第8話 「秘密結社パラボラン!!!」
車や工事音、人々の声で埋め尽くされているスクランブル交差点。
仕事なのだろうか、遊びに行く予定でもあるのか曜日など関係なく街は喧騒に包まれている。
しかしそれは地上の話であり、ビルの屋上にはヒュウと風が空を切る静かな音だけがよぎる。
ビルの屋上。ここに丸メガネをかけ、グレーのスーツを着こなすレプティリアンが街中という外界を見おろしていた。
「あいもかわらず五月蝿いな。耳につんざく、目に障る。」
冷たい表情の彼はここで何をしているのか、何を目的としているのか。
懐から出したものを細くした目で見つめる。
写真であった。そこに映るのは銀之助・パルム・サーシャ。
とくに何か思うように見ているのがパルムであった。
「記憶を無くしているのか…。まぁその方が好都合か。あの件も知らないんだろうし。」
クヒヒッと笑い写真を懐に戻す。
すると後ろから警備員が扉を開け大声で彼に注意を促す。ここは関係者意外立ち入り禁止であると。
まるで人の心を持たないような面持ちで彼は颯爽とビルから飛び去った。
とある5畳程度の部屋。汚いアパートの一室。
カーテンを閉め切り怪しい影3人が点在。
「フフフ…遂にこの時が来たわね。」
「長かった…長かったゲロ…。」
「しかし、運気は我々にある。」
バッッッと腕を天に突き刺し高らかに覚悟を決めたセリフを吐き出す。
「「「今こそ地球征服の時ッッッッッ!!!」」」
高笑いがこだまする。
やっと自分たちの時代が来た。
地球を征服し、我らのものとする時が。
部屋には何やら怪しい機械がピコピコと鳴っている。
これからやる事は革命的であり革新的。
社会の教科書にも載るような偉業。
それを考えると笑いが止まらない。
「「「我ら秘密結社パラボランッッッッッ!!!」」」
[やかましいんじゃアホンダラァァァッッッッッ!!!!]
ドンッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
お隣さんに壁ドンされてしまった。
壁薄いんやから大声出すなよ。
「ごめんなさい…。」
少し沈んだ顔で申し訳なさそうに3人は小声で計画を話し合った。
「そういや今月神社さん行ってへんな。」
洗ったマグカップを布巾で拭きながら銀之助が呟いた。
地球に戻って以来、近所の神社に毎月お参りしているのだ。どうやらパルムも気に入ったらしく、かなり落ち着くので心を休めたい時は境内のベンチで昼寝をしている。邪魔である。
そういえばパルムは最近やっとのこさ自分の出自を調べるようになった。
最初に銀之助と出会ったあの辺境惑星。そこにいたワーウルフのレットはプレアデス星人かもしれないと言っていた。しかし違ったのだ。
この前カフェに来てくれた客にプレアデス星人がおり、その際にパルムが訪ねた。
プレアデス星人は相手の目を見るだけで相手がどこの異星人か分かる。
金色の綺麗な髪の毛にエメラルドグリーンの瞳。しかしプレアデス星人の瞳はスカイブルーである。残念な事にパルムは違った。
現在地球には異星人が約1万種類棲んでいる。役所も訪ね、DNA検査もしたのだがどの異星人とも一致しない。
迷宮入りである。
しかしすぐに知りたいという訳でもないのでパルムはその内わかるだろうとノホホンとしている。
宇宙は広い。広すぎるのだ。
きっといつかわかるだろうと。知らんけど。
「今日は依頼も入ってないし、サっちゃんと3人で遊びに行こか。」
「せやなぁ。また昼寝できらぁ。」
可愛い笑みを浮かべ銀之助と笑い合う。
ちなみにサーシャは今パソコンで発注作業をしているのであった。
カフェから歩く事30分。
そこにさっき話していた神社がある。
昔からある神社で創建はなんと紀元前90。
歴史ある素晴らしい場所だ。
神社自体は中々大きく立派なものであるが、ここまで来るまでの道がかなり田舎道であるためか地元の人以外はあまり立ち寄らない。車1台通れる幅にも関わらず両側通行といった田舎でよくある道である。無論、祭りのときは例外で人は集まる。
最初の大きな鳥居で一礼。
手水舎で手と口を清め本堂に向かう。
不思議なもので境内に入ると周りの木々のおかげか人や車の音がまるで聞こえない。
そこだけ空間や次元が変わったかのような気分になれる。
賽銭を入れ鈴を鳴らす。
2礼2手1礼。作法の基本だ。
毎月の挨拶を終え、ベンチに3人が腰掛けようとすると何やら大きな機械をいじっている3人組が向こうに居る。
「お祭りかな?」
「いやぁ…今月はとくにこれと言ってなんもあらへんはずやでサっちゃん。」
「聞いてみよや。」
ゆっくりと近づきビックリさせないように自然体で挨拶をする。
しかし[こんにちは]と聞いた瞬間飛び跳ねる3人組。めちゃくちゃ集中していたのかかなりビビったようだ。
「あの〜、何してはるんですか?おまつ…」
「な!!!なんで俺達が地球征服を企んでいるとわかったゲロ!??!!」
かなり慌てふためいている。
誰もそんな事一言も言っていないのに。
お祭りかなと思って声をかけただけですよと聞いた3人組はお互いに顔を見合わせること2秒程。
「はい、お祭りに使う機械をいじってるんです。」
「いやもう無理やろ。さっき思いっきり地球征服言うてたやん。」
「クソッ!!!はめられたか!!!」
「いや自分で墓穴掘っただけやん。」
3人組はシュタッ!!!と素早く立ち上がる。
見た目がカエルそのもの、サイそのもの、髪の毛はライトグリーンで皮膚が薄い青色のスタイル抜群姉ちゃん。中々のデコボコチームである。
「参謀かつ研究者のケロンバ!!!」
「圧倒的なパワーで何もかも粉砕するサイ・ゴードン!!!」
「群を抜いたカリスマ性で全てを魅惑するファニィ!!!」
「「「我ら秘密結社パラボラン!!!」」」
ドオオオオォォォォォンンンンン!!!!!
「………ほぉ………。」
軽蔑でもなく、興味なさそうな目でもない。
不思議なものを見るかのようなサーシャ。
宇宙貿易が始まって色々な異星人が地球に来ている。中にはこんな奴らもいるだろう。
「秘密結社て…なんやいかにも漫画みたい…て、ちょどうしたんよ。」
銀之助とパルムがゆっくりとパラボランに向かって歩く。
この物語の主人公らしく、熱い心で敵を倒そうとする正義心が働いているのかと2人を見ていたサーシャだった。が。
パシッッッ!!!
パルムがファニィの右手、銀之助が左手をそれぞれ両手で包み熱い眼差しを送る。
「「お嬢さん、もし良かったら今度ミルクホールにでも行きやせんか?」」
ズコッー!!!!!
全然違った。
ただのナンパである。
さっきから銀之助とパルムは目を見開きファニィの全体を舐め回すかのように見ていた。
サーシャよりも豊満なおっぱい。くびれた腰に安産型のお尻。何故こうも異星人はスタイルが良いのか。
ケロンバとゴードンはシンプルなナンパに動揺しつつも感心。男はこうでなければ。
ファニィは顔を少し赤らめ2人から手を振り払い顔にあてる。
「こ、困る…。そういうの…。」
しかし満更でもなさそうな表情を浮かべる。
「何しとんねんッッッッッ!!!」
後ろから両腕で銀之助とパルムの首狙いラリアットをかますサーシャ。
2人は大回転しながら地に沈む。
「何すんねんサっちゃん!!!」
「ええやんけあんな可愛い女の子おったら声かけるやろがい!!!」
目に涙を浮かべ首を抑える2人。
ナンパは紳士の嗜みでもあるのだ。
「目の前にこんな可愛いボンキュッボンのヒロインがおんのにそれを差し置いて何ナンパしとんじゃ!!!」
そう叫ぶも2人は手横にを眉の上にかざしどこにそんな子が居るんだと周りを見渡す。
地団駄を踏むサーシャ。
やはりデコボコ3人組は仲が良い。
というかミルクホール行かねぇかってなんだよ。大正時代のナンパか。
完全に蚊帳の外の相手3人組。
今のうちに頬を染めているファニィを引き連れそそくさと機械を弄り始める。
しかしサーシャに何しとんねん!と引き止められまたもや先ほどのように構えを取る。
境内で何やってんだコイツラ。
「アンタらさっき秘密結社チンポコポンとか言うてたな。何やその組織。そんでなんやその機械。」
「秘密結社パラボランだ!!!それによ〜く聞いてくれたぜ!!!」
大声を張り上げるサイ星人にゲロゲロ!!!と高笑いをするカエル星人。
どうやら見た目といい話し方といい、自信満々の科学者らしい。この機械を作ったのも自分だと豪語。
ファニィが顔を横にブンブンと振り正気に戻りお前ら言ってやっておしまい!!!と叫んだ。
「これは俺たちの努力と友情と涙が集まってできた奇跡の結晶!!!名付けてポジショニングマシーンゲロ!!!」
「ポジショニングマシーン??!???!」
いつの間にかパルムと銀之助もサーシャと肩を並び構えを取っている。
「その通り!!!我らの目的は地球征服!!!これはほんの少しの始まりゲロ!!!これをこの街中に怪電波を放つゲロ!!!これを浴びた人間はなんと…!!!」
「ずっとパイポジとチンポジが気になってしょうがなくなるマシーンなのだ!!!」
「「「な!!!なんやてぇぇぇーーーー!!!」」」
とてつもないほどしょうもなく、露骨にじみた嫌がらせ。ぱっと聞いただけではなんともまぁギャグにも聞こえる。しかしこんなものを放たれてはとんでもないことになる。
例えば運転している人がこれを浴びたとしたらどうなるだろうか。結末は想像に難くない。
ふざけたマシーンではあるものの、やはり恐ろしい。これはパラボランにとってはほんの始まりに過ぎないらしい。
てか堂々と言ってるコイツラは恥ずかしくないのか。恥をしれ恥を。
高笑いする3人組にサーシャがゆっくりと近づく。
「かっこいいやんか…。ちょっち近くで見せてや。」
「ゲロ!!!この機械のカッコよさがわかるゲロか?!センス良いゲロ!!!ささ!見てみて!!!」
機械を触りまじまじと眺める。
なんかパット見テトラポットみたいなやつ。
テトラポットてなんかエロい形してるもんね。
そしてサーシャは足を上げた。
すげぇ!!!I字バランス!!!サーシャは体が柔らかいのだ。
そして踵落としを食らわし機械をぶっ壊した。
ドコオオォォォッッッッッ!!!!!!!
「「「何してんだぁぁぁぁぁッッッッッ!!!」」」
いや当たり前だろう。バカなんじゃねぇかこの3人組。銀之助たちとはまた違うバカさ…いやほとんど一緒か…。なんでわざわざ敵に機械を近づけさせたのか。
「アホちゃうかお前ら。わざわざウチを近づけさせて。壊すに決まっとるやろ。」
ほら見てみや。サーシャにですらアホと言われている。
「ウチにすらってなんやコラ、ナレーション。しばくぞ。」
ごめんなさいでした。
気を取り直して…。
目の前で壊されたショックで頭を抱えたカエルであったが、急に笑い始めた。お前も壊れたのか。
「…ゲロゲロゲロ…。ま〜んまと引っかかったゲロねぇ…。」
「なんやと!!!」
「その装置はねぇ…壊すことによって【起動】する仕組みなんだよ!!!アンタ喧嘩っぱやそうな雰囲気だったから嵌めてやったんだよ。」
口に手の甲を当て笑うファニィ。
サーシャはやってしまったと冷や汗が流れる。
「せやから辞めとけ言うたんやサっちゃん!!!」
そんな事言ってなかった気がする。
「この街に怪電波を放つ装置は3つあるゲロ!1つは極楽湯の男湯!1つは大泉緑地の公園!1つは難波の10円パンの店の近くゲロ!!!」
お約束の高笑い。
腹を抱えて笑う姿をサーシャは真剣に見つめつつ口を開く。
「………なんで場所言うたん?」
「あっ………。」
…………………………………。
少し静寂が流れた。
今サーシャがパイポジが気にならないのはまだ怪電波が流れていない証拠。
どうやら起動にはラグが生じるようだ。
「俺は科学者のケロンバゲロ!!!」
「俺は怪力のサイ・ゴードン!!!」
「私は魅惑のファニィ!!!」
2回目の自己紹介、ありがとう。
大事なことは何度でも言うべきである。
機械を壊されないように今からダッシュで向かい死守しなければならない。
睨み合う6人。
「よし…お互い3人やから相手は決まっとるな…。俺はあのボインちゃんの相手する。パルム、お前はあのカエルを頼む。サっちゃんはサイを頼むわ。」
「よっしゃ!」
「いいや、銀ちゃんこそカエルを頼むぜ。俺があのカワイコちゃんの相手する。サっちゃんはあのゴツいサイを頼むわ。」
「よっしゃ!任せ……………って、なんでじゃボケェェェッッッ!!!!!」
銀之助とパルムの顔面をそれぞれの手で鷲掴みにし持ち上げるサーシャ。先ほどからご立腹である。
「アホなんかお前ラァッッッ!!!相手3人こっちも3人!しかも男2人に女1人やったらそれぞれの性別が担当するのが普通やろがい!!!」
すみませんでした…と声にならない声で顔面を覆う手の主に謝罪する2人。
なんとか降ろしてもらえたが顔面がへこんでいる。
心もへこんでいる。
そんなスケベ男たちを一瞥し鼻をフンッと鳴らし相手3人に向きなおす。
相手もただでは逃がしてくれないと理解したのかそれぞれの対戦相手と対峙しはじめる。
サーシャは当然ながらファニィと睨み合う。
「お前の相手は俺ゲロ!!!」
「カエルちゃんかい…!!!ええやないか!!!」
「ウーーーッッッス!!!俺の相手はお前かぁ!!!地球人!!!」
「俺がこのゴッツイやつ相手すんのかよおおおぉぉぉぉッッッッッッッッッッ!!!!!!」
今!!!世界一…いや宇宙一くだらないパイポジとチンポジを賭けた戦いが始まる!!!




