第55話 祝勝会
ガヤガヤ…
ワイワイ…
オケツオケツ…
大勢の人で賑わう大阪城ホール。
そこの一角。
料理人たちが忙しなく食材を調理し、ホールスタッフが料理を零さないように早歩きで注文を運ぶ。
そう。
すべて終わったのだ。
女子の部、男子の部、どちらも優勝者が決まった。
それも同じカフェで働く人間。
しかも地球人などと抜かすのだ。
ブーイングでヤジを飛ばす観客も居たが、大半が2人の優勝者を心から讃えた。
そして今からみんなとご飯である。
決勝トーナメントに行けなかった予選敗退の選手たちも大勢いるので店の中はギュウギュウ詰め。
一人の少女が大きく手を合わせた。
サーシャである。
「ほな!!!手を合わせて!!!」
パチンッッッ!!!
やっている事はまるで小学生。
しかし、大の大人こそがしなければならない。
それを見て子どもたちは大人の後ろを追いかけるのだから。
「いっただきま〜〜〜すッッッッッッッッッ!!!」
「「「いただきますッッッ!!!」」」
サーシャの掛け声で手を合わせたのは、ほとんど決勝トーナメントに勝ちのぼった面々たち。
中には、【いただきます】のこの合掌が母性には無いものもおり不思議そうな顔をしながらサーシャに続いていた。
しかし不思議なだけで、嫌そうには見えない。
寧ろ深く感謝を感じるのだろう。
命をいただくとは、そういう事である。
「ッッッぷはぁぁ〜ッッッ!!!美味いわぁ〜これ!!!」
「サーシャそれお茶だろ。ビール飲んでるおっさんかよ。」
「ガッハッハッ!!!女も年食うたらおっさんみたいになるんやて!!!ベラニーちゃんもどんどん食べようや!!!ほら!飲んで飲んで!!!」
ベラニーやマクロビたちに飲み物を注いだりおかずを皿に分けるサーシャ。
優勝したにも関わらず、嫌らしさや自慢さがない。
それを見てマンナたちは優しく微笑んだ。
こういう女なのだ。サーシャは。
「ひぃぃぃぃ〜ん…!!!ワタクシもっと強いんですわぁぁぁ!!!ヒグッ…ヒグッ…作者の都合でカットなんてあんまりですわぁぁぁ〜!!!」
「サっちゃんマクロビちゃんに飲ませたのほんとにお茶ボルか?」
「ん?せやでチップちゃん。え、なにマクロビあんたほうじ茶で酔うん?植物やのに?」
「別に酔ってませんわ!!!あ、でも〜、自分の美しさには…酔ってるかしら…ね。フフフ…。」
「ちょっち、アスカちゃんそれ取って。食べたいわ。ウチが取ればええんやけど乳ひっかかって取られへんわ。」
「綺麗にマクロビの事無視したね。ていうかワザとでしょ?それワザとだよね?敢えてアタイに見せびらかしてるよね!?!??」
騒ぐ女子軍。
いや、チップは女子じゃないけど。
無視された事に怒るマクロビをなだめるルーヴァ。
胸囲の格差を見せびらかされキレるアスカを宥めるのは兄のチェリオス。
「まぁまぁ、いいじゃねぇかよアスカ。貧乳好きも居るっての。この鮫多分貧乳好きだぜ?なんかロリコン臭いもんな。」
「あ?塩ゆでになりてぇのか目ん玉テメェ。」
真顔でキレるディブロス。
やはりこの2人、デコボココンビになりそうな予感。
「ダーハッハッ!!!怒るなよディブロス!冗談じゃんか!そ・れ・よ・り、君確かマンナちゃんだよね〜!?!ていうかみんなめちゃくちゃ可愛くね!??!みんなおっぱいおっきいし!お尻もおっきいし!連絡先好感しよ〜よ!!!」
携帯を取り出し、スケベそうな笑顔で女子軍に近づくチェリオス。
女子たちが引き気味なので、アスカがすぐさま兄のみぞおちに肘鉄。
悶え苦しむ兄を見て笑うのであった。
「えぇ…お前そんなキャラやったん…?あの試合の時の紳士さはなんやったんや…。………ん?」
肩を叩かれたパルム。
ヴェルタースだ。
デカいお肉を食べながら、パルムに唐揚げなどを皿に寄せてくれていた。
「食えよパルム。美味いぜ。」
「おう、サンキューなヴェルタース。ヨーベイガーは食べ…………スプーン食ってやがる…。」
「地球のステンレスはかなり上質だな。美味いぜ。」
へへへ…と苦笑いを見せ、パルムは周りを見渡した。
「……………アイツらの事か?」
「………うん。」
パルムが思っているのは、銀之助・バルカン・Mr.C.Bだ。
最初こそ一緒にみんなとご飯を食べていたのだが、途中抜け出していった。
銀之助は笑顔で二本指を口でジェスチャー。
タバコタイム。
パルムも誘われたが、兎に角腹が減って仕方ないので後で合流する事にしたのだ。
「ピンサロにでも行ったのか?」
「んな訳ねぇだろうが目ん玉…。テメェどんだけ下心出すんだよ。」
「ブヘヘ!冗談だっての!さてさて、飯でも食いますかね!」
少しだけチェリオスを見つめるパルム。
どうした?と聞かれるのでゆっくりと口を開いた。
「なぁチェリオス。お前…どこ行ってたんや?」
カチャ……………
少しだけ目を細め箸を置くチェリオス。
パルムが決勝戦で戦っていた時、選手専用客席にはチェリオスの姿は無かった。
それにC.Bもである。
チェリオスはこちらに顔を振り向き、重い口を開いた。
っていうけどどこに口あるんだよ。
「美味いな…。サンキューな2人とも。付き合ってくれてよ。」
夜の喫煙所。
外に置かれた少し古い灰皿の前でタバコを吹かす3人。
銀之助は一命を取り留めただけでなく、無くなったから腕と足も見事に再生。
傷口が深いせいで、痕こそ残ってしまったが後遺症などもなく今こうしてタバコを吸っている。
「いえいえ、それよりもあんまり驚かれ無いんですね。僕がタバコを吸っているのが。最初は結構ビックリされるんですけどね。」
「サーカス団の団長やってんだ。あんな偉い仕事やってるもんが、タバコのひとつやふたつやってたところで驚きはしねぇさ。それに…」
感謝するのはこっちの方だ。
銀之助とC.Bに対して頭を深く下げるバルカン。
しかし途中で、笑顔の2人に肩を優しく触られ止められる。
何も頭下げる事では無いと。
「飯も来てくれたし、こうやってタバコにも付き合ってくれとるがな。それだけでうれしいぜバルカン。」
「感謝してもしきれん。本来ならば恨まれて当然にも関わらず…食事に喫煙に誘ってもらえるんだからな…。改めて、パルムの優勝を心から祝福する。」
「僕からもですよ、銀之助さん。」
「ハッハッハッ!!!サンキューサンキュー!!!言うてもパルムギリギリやったけどな!!!試合やなかったらバルカンが勝ってるっての!!!…………それと、C.B。」
「…………例の話ですよね。今からお話する内容には嘘はございません。」
C.Bはタバコの火を消し、自分の身にあったことを話し始めた。
「ハァ……………ハァ…ッッッ……!!!!」
廃ビルの屋上。
床は異様なまでに捻じれ、穴は空きヒビは入る。
空間にも切れ目が生じており周りは崩壊そのもの。
C.Bのスーツはズタズタに引き裂かれ、全身に鮮血が流れている。
鍛え上げられたボクサー型の筋肉は、切り刻まれところどころに筋繊維と骨が露出していた。
対するディラスは…
「アッハッハッ!!!アーハッハッハッハッハッーーー!!!!!!ヤバいよコレ!!!僕死んじゃうかも!!!殺されちゃうかも!!!イーヒャッハッハッハッハッ!!!」
(な、なぜだ…!!!本来レプティリアンは脳を破壊すれば再生出来ずに死に至る…!!!なぜあの姿で生きているんだ…!!!)
ディラスの顔面は半分が砕け、目玉が今にも地面に落ちそうなほどの損害を受けていた。
頭部は脳みそが半分ズリ落ち、右脳だけ収まっている状態だ。
左半身は消し飛び、内臓もピチピチと痙攣するようにのた打ち回っている。
それにも関わらずディラスは生きていた。
(こいつ…痛みを感じないのか…!!?それに恐怖している様子も全く無い…!!!なんなんだコイツは!!!!!)
「本場の異次元は強いなぁ〜。僕の黒魔術も効かないし〜。なに?そんなに凄いのぉ?絆ってぇ?家族ってぇ?」
グチャグチャの顔で振り向く姿は異質そのもの。
あともう一撃。
それを食らわせたら確実に倒せる。
そこまで追い詰めたは良いものの、C.Bの身体は限界を迎えていた。
「でもまだ死にたくないなぁぁぁぁぁッッッ〜〜!!!」
ディラスが口に手を突っ込み何かを取り出そうとしている。
少しずつ現れたそれは杖であった。
しかし、どこを見てもおぞましいシルエットは宇宙全体探しても見つからないであろう。
言葉で表すならば【呪】そのもの。
「君ももう限界でしょ?今楽にしてあげるよ。」
杖が不気味に光り出す。
「ま、死んだ後も楽ではないんだけどね。」
(マズイ…!!!)
ゴオオオオオォォォォウッッッッッッッッッ!!!
杖から放たれた黒い塊がC.Bを襲う。
と、思いきや狙いがズレたのかあらぬ方へと飛んでいった。
しかし何かにすぐ気がつくC.B。
(あっちは…………市街地ッッッ!!!アイツ!!!関係ない民間人を巻き込む気かッッッ!!!)
「君を傷つけるには、他者をいたぶったほうが良い。」
ニヤリと笑うディラス。
C.Bは無理やり体を動かし、魔法を使うために印を組んだ。
(間に合わない!!!)
このままでは市街地に直撃である。
嫌らしいことに、そこには幼稚園や小学校などの子どもたちがたくさん居るエリア。
わざとそこを狙ったのだろう。
「クソッッッ!!!クソオオオオオォォォッッッッッッッッッ!!!」
ザビュンッッッ………………
「デュリャァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
バキンッッッ!!!
と黒い塊は蹴り飛ばされた。
「大丈夫か!!!C.B!!!」
「ち………チェリオスさん…!!!」
屋上に降り立つチェリオス。
構えを取り、ディラスと対峙。
「なんだこの邪気は………誰だお前…。」
「あ〜あ、タイムオーバーか。流石に2人相手はキツイや。退場だねこれは…。」
ディラスの周りに黒いモヤが発生。
チェリオスは逃がすまいと飛び上がり、空中中段蹴りを炸裂させた。
「な…ッッッ!!!」
しかしそこにあったのはディラスの尻尾のみ。
チェリオスは鬱憤晴らすかのようにそれを踏み潰した。
「トカゲの尻尾切りか…。」
「てな訳だな。だからバルカンがおかしかったのも、C.B曰くアイツのせいらしいぜ。」
「な、なんやその気持ち悪いやつ…。そんなやつおるんかいな…。でも…まぁ確かに…バルカンはなんか鎖に巻かれてた…。それのせいか。」
「鎖?…………黒魔術のひとつかもな。宇宙は広い。俺らが知らねぇ魔法なんざごまんとあるだろう。さてと………んじゃ……。」
ガシッッッッ
「今度遊びに行こうよマンナちゃん!!!どこ行く?なんか見たい映画とかある?それとも服とか見に行く?どんな服でも似合うと思うんだよねぇ〜!」
ズコー!!!
あの真剣さがまた消えた。
チェリオスはアスカに首を絞められていた。
パルムやディブロスたちはヤレヤレである。
「む?」
何かに気がついたサーシャ。
横を見ると、ルークが優しい顔でこちらを見つめていた。
鉄仮面の下はきっと優男であろう。
知らんけど。
ヌッと顔を近づけるサーシャ。
少しだけ遅れてビックリしたルークに質問し始めた。
「ウチ美少女溢れてもうて見惚れた感じ〜?そういや、ルークくんはなんでこの大会に参加したん?」
「ぼ、僕はその………、えと…………人を…探してるんです。」
「人?女の子?」
「いえ…男で…幼馴染なんです…。とある理由で…写真とかは無いんですけど…。」
「そっかぁ…。写真無いんやったら力になられへんなぁ…。名前は?」
「名前は…………」
サっちゃ〜ん!!!
こっちこっち〜!!!
早くこっち来るし〜!!!
「あいよ〜!ごめんなルークくん!あとでね!」
「いえ!とんでもない!寧ろ行ってあげてください!」
セリフを遮られ、最後まで話せなかったルーク。
しかし、どこか言いづらそうな雰囲気だったので結局は言えなかったのかもしれない。
拳を交え血を流し合った者たち。
戦いが終わればノーサイド。
今は互いに楽しく笑顔で飯を食べ、絆を深めるのであった。
そうして夜は更けていく…。
「……………………。」
カフェに戻った3人。
試合のダメージなどを考慮し、正式に店を開けるのは明日からである。
多額の賞金と優勝ベルトを手に入れた。
それにも関わらず、銀之助は腕を組み少し何かを考えていた。
「悩んでんのか銀之助。」
「ん…?まぁちょっとな…。ていうかなんでボーナお前ここおるん…?開店してへんのやけど…。」
「裏口空いてたからよ。」
爽やかな顔してるが普通に不法侵入である。
ボーナが手を前に出してきた。
3人が不思議そうな顔をしているので、ボーナは呆れながら呟いた。
「このボーナ様が応援してやったんだ。賞金、貰ってやるよ。そうでもなきゃ、勝てなかったろ。」
「…………………………。」
「…………サっちゃんゴメンやけど警察呼んでくれへんかの。頭に変な触覚生やしたやつが侵入してきたって。」
「すぐに連絡するわ。」
「待った待った!!!てかクエスチョナーとグレートも居るのになんで僕だけ通報するんだよ!!!」
しかしこの慌てぶりを見れば割と本気で言っている気がする。
「これ渡しに来たんだよ。オラ。」
メモを受け取る銀之助。
どうやら直接食事は出来なかったもののボーナ含めクエスチョナーたちもあの祝勝会に参加していたようだ。
その時ボーナは銀之助に頼まれクエスチョナーやグレートと一緒に動いていた。
「んじゃ、俺らはこれで。行くぜクソエリートさんよ。」
「誰がクソエリートだ!!!おい銀之助!!!ホントに賞金くれてもいいからな!!!」
「早く行くぞ。」
「痛ぇな触覚引っ張んじゃねぇよグレートォォォ!!!」
ヤレヤレである。
「さてっと!!!………準備しますか!!!」
「…………………銀兄。」
「ん?どないしたんやサっちゃん?」
「……………ええんよ。ウチもパル兄も同じ事考えてるから。」
「……………。」
銀之助は少し後ろめたく感じていた。
優勝したのはサーシャとパルムであり、自分は準々決勝止まり。
それも無惨に敗北してしまった。
だからこそ…銀之助はとある事を思っていたが、2人のおかげで稼いだお金である。
勝手なことは言えない。
しかし、サーカスとパルムはそれを感じ取り銀之助に寄り添ったのだ。
「やろう!!!銀兄!!!」
「気にすんなよ銀ちゃん!!!言うて俺もサっちゃんも銀ちゃんに助けられてきてるがな!!!」
「2人とも………………ありがとう。」
銀之助は頬を叩き、立ち上がった。
そしてボーナから受け取った紙を元に動き始めた。
ベラニー!!!
ベーラーニー!!!!!
「あんだようるせぇな親父…。今から俺仕事だぜ。」
「これを見てくれ!!!確かこの名前!!!ベラニーの友達じゃなかったか!??!!」
「おいおい…………アイツら…………。」
「今すぐに彼らをここに連れてくるんだ!!!」
「お…………お兄ちゃん…こ、これ…。」
「パルム…。アスカ、ありがたくいただこう。母さんにも伝えた上で、この薬を飲ませよう。」
「うん…………うん……………!!!!!」
プカプカ
「あぁ〜あ。楽しかったなぁ…。母性じゃ俺の水芸がわからねぇやつらばっかだしな…。どうすっかなぁ〜。」
「ディブロスさ〜ん。貴方あてに封筒が来てま〜す。」
「お、ご苦労さん。…………銀之助じゃねぇか!!!あんだ……………?水魔法教室のインストラクター……?……………ハッッ…。粋なことしてくれるじゃねぇかよ。」
ワー!!!
サーカスサーカス!!!
「レディース&ジェントルメーン!!!楽しい摩訶不思議なキャラメルサーカスにようこそ!!!楽しんでくださいねぇー!!!」
(銀之助さん…パルムさん…サーシャさん…ありがとうございます…!このご恩は必ず…!)
「ちょちょちょちょちょちょッッッ!!!バルカン!!!ちょっとこれ見るし!!!ていうかあんたらも!!!」
「どうしたディア。お前らしくないぞ。」
「これ!!!」
「こ……………これは……!!!」
ディアが大きく広げたのは小切手。
そこには莫大な金額が書き込まれていた。
送り主はクリ・ザ・トリスコーヒー。
そう、何を隠そうパルムたち3人は賞金のほとんどをトーナメントで出会ったスペースファイターたちに贈ったのだ。
ボーナが持っていたのは連絡先であり、大勢の中動けない銀之助たちの代わりに話しかけて聞いていたのだ。
そのおかげでボーナはヴェルタースに直接あの時の盗人とイジられたのだが(12話参照)。
チェリオス兄妹やルーヴァには薬を。
その他のメンバーには金を渡したのだ。
ただのその時だけの縁。
そう思っていた。
しかし、カフェ店員の馬鹿どもはそうは思っていなかった。
人の世は縁。
人と人は繋がれるのだ。
バルカンは目元が熱くなった。
そしてスペースファイターたちは心から思っただろう。
強敵《《とも》》にまた会いたいと。
第200369回宇宙トーナメント編。
〜完〜
「む?なんですのこれ?ダンボール?」
マクロビ様へ
ガサガサ…
「あ!わたくしのファンが送ってくださったのね!!!………缶詰?空けて見ますわ。」
プシュッ
「ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーー!!!!!!!クッッッッッッッッッッサァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!」
シュールストレミング。




