3.龍は驚き愉快になる
夜遅くですが続きです
あれから数億――いや、数十億年もの時が過ぎていた。
「………………うぇ」
ルナスが重いまぶたを開け、のそりと頭を持ち上げる。
「……どんくらい寝てた?」
応じたのは、そばに浮かぶ一台のスマホだった。
かつてはただのスマホだったそれは、改造を施され、もはや“スマホ”と呼んでいいのかすら怪しい存在になっている。
(計測完了。約五十九億六千万年の経過を確認しました)
「そこそこだな。まあ、いくつかの星じゃ文明くらいできてる頃か」
本来なら生命誕生すら遠い時代。
だが、撒き散らされた魔力は世界に溶け込み、生命の進化を急速に進めていた。
その結果、すでにいくつかの星では都市が築かれ、人類に似た存在が空を飛び、海を渡り、現代水準に匹敵する文明を築いていた。
「……へー。魔力ぶち込むと成長速度おかしくなるな」
気の抜けた声を漏らしながら、ぼんやりと空を見上げる。
「おっ、この星、前世と似てんじゃん。日本っぽい島国もあるし……世界が魔力に宿る記憶から参考にしたのかな」
興味を引かれたように、視線をその星へと向ける。
「……で、この星はどんななんだ?」
(計測中……完了。この星には複数の種族と、それらが築いた国々が存在しています。また、魔力を用いた技術――いわゆる魔法が発展している模様。文明レベルも、そこそこに高い水準です)
「ふむふむ……現代ファンタジーって感じだな。暇つぶしには丁度いいか」
(補足です。星がマスターの魔力を定期的に回収または散布する為の機関――いわゆるダンジョンが存在するようです)
「なにそれ、ダンジョンってそんな機械的なん? 夢がないな。けどまあ、星が進化剤でもある魔力を循環させる為の機構か、理にかなってはいるのかな」
「この星ってダンジョンだけ? 他に何かないかな?」
(他に目ぼしいものとしては……“魔法少女”なる存在がいる模様です)
「え、魔法少女? ダンジョンがある現代ファンタジーじゃないの?」
(魔法少女はダンジョン外に出現する魔物の駆除にあたっているようです。それに加えてこの星の生命体はダンジョンに気づいておらず、有効活用はできていません)
「なにそれ、馬鹿じゃん。魔法を使えるのにダンジョンを感知してないとか。てか魔法少女って何よ、そいつらだけが魔法使えるわけじゃないんだろ? 魔法が普及してるなら」
(お答えします。どうやら魔法少女以外の生命体は生活に便利な魔法くらいしか使えない模様です。それと星が循環している魔力に当てられた生物を“魔物”と定義しているようです。魔法少女に関しましてはどうやら別の世界からの干渉により生まれたようです)
「は? 他の世界?」
ルナスの目が細くなる。
(是。どうやらマスターの魔力を目当てとした別世界の勢力が干渉しています。ですが悪用目的ではなく――“救済”の一環としてです)
「救済ねぇ……」
(その世界の住民は、この星では“妖精”として認知されています。妖精は魔力感受性の高い少女と契約を結び、“魔法少女”という存在を生み出しているのです)
「なるほどね。魔法使える一般人と比べて、契約者は戦闘に特化した“異常値”ってことか」
(補足します。妖精界――仮にそう呼びますが――は完全な別世界ではなく、この星の二面性の片方に位置している模様です。いわば表と裏、影と実体のような関係性です)
ルナスは小さく息を吐き、天を仰ぐ。
「……おーいおい。魔力ばらまいただけなんだけど? ダンジョンは勝手にできるわ妖精界なんて裏面はできるわ……もう世界そのものが勝手に物語書き始めてんじゃん」
その口調は呆れ混じりだったが、どこか愉快そうでもあった。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




