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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
44/50

第44話 「殴り愛」

互いにその場からリングを蹴るように走る。

ヴェルタースは右腕、パルムは左腕で拳をぶつけ合った。

鈍い破裂音のような音が会場に響き渡る。


ビリビリビリッッッッ!!!


(痛ぇ…!!!でも…なんとか耐えられるッッッ!!!)


体格差のこともあり、直接的な意味での殴り合いは難しい。

パルムが身長155cmに対しヴェルタースの身長260cm。

大人と子どもレベルである。

パルムがヴェルタースのボディに入れるためにはまず懐に忍び込まなければならない。

それには飛んでくる左右のミサイルのようなパンチを捌く必要がある。

正直拳同士をぶつけ合うのは得策ではない。

しかし、パルムはこのパワーダンプモードの頑丈さを確かめたかったのだ。


「す…すげぇ!!!あのヴェルタースと互角に打ち合ってやがる!!!」


「攻撃もさながら、防御力も上がっています!!!これならばいけるかもしれません!!!」


驚きを隠せないディブロスにパルムを称賛するルーク。


頑張れー!!!!!

パールームーッッッッッッ!!!


スペースファイターや観客席からの応援。

パルムは鮮血を迸らせながら、いい笑顔で正面から打ち合う。


「お前羨ましいなッッッ!!!じゃあ俺も応援してもらおうかぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


ヴェルタース!!!

ヴェルタース!!!!!!!


一声かけただけでのこの熱さ。

会場は大盛り上がりで2人の男の正面からの殴り合いに狂喜している。

パルムはガードしつつ次の一手をかけるの繰り返し。しかしこれではマズイと危機感を覚え始めた。


(なんか動きが鈍くなっとる!!!)


その通り。

このパワーダンプは攻撃ならびに防御が上昇するモードであるが、動きが鈍くなる弱点があったのだ。

そこに気づいたパルムは危険な賭けと知りつつ、なんとガードを解き攻撃に集中する事にした。


ズドドドドドドドドドドッッッッッッッッ!!!


骨と肉がぶつかりあう。

ヴェルタースも最初こそ両腕を顔の横に構えしっかりとガードしていたが、この状況に夢中になってしまったからかパルムと同じくノーガードでの殴り合いに持ち込んでいる。


「ウアアアアアァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


「ガギャァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


白熱の殴り合い。

ここにあるのは憎しみなどではない。

1人の男と1人の男の漢比べ。

まさしく殴り愛。

互いに歯茎が見えるほど歯を食いしばり目の前の相手に拳を叩き込む。

もはやどこを殴ろうと関係ない。

とにかく殴るのみだ!!!


「すんげぇボル!!!ノーガードで殴り合ってるッッッッ!!!」


「でもダメです!!!いくらあのパワーダンプが頑丈とはいえ、手数はヴェルタースさんの方が上!!!」


「チェリオスの時同様…変身しても余裕勝ちは狙われへんか…!!!パルム!!!いけぇぇぇぇぇッッッッ!!!」


あの巨漢のバケモノのヴェルタースと正面から打ち合えるだけでも拍手ものではあるが、このままでは丈夫なサンドバッグである。

パルムもしっかりとこの事は分かっており、殴りつつも右腕に集中していた。


(さっきは5連でキツかった…!!!でもこの状態やったらまだなんとかいける…!!!)


そしてヴェルタースがパンチを繰り出すために右腕を引っ込めた瞬間、胴体めがけ魔力を込めた左腕を突きだした。


「10連…!!!魔圧ブレ………!!!」


ズドォォォッッッッッ!!!!!!


「コブァッッッ!!!」


ヴェルタースの左フックが飛んできた。

右腕に集中するあまり、ヴェルタースもノーガードの事を忘れていた。 

パンチの威力で頭が揺れ目の前が歪む。

しかしまだパルムの左腕は生きている。

今度はヴェルタースの右腕が迫るはずだ。

ならばその拳にお見舞いするだけだ。


「ガビアルショットッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


「ッッッッ!!!!!」


通常の拳ではない。

更に勢いがのった一撃にパルムは少し油断するも右拳をぶつけ、魔圧ブレーカーを炸裂させる。


ドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッ!!!


8連で止まった。

ヴェルタースがパルムから拳を離したのだ。


「と、止まったぞ!!!なんでだよ!!!」


「ヨーベイガー、魔圧ブレーカーってのは接触技なんや!つまりは…拳を当て続けんと連続で叩きつけられへんのや!ヴェルタースはその事がわかったんか離したんや!!!」


それだけではない。パワーダンプモードでの魔圧ブレーカー。それも10連の威力があるにも関わらず同等の威力のガビアルショットの恐ろしさが伺える。

パルムは次の手を考えるも、間髪なしに次々と嵐のように飛んでくる拳のせいで思考が芳しくない。


(ど………どないしたら………!!!)


「パルムッッッッッッッッ!!!競うんじゃねぇ!!!お前のリズムで動けッッッッ!!!」


(チェリオス……!!!俺のリズム…、競うな…?………ハッ!!!そういうことかよ!!!)


チェリオスの掛け声に何かピンと来るものがあったのだろう。

パルムはヴェルタースのパンチを両手で左右それぞれしっかりと手のひらで受け止めた。

ビリビリとくる衝撃に手が手首にかけて粉々になった感覚に襲われるもそれはあくまでも感覚。実際はまだまだ元気である。

それに止めたのはこの一瞬でいい。

コレが出来ればなんの文句もないのだ。

両腕に魔力を込めつつ、パルムはヴェルタースの顎めがけハイキックを食らわした。


「ゴッボォォォォッッッッ!!!」


完全に油断していたヴェルタース。

それもそのはずである。

ヴェルタースは思いっきりボクサータイプ。

自慢のパワーと筋肉のアーマーで相手を殴りつける戦法。

パルムは必死過ぎてこれに合わせるように戦っていた。

本来の戦い方はアクロバティックな動きで相手を翻弄するタイプの事を自分で忘れてしまっていたのだ。

若干、宙に浮くヴェルタース。

決めるにはこの瞬間しかない。

パルムは盛り上がった筋肉に魔力を更に加え、ヴェルタースのボディめがけ両腕を放った。


「10連ッッッッッッッッ!!!ツイン魔圧ブレーカーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


両横腹に挟み込むかのように打ち込んだ魔圧ブレーカー。 


ズドドドドドドドドドドッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


ヴェルタースは両サイドから激しい打撃に襲われた。

白目を向き口からよだれと胃液が吐き出される。

ツイン魔圧ブレーカーが終わったのち、パルムは更にダメ押しの一撃を放った。

いくらパワーダンプとはいえ、正真正銘これが最後の一発である。

スタミナの限界、筋肉断裂、骨が軋むも関係ない。

 

「5連ッッッッ!!!魔圧ブレーカーッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


ヴェルタースのみぞおち狙い放たれた最高のパンチ。

打ち終わったパルムはその場で膝をつき、肩で息をする。

ヴェルタースは回転しながら激しく体をリングに何度も叩きつけ吹っ飛んだ。


(もう腕が上がらん………!!!頼む……!!!これで決まってくれ…………!!!!!)


ドゴッッッ!!!!!

ガッッッッ!!!!


激しく横転するヴェルタースの重みと衝撃でクラックが入り崩れるリング。

しかし…


ドンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


無理やり威力をかき消したのだろう。

ヴェルタースはリングのラインアウトスレスレの場で仁王立ち。

両足はしっかりとリングについている。

顔は影で見えていない。

パルムは傷だらけの顔で目を見開き、それを見つめるだけ。


「………まだ立つんかよ…………。」


もう本当に一歩も動けない。

嫌な汗が顔を伝い、動悸が激しくなる。

ゆっくりと口角が上がるヴェルタース。


「………………………いいパンチだったぜ……………。遥々遠いとこから来て…お前と戦えて………………………幸せもんだな………俺………………は………………。」 


ドザァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!


仰向けで大の字に倒れたヴェルタース。

頭の黄金の角はラインを越えている。


ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


カンカンカンカンカンカンカンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


激しい衝突の行く末。

24分54秒。

パルムの勝利。


「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!よくやったパルムッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


「流石俺に勝った男だぜッッッッッッッッ!!!!!」


観客やスペースファイターたちの歓声で溢れる会場。


「や…………やった……………やったッッッッ!!!!!いよっしゃぁぁぁ……で、いででででででででででででッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」


アドレナリンがきれたのか、全身に痛みが走るパルム。

そしてまた違和感。

全身に均等に痛みがあるのではない。

何故か腕中心に激痛が走る。

ほかのヴェルタースに殴られた部位は次第に回復傾向が見られるのに腕だけ治りが遅い。

なんとか踏ん張りをつけ、ゆっくり立ち上がろうとするも後ろに倒れてしまった。


「い………いでぇ……………なんやこれ………、なんで………回復せぇへんねん……………。」


「大丈夫か?」


「え?」


顔だけ動かし自分の腹方面を見ると、ヴェルタースが知らぬ間に傍まで来ていた。


「え…………もう…う、動けんの…………?バケモンやんけ……………。へ………へへ………。」


「楽しかったぜパルム。俺と打ち合えるやつがこの星に…この大会に参加してるなんざ誰が思うよ…。おら!医務室行くぜ!!!」


「さ………サンキュー………ちょいと……寝る………わ……。」


パルムを優しくお姫様抱っこで運ぶヴェルタース。

本人も胸骨と肋が四本折れているのだが、それを感じさせないタフネス。

そして自分に勝った相手に対する敬意。

2人は殺し合いに近い戦いをしたにも関わらず、優しく満足げな表情を浮かばせていた。


「なんだったら褒美にチューしてやろうか?」


「いやそれは辞めて!!!」


「起きてんじゃねぇか。」


「そら起きるわい!!!」


チャンチャン♪








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