表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍は世界を渡る  作者: 人外主人公大好き
1章 魔法少女の世界
25/37

25.エルフ

続きです

皇立魔法学園


「いやー……でかいねー」


セリスは堂々とした校門の前に立ち、そびえ立つ校舎を見上げていた。

白亜の塔がいくつも空へ突き出し、魔力を帯びた結界がきらめく。門をくぐらずとも、この学園が背負う格と歴史の重みは伝わってくる。


「ここで僕が“先生”するのか……なんか場違いな気しかしないんだけど」


苦笑しながら髪をかき上げるセリス。

通りがかった生徒たちは、怪訝そうに、あるいは興味深そうに彼を眺めて通り過ぎた。


「……おい、何故ここにいる」


背後から低い声。振り返ると、学園の制服をきっちりと着こなしたイリスが立っていた。


「へー、似合うじゃん」

セリスは感心したように笑みを浮かべる。

「でも……やっぱり違和感があるね」


「そんなことはどうでもいい」

イリスは眉をひそめ、腕を組む。

「何故、生徒用の校門で突っ立っているのだ」


「え、ここから入るんじゃないの?」

セリスは首を傾げる。


「……教師なら教職員用の入口を使え」

冷ややかな口調に、セリスは「あ、そうなんだ」と目を瞬かせた。


「なるほど、そういうのあるんだ。知らなかったよー」

頭をかきながら子供のように笑う。


「じゃあ、案内してよ。こんなに広いと迷子になるからさ」


「はー……仕方ない」

イリスはため息をつき、視線を逸らす。

「サイカから貴様のサポートをするよう言われているからな」


「おお、頼もしいねぇ。イリスがガイド役なんて贅沢だ」

セリスはにやにやとついていく。


「勘違いするな。任務の一環だ」

イリスはぴしゃりと切り捨て、足早に校舎の方へ歩き出した。


広い校庭を横切る二人。朝の登校風景の中で、注がれる視線は少なくない。

見知らぬ人物と国内で有名なイリス――その組み合わせは、やけに目立っていた。



「ここが学園長室だ」

イリスが扉を示して立ち止まる。


「おー、ここか。うん、覚えた」

セリスは軽く頷き、部屋の気配を探るように目を細める。


「なら挨拶してこい。私からはすでに連絡してある」


「手際いいねー。じゃあ、失礼して」

セリスは扉を押し開けた。


中にいたのは――机に腰かけた小柄な人物。

一目見れば、どうしても「子供」にしか見えない。


「子供?」


「誰が子供だ」

低い声と同時に、何かが飛んできた。


セリスは反射的に手を伸ばし、それを受け止める。

細身の万年筆だった。


「……あぶないなー」

眉を上げ、セリスは笑う。

「万年筆は投げるものじゃないよ」


改めて相手を見据える。背丈は自分の半分ほど。顔には幼さが残り、短く整えられた緑の髪。そして――尖った長い耳。


「へー……初めて見たよ、エルフは」


「だろうな」

学園長は肘をつき、苛立ちを隠さず返す。

「初めてでなければ、エルフに向かって子供などと口にするものか」


「ごめんね」

セリスは両手をひらひらさせて苦笑する。

「僕、素直だからさ。思ったことはつい口に出ちゃうんだ」


鋭い目が細められる。

「……口の利き方を覚えろ、人間」


「で、君が学園長さんでいいのかな?」

にこりと笑い、気にする様子もなく問いかける。


小柄な人物はしばし沈黙ののち、胸を張り名乗った。


「――我が名はルフェイン・エル=カーナ」

小さな体に似合わぬ、深く硬質な響き。

「皇立魔法学園の学園長にして、エルフ王家の血を引く者だ」


「へえ……すごいね。見た目とのギャップにびっくりした」

セリスは口笛を鳴らし、感心したように言う。


「……貴様」

ルフェインの眉がぴくりと動く。だがすぐに冷静さを取り戻し、鼻を鳴らした。

「まあよい。口の軽さも、しばしは見逃してやろう。サイカ殿の依頼ゆえな」


「ふーん。てかエルフに王家とかあったんだね」

セリスは首を傾げ、気楽に言葉を続ける。

「数が少ないと言っても、元々は同じ人間でしょ?」


ルフェインの瞳が細くなった。

「……なるほど。やはり貴様は“外”の者だな。無知ゆえか、あえて挑発しているのか」


「挑発? そんなつもりないよ。ただ思ったことを言っただけ」

肩を竦め、にやりと笑うセリス。


「エルフは人と同じ根を持つ。だが、決して同じではない。我らは長命であり、魔の理に近い存在……」

ルフェインは机を指で叩き、淡々と続けた。

「そして、その長い歴史を束ねるために“王家”がある。少数だからこそ、秩序が必要なのだ」


「へえー、なるほどね」

セリスは素直に頷く。

「でもさ、長生きだからって必ずしも偉いわけじゃないでしょ? 僕なんて生まれてまだ数年だけど、君より色々やってるかもよ」


ルフェインの眉がぴくりと動いた。

「……礼節を欠くな。ここは学園だ。貴様が今後、誰を相手にするのかを忘れるなよ」

いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。

見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ