――正確には、魔族の本拠地。


王国はそれを「決戦」と呼ぶだろう。

全面戦争。

これに敗北すれば、人類は滅びる――そう考えている。


判断としては、正しい。


(実に、人間らしい結論です)


魔王の役目は、この世界の管理だ。

世界が円滑に回るように、種を整理し、数を調整する。


魔族はそのための眷属。

人類は、観測対象であり、資源であり、負荷でもある。


だから、殲滅ではない。

“ある程度を残しての殲滅”。


反抗できる力を削ぎ、

再興できない規模まで数を減らす。


それが、最も効率的で、最も再発の少ない方法。


(……勇者という制度も、その延長線上ですね)


世界が用意した“反発装置”。

滅びすぎないように、

管理されすぎないように。


だが今回は、歪みが大きすぎる。


勇者たちは強い。

過剰なほどに。


本来なら数世代かけて分散するはずの力が、

一度に集まりすぎている。


原因は明白だ。


――ルナス、本体。


この世界に存在しているだけで、

因果は“短絡”を起こす。


結果が、過程を追い越し、

世界が「急ぐ」。


(そして、その皺寄せは)


必ず、弱いところに来る。


王国は理解している。

勇者の中に、明確な“出来損ない”がいることを。


剣も魔法も中途半端。

戦術理解も低い。

連携の輪から外れ、期待もされていない。


“無能”。


だからこそ――

最前線には置かれない。


だが、後方にも置かれない。


(便利な言葉ですね……予備、というのは)


危険な任務。

陽動。

撤退時の殿。


表向きは「全員で戦う」。

実態は、選別。


生き残る勇者と、

死んで物語を完成させる勇者。


(……そして、彼は)


虚無。


ステータスに現れない異常。

祝福でも呪いでもない、欠落。


世界の管理機構が、

どう扱えばいいのか分からない存在。


消そうとすると引っかかり、

残そうとすると邪魔になる。


(管理者が、最も嫌う型)


だからこそ、

“戦場”に放り込む。


生き残れば儲けもの。

死ねば、納得できる。


実に合理的だ。


分身は、王立学園の窓から夜の訓練場を見下ろす。

灯りは落ち、誰の姿もない。


……いや。


一人だけ、いる。


剣も持たず、

魔導書も開かず、

ただ、地面に座って空を見上げている。


(嵐の前、ですね)


明日、世界が大きく動く。

魔界への転移。

勇者たちの踏破。

魔王の迎撃。


そして、その裏で――

龍の誕生が、臨界へ近づく。


(本体は……)


何も言わない。

だが、判断は既に下されている。


この戦争は、

勝っても負けても、意味がある。


勝てば、人類は延命される。

負ければ、管理が完了する。


どちらでも、

世界は次の段階へ進む。


だが。


(あなたがそこに立つ意味は、どちらにも含まれていない)


空白を持つ少年。

物語の外側。


彼だけが――

勝敗とは無関係な場所にいる。


分身は、静かに目を閉じる。


(さて……)


明日、壊れるのは誰か。

勇者か。

王国か。

世界か。


それとも――

虚無が、自分の輪郭を得るのか。


答えは、もうすぐ出る。


因果は、逃げ道を残したまま、

確実に収束し始めている。


――夜は、静かすぎるほど静かだった。

いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。

見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです

今回の章は早めに終える予定です

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