28.愉悦の神
短めです
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ルナスの拠点にて
「ふふ」
ルナスは、セリスたちの会議の様子を見て微笑んでいた。
「マスター、最近は楽しそうですね」
傍らの声に、ルナスは軽く頷く。
「そうだね。自分の子供が成長するのを楽しみにする親の気持ちが分かったよ」
だが、その表情に一瞬の影が差す。
「でも……」
ルナスの周囲の空気がひんやりと変わった。
「覗き見はダメだよね」
その言葉に、ルナスの瞳は鋭く光る。
遥か彼方からこちらを見つめる視線に気づいたのだ。
「どこの世界の神か龍かは知らないし、知るつもりもない」
口元に冷たい笑みを浮かべ、ルナスは続ける。
「だけど、人様の領域に土足で入るつもりなら、覚悟をしてね」
「……あの老害(龍神)のせいで、この世界が注目されるのは知ってたけど、これは不愉快だね」
ルナスの声には、ただならぬ苛立ちと鋭い警告が混ざっていた。
その時――
―へぇ、すごいね、この世界―
愉快そうな声が虚空から響く。
「……警告したばかりだけど?君は誰だい?」
ルナスの周囲の空間がゆらりと歪む。
―ハハハ、ごめんねー。でも楽しそうなことをしてる君が悪いよ―
―ぼくは、愉悦の神。楽しいことが大大大好きな神様だよ―
神は、まるで子供が遊びを告げるかのように宣言した。
「……愉悦の神。なんでこの世界に来たのかな」
ルナスは警戒を解かず、視線だけを鋭く細める。
―ハハ、ぼくは愉悦の神だよ?楽しそうなところならどこにでも行くよ―
―でも、見てるのが専門だからさ。安心していいよ?何なら契約でもしようか?―
その言葉に、ルナスの眉がわずかに動いた。
神や龍の契約は“全てを縛る”――破ればその存在は完全に消滅する、絶対のルール。
「……契約、ね」
ルナスはわずかに笑う。
「面白い提案だ。でも、君がどれほど“愉悦”を名乗ろうと、この世界に足を踏み入れる以上は、遊び半分で済むとは思わないことだ」
―うんうん、それがいい。それが楽しいんだよね―
愉悦の神は楽しげに笑いながら、さらに気配を濃くしていく。
空気がわずかに軋み、拠点全体が息を潜めたように静まった。
ルナスの指先から、光とも影ともつかない魔力がにじみ出る――。
「なら、試してみる?」
ルナスの声は穏やかだが、その奥に底冷えするような殺気が宿っていた。
―やめとくよ、君と戦ったらぼくも無事じゃないだろうし―
―でも、暫くはこの世界を見とくからね―
そう残し、愉悦の神の気配はふっと消えた。
「……はー」
ルナスは長く息を吐き、肩の力を抜く。
「マスター……」
声を上げたのはルネだった。愉悦の神とルナスの気配に気圧されたものの、二人の存在をこの星の住民に悟られないよう結界を張っていた。
「ん……ルネ、大丈夫?」
ルナスが優しく問いかける。
「はい……所々、破損しましたが」
ルネの声は少し震えていたが、目はしっかりと周囲を確認していた。
ルナスは結界の端を指先で撫で、修復が必要な箇所を確かめる。
「よくやった、ルネ。あの神の存在をここに留めずに済んだのは、君のおかげだ」
「……ありがとうございます、マスター」
ルネは小さく頭を下げ、結界の強度を徐々に回復させていく。
廊下には再び静けさが戻り、ルナスの視線は遠く、愉悦の神の消えた方向を見据えていた。
「……さて、次はどう動こうか」
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです
愉悦の神は今後、登場するかは未定です




