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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
48/50

第48話 「違える覚悟」

「そいつらは裏でイントリー星人と繋がっていたんだ。癒着なんて生ぬるいもんじゃない。」


「………………。」


話を聞くことしか出来ない銀之助。

バルカンが語る内容に嘘は一切無いだろう。

確かに衛生兵として銀河政府に雇われていた時も内情は腐っていた。

しかし、少しずつではあるが変化は起きていた。

バルカンはその事を知ってか知らずか話を進めた。


「そのうち俺は2人を殴り殺した。残りを片付けようとしたが…騒ぎにかけつけた兵士に止められたよ。」


ゆっくりと空を見上げるバルカン。

空には試合会場を包むように黒雲が押し寄せる。

もう少しで太陽が見えなくなる程に。


「俺は今までの戦果もあってか1年の禁固刑で済んだ。それにその左派の悪事も分かった事もあるか。…その後は俺と同じような境遇のやつらに声をかけて銀河軍から手を引いた。」


「それが…トコヨ海賊団か…。」


「そうだ。俺は軍の中から部隊関係なく同じ思想のやつらを引き抜いた。」


「同じ思想て…銀河政府に依存する事なく、子供とかじいちゃんばあちゃん助けていこうってか。それやったら…」


「それもあるが…違うな。」


「なんや…。」


目を開き、銀之助に手を差し伸べる形を取るバルカン。


「銀之助、今こそ共に銀河政府を叩き潰そう。腐った政治を行う組織などこの銀河…いや、この世に必要ない。」


先ほどから眉間にシワを寄せ苦しそうな表情の銀之助。

バルカンの言う通りでもある。

しかし、しかしだ。

明らかに目の前のバルカンは常軌を逸している。


「無血革命のつもりでは無さそうやな。皆殺しにするつもりやな。」


「それ以外になにがある。」


「確かにお前の言うてることはわかる…。正直、正しいとさえ思ってまう…。………でもよ!!!それやったら海賊団の子供らも!じいちゃんばあちゃんも!巻き込まれるやろ!!!そもそもそもクーデター、それすらも政治戦争のひとつになるんやぞ!!!」


何も喋らないバルカン。

ただ静かに銀之助を見つめるのみ。


「あのイントリー星人との戦争も元をたどれば政治戦争のひとつやったんや!!!同じ事繰り返す気かよ!!!また血で血を洗う事になるんやぞ!!!」


「黙れッッッッッッッッッ!!!それ以外に解決する方法なんざ無いだろうが!!!!!」


ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


観客が良くも悪くも盛り上がる。

まるでギャラリーたちを楽しませるために用意されたかのようなデモンストレーション。

高ぶった気持ちを言葉としてぶつけ合うその姿に興奮冷めやらぬ様子である。


「バルカン!!!今まさに銀河政府が変わろうとしとるッッッ!!!新しく任命された大臣とかのもんらが腐った内側から変えようと必死に動いとるんや!!!お前も聞いたことあるんちゃうんか!!!ホンマの意味で銀河政府は変わ…」


「そんな眉唾を信じるか!!!!!!??!今までそんな話いくらでもあっただろう!!!何が変わった!?!!銀河は良くなったか!??!腐った外道は消えたのか!??!何も変わらんだろうがッッッ!!!!!!」 


バルカンが激昂。

身体から消えかけていた黒いオーラがじわじわと湧き始めた。

明らかに憎しみや恨みが滲み出ている。


「せやから銀河政府だけやなしに俺らも地道に動いていこうて話やろが!!!そんな腐ったゴミクズはなんにせよ極刑は免れん!!!………同じ事繰り返そうとお前がッッッ!!!するなよッッッ!!!!!」


「黙れ黙れ黙れッッッ!!!どうやら俺の見込み違いだったようだな!!!お前も俺と同じ地獄を味わった者同士と思っていたがとんだ腰抜けのようだ!!!ならば決裂だ!!!銀河政府に天誅!!!お前は邪魔だ銀之助ッッッ!!!!!!」


その瞬間互いに前に飛び出し上段回し蹴りがぶつかりあった。

そもそもがトーナメントなので戦闘は免れない。

しかし、これは悪い意味での喧嘩の始まり。

気持ちがいいものではない。

似たような境遇の2人による食い違った思想。

思いをぶつけあう。


ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!


体格差と種族の差もあってか圧される銀之助。

あまりにも蹴りが重たい。

魔法が得意でない近接格闘がメインの銀之助には相性が悪すぎる。

ヨーベイガーやディブロスには通用した自衛隊の格闘術も、バルカンの方が遥かに上だろう。

ならばその瞬間瞬間に生み出されるセンスを発揮する他ない。


「ゼアッッッッッッッッッッッッ!!!」


バルカンの右肘打ち。

銀之助はスレスレで回避し、バルカンの右脇腹に両手を構える。浸透勁による発勁。

しかし読まれていたのか左フックが飛んできたのでこれを両手で弾くことになる。


バシィィィィッッッッ!!!


(なんやこのパンチ…!!!かった…………!!!)


転けそうになるも、すぐに体制を取り戻しバルカンの前蹴りを両腕で掴み回転をかける。

ドラゴンスクリュー。

バルカンはその勢いにやられ倒れはするも、もう片方の足で銀之助の顔面を蹴り上げた。


「グブッッッッ!!!」


立ち上がってきたバルカンが倒れている銀之助に対し上から叩き潰すようにパンチを繰り出す。

これもなんとかスレスレで回避、発勁を腕に打ち込んだ。

その後バク転でバルカンから距離を取る銀之助。

しかしヌルヌル動くバルカンがそれを許さなかった。


「な………!!!!!クッソ………!!!」


「距離を取ったところでお前に使える魔法なぞ無いだろう。」


ガシッッッッッッッッ!!!


バルカンに右腕を握りしめられた銀之助は力任せにリングに叩きつけられた。

なんとか魔力を防御壁として頭部などに回したがそれでも威力は想像以上。


「ガッッッッッッッッッッッッ…………!!!」


飛び散るリングの一部。

白目を剥き口から唾が迸る。

意識を失いそうであるが、なんとか根性を振り絞り無理やりこっちの世界に戻る。

腕は握りしめられたまま。

準備は整った。


ガクンッッッッ!!!!!!


「!??!!??!!!!!」


銀之助を掴んでいた腕から全身にかけて電流が走ったかのように痺れ、力が抜けるバルカン。

崩れかけた膝がリングに当たりそうな瞬間目掛け銀之助は下段蹴りを膝の横部分に炸裂させた。

半月板を狙ったのだ。

痛みで顔が歪むバルカンの後ろに回った銀之助は、チョークスリーパーで完全にホールド。

殺す気などはないが、相手があのバルカンである。

頸動脈を締め上げての失神狙いではない。

首をへし折るつもりである。


「な………………なるほどな……………!!!お前が……俺に発勁で魔力を叩きつけていたのは……………あの瞬間を生み出す布石か………!!!」


「せや……!!!身体はおもろいもんで、こんなとこ繋がってるんかてとこが繋がっとる!!!あの合気道の塩田剛三御大かてそれを理解してたんやろうなッッッッ…………!!!」


つまりを魔力や気の流れをツボなどを利用した上での連動でバルカンを麻痺させたのだ。

しかしこの技は万能ではない。

何故ならばバルカンクラス相手には持続時間がどうしても少なくなる。

その証拠にバルカンはゆっくりと立ち上がっているのだ。


(膝に蹴り入れたのはええが…タイミングよく魔力被せてダメージ削りよったな…!!!角度もタイミングも完璧やったのに…やっぱり腐っても元軍人…!戦いのプロか…!!!)


バチチチ…………………


ぼんやりとバルカンの体に何かが起き始めた。

銀之助はこのまま首を絞め続けるか迷ったが、何が起きるのかわからないのでバルカンを離しその場を離れた。


バリバリバリバリバリバリッッッッ!!!!!


バルカンから発せられたものの正体。

それは緑に光る電気であった。


「なッッッッ!!!電気か!!!」


「バルカンの野郎!雷遁使いだったのか!!!」


驚愕するスペースファイターたち。

雷遁…雷属性の魔法を使う異星人は別に珍しくはない。

しかし、バルカンの電気量といい質といいそんじゅそこらのレベルではない。

まともに食らってしまった暁には炭と化すだろう。


「これを…捌けるか銀之助ええええぇぇぇッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


バルカンは電気の鞭を生成し、銀之助目掛け何度も振り回す。

なんとか回避する銀之助だが、避けるので精一杯なので反撃などとてもではないが出来ない。


「銀之助!!!反転魔法使えや!!!」


「ダメだディブロス!!!鞭の動きは一定じゃない!!!それに触れる瞬間に鞭の動きが変わったら感電するぞ!!!」


チェリオスの言う通り、動きが予測できないので銀之助の反転魔法はあまりこの場では使えないだろう。


シュンッッッッッッ!!!

 

「なッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


電気の鞭だけではなく、空いている左手から魔力砲を発射。

鞭も操っているせいか、スピードは最初に出したときと比べればまだ遅いがそれでも十分な速度を誇る。


「ングァッッッッ!!!」


なんとか直撃は免れたが、銀之助は左太ももを抉られてしまった。脂汗が滴り落ちる。

これで軽快な動きは出来ない。


「腰抜けの男と成り果てた軍人なぞ必要ないわッッッッ!!!消え失せろ銀之助ええぇぇッッッッ!!!」


(クッソ…!!!こうなったらアレを使うしか…!!!使えるのはせいぜい3回…!!!)


またもやバルカンが電気の鞭を振るい銀之助に狙いを定める。

銀之助は印を素早く結び、驚くことにその高圧電流が流れる鞭に触れた。

すると…


パスンッッッッッッッ!!!


「!???!!!!!」


「なっ…なんだ今のッッッ…!?!」


「アレは…!!!」


銀之助が触れた瞬間、鞭が消えた。

驚愕するバルカンにディブロスたち。

C.Bは銀之助が使った魔法を知っている様子であった。


「そんでもってぇッッッ!!!」


銀之助はすぐさま抉られた太ももに魔力の層を作り応急処置。

そして手のひらに風属性の魔力を纏い、それを丸鋸のような形に変貌させた。

高速回転しているのか、甲高い音が鳴り響く。


「トリス風輪ッッッ!!!」


手を振り下ろし超スピードでバルカン目掛け発射。

バルカンは対応が遅れ、左肩を引き裂かれた。


「ガッッッ………!??!」


「まだ終わらんぞアホンダラッッッ!!!」


太ももに痛みが残るも、今はそんな事言っていられない。この絶好の機会を逃してしまえば次は無いだろう。

銀之助はバルカンのもとに走り、勢いのまま顔面右肘打ちを炸裂させた。


ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!


よろけるバルカンのボディに連発でパンチをお見舞い。

しかし、相手はあのバルカン。

反撃で仕掛けてきた下段蹴り。

銀之助はそれをジャンプで回避したが、その瞬間バルカンがしゃがみ銀之助の両足を掴んで下に叩きつけた。


「鬱陶しいしいぞッッッッッッッッ!!!!!」


パワーボムである。


激しい背中と後頭部の打撲にのたうち回る銀之助。

バルカンはお構いなしに銀之助の頭を鷲掴みにし、宙ぶらりんにして持ち上げた。

アイアンクローだ。


「お前…さっきのは…魔法無力化魔法か…。どこでこんな技覚えた…。まさか地球人がこんな技使うとはな…!!!」


バルカンの腕を掴みもがく銀之助。


「なるほど…消失魔法ではなく、魔法を無力化する魔法だったのか…!!!」


「あぁ!??!言ってる場合かよ目ん玉ぁ!!!ていうかなんだよそれ!一緒だろうが!!!」


「チェリオスだっつってんだろうがボケ魚ぁ!!!消失魔法は相手の魔法の形に合わせてパズルを果てはめるように消す魔法だ!だが無効化魔法ってのらそもそも魔法自体を0にする魔法の事だ!!!」


「魔法魔法うるせぇよッッッ!!!」


「お前が聞いたんだろうが!!!やんのか!!!」


「2人とも喧嘩は辞めましょうッッッ!!!今はそれどころじゃありませんッッッ!!!」


言い合いをするディブロスとチェリオスを一喝するC.B。

2人は頭を冷やし、C.Bの言う通りだと試合に集中した。


「散々弄んでくれたなぁ銀之助…。だが銀河政府にいいように扱われた存在同士だ…。これが最後だ。俺たちと共に奴らを皆殺しにしよう。」


「さ…最後通牒かよ…!!!お前…だ、誰にいじくられたんな…!!!」


「いじくられた?何の話しだ。」


「さっき…!お前の腹殴った時に…!なんかおかしい思ったんじゃ…!外部からなんか…やられたんやろ!!!本来のお前やったら…皆殺しとか…せ言わんやろ…!!!」


「意味不明な事を。これは俺の意思だ。」


「目覚ませや!!!また政治戦争の蒸し返しや!!!お前のとこの仲間もやられる!!!それに…お前の小隊のメンバーはそんな安直な事せんやろがッッッ!!!」


「ッッッッッッッッッ!!!」


気がブレた。

バルカンの手が緩み、一瞬だけ隙が出来た。

銀之助は一気にアイアンクローから抜け出し、バルカンから距離を取った。


「しっかりせぇ!!!バルカンッッッ!!!」


「グ…………グォ……!!!」


頭を抱え苦しむバルカン。


「お…俺は…!俺は…!!!」


そんな事はお構いなしに身体からドス黒いオーラが滲み始め、バルカンの体を包んでいく。

もがき、暴れ、口からよだれを垂らしながら体を激しく揺する。


「戻ってこいッッッ!!!バルカンッッッ!!!」


「だ……………ま……………れぇぇぇぇぇぇぇぇぇッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


オーラが一気に爆発。

手のひらから魔力砲を発射。

銀之助はこれをまた無効化し、かき消した。

後使えるのはせいぜい1回だろう。


「やっぱし勝ちに行くしかあらへんか!!!」


銀之助は警戒しつつ、バルカンににじり寄る。


「ウガァァァダァァァァァァァッッッッッッ!!!!!」


バルカンは電気の鞭を両腕から発動させ、辺り一面乱雑に破壊していく。


(近づかれへん…!!!でもどっかで動きが止まるタイミングがあるはずや…!!!それを狙うッッッ!!!)


鞭の乱舞。

銀之助は鍛え上げられた動体視力でどうにか上手くこれらを回避。

出来れば二本の鞭が重なるタイミングでかき消したい。


ズガガガガガガガガガガガガッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


暴れ狂うバルカン。

すると一瞬、ほんの一瞬だけバルカンの膝がカクンッと下がった。

銀之助が放った半月板狙いの下段蹴り。

それが少しだけ効いてきたのだ。


(今やッッッ!!!)


少し距離はあるものの大丈夫。

タイミングも合っている。

後は運任せである。

バルカンが電気の鞭を振るい、銀之助がそれに合わせ手のひらをかざした。

その時。 


ポツ……………………

ポツポツ…ポタタ………

ザーーーーーーーーーー


雨。

戦闘に集中していたせいで気が付かなかった。

曇天が空を覆っていた。

まるで時が止まったかのような刹那。

目を見開く銀之助。

そしてバルカンは直接ではなく、濡れたリングに鞭を叩きつけた。


バリバリバリバリッッッッッッッッ!!!!!!


「ガァァァァァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


感電する銀之助。

あの時跳んでいれば、また違っていただろう。

バルカンは公開処刑と言わんばかりに2本の鞭を銀之助に巻き付け更に魔力を高めた。

もう既にゴングは何度も鳴っている。


カンカンカンカンカンカンカンカンカンッッッッッッッッ!!!!!!!


[決着はもうついている!!!即刻攻撃を中止せよバルカン選手ッッッッ!!!繰り返す!!!攻撃を…]


口を覆い顔が青ざめる観客たち。

銀之助は体が黒く焦げ始め、左足と左腕がもげ焦げ落ちた。

バルカンは一向に辞める気配がない。


「見てられっかッッッッ!!!」


シュバババッッッッ!!!!!!!!!


観客席から飛び出すスペースファイターたち。


「ボルッッッッ!!!」


チップがリングを覆うドームバリヤーの魔法をかけていたスタッフの1人を回転体当たりで弾き飛ばした。

するとドームバリヤーの魔法は消え失せ、誰でも中に入れるような状態に。


ズガァァァァァァァッッッッッッッッ!!!!!


バルカンはディブロスやルークたちによってその場で組み伏せられた。


29分2秒。

バルカンの勝利。




















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