44.龍は考える
短めです
―――――
ルナス視点
王国から与えられた部屋に戻る。
重厚な扉が閉まり、外界の気配が完全に遮断された。
簡素だが十分な広さの室内。石造りの壁に、最低限の調度。
客人用としては、過不足のない造りだ。
「はぁ……」
小さく息を吐く。
先ほどの広間の光景が、自然と脳裏に浮かび上がる。
怯えを隠しきれない生徒たち。
慎重さの裏に打算を滲ませる王国側。
そして――“測定不能”という結果に、明確な動揺を見せた魔術師たち。
「ありきたり……だね」
ぽつりと零す。
「異世界にクラスごと召喚されて」
「その中に、特異な力を持つ者が混ざっている」
「……よくある話だ」
物語として、何度も見てきた構図。
役割が与えられ、期待が集中し、やがて均衡が崩れる。
黒い翼が、ゆっくりと畳まれる。
床をなぞる尻尾が、微かな音を立てる。
角に当たる灯りが、鈍く反射した。
「問題は……」
意識が、ここへ呼び出された瞬間の記憶へと向く。
「龍の方……かな」
(マスター。一通りこの世界を検索しましたが、
マスターのおっしゃる“龍”に該当する存在は確認できませんでした)
「………ありがとね」
短く返す。
龍が存在しない世界。
それにもかかわらず、確かに“龍の力”を感じた。
「この世界には、“まだ”龍はいない……」
一拍、間を置く。
「いや……正確には、“今”存在していない、か」
龍とは、生物というより現象に近い。
過去・現在・未来、時空の制約すら受けず、条件が揃えば同時に在る存在。
ゆえに多くの龍は“自己”を持たない。
――ルナスのような特例と、
――龍の上位存在である“龍神”を除いて。
「……近い未来、いや……数年以内に、この世界に龍が誕生する」
静かな断定。
「龍は高エネルギーが収束した結果だ」
「誕生には、世界が崩壊しかねないほどのエネルギーが要る」
視線が、虚空を見据える。
未来へ――この世界が壊滅する、その瞬間へ。
「起点は……」
脳裏に浮かぶ、一人の少年。
「……あの少年か」
先ほどの“鑑定”で、
属性も適性も示されなかった存在。
「何て名前だっけ?」
(烏丸 愜――からすま かぬい、です)
「あぁ……そんな名前だったね」
小さく呟く。
「新しい龍の誕生なんて大事を、あのジジイ――龍神や、他の連中が傍観するわけがない」
「もう干渉しているか」
「これから仕掛けてくるか」
「……どちらにしても、何かしらのアクションはあるだろうね」
思考を巡らせる。
下手を打てば――
ルナス自身が消えかねない規模の事態。
生まれたての龍。
それは、扱いを誤れば世界を壊して回る“劇物”だ。
だからこそ、多くの存在に狙われる。
「……やれやれ」
軽く、しかし重く。
「今回は、観てるだけじゃ済まなさそうだ」
黒い翼が、わずかに震えた。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




