第49話 「調理パンはチンして食っても美味い」
なんでなんやろな。
なんでみんなこんなに苦しんでるんやろ。
なんでみんなこんなに悲しんどるんやろ。
カフェの経営が厳しいから参加しただけなんやけどなぁ。
ただただ強いやつらと戦うだけやと思ってた。
なんで今回に限ってこんなにも背負ったやつらが集まってるんやろか。
別に今回だけじゃないんかな。
宇宙は広いなぁ。
こんなにも苦しんでるもんらがおるとは。
知らんかった。
サーシャもこんな気持ちで戦ってるんかなぁ。
ごめんなみんな…。
バルカン。
サっちゃん。
パルム。
黒焦げになった銀之助を抱きかかえるチェリオスとC.B。
他のスペースファイターたちは全員バルカンを組み伏せている。
「心臓が止まってる!!!急いで医務室に運ぶぞ!!!」
叫ぶチェリオスに合わせるように空間に穴を開けるC.B。
穴の先は医務室に直接つながっていた。
向こう側に居た看護師たちはいきなり空いた穴にビックリするものの黒焦げになった銀之助を見ると否や、ただ事ではないと判断し急いで緊急治療の準備に取り掛かった。
「動くんじゃねぇぞ…!!!水刀首に当ててんだからなぁ…!!!」
水刀を光らせるディブロスの横にはバルカンを押しつぶす形でヨーヨーを構えるヨーベイガー。
ルークは正面からバルカンを捉えている。
そこで正気に戻ったのか、状況が理解できず周りを見渡すバルカン。
目の前にはかろうじて原型を留めている銀之助が抱きかかえられている姿。
「お……………俺が…やったのか…………?」
「何寝ぼけてやがんだイカれ野郎がッッッ!!!散々甚振ってただろうが!!!」
切り裂きはしないものの、バルカンの喉に水刀を強く当てる。
「ぎ…………銀之助……………ウグッッッ!!!!!!ガアッッッ………!!!」
「ウオッッッッッッ!!!」
「グアッッッ!!!」
バルカンはまたもや苦しみだし、強く抑えていたスペースファイターたちを吹き飛ばし黒いオーラに包まれ姿を消した。
まるで空間魔法を使ったかのように。
「な…なんだぁアイツ…。」
「大丈夫ですかみなさん!!!」
驚くディブロスたちを心配するルーク。
「消えたな…。アイツ空間魔法が使えるのか…。」
「いや…なぁ〜んか変な感じだったぜ。それよりも!!!銀之助だ!!!行くぜヨーベイガー!ルーク!チップ!」
ざわつく会場をよそに全員その場から離れ、医務室へとかけこんだ。
先に足を運んでいたチェリオスとC.B。
医療スタッフからここまで銀之助を運んできた事を感謝され廊下の長椅子に座っていた。
銀之助は喉も焼き切られていたので魔力ドリンクは飲用できない。
スタッフ一同が全力で魔法をかけ蘇生に力を注いでいた。
「………………なんなんだあのバルカンってやつ。情緒不安定なのか…?」
「………………………………。」
小さく呟くチェリオスの隣で腕を組みなにか深く考え込んでいるC.B。
思うことでもあるのだろうか。
チェリオスが疑問に思い、話しかけようとすると先にC.Bが口を開いた。
「申し訳ございませんチェリオスさん。席を外してもよろしいでしょうか?」
「席って…。まぁ、ここで俺らが居ても仕方ねぇけどよ…。」
「そんな事はありませんよ。チェリオスさんはここで銀之助さんの傍に居てあげてください。……………パルムさんも時期に回復するでしょうから。」
なるほどな、と頷くチェリオス。
確かにパルムが動揺しないように状況説明をする必要がある。
「お前さん…C.Bどこ行くんだよ。」
「少し気になることがありましてね…。」
大阪城ホールから少し離れた場所。
廃屋の屋上で微笑む闇そのもの。
レプティリアンのディラス。
ディラスは一体何を見ているのか、手を叩き時折腹を抱え大笑い。
口から垂れるヨダレがクラックが入ったアスファルト似滴り落ちる。
「アハッハッハッハッハッ!!!!!死んじゃったよ!!!まさかそこまでするとは!!!アッハッハッハッ!!!」
スーツの袖でヨダレを拭い、目を細め笑いを鎮めた。
「ハァ〜…………で、何君ら。」
ディラスの後ろには警察の姿をした男女が3人。
全員ディラスを睨みつけている。
「銀河警察だ。お前レプティリアンのディラスだな。」
「そうだけど?」
先ほどとはうって変わり全く興味の無さそうなディラス。
「抹殺命令が下されている。お前が好き勝手できるのも最後だ。」
「…………………………銀河警察ねぇ。3人とも上級クラスなんだろうけど………。」
ゆっくりと立ち上がる。
長い前髪の間から見える目が不気味に3人を見つめる。
「僕相手に3人て随分なめてるね。せめて宇宙刑事でも連れてこいよ。」
目がカッッッと開く。
殺意が形として動き始める。
「来るぞッッッ!!!みんな構えろッッッ!!!」
女性の部、最後の試合が今まさに始まろうとしていた。
サーシャはしっかりと柔軟をこなしている。
周りのスペースファイターたちに熱いコールを受けつつ、心持ちを整える。
「最後の試合だ!サっちゃん絶対に勝つだよ!」
「そのでっかい乳は飾りじゃないって教えてやれ!」
「相手のディアも乳デケェけどな。」
「ベラニーさんそんなハッキリ言わなくても…アスカさんも…ほら!元気出して…。」
「なんで自爆してますのこのくノ一は。兎に角、ここまで来たんですわよ。勝ちなさいな。」
腕の筋肉も揉みほぐし、サーシャが軽く顔を叩きいい顔つきになった。
「ありがとみんな!!!ここまで来たんや!!!行ってくるで!!!…………。」
少しだけ俯いたサーシャだが、すぐに顔を上げ両手で自分のケツを叩き後ろを向いた。
サムズアップをしつつ。
「アレ?なんでみんな構えてんの?」
「急にお尻を叩くからですわ!!!屁でもこかれるのかと思いましたわよ!!!」
「こかんわこんな時にッッッ!!!ボケ植物!!!ほな!みんなまた後で!!!」
足取り勇ましくサーシャは良い笑顔でリングへと向かった。
「サっちゃん、なんでちょっと意味深な顔してたんだろ。緊張してるのかな。」
「いや、違うと思うぜピエロさんよ。アイツの周りには俺らがいるけど、ディアの周りには居ねぇだろ。それが嫌なんだろ。…………お人好しの地球だぜホントによ。」
[皆様ッッッ!!!お待たせ致しましたッッッ!!!これより女性の部!!!最後の試合!!!決勝戦を行いたいと思いますッッッ!!!]
ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
「盛り上がっとるなぁ〜。」
呑気に周りを見渡すサーシャ。
会場の熱気も最高潮。
泣いても笑ってもこれが最後。
サーシャはパルムと銀之助も頑張っていることだろうと覚悟を決める。
[赤コーナー!!!くノ一のアスカ!恐竜ガールのショコラを破り予想出来ない動きを披露するスーパーガールッッッッ!!!三木サーシャッッッッ!!!]
「ウオオオオオオォォォォ!!!やっとのこさここに来てマトモな煽り来たでこれえええぇぇぇぇッッッッ!!!サっちゃん頑張るでええぇぇぇ!!!!」
足早にリングに上がるサーシャ。
[青コーナー!!!誰もこの氷を溶かせないッッッッ!!!マンナ!ルーヴァ!そしてアプリコットを連続で破った氷結の姫ッッッ!!!ディア・フローズンッッッ!!!!!!]
ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!
「いよいよこれで試合も終わりか…。長かったわマジ〜。それにしても…最後の最後で地球人が相手か。ウケるわ。」
サーシャとは対照的にゆっくりとリングに足を上げるディア。
「ディアちゃんやな。こんちは。ウチ、サーシャ言うんよ…て煽りで聞いてるか。よろしゅうな。」
「知ってる。それに試合も見てたよ。粗だらけで荒っぽい戦いする女だって。」
「あらだけにってか?ええセンスしとるやん。大阪人も負けへんでぇ?」
「バカバカしい。ちゃちゃっと終わらせるから。」
「やってみぃや。」
2人とも少し人相の悪そうな良い笑顔を見せ合い、拳を合わせた後に両サイドに別れる。
[試合開始いいいいいぃぃぃぃぃッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!]
カーーーーーーーーーーンッッッッッッッッ!!!!!!
「大丈夫ですかねサーシャさん…。」
「まず正面から突っ込むようなマネはしねぇだろう。今までの試合見てたんだからよ。」
心配するマンナに冷静に語るベラニー。
しかし、サーシャはただの突貫馬鹿ではない。
冷静に相手を凍り漬けにするディアと真正面からぶつかる熱血女であるサーシャ。
どのような試合運びをするというのか。
「ジュウウウウウゥゥゥオウラァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
やっぱり突っ走るのねこの子。
ズコーーーーー!!!
「やっぱり何も考えずに突っ込んでくる感じ?野蛮すぎっしょ。」
右掌を前に出し小さなアイス・コーンを何十本も射出するディア。
それを目の前にしたサーシャは勢いのまま斜め前に高く跳び上がった。
これでアイス・コーンは回避できた。
しかし今サーシャは空中に居る。
「空中じゃなんにも出来んでしょうよ!!!」
右掌をそのまま上にスライド移動させるディア。
このままでは大量の氷柱の餌食である。
「爆裂スクリューッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
サーシャは思いっきり体を捻り回転させ巨大な竜巻を発生させた。
風圧に押し負け、アイス・コーンはバラバラと力なくリングに落ちていく。
そればかりかディア自体も風に圧されジワジワとラインアウトが踵に迫る。
「なっっっにこの風魔法!!!そんなん使えるとかアリ!??!!」
ディアはルーヴァ戦の時と同じく、自分の後ろに氷の壁を張り後退を防ぐ。
「ルーヴァちゃん真似させてもろたんやッッッ!!!そんでもってぇ!!!」
これまた勢いよく着地したサーシャ。
その場からスタートダッシュを切る。
「ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!」
ピタッッ……………
急に止まったサーシャ。
怪訝な顔でそれを眺めるディア。
何かの作戦か?
「ウオオオオオオエェェェェ気持ち悪いいいぃぃぃ…………。」
目がまわっただけだった。
ひっくり返る女性スペースファイターたち。
あのディアでさえ、少しギャグめいた表情である。
「なにアンタ…。キッショ…。」
「アンタ酷いなぁ…。もうちょい優しさ持ってくれてもええんちゃうん〜…?あ!!!UFO!!!」
空を指さすサーシャ。
そらUFOも飛んでるだろうよ。
宇宙貿易始まってるんだから。
「せやった…この技もうこのご時世効かへんのや…。忘れとったわ…。アッハッハッ!!!」
腰に手をあて高笑い。
ディアはだんだん気持ち悪さを通り越し苛立ち始めた。
「あのさぁ…私のこと煽ってんの?」
「煽ってへん煽ってへん!!!それよりもディアちゃん見てや!ウチの反復横跳び!!!」
シュババ!!!
華麗に反復横跳びを披露するサーシャ。
揺れる胸に男は釘付けである。
「アスカさん…。」
「な、なによ!?」
「ちょっと動きマネしただろ。無い胸は揺れないって諺知らねぇのか?」
「してないし!!!ていうかそんな諺あるかぁクソメイド!!!」
なんだか選手専用観客席も騒がしい。
「完全にバカにしてんねアンタ…。ウッザ…。あのさ……………あぇ…。」
シュババ!
シュバババ!!
シュババババ!!!
だんだんサーシャが増えているような錯覚に陥るディア。
少なくとも15人には見える。
少しずつ近づいてくるサーシャに気持ち悪さを覚えつつ後ろに下がったディアだが…。
ガンッ
忘れていたのだ。
自分で出した氷の壁のことを。
(しまった…!!!)
ペースに流されてしまった。
「まずは一発目じゃッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
サーシャのラリアットが炸裂。




