第52話 「思い」
ウオオオオオオオオオオオオォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
「イヨッッッッッッッッシャァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!!」
目をつむり、拳を握りしめ天高く叫ぶサーシャ。
高らかにファンファーレが鳴り響き、観客の熱気も最高潮。
マンナやアスカたちも手を叩きハグを交わし、軽くジャンプをして大喜び。
長き戦いを終え、ついに女性の部の優勝者が決まった。
文句なき、サーシャの大勝利。
ボーナはつまらなさそうな顔で口をへの字に曲げる。情緒不安定エリート丸メガネ。
クエスチョナーたちも手や太ももをバンバンと叩き、興奮。サーシャを激励。
ファニィ、ゴードン、ケロンバも売り子の仕事を忘れ大はしゃぎ。
サーシャは右に左に投げキッスをやっている。
そしてすぐにクルッと体をとある方向に向け走り出した。
ダダダダダダッッッッ!!!
「ディアちゃん!!!大丈夫か!!!」
倒れているディアを抱き寄せ、心配そうに顔をのぞく。
「………………私…負けたのか……。全力出したけど…一歩及ばず…か…。」
「一歩どころやないで!ほぼ至近距離やったよ!」
姿は傷つきボロボロでも見せる笑顔は輝きそのもの。
少し目を閉じること数秒。
ディアは優しい瞳でサーシャに微笑み返した。
サーシャが手を伸ばす。
戦いが終わればノーサイド。
なにも恨みつらみの戦いではない。
力の大会なのだ。
ディアはサーシャの手を取りゆっくりと立ち上がった。
そしてサーシャの右腕を手をつないだまま天に向かい伸ばした。
ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!!
盛り上がる観客にスペースファイターたち。
サーシャとディアがお互いに穏やかな表情を見せた。
降っているこの雨はシャンパン代わりか。
[優勝トロフィーと賞金につきましては、男性の部が終わってから双方ともにお送りしたいと思います!!!]
「あ、まだ銀兄とパル兄戦ってるんか。というかちゃんと勝ってるんやろなぁ。負けたら承知せんで〜。」
「ん、仲間居んの?」
「そ、ディアちゃんも?」
「うん。バルカンっていう男がね。図体でかくて威圧凄いけど、優しいやつだよ。また後で紹介す…」
キャァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
「!!!!!」
「!!!!!」
サーシャたちが叫び声の方に顔を向ける。
あの方角は真反対、つまりは男性の部である。
「な…………ッッッッ!!!」
「コイツは…………!!!」
冷や汗を流し、顔がこわばるクエスチョナーたち。
そう。
サーシャが優勝した同時刻。
銀之助が敗北を喫したタイミングでもあった。
「う………腕と足がちぎれたぞ!!!」
「生きてるのか町田とかいう地球人!!!」
「バルカンのやつ容赦ねぇな!!!」
それを聞き目が大きくなるサーシャ。
「え………銀兄…………が……?」
「バルカン…………?」
取り敢えず男性の部を見に行こうとサーシャがディアやスペースファイターたちに手を動かし合図。
マンナたちは大きく頷き、廊下を走る。
ディアも行こうとしたのだが、ドサッ!とその場で膝をついてしまった。
戦闘でのダメージが大きい。
サーシャは異常な回復力のお陰でほぼ傷は癒えている。
今は無理しないで回復してから行こう、とサーシャはディアを抱き抱え医務室へ向かった。
「……………………遅かったか………!」
C.Bの目の前に広がるは無残な死体たち。
原型はほぼ留めていない。
服装の断片を見るに、恐らく銀河警察のものであろう。
女性だったのかわからないが、体液が付着しているところを見るに犯人に弄ばれたのだろう。
C.Bの顔が険しくなる。
決して普通の人間ができることでは無い。
常軌を逸している。
「………………………貴方ですか。」
顔を上げる。
「御名答〜。良くここがわかったねぇ〜?逆探出来ないように工夫してたんだけどなぁ。流石は本場の異次元って感じかい?」
「少し工夫が足りてなかったみたいですね。…………なぜ貴方が次元魔法を使えるのかは知りませんが。…………S級指名手配犯ディラス。」
「お!知ってるんだぁ?地球みたいな田舎じゃ僕の事はあんまり知られてないんだけどね。やっぱりトーナメントともなれば色んな銀河からスペースファイターたちが来るし、知ってるやつもいるか。そうかそうか。」
スタッ
貯水槽から飛び降り着地したディラス。
舌なめずりをしてC.Bをいやらしく見つめる。
「銀河警察を殺害したのも貴方でしょう。そして………バルカンさんに手をかけたのも。」
「いやいや!僕は何もしてないよ!ただバルカンさんの欲望の扉を開けただけさ!!………でもやっぱり異次元は賢いなぁ〜!なんでもお見通し?それで…何しに来たの?」
「分かっているでしょうに。」
少しずつ全身に魔力を流し力を込めるC.B。
臨戦態勢だ。
ディラスも気味の悪い嬉しそうな笑みを浮かべそれを眺める。
「凄いなぁ。ニュースになっちゃうかもね。キャラメルサーカス団団長!ディラスを捕まえる!って…。」
「捕まえる?違いますね…。私は…」
ゴオオオオオォォウッッッッ!!!
地響きが起き、空間にヒビが入る。
プラズマなどが発生しC.Bの全身にも魔力のオーラが現れた。
捕まえるのではない。
抹殺だ。
「銀河警察じゃ遊び相手にもならなかった。異次元は………少しは遊べるかな。」
ディラスからも黒いオーラがじわじわと溢れ出す。
普通のレプティリアンではない。
なにかが外れたレプティリアンなのだろう。
生半可な攻撃は通じない。
油断すればこちらが殺される。
目の前のレプティリアンは恐ろしく強いのは間違いないだろう。
C.Bもそれを覚悟の上でこの場に居る。
バッッッッッッッッ!!!
「アーーーハッハッハッハッハッハッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
一気に遅いかかってくるディラス。
C.Bはファイテングポーズを取り対峙。
(すみません…銀之助さん…皆さん…、優勝を見届けるのは…出来ないかもしれません…!!!)
2つの瞳が見つめていた。
緊急手術で運ばれた銀之助。
原型はあると言えど、黒焦げになったシルエットがベッドの上でチューブに繋がれ医療スタッフが全力で魔法をかけている。
左の腕と足は見当たらず、服や髪の毛すらも焦げ落ちたのだろう。
心臓も停止したままであり、回復の余地は絶望的。
「…………………。」
肩に優しく手を乗せるチェリオス。
パルムはつい先ほどまで綺麗であった相方を見つめ呆然としていた。
「…………絶対に大丈夫だ。銀之助は治る。生き返る。………こんな状況でなに言ってやがるって思うだろうが…銀之助の仇とりゃいい。次の試合、決勝戦だぜ。」
「…………………………。」
少し離れた場所からディブロスがチェリオスに手招き。
こっちに来いと。
「あんだよディブロス。」
「テメェ…なんでパルムに銀之助に会わせやがった。ショック受けるに決まってんだろうが…!!!」
「なにも俺は考えずに会わせたんじゃねぇよ!!!最初は断ったさ。でもよ…パルムがどうしても会わせてくれって言うからよ…。」
「それでも断れや!!!今からあいつ決勝戦なんだぞ!!!そんなもんで戦えるか!!!C.Bにも止められてたんじゃねぇのかよ!!!」
「うるっせぇな!!!じゃあお前がさっさとこっち来て対応すりゃ良かっただろうが!!!」
いがみ合う2人。
チップとルークがどうにか2人の間に入り止めようとするもチェリオスとディブロスはヒートアップ。
「うるせぇぞお前ら。ここは医務室だぜ。お静かにな。」
「お前…………ヴェルタース。」
意外にも2人を止めたのはヴェルタースであった。
ホットバナナオレをズズズとマグカップで飲みながらバナナを片手に堂々と立っていた。
「大の大人が騒ぐんじゃねぇ。それにパルムは大丈夫だ。俺に勝った男だぜ。そんな軟じゃねぇ。」
モグモグとバナナを食べる。
一片に食べないのは、すぐに無くなるのが嫌だからだそうだ。
「それによ、あんな状態からも回復する事例なんざいくらでもって訳じゃねぇけどあんだろうよ。1996年にチャップー星でのクワンドロ事故の事例もあるしな。」
「お前博識だなヴェルタース…。相当いい学校出てるんだろうな。」
「残念。俺は中卒だ。」
スタスタスタ…
奥からパルムがこちらに向かい歩いて来ている。
落ち込んでいる様子でもなく、静かに何かを託された…といった具合だ。
「パルム…大丈夫か?」
チェリオスが心配そうに声をかけた。
周りのスペースファイターたちも同様にパルムを心配そうに見つめる。
「……………サンキューな。大丈夫やぜ。」
穏やかな笑顔を見せるパルム。
相方の悲惨な姿を見たにも関わらず、何故こうも落ち着いているのか。
「言われたんや…。銀ちゃんに。」
「銀之助に?いや…でも銀之助は…」
ディブロスが言葉を言い切る前にヴェルタースが優しく肩に手を置き止める。
「なんて言われたんだ?」
「……………バルカンを助けてやってくれって。」
パルムの瞳を見ればわかる。
確かに銀之助の思いを受け取ったのだろう。
バルカンがディラスに黒魔法をかけられたことはこの場に居るスペースファイターたちには分からない。
遠目から見ればバルカンという男が残虐な性格をしているとしか見えないだろう。
しかし銀之助は何かに気づいた。
それを言葉ではなく、【思い】としてパルムに託したのだ。
「そうか。じゃあ、行ってこい。何かあれば俺らが動いてやるからよ。」
バンッ!!!
ヴェルタースが目をつむり、パルムの背中を強く叩いた。
「アイツは今瀕死の状態だ。でも確かに言ってたんだろ。自分じゃ止めることが出来なかった。だから思いをお前に託した。だったらそれに応えるのがお前の務めだ。だからこそお前は」
「おい…ヴェルタース。」
今度はヴェルタースがセリフを言い終える前にディブロスが制止。
なんだよと目を開けるヴェルタースに対してみんながある方向に指をさしていた。
「お前が背中叩いたからアイツ吹っ飛んで転がっていったぞ…。」
ズコーーーー!!!!!
[お待たせ致しましたッッッッッッッッ!!!!!女性の部が終わり!!!泣いても笑っても最後の決勝戦を行いたいと思いますッッッッ!!!!!]
ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!
「待ってましたー!!!」
「さっさとバルカンを出せぇぇぇ!!!」
ザワザワ…
ガヤガヤ…
「おい…ホンマに続けるんか…?そもそもバルカンのやつ来るかもわからんのに…。」
「仕方ねぇだろ…。バルカンを失格にしようとしたら大ブーイングだったじゃねぇか。」
スタッフたちの会話。
節々に重くしんどい心情が現れる。
「ホンマによ…一番怖いのはバルカンやなくて、それを見て楽しんでる客かもな。手配するこっちの身にもなって欲しいぜ…。」
[赤コーナー!!!チェリオスに対してはスピード!ヴェルタースに対してはパワーでねじ伏せた奇跡のスーパールーキー!パルムウウウウゥゥゥッッッッッッッッッッッッ!!!!!]
ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッ!!!!!
静かに上を見上げるパルム。
曇天は続き、雨が止むことなくのしかかる。
[青コーナーッッッッ!!!異次元人を瞬殺!そして容赦なく地球人を破ったこの男!!!止められる男は存在するのかッッッッ!!!キャプテン・バルカァァァァァァァンッッッッ!!!]
ウオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッッッッッ!!!
向こう側の廊下からバルカンがノシノシと歩みを進めている。
フシュル…フシュル…
全体的に息が荒く、目も真っ黒に近く全体的に黒いオーラが滲み出る。
例えるならば、魔力のオーバードーズ。
正気ではない。
リングに上がる2人。
拳を合わせた瞬間、パルムの全身に悪寒が走り気持ち悪さが細胞をかけめぐった。
その後両者がリングサイドに別れ、互いに見つめ合う。
大雨しきる最後の勝負。
最後の鐘が鳴らされた。
[試合開始いいいいいぃぃぃぃッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!]
カーーーーーーーーーーーンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!




