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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
50/50

第50話 解凍

喉元にもろにラリアットを貰ったディア。

自身が出した氷の壁に勢いよく叩きつけられ、たまらず吐血。

盛り上がる観客たち。

乗せられた。

完全にサーシャのペースに流されてしまった。

少しだけ静寂が流れた後、ディアは氷を含んだ衝撃波でサーシャを吹き飛ばした。


ズガァァァ!!!


空中で体を上手く回転させ着地するサーシャ。


「ヘッヘヘ!どないじゃい!」


「ガハッ!!!ハァッ…ハァッ…!!!クッソ…めっちゃ乗せられたし…。」


「クソ真面目やからとちゃうかぁ〜?ちょっちギャグ覚えても損せぇへんで〜?」


煽りやがる。

しかしこれ以上乗せられるわけにはいかない。

ディアは冷静に呼吸を整え印を結ぶ。

次の一手で目の前のやかましい大阪人を叩きのめす。

頭に浮かぶのはただそれのみ。


ガチガチ…パキキ…


リングが凍り始め、空気中の温度が冷えていく。

自分のフィールドに変えるつもりなのだろう。


「アレは私やルーヴァさんと戦った時にやった技です!サーシャさん早く動いてください!」


叫ぶマンナをチラ見するサーシャ。

しかし何故か動かない。

表情は笑顔のままだが、額から頬にかけて一筋の汗が流れ始めていた。


「なんで動かねぇだ!」


「動いたところでもう遅ぇ。あの技が発動しちまった時点でフィールドはディアのもんになっちまう。出来れば…ディアが動く前にサーシャが決めれたら良かったんだがな。」


ベラニーの言う通りであった。

サーシャは動けないと言う方が正しいか。


「ハハ…ついに来よったな…。カチンコチンタイム…!!!」


「なにそのバカみたいな名前。ふざけてんの?」


「ええ名前やろ?ほら来いよ!!!どんどん攻撃してこいや!!!」


ドンッ!と四股を踏むサーシャ。

ディアはお望み通りにと言わんばかりに吹雪をサーシャめがけ放出。

時折氷のつぶてが混じるその突風は当たればひとたまりもないだろう。


ビュオッッッ!!!


サーシャは口に両手を当て思いっきり息を吸い込む。

そして迫りくる吹雪に対して大声で叫んだ。


「ダァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーーーー!!!!!!」


ズババババ!!!


「な…、相殺…。」


ディアの吹雪を大声で相殺するサーシャ。


「アレって…!!!」


「私たちの技ですね。」


後ろを振り向くルーヴァたち。

そこには全快したショコラが立っていた。


「ショコラさん!もう大丈夫なんですか?」


「えぇ…なんとかお陰様で…。それに、サっちゃんの試合…医務室のテレビじゃなくて直接見たいから…。それと…。」


ショコラがベラニーに体を向ける。

ベラニーは何も言わずにショコラを見つめるのみ。


「ベラニーさん…先ほ」


「辞めてくれ。」


ショコラが言葉を言い終える前に掌を前に出すベラニー。


「えっ…。」


「何も謝るこたぁねぇぞ。お前らにも色々あったんだろうし、実力では俺は負けてた。ただそれだけの事だろ。それに…」


目を細め自然に微笑むベラニー。


「憎しみなんてありゃしない大会だろうよ。こっからまた仲良くしよーや。お前らも…俺たちも。」


「ベラニーさん…。」 


ショコラの心ではもう一人のショコラがキシシと笑っていた。

アスカやマンナたちも優しい表情でショコラを受け入れている。

もしもこの大会に参加していなければ、こんな事にはならなかっただろう。

不思議な感覚だ。

これも何かの縁である。

それを繋げてくれたのはたった一人の女の子。

それもたかが地球人である。

続けざまにベラニーにが口を開いた。


「ま、今は一緒に試合見ようや。ほら見てみろよ。あの面白い女、戦ってるぜ。」


全員がサーシャに顔を向けた。


ズザザザーーー!!!


「い…………いだい………。」


サーシャはボコボコにされていた。


ズコー!!!


ひっくり返る一同。


「なにやってんだよ…いい感じだったのによ…。」


サーシャは白目からなんとか黒目を呼び戻し、頭を軽く横にブルブルと振り正気を保つ。

ディアはルーヴァ戦で披露したアイスボディを体に纏っている。

それで殴られたのだろう。

サーシャからしたらたまったものではない。

それにアイスボディの能力で周りの空気を冷やされているのでサーシャは思うように動けないのもあるのだろう。

片方の鼻を抑え鼻血を吹き出す。


「はぁ〜、痛いわぁ…。そんな氷の拳で殴られたらたまらんわ。」


「あっそ。んじゃ、さっさと降参すれば?」


「断る。まだお互い全力出せてへんしな。ウヒヒ。」


どうでもいいような物を見つめるかのように目を細めるディア。

手の甲から鷹のような爪をピキキと出現させた。

切り裂くつもりなのだろう。


「殴り飽きたから次は引っ掻くってか?おもろいの…。」


「飽きたのはこの試合とアンタ。もう終わらせるし。」


バッッ!!!


その場からサーシャめがけ走るディア。

アイスボディのせいで普段のように機敏な動きではないが、動きが鈍っているサーシャを切り裂く程度ならなんてことはないのだろう。


ジャキ…


爪を構え一気に振るう。

しかし、これで終わらないのがサーシャという地球人。

氷の爪が脳天に当たる直前。


「シバリングッッッッッッッッッ!!!!!!」


体を少しブルッ!と振動させただけて体の芯から熱を発生させるサーシャ。

そして真剣白刃取りの形で爪をしっかり捕まえた。

掌ではなく、手をバッテンにしたような形。

その間にディアの手は挟まったのだ。


「なッッッ!!!シバリング早すぎっしょ!!!」


「これもマンナちゃんの技のひとつや!!!それに!!!」


両足に力を込める。

腰を落とし、勢いよくジャンプ。

アプリコットのバネ技を真似たのだろう。

突然のコンボに対応が遅れるディア。

サーシャはお構いなしにとある大勢へと事を運ぶ。


「アレって…!!!」


どこか嬉しそうであり、驚くアスカ。


「これがアスカちゃんの天空奈落落としじゃッッッ!!!」


「こんの………ッッッッッッ!!!!!!」


ゴオオオオオォォォォッッッッッッッッッ!!!


高高度からリングに落ちていく2人。

クラッチからなんとか抜け出そうにもしっかりとホールドされているのでそれは叶わない。

氷遁を強めようにもサーシャのシバリングの熱があまりにも強いのでそれも意味をなさないだろう。

ディアは兎に角衝撃から身を守るためにアイスボディを頭と首、上半身に集中させる。


ズドオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!


「よっしや!!!決まったんじゃねぇか!?!」


「この程度じゃダメですわ。衝撃から身を守るためにアイスボディを強めましたもの。」


パラパラ………………


飛び散るリングの欠片。

次第に砂煙が落ち着き2人の全貌が現れる。

確かに天空奈落落としはしっかりと決まっていたが、ディア自体にはダメージがほとんど入らず。

アイスボディは砕け散り、破片が綺麗な星屑のように舞っていく。


「いつまで…足握ってるしッッッ!!!」


上半身を一気に起こしサーシャの顔面にヘッドバットを炸裂させた。


「ゴブェッッッッッッ!!!」


ディアの両足を離し数歩後に下がるサーシャ。

その隙に一心不乱に連打をしかける。

最初こそ防げなかったサーシャだが、すぐに対応し正面からの殴り合いが始まった。

サーシャはどうか分からないが、ディアは魔力消費を抑えたいのだろう。


ズガガガガガガガガガガガガッッッ!!!!!


「マジでなに?!!なんなのお前ッッッ!!!当てつけかなんか!???!!キショいんですけどッッッ!!!」


「何をそんなに怒っとるんよ!!!」


「マジでさっきからムカつくんですけど!!!戦ってきたやつらの技使いやがって!!!自分の技無いわけ!??!」


「友達の技使ったらアカンなんかルールに無いやろッッッ!!!ええやんけ!!!」


「友達………!?」


お互いにガードをしっかりと固めつつ、ジャブ・フック・ストレート・ボディブローを次々に繰り出していく。

サーシャはディアの左腕フックを右肘で受け止めるも、脇腹に膝をめり込まれ吐血。

間髪無しにアッパーカットをまともに喰らい少し宙に浮くサーシャ。

腹に強烈な後ろ回し蹴りを放たれ息が止まる。


ガシッッッ!!!


「!!!!!」


「ニシシッッッ!!!」


ディアは蹴りを入れた足を掴まれ、脛部分にアームハンマーを入れられた。

痛みが走るディアに間髪無しにサーシャは力ずくで反対側に叩きつけた。


ドガッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


「ヨッシャッッッ!!!これで……ウォッッッ!!!」


コンボを決めようとしたサーシャだったが、ディアがうつ伏せの状態から氷の槍をリングから突出させたのでこれを回避。

しかし両肩を掠めてしまう。


「あ〜………マ〜ジイライラするんですけど…。」


ゆっくり立ち上がり脛の部分だけ氷を纏わせるディア。

今まで見てきた、戦ってきたスペースファイターとは毛色が全然違う。  

さっきから流されっぱなしである。

コイツには油断が無い。

確かにくだらない相手をおちょくるかのような言動はあるのでそういう意味では油断しているのだろう。

しかし、心の重さがまるで違う。

正直ルーヴァと戦った時もやりにくかった。

ディアは口でこそ相手を蔑むが、決して対戦相手が弱いとは思っていない。

マンナもアプリコットも強者だった。

しかしマンナは自信が無く、覚悟が足りてなかった。

アプリコットは心の強さは確かにあったがフィジカル不足。

ルーヴァはシンプルな戦闘判断ミス。

しかし目の前のサーシャはどれも違う。

なんなのだろうか。


「アンタらなんなの?友達作りにでも来たわけ?キッショいんですけど〜。」


憎まれ口を吐く。


「別にええがな友達になっても。こんな遥々遠い銀河から惑星から来てるんやわ。めったに無い縁やで。楽しまな。」


「ウザいわ〜それ。アンタもどうせ金は無いわ余裕無いわでここに来てるわけっしょ?それをなにが楽しもうって?頭おかしいんじゃね?」


「ニッシシ!!!ウチは頭おかしいで。ディアちゃんも楽しもうや。背負いすぎとちゃう?」


その一言でディアの綺麗な整った顔に血管が浮かぶ。


「背負いすぎ…?楽しもう…?…………アンタにゃわからんでしょ…。私らがどれだけ苦しい思いしてるか…どれだけ地獄を味わってきたか…!!!」


「……………………。」


「明日食う飯もあるかわからないし!!!今にも風邪で倒れそうな家族もいるし!!!そんなくだらない考えしてる余裕無いっての!!!さっさと金手に入れて帰んないといけないのよこっちはッッッッッッ!!!!!」


「………確かにウチはディアちゃんがどんな人生歩んできたんか全然知らんよ。せやからこんな事言えるんかも。でもさ、肩ひじ張って視野狭くして…ご家族さんディアちゃんにそんな姿してして欲しないやろて。」


「ハァ!???!!!アンタか…」


「それとこれは全く別やて!!!ディアちゃんを見送ったもんらは絶対にそんなん思ってへんて!!!そんなもん!!!託してるとか期待してるとかちゃうやんか!!!そんなん依存やんか!!!みんなが思ってるのは!!!ディアちゃんが優勝して金持って帰るよりも!!!無事に帰ってきてもらうことやって絶対に!!!!!!」


ブババババババッッッ!!!


熱く語りすぎて屁が漏れてしまったサーシャ。

色々と残念である。 

しかしサーシャの熱弁か、はたまた熱便のせいかディアは脳裏にとある会話が過った。


[タツ坊、みんな!絶対優勝してお金持って帰るから!安心するし!ねーちゃんに全然任せろし!じゃ!行ってきます!ね?!バルカン!]


ディアの横で頷くバルカン。


後ろでは大人から子供まで全員がワーワー2人を見送る。

そこで風邪気味のタツ坊がゆっくりと前に出てきた。


[ねーちゃん!!!]


[ん?どした?なんか買ってきてほしいものある?]


[色々あるけど…それよりも!!!]


[それよりも?]


[…………………………無事に帰ってきて!!!もし優勝出来なくても…お金手にはいらなくても…ねーちゃんが無事に帰ってきて欲しい!!!]


ディアは少しだけ目を大きくし、すぐに優しく目を細めタツ坊を抱きしめた。


[ありがとーね…タツ坊。]


タツ坊に続き子供たちが同じようなセリフを元気よくよく叫ぶ中、老人たちがゆっくりと口を開く。


[ディアよ…何よりも楽しんでおいで。恨みつらみじゃない。何もバルカンと2人で抱えるようなもんじゃないよ。人生ってのはドラマよ。アナタは真面目で凄くいい子だから抱えちゃうけど…はっちゃけて欲しいのよ。]


[…………………大丈夫よおばあちゃん。私いつでも楽しんでるから。]


[そうかい?そうだねぇ………じゃあ私もひとついいかい?ディアに持って帰ってほしいものがあるんだよ。]


[???なにおばあちゃん?]


[それはね……………]






「思い出と友達……………………。」


呟いたその一言にサーシャは優しく微笑む。

そしてディアに手を差し伸べた。

さぁ、仕切り直しだと言わんばかりに。

そしてお互いに距離を取る。


「ウチもディアちゃんもギアかかってきたやろ!!!行くで!!!」


気合いを入れ、魔力を内側から高めるサーシャ。

ディアは様々な会話や記憶、そして感情が渦巻きながら唇を少し震わせ目を潤わせる。


ヒュゴオオオオオオオオオオォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッーーー!!!!!


魔力を放出しこちらも気合い十分と見た。


「アンタ……………マジでなんなのよ…。」


眉は寄っているが、潤わせた目で笑うディア。

さぁ、仕切り直しだ。











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