第43話 「紅蓮の重戦車」
ドドドドドッッッッッッッッッッッッ!!!!!
歯を食いしばり右腕でヴェルタースのみぞおちに拳を叩きつけたパルム。
1回しか殴っていないにも関わらず、5連続で多段ヒット。
ヴェルタースは殴られた勢いで30mほどふっ飛ばされた。しかし、両足はリングにしっかりとついているのでブレーキ痕が残る。
「ハァ………ハァ………ど、どうや………。」
右腕が痺れ、疲れと焦りが顔に出ているパルム。
ヴェルタースは…………
……………………………………
ゴブッッッッ
ここに来て初めての吐血。
ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!!!!
「な…………なんだあの技…。」
「ヴェルタースさんが…吐血した…。」
驚くディブロスにルーク。
あのヴェルタースが吐血するほどの威力。
それにあんなパンチ見たことがない。
「まだ不格好やけど、出来たんやの…パルム…。」
興奮と喜びで笑みがこぼれる銀之助。
同じくグラーケンの元で修行をしていた銀之助。
パルムがこのトーナメントに備えて本人なりに必死に修行していたのはこの目で見ていた。
それに銀之助が家で寝ているときもパルムは夜な夜な近くの公園でこの技を練習していたようだ。
チェリオス戦でのリュウジンバスターもグラーケンの教えの元自分で編み出した技なのだ。
「魔圧ブレーカーか…。魔力を込めた拳をまるで油圧ブレーカーのように叩きつけるシンプルな技…。しかし、相手の表面と同時に内部に衝撃を与える事が出来る…。あんな技隠していたのか…。」
腕を組みながら冷静に分析するチェリオス。
パルムがチェリオスとの試合でこの技を出さなかったのはシンプルに当たらないと判断したからだろう。
しかし…………………
「………………なんだぁ、いい技持ってんじゃねぇか。効いたぜ…今の。」
(…………!効いたのは効いたんやろうが…致命傷になってへん………!!!)
ヴェルタースはまだまだ元気でケロッとしている。
確かに腹には殴られた痕が残った上での吐血。
内臓にダメージはあるのだろうが、倒すまでには至らない。やっとのこさまともにダメージを与えるのに成功しただけだ。
「エンジンかかってきたなッッッッ!!!今度は俺の番だぜッッッッ!!!」
また先ほどのように突進を仕掛けてくるヴェルタース。どうやらエンジンがかかったのはパルムだけではないらしい。
「パルムッッッ!!!モードチェンジしろ!!!スカイハイになるんや!!!」
銀之助のアドバイスを聞き、パルムは集中。
「せや…!それがあった!!!えぇっと………確か………こんな感じで……!!!」
眉間の上あたり。第三の目に集中し、魔力を高め全身に回す。
「ゼアッッッ!!!」
軽い衝撃とともに髪の色が黄色から淡い水色に変化。少し時間はかかるものの、だんだん変身の感覚が掴めてきた。
ヴェルタースは目の前まで接近。
爆弾のような拳が迫るものの、パルムはなんとかこれを回避。
そればかりか目にも留まらぬスピードで反撃。
ヴェルタースの全身に拳と蹴りを浴びせる。
ズガガガガガガガッッッッッッ!!!
ヴェルタースも負けじと両腕をブンブンと振り回し対抗。
しかしスピードはパルムの方が上。
いくらヴェルタースの攻撃が速いとはいえ、チェリオス程ではない。
全て躱しきった上で確実に攻撃を当てていくパルム。
観客は盛り上がり、ルークやC.Bたちも興奮しているが銀之助とチェリオスは渋い表情。
ヨーベイガーが不思議に思い、どうしたのかと訪ねる。
「……………………アカン…!!!効いてへん…!!!」
確かにパルムはヴェルタースの攻撃を全て回避。その上で一方的に殴りかかっている。
しかし、効いていない。
なんなら通常時…マルチモードの黄色い髪の状態の方がまだ効いていた。
「ダメだ…。あまりにも筋肉が分厚すぎてスカイハイの攻撃が通用しないんだ…。俺の時は確かに威力のある攻撃だった。でもヴェルタースは格が違うんだ…。あまりにも硬すぎる…!!!」
「それに速く動くことに集中するせいで拳に威力が乗ってへん…!!!なんやったら黄色い髪の時のほうがまだ威力あった…!!!」
銀之助とチェリオスは冷や汗を流しつつパルムを見守るが、だんだんパルムもこの2人同様の思考になってきたのか雲行きが悪くなってきた。
「ってことは……、今は避けるので精一杯てことかよ!!!」
ヨーベイガーに対しゆっくりと頷く銀之助。
(アカン!!!全然手応えがあらへん!!!スピードに威力が乗ってへんのか!?いやそんな事ないやろ!!?!チェリオスには通用したんやぞ!!!)
「ちょこまか動くんだな!!!でもどれもこれも大したことねぇぞゴラッッッ!!!」
パルムは埒があかないので一旦ローリングソバットをヴェルタースに当て距離を取った。
するとヴェルタースが何やら両手を組み全身に力を込め始めた。
極太の血管が全身に表れ、パルムにとって絶対によろしくない事をしようとしているのは明らかだ。
「な…なんや…………。」
「お前ほどじゃねぇが…俺も速く動こうと思ったら…。」
更に筋肉が盛り上がったと思うと、血流が全身に周りヴェルタースの身体から高熱の蒸気が舞う。
そして距離を取っていたにも関わらず気がつくとまたもや目の前にヴェルタースが現れたように接近。
「できるんだぜ?」
ドゴオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
間一髪で回避は成功したものの、リングは半壊した上リングを覆う魔法ドームに穴が空いた。
興奮し喜ぶ観客に驚きと恐怖で慄く観客。
仰天する他ないパルム。
もしまともに当たっていたら木っ端微塵だっただろう。
ガシッッッッッッ!!!
「ファストカイマンって技なんだけどよぉ…。直線でしか移動出来ねぇのが弱点だわな。」
(しまった………………ッッッッッッ!!!)
呆気にとられているパルムの脚をガッシリと掴む…いや、握るヴェルタース。
そしてそのままパルムを背中側までロックし高く跳び上がった。
「ま…まずいッッッッッッ!!!アレは僕がかけられたヴェルタースさんのホールドッッッ!!!」
「北極星崩しッッッッッッッッッ!!!」
パルムはどうにかもがき脱出しようとするものの、ヴェルタースに顎と脚をしっかりとロックされているので面白いぐらい動けない。
勢いのまま落下するこの現実から逃れられる術などパルムにはなかった。
「パルムッッッッッッッッッ!!!技外せッッッ!!!」
「足掻くんだパルムッッッ!!!」
仲間からの声援を受けどうにか足掻くパルム。
「ぐ………ぐぎぎぎ…!!!!!」
「無理だぜ!!!この技はかけられたが最期!!!逃れる術なんざねぇ!!!」
もうリングまで残り数秒。
「楽しかったぜッッッ!!!な〜んかまだお前にはありそうなもんだったがッッッ!!!十分楽しませてもらったぜ!!!」
(やべ……………………!!!!!!!!!!)
「北極星崩しッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
ドゴオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
激しい衝突音。
その場を支配する砂煙がリングを包む。
まともに食らってしまった。
あのルークの甲冑ごと背骨をへし折った技。
華奢な体のパルムがこんなもの食らってしまった暁には、本当の意味で体が真っ二つに捌かれてしまう。
「ぱ………パルム……………。」
観客が息を呑み、だんだん姿を表す2人に集中。
パルムは白目を向き、ヴェルタースの北極星崩しがしっかりと決まっていた。
なんとか体は引き裂かれていないものの、ダメージは相当なものだろう。
ヴェルタースもワイルドな笑顔でパルムを固定。
誰しもがパルムの敗北を認めた瞬間。
「………………………………ん?」
しかし何か違和感。
ゆっくりとヴェルタースが目線を上にする。
「あッッッッッッ!!!」
銀之助たちが何かに気づく。
ヴェルタースも少し間が空いてからその違和感の正体に気がついたようだ。
「こ………………コイツッッッッ!!!!!」
その違和感の正体。
銀之助が叫んだ。
「パルムッッッ!!!身長が低すぎて技が決まってないッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
その通り。
ルークは身長が190cmある。
だからヴェルタースの北極星崩しをまともに食らった。
しかしパルムの身長は155cm。
この低さ故に鯖折りが決まりきらなかったのだ。
なんという運の強さ。
そしてヴェルタースは肩からなにか生暖かい液体が流れているのを感じた。
「…………ん?…………うっわッッッ!!!コイツ小便漏らしてやがるッッッッッッッッッッッッ!!!!!!」
思わずパルムを手放したヴェルタース。
焦りつつ手で小便を払う。
その場が一斉に笑いに包まれた。
「なんだよそれ!!!アイツマジで予測できねぇな!!!」
腹を抱えて笑うディブロス。
銀之助はどこか安心した様子で口角が上がる。
目が✕になっているパルムにしっかりしろと声をかける。
パルムは、はっ!と気が付くも何が起きたのか理解出来ていない様子。
「アレ…?何が起きたんや…?」
「パルムッッッッッッッッッッッッッッッ後ろッッッッッッッッッ!!!!!!!!」
「後ろ?」
銀之助に注意喚起されたものの時すでに遅し。
パルムはヴェルタースに両腕を引っ張られ、背中にバカでかい脚をくっつけられた。
サーフボードストレッチである。
「ぐぎぎぎぎぎぎッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
「テメェ!よくも小便かけてくれたな!って、まぁそれは置いといて…コイツはどう回避するよ?」
グググググ…と引っ張られる腕が伸びきり、パルムは歯を食いしばりどうにか耐え忍ぶ。
北極星崩しからは運良く掻い潜られたものの、こちらは両腕をしっかりと掴まれているので身動きが取れない。
もはやモードチェンジすら意味をなさない。
「パルムッッッ!!!」
「もう十分楽しめた。ギブアップしろ。なんも恥ずかしくねぇよ。ここまで俺を楽しませてくれたんだ。」
ヴェルタースに腕を引っ張られつつ敗北宣言を勧められるもまだ踏ん張り諦めないパルム。
ヴェルタースは更に力を加え、たまらずパルムは顔をリングに伏した。
「俺もわざわざ引きちぎりたくねぇ。さっさとギブアップしろ。」
「う………うぅ……………!!!!!」
「おい!!!スカイハイで逃げろパルム!!!」
「無理だディブロス!!!あんな状態じゃ変身したところで意味がない!!!」
「じゃあどうすんだよ!!!」
ディブロスとチェリオスの言い合い。
確かに変身してもどうにもならない、しかしこのままでは腕が取れるだけだろう。
見守るしかない。
「う……………ぐ………、ぎ…………ギブ……ア………。」
前髪が垂れてるので見えはしないが、痛みと苦しみで涙が流れるパルム。
腕の皮膚は裂け始め、筋肉が血とともに露出。
もう限界が来ている。
ぱ………む………!
ぱー……る………む!!!
ぱーるーむ!!!
パーーールーーーム!!!
何か聞こえる。
自分の名を叫ぶ声が聞こえる。
パールーム!!!
銀之助である。
大声での声援。
どうにもならないと分かりつつも、銀之助にできるのは応援だけ。
ならばそれを全力でするだけ。
例え…勝とうと負けようとも。
「ぎ…………銀ちゃん………………。」
涙でぐしゃぐしゃになった顔を少し上げるパルム。
パールーム!!!
パールーム!!!!!!!
チェリオスやC.B、スペースファイターたちが次々に応援。
そしてついには観客も次第にパルムの名を叫ぶ。
「…………………………ぐぬぬぬぬ…………!!」
また踏ん張り始めたパルム。
(負ける…………わけには…………!!!!!)
次第にパルムの周りに木霊という名の粒子が集まる。
ヴェルタースは目をつむり最後の力を込めた。
「安心しろ。ちぎれても魔力ドリンクですぐに治る。」
目を開け、じゃあなと呟き腕を引っ張った。
ドッガァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!
直後爆発。
ヴェルタースは吹き飛び、両手でリングに爪を立て何が起きたのかパルムを確認した。
「おいおい!!!なんだよそれぇ!!!まだ楽しませてくれんのかッッッッ!??!!」
笑顔のヴェルタース。
パルムは髪の色が紅蓮に染め上がっていた。
「また…また進化しやがった…!!!」
「俺の時はスピードタイプ…!!!順当にいけばあのモードチェンジは………!!!!!!」
チェリオスたちが興奮さながら呟きあう。
ヴェルタースはそのままパルムに殴りかかった。
「ゴギヤァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」
そのままパンチはぶち当たり、威力でパルムは揺れた。
しかし、目が死んでおらずカウンターでヴェルタースに左フックをかけた。
「ゴベアッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」
ヴェルタースは右頬を殴られ、片足で数歩移動しここに来て初めて尻餅をついた。
ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!!
「なんだぁ………俺が感じてたのはこれか…。まだなんか隠してるなって思ってたんだ…。」
「別に隠してた訳やない…。でもお前とみんなのお陰でここまで来たんやと俺は思う…。サンキュー!!!」
「名前は?」
「名前?」
「そのモード…あの目ん玉星人と戦ったアレはスカイハイだろ?なんなら俺がつけてやろうか?」
「嬉しいこと言うてくれんな…。せっかくやし、頼もかな。」
「力をこれでもかと放出するモード………。【パワーダンプ】とかどうよ。」
「ええやんけ。センスあるぜ…。」
ヴェルタースは立ち上がり、パルムとお互いに構えを取り本当の殴り合いが始まる。




