2.龍は寝る
続きです
「よし、まだまだ出来立ての世界だね。これなら、魔力が馴染むのも早いでしょ」
ルナスがやりたかったこと――それは、魔力のない世界に魔力を流し込んだらどうなるのか、という実験だった。
そもそも魔力とは、龍のみが持つ特別な力。本来名もなきその力に、ルナスが呼びやすいよう勝手に付けた呼び名に過ぎない。
「さて、魔力を与えるといってもどうするか……………出来立ての世界だから、多少乱暴にやっても大丈夫だろ。とりあえず、一回降りてみるか」
ルナスが降り立ったその場所は、生まれたばかりの真っさらな世界。生物もなく、法則もなく、ただの白紙のキャンバスのようだった。
「……何にもないな。宇宙すらないのは面倒だな。待ってても億年単位だし……さっさと作るか」
次の瞬間、ルナスは膨大な魔力を解き放ち、擬似的な「ビッグバン」を起こした。
「よし、これなら最初から魔力が混ざった宇宙になる。星や生命が生まれても、自然に魔力を取り込んでいくだろ」
科学も理屈もなく、ただ「前世の記憶」を手掛かりに、龍の力で強引に再現された宇宙創造。
「でも、星ができるまでは暇なんだよな……何億年も待つとか退屈すぎ」
独りごとをしたそのとき、不意に空間が揺らぎ、世界に異物の気配が滑り込んだ。
「げ、龍神サマじゃん」
―其方、また世界を壊すつもりではあるまいな?―
「壊してないって。ちゃんと作ってんだよ、新しい宇宙を」
―……正気か。世界の理に我らの力を混ぜるなど、愚行以外の何物でもない―
「愚行かどうかは、出来上がってからのお楽しみだろ?暇つぶしにはちょうどいいし」
龍神はしばし黙し、やがて低く告げた。
―……いずれ後悔するぞ。其方も、この世界もな―
その言葉を最後に、気配は掻き消える。
「何しに来たんだよ、あの老害……」
ぼやきながらもルナスは気づいていた。龍神の存在そのものが世界に干渉し、世界は自らルナスの魔力を受け入れて順応した。結果、魔力と世界は密接に結びつき、簡単には壊れない安定したものへと変貌していたのだ。
「……はは。ありがとよ、龍神。おかげで次の作業の手間が省けた」
そう呟くと、ルナスは何もない虚空にごろりと寝転がり、大きく欠伸をした。
「さて……数億年後にまた会おうか。よし、おやすみ!」
――こうして、この宇宙で最初の眠りが、静かに始まった。
いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。
見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです




