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龍は世界を渡る  作者: 人外主人公大好き
2章 ファンタジーの世界
46/48

45.今後のこと

―――――

王国視点


「……困った事になりましたな」


側近が疲れたように呟く。

アストレア国王は静かに頷く。


「そうだな」

「…ルナス殿か、何者なのだ?」


「わかりません。少なくとも我々の想像の範疇には存在しないでしょう」

「神か、もしくはそれに準じる存在……そんなところでしょうな」


広間に、重い沈黙が走る。


「はは、神……か。魔王と魔族で、すでに人類は手一杯だというのに」


「……他の国で、似たような事は?」


「ありませんな」

静かな声が返る。

「少なくとも、王国の記録、そして周辺諸国の報告には見当たりません」


王は眉をひそめ、ゆっくりと息を吐く。

「そうか……他の国では無事に勇者召喚を成功したのか」


「他の国でも勇者召喚してるんだねー」


その言葉に、場の空気が一瞬凍る。

「!?」


兵士たちは即座に反応した。

先ほどまで安全圏だと思われていた広間に、未知の存在――ルナスがいるという事実。

すぐさま兵たちが集まり、広間の出入口を固め、警戒態勢を敷く。


側近たちの間に緊張が走る。

規格外の存在を目の前に、王国側の誰もが心のどこかで危険を覚えた。


王は手を軽く掲げ、兵士たちに指示を出す。

「冷静に、まずは様子を見ろ。無闇に手を出すな――我々は情報を得ることを優先する」


沈黙の中、視線が広間の中心に集まる。

ルナス――その翼も角も、尻尾も鱗も、ただ静かに存在しているだけだった。


王は小さく息を吐き、肩の力を落とす。

「……しかし、本当に想定外の相手だな」


側近たちも黙り込み、全員がその場の空気に張りつめたまま、次の動きを見守った。


―――――

ルナス視点


警戒させちゃったかな。まあ、急に規格外が現れれば、そりゃそうなるか。


「……ルナス殿、何用で」


国王の声。警戒は解かれず、鋭さを帯びている。


「まぁまぁ、そんな警戒しないでよ……意味ないから」


軽く、でも確実に威圧を込めて言う。

声も表情も柔らかいが、その場の空気は一瞬、重くなる。


「あちゃー」


想定通り、ほとんどの側近が床に崩れ落ちる。

魔術師も兵士も、無意識のうちに力を失ったように気絶してしまった。


ルナスは肩をすくめる。

「まあいいや、これでゆっくり話せるね」


意識が戻るまで、倒れた面々を見下ろしながら微かに笑う。


「………………そうですな」


国王だけは、かろうじて踏ん張り、低く応えた。

ルナスはその反応に少し満足して、視線を静かに広間に巡らせた。


「回りくどいのは嫌いだから直で言うよ」

「ここにきたのは要求を伝えにきたからだよ」


「……要求?先ほどのものではなく?」


「あぁ、別のやつ。簡単に言おう彼らを鍛えて欲しい特に、烏丸愜という生徒を」


「……なぜ?」


「うーん、これは伝えれないな。まあ、彼らが強くなるとこの世界を守れるって事だよ」

「それこそ、魔王からもね」

「それと、しばらくこの国を出るからね。代わりの存在は置いとくから使うといい」


「……どこに行くので」


国王の問いは短いが、探るような重さがあった。

無理もない。

こちらは突然現れて、威圧で半数を気絶させ、要求だけ通して去ろうとしているのだから。


「ちょっとした確認だよ」


軽く答える。


「この世界の“外側”をね」

「正確には――時間と因果の流れを少し覗きに行く」


国王の眉がわずかに動く。

理解できたわけではない。ただ、“理解できない類の話だ”と察しただけだ。


「……それは、我が国に関係があるのですかな」


「大あり」


即答だった。


「この国だけじゃない。この世界そのものに関係する」

「放っておくと、数年以内に取り返しがつかなくなる」


倒れている側近たちを一瞥する。


「だから、今のうちに下地を作る」

「生徒たちを鍛えるのは、その一部だよ」


「……烏丸愜、という少年が特に重要だと?」


「うん。あの子は――」


一瞬、言葉を切る。


「“空っぽ”だからね」

「何にも染まっていない。だからこそ、何にでもなれる」


国王は黙って聞いている。

否定も肯定もしない。ただ、王として必要な情報だけを選別している顔だ。


「危険な存在に、なり得ると?」


「なり得る」


隠さない。


「でも同時に、この世界を救える可能性も一番高い」

「扱いを間違えなければ、だけど」


「……我々に、その“扱い”ができると?」


「できるかどうかじゃない」


ルナスは、静かに言った。


「やるしかないんだよ」

「選択肢は、もうとっくに削られてる」


沈黙。


王はしばらく考え込み、やがて低く息を吐いた。


「……代わりの存在、とは」


「ああ、それね」


指を軽く鳴らす。


空間が、わずかに歪んだ。


「監視と連絡用の端末みたいなもの」

「意思はあるけど、判断はしない。君たちの邪魔もしない」


「……それは、安全なのですかな」


「そうだよ」


「困ったら、呼べばいい」

「直接じゃなくても、情報くらいは届く」


そして、翼をわずかに広げる。


「じゃあ、あとは任せるよ」

「生徒たちを頼んだ。特に――烏丸愜を」


国王は、ゆっくりと立ち上がり、深く一礼した。


「……承知しました」

「我が国の責任において、彼らを導きましょう」


その言葉を聞いて、ルナスは少しだけ目を細めた。


「うん。それでいい」


次の瞬間、空間が静かに裂ける。


「じゃ、またね」

「次に会う時は……多分、状況がだいぶ動いてる」


そう言い残し、ルナスの姿は消えた。


残された広間には、倒れた側近たちと、

そして――これから“勇者候補”を育てるという、重すぎる役目だけが残った。


国王は、天井を見上げ、静かに呟く。


「……神ではない、か」


それでも。


「人の手に余る存在であることに、違いはないな」


―――――

王国視点


ルナスが空間を裂き、姿を消すと、広間には静寂が戻った――かと思いきや、微かに何かが光った。


床に、ルナスと同じ黒い翼を持つ小型の影がふわりと浮かんでいる。

その姿は、完全な縮小版のルナスというわけではない。

どことなく個性を感じさせる目の輝き、仕草。独自の自我を持つ存在であることは一目で分かった。


「……これは?」


側近の一人が呟く。


国王は息を飲む。


「ルナス殿の――代わりの存在、か」


小さな影は、広間をふわりと漂いながら、低く澄んだ声で言った。


「……私はルナスの分身だ。だが、ここにいるのは私だ」


声には明確な意志がある。

ルナス本体の命令を受けつつも、完全に独立しているような雰囲気が漂う。


「私は君たちを監視し、情報を提供する。邪魔はしない」

「だが、選択や判断は――私自身の意志による」


王国側は、その説明に背筋を伸ばすしかなかった。

“分身”であり、しかし完全に独立した個体。

予想以上に厄介な存在が残されてしまったことを、皆が理解した。


「……どうやら、これで生徒たちを監督するのは私たちではなく、この存在になるのか」


国王は静かに呟き、天井を見上げる。

そして、視線を浮かぶ小型の影に戻した。


「……なるほど」

「人の手に余る存在が、さらに人の手に余る存在を残す、とな」


広間には倒れた側近と、未知の分身――

そして、これから鍛えなければならない“勇者候補”たちの責任だけが、重くのしかかっていた。


物語は、水面下で大きく動き始めていた。

いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。

見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです

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