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龍は世界を渡る  作者: 人外主人公大好き
1章 魔法少女の世界
18/29

18.出現

続きです

―――――――

魔法少女訓練施設


イリスの冷たい声が、広い訓練場に響いた。

「……ここで貴様の戦闘力を見る」


対するセリスは、肩をすくめて気の抜けた笑みを浮かべる。

「なんで? さっき戦ったでしょ。あれで十分じゃない?」


イリスの目が鋭く光る。

「……あれはただの遭遇戦だ。お前がどこまで“制御して”戦えるのかを確認していない」


横でルミナがひらひらと手を振り、にやりと笑った。

「まあまあー。要するに正式な“テスト”ってことだよ、セリス。それに君だって、私たちの正確な力を知りたいでしょ?」


カリナは腕を組み、無言でセリスを睨む。あの竜族との戦闘で見せた底知れぬ力への警戒が拭えない。


セリスは一瞬だけ目を細め、ふっと息を吐いた。

「……なるほどね。監視付きで、力を測りたいわけだ」


「そうだ」イリスは短く答える。「拒否権はない」


セリスは小さく笑みをこぼした。

「怖いなぁ。僕が暴れたらどうするのさ」


「その時は――ここにいる全員でお前を止める」


一瞬の沈黙の後、セリスは堪えきれないように吹き出す。

「ふふっ、いいね、それ。……わかった。お望み通り“テスト”に付き合ってあげる」


彼女の掌に小さな光が生まれ、次第に形を変え、銃の輪郭を成していく。

訓練場の空気は一気に緊張に包まれた。


――セリスの戦闘力を測る試験が、今始まった。


「それと、僕はどこまで武器を出したらいい?」


イリスがほんの一拍考え、低く告げる。

「……近接武器のみだ」


「なるほどね。銃はなしってわけか」

セリスは小さく笑い、掌に光を集めた。

その光は、短剣とも片刃の直剣ともつかぬ、不思議な武器の形を成す。


「これならいいでしょ?」

軽く振るい、光の粒を散らす。


イリスは一瞥だけくれて頷く。

「……いいだろう。それで、誰から――」


「俺がやるぜ!」


その言葉を遮ったのはカリナだった。

肩に大剣を担ぎ、吐息と共に炎を吹き上げながら前に進み出る。

彼女の瞳は真っ直ぐセリスを射抜いている。


セリスは小さく目を細め、口元に楽しげな笑みを浮かべた。

「へぇ……やる気満々じゃないか」


――訓練場に、熱と殺気が満ち始める。


「いくぜ!」


カリナの叫びと同時に、床が爆ぜるように焦げ付き、彼女は一瞬でセリスへ肉薄した。


「……っ!」

反応が遅れたセリスは紙一重で身を捻り、炎を纏った大剣の斬撃を回避する。

刃が床を抉り、焦げた破片が弾け飛んだ。


「あっぶな……」

息を吐きながら間合いを取るセリス。


だが――


「そんなもんか!!」

カリナは勢いを殺さず、そのまま回転しながら横薙ぎの斬撃を畳みかける。

火焔が弧を描き、訓練場全体を照らした。


「はっ……しつこいね!」

セリスは光の刃を逆手に持ち替え、ギリギリで大剣を受け止める。

しかし重量差は歴然――押し負け、膝をつきかける。


「まだまだだ!」

カリナの蹴りが飛ぶ。


「っ……!」

咄嗟に床へ転がり込み、蹴撃を避けるセリス。火花が舞い、髪の先が焦げた。


「……いいねぇ」

転がりざまに立ち上がったセリスの瞳が、獲物を見つけた獣のように光り始める。

光の刃が鋭く脈動する。


「まだまだだ!」

炎を纏った大剣が再び振り抜かれ、軌跡が訓練場の空気を揺らす。


「……っ!」

セリスは咄嗟に体を捻り、刃の下をくぐる。火花が足元を照らし、焦げた匂いが鼻をつく。


「速っ……」

カリナの視線が揺れた瞬間、セリスは柱に軽く跳ね返るようにして距離を取る。


「ふふ、まだ始まったばかりだよ」

掌に小さな光を宿し、目はカリナの動きを一瞬も見逃さない。


大剣を振り下ろすカリナに対し、セリスは足元の瓦礫を蹴って弾みをつけ、斜めに滑るように回避する。

炎の刃が床を削り、煙が立ち込める。


「おっと、そこは読めたかな」

冷静に間合いを計り、次の攻撃に備えるセリス。


カリナは勢いを緩めず、連続で横薙ぎ・縦斬り・突きを繰り出す。

しかしセリスはそのすべてを寸前でかわし、壁や柱を利用して距離を稼ぐ。


「……じわじわとね」

息を整え、セリスは心の中で分析する。

「この子、力はあるけど、連携や読み合いにまだ隙がある……焦って手を大きく動かす癖もある」


その隙を見逃さず、セリスはタイミングをずらし攻撃を返す。

小さな光の刃が飛び、カリナの剣の軌道を微かに逸らす。


「っ!?」

予想外の軽い押し返しに、カリナは眉をひそめる。

「……なんだ、今の……!」


セリスは微笑み、距離を取る。

「焦るなよ、カリナ。じわじわ行くから、力の出しどころが見えてくるさ」


――訓練場の床に小さな焦げ跡と弾ける火花が散る中、二人の攻防は静かに、しかし確実に形勢を読み合う戦いへと変わっていった。


その時――


「「!?」」


轟音と共に天井が破壊され、粉塵と破片が降り注ぐ。

二人の前に、圧倒的な存在感を放つ人影が姿を現した。

いかがでしたか?楽しんでもらえたのなら幸いです。

見にくい、ここの文章がおかしい、面白くない、などありましたら教えて頂きたいです

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