24.決別
今回は短めです
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二日後、セリスに支給された施設にて。
「明日から僕が先生かー、実感ないよね」
「……うん、誰もいないよー」
セリスは広々とした空間の真ん中に立ち、空に向けて独り言を漏らしていた。
ここは彼女に支給された“実験用施設”――防音も結界も完璧で、外部に気配が漏れることはない。
「うん、魔法少女たちから僕だけの施設もらったんだー。ここなら喋れるし、何なら本体も来てもいいよー」
その瞬間、空間がぴしりと音を立て、裂けた。
亀裂から淡い光が漏れ、次の瞬間、その中から人影がぬるりと現れる。
「よっ」
現れたのは、ルナスだった。
その姿は影のようでありながら、どこか月光を思わせる柔らかな輪郭を持っている。
「久しぶり、本体」
「いや、カイゼルの方では何回か会ってるね」
ルナスも微笑みを返す、その瞳は全てを見通すように透明だった。
「そうだね。こうして“ちゃんとした形”で会うのは初めてかな」
ルナスはゆっくりと施設の中を見回す。
「ここ……思ってたより快適そうだ。結界も厚いし、監視の目もない。さすが“先生”の支給品って感じ」
「まあね」
セリスは肩を竦め、軽く笑う。
「本体と話すには、こういう場所がちょうどいいと思ってたんだ」
ルナスは意味深に笑った。
「で、明日から“先生”やるんでしょ? 君が子供たちに何を教えるのか、ちょっと楽しみだな」
セリスは手をひらひらと振りながら息をつく。
「僕自身もね。どうなるかは……やってみないとわからない」
空気の中に、わずかな緊張感と、二人だけが知る秘密めいた親密さが漂っていた。
「で? 本体……呼びにくいね。ルナスって呼ぶよ。ルナスは今後どうするの?」
セリスが肩の力を抜いて尋ねる。
「今後ねー、こっちとしては、セリス、君がどう動くかで決めるつもりだよ」
ルナスは淡い微笑を浮かべる。
「君が魔法少女たちを裏切るのか、それとも最後まで共にいるのか――それ次第ってことさ」
セリスは静かに息を吐き、瞳を強く光らせた。
「……僕はこの星で生まれた。例え、ルナス……君の分身として作られたとしても、僕はこの星で生まれたものとして、この星を守るよ」
その言葉に、ルナスは微かに肩を揺らすように笑った。
「……ふふ、もはや分身とは呼べないね。いいよ、セリス、君を個人として認めよう」
「だから、これからは接触や連絡は無しだ」
その空気が一変する。ルナスの雰囲気が鋭く変わった。
「これからは、妾とお主たちとの戦いだ。ルナスではなく、カイゼルとして相手しようぞ」
「……はは。ルナスはキャラの切り替えがすごいね」
セリスは冷や汗を滲ませる。例え演技だとしても、怖いものはやはり怖い。
「そうさな。一度やり始めたのなら、最後までやり抜くことが妾の信条だからの」
カイゼルの口調には揺るぎない覚悟が宿っていた。
「では、またな、セリスよ。次は戦場で会おうぞ」
カイゼルの声が響き渡ったかと思うと、空間を裂くように姿を消していった。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




