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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
40/50

第40話 「アイスギャル」

「うんうん…大丈夫だって!ねーちゃん絶対優勝してみんなに美味しい物買ってあげるし!心配とかマジいらないから!」


会場の廊下の端。

口を抑え笑いつつ電話をする1人の少女。

フリーズ星人のディアである。

笑うたびに豊満な胸が揺れ、ボタンをわざと一つだけ外しているホットパンツが光る。 


「そうそう!船長も優勝するしでねーちゃんも優勝するしで儲けものよ!お金いっぱい持って帰るから心配しなくてもいいっての!………え?何?タツ坊の具合悪いの…?」


電話の相手はトコヨ海賊団のメンバーだろうか。

大量の賞金とベルトを持って帰る約束をして安心させる。

しかしどうやらメンバーの団員の具合が悪い様子。 

トコヨ海賊団は皆成人してる訳では無い。

中にはどう考えても戦力になりそうもない子どもたちも居る。

みんな戦争孤児であり、バルカンとディアが各惑星を周り迎え入れたのだろう。

何を隠そう、ディアもその一人。

バルカンが最初に出会った孤児であった。

ディアが赤ん坊の時からバルカンは面倒を見ているのだ。

しかし父と娘という関係でもない。

例えるならば家族…としか言えないだろう。


「キャプテンには電話してみた?…………そっか、出ないか…。薬は?………最後の飲んじゃったか…。オケオケ、大丈夫。なんとかなるから。」


今から試合が始まるのでそろそろ電話を切ると言い残し、ディアはリングが広がる元へ向かう。


「…………チッ……。バカバルカン…電話ぐらい出てやれっての…。何してんのよアイツ…。」


会場は既に観客の声援で溢れている。

男の部とはまた違い、スタイル抜群の女性陣が見れるからという理由で男性の客がやはり多めである。


[お待たせ致しました!いよいよ女性の部も大詰め!手っ取り早く始めましょう!赤コーナー!あのクトゥルフ空手の初段であるマンナ選手を打ち破った氷の戦姫!冷徹な攻撃は情熱すらも凍らせるか!?ディア・フローズン!!!]


ウオオオオオオォォォォッッッッ!!!


「冷徹………ね…。」


「くぅ…。」


マンナは目をつむり情けなさそうな申し訳なさそうな表情を浮かべる。

アスカがマンナの肩に手をやりなだめる。


「対して青コーナー!尺の都合でカットされたがあのアラフォーのマクロビ選手を打ち破ったボン・キュッ・ボン!どのような戦い方をするのかやっと見れるぞ!ルーヴァ!!!」


「ぐぅ………!!!」


苦しむアスカ。


「ちょ、なんですのなんですの!??!その煽りはあまりにもプライバシーの欠如ではありませんの!??!」


「え??!アンタ年上やったん!?ていうかアラフォーなん!?」


サーシャやベラニーたちが口を開けて驚いた。


「だったらなんですのよ!!!歳なんか関係ありませんこと!フンッ!!!」


「いやぁ、そうじゃなくてよ。アラフォーにしては若いし肌もピチピチだなって思っただけよ。」


タバコを吹かしつつフォローするベラニー。

サーシャもウンウンと頷き同調。

マクロビは表情を変え、パァァと笑顔になり上機嫌に。

サーシャはわかりやすいなぁ…と少し呆れるのであった。

因みにマクロビの実年齢は389歳である。


「お!ルーヴァさん戦うんですか!」


「お!マジ?見たい見たい!」


サーシャたちが後ろを振り向くとそこにはウサギの女の子とピエロの女の子が2人。

ボーロとアプリコットである。 


「相手のディアさんはフィジカルも魔力も高い方です!なんにせよ油断は禁物。それに次に控えるは…アプリコットさんですもんね。」


「だね〜。怖いなぁ…。」


作者の都合でカットされてしまったが、ボーロはアプリコットと戦い敗北。

そろそろアプリコットの試合が控えていると言うことで事前に選手専用客席に来たということだ。


「ごめんなぁボーロちゃんにアプリコットちゃん。作者の都合でカットされてもうて…。」


「大丈夫ですよ!まぁ………書いて欲しかったですけど。」


「お、煽りも終わって中央にディアとルーヴァ集まってるぜ。」


ベラニーが煙をフゥーッと吹き出し、みんなをリング中央に促す。

そこでディアとルーヴァは拳を合わせていた。


「本気でいくだよ!ディアちゃんも本気で来て欲しいだ!」


「やる気満々じゃん。何ぃ?アンタ優勝して賞金で何すんの?田舎出て都会で垢抜けでもしたい感じ〜?」


「んなもん興味ねぇだ!家で腹空かせて待ってる妹たちがいるだ!それに病気のとーちゃんの薬買って帰るだよ!」


それを聞いたディアは少し口をポカンと開けること数秒。

相手を挑発する顔から真剣な面持ちに変わる。

それを見て聞いていたボーロは顎に指を当て不思議がっていた。


「ん?どないしたんボーロちゃん。ウンコしたいん?トイレは確か…」


「さっき行ってきたから大丈夫!2人の会話聞いててちょっとね…。」


「なんですの?アナタここから2人の会話が聞こえますの?」


「ウサギだからね。耳良いからね。ルーヴァさんも色々背負ってるんだなぁって。」


「確かに今回の宇宙トーナメント、変に色々背負ってたり不幸なやつらばっかり集まってんな。一部除くけど。」


「……………なんでこっち見ますの。」


「まるで………」


ゆっくりと口を開くボーロ。


「まるで?」


それに対して首を可愛らしく傾げるアスカ。


「何かに引き寄せられたかのような…………。」


[それでは試合開始いぃぃぃぃッッッッッッッッ!!!!!!!]


カーーーーーーーーンッッッッッッッッ!!!


ゴングと同時に息を思いっきり吸い込むルーヴァ。

そしてリングを蹴り飛ばし、ディアに向かい走り出した。


「それマジ?突貫女じゃん。」


手のひらを前にだし、小さな無数のアイス・コーンを発動。

威力は低いが連続性とスピードに特化している。

こちらに向かい一心不乱に走るルーヴァに直撃は免れないと思った周りであったが、当たる少し手前でルーヴァは急ブレーキ。空中に高く跳び上がった。


「カーフブラストッッッッッッッッ!!!」


ブフゥーッ!と先ほど溜めた息を発射。

勢いはまるで台風だ。

カーフブラストに巻き込まれたディアはそのまま吹き飛ばされ、リングの場外ラインに迫る。


「風遁に特化してる事ね。でもまぁ…」


ディアは冷静にライン手前に氷の壁を出して場外を免れた。


「こんなもんで終わるわけねぇだわな!!!」


ルーヴァは勢い良く着地。


「ゼララララララララララッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


喉を振動させ、波のある風を氷の壁にもたれかかっているディアめがけ発動。


「なんちゅう魔法や!ウチの風遁が屁みたいや!」


「例えですわよね!?例えで屁って言ってるだけですわよね!?こきませんわよね!?」


「うるせぇぞアラフォー!ちょ、黙って見てろ!」


「なんですって!?このクソメイドは躾がなってなくて!?」


キーキー姦しいマクロビはさておき、自身が出した氷の壁に押しつぶされる形になるディア。

アイス・コーンなどの魔法を発動させようにも突風のせいで勢いがすぐに死にリンク外へと転がるだけ。


「うっ…………とぉ……しいってのッッッッッッッッ!!!!!」


ディアは氷の壁に付け足すように氷のドームを形成。

ほんの少しずつではあるがドーム自体はルーヴァの風遁で動いている。

しかし無防備の状態と比べればマシである。


「んな事したら動けねぇだよ!!!叩き潰してやるだぁぁぁッッッ!!!」


全身に力を込め走るルーヴァ。


「なんか…危ない気がするんだけど…。」


怪訝な表情のアプリコット。

マンナも同様である。

前の試合で両腕を氷漬けにされたあげく、粉々にされたのだから。


「でもルーヴァちゃんもウシチチでバカっぽいけどアホではないと思う。何も考えずに闇雲に攻撃する子じゃないよ。」


アスカの言うとおりでもある。

試合運びを見届けるしかない。


「ゼラァァァッッッッ!!!」


正面からのストレート。

激しい破壊音とともにドームは砕け散った。

ドームごとディア本体をぶん殴ったルーヴァ。

手応えは確かなものだ。


ポタ………ポタタ……………


「ッッッッ!!!」


滴り落ちるは鮮血。

ただ、それが流れるはディアではなくルーヴァであった。


「アイスボディ。」


氷の霧から現れたのはまるでアーマーのような氷を纏ったディア。

ルーヴァの右拳はディアの胸辺りにヒットしたのだが、硬さのせいで皮膚が裂け骨が折れたのだ。


「爪もあるし。」


ズバァァァッッッッ!!!


吹っ飛び転がるルーヴァ。

ディアの手は巨大な氷の爪になっており、その指先は鋭利。


「この魔法楽なんよね〜。1回発動したらそれでいいし。」


胸から腰にかけて裂かれたルーヴァの身体。

引き締まった筋肉も氷の爪の前では無力。

流れる血とカウンターを貰い少しの焦りからくる冷や汗。

ディアはそれだけ?もう田舎帰ったら?と遠目に煽りを入れる。

しかしドームは壊れ、氷の壁も消えた今ディアは氷の鎧を除き無防備である。

ルーヴァの風で飛ばされればそれまで。

防ぐものがない。


「ドームが壊れた!ディアちゃん無防備だし、またカウブラストでぶっ飛ばしちゃえ!」


「いや…無理だろうな。」


え…?と振り返るボーロに対して冷静なベラニー。


「なんで?まさかあの氷の鎧めちゃくちゃ重たいとか?」


「まぁそれもあるだろな。でもそこまでの重さではないだろ。じゃないとアイツ本人も動けねぇだろうし。それよりもルーヴァの周りだ。」


「周り?」


ウオオオオオオォォォォ!!!

ワーワー!!!


盛り上がる観客たち。


「ハァ………ハァ…………。」 


痛みからか息が浅いルーヴァ。

しかしそれだけではない様子だ。


(…………空気が薄い…。あの鎧の能力だか…。)


周りの空気が一気に冷え込み、ルーヴァは呼吸が浅くなっていたのだ。

これでは吸い込んだ空気を吐き出す攻撃は出来ない。

身体も寒さで震え、ルーヴァは簡単に追い込まれてしまった。

それに観客に被害が及ばないようにしているリングを包む防壁魔法のせいでもある。

呼吸などは出来るものの、リング自体を覆っているので冷気が防壁の中で凝縮されディアの氷遁がより強まっているのだ。

つまり、この試合の舞台設定がディアにとって好条件すぎるということである。


(これに賭けるしか…ねぇだ!!!)


ルーヴァはかじかんだ指を動かし印を組む。

そして両拳を合わせ、魔力を練り上げ全身を黒に染め上げていく。


「なにそれ。」


「氷には…………それよりも硬いもので殴るに限るだ…。」


猛スピードで突っ込むルーヴァ。

気がつくとディアの目と鼻の先である。


「はっや!!!」


「死ぬんじゃねぇだよ!!!」


漆黒に染め上がった拳がディアの鎧に衝突。


「アイアンフィストッッッッッッッッ!!!」


ぶっ飛ばされるディア。

空中でなんとか体勢を整え、爪をリングに食い込ませ耐える。

殴られた胸あたりをみると鎧が砕け陥没。

クラックも入っており、強い力が加わったことがよくわかる。


「……………鉄か…。」


「その通りだ!鉄は氷よりも硬ぇだよ!!!」


身体能力を上げる魔法のひとつ。

ルーヴァは魔力を練り上げ、血中に含まれる鉄を増加。それが皮膚の表面にまで現れ、漆黒の鉄腕となった。

間髪入れずに突きと蹴りの猛攻。

ディアも負けじと反撃を試みるも氷の鎧がみるみるうちに剥がされていく。

兎に角今は本体のボディに打撃を受けずにラインかは逃げ出さなければならない。

それにこのアイスボディには弱点がある。

鎧を纏っている最中は他の魔法を発動させる事が出来ないのだ。

ピーカブースタイルでどうにか首から上、胸の打撃を防ぐも剥がれ落ちていく鎧が答えである。

そして完全に剥がれ落ちた腕にガード越しから狙いを定めるルーヴァ。


「ゼラッッッッ!!!」


「ッッッ!!!」


ディアはすかさずガードを解きルーヴァの突きを利用し一本背負い投げを仕掛けた。

しかし直後握っている手のひらの部分に激しい痛みが走った。思わず腕を放す。

真っ黒に染め上がったルーヴァの腕から鉄の棘蛾飛び出し、ディアの手を貫通したのだ。


「形状変化もできんのッッッ!?キッショ!!!」


「奥の手は隠すものだよ!!!」


「いけぇぇぇッッッ!!!ルーヴァちゃぁぁぁん!!!」


「今ですわよッッッ!!!」


ルーヴァが渾身の一撃をディアに加えた。


ドゴォォォッッッッッッッッッッッッ!!!!!


…………………………

…………………

…………


「バ〜カ。」


「…………………ッッッ!!!」


ルーヴァの拳は確かにディアに当たった。

しかし、氷の鎧が胸辺りに一気に集中し分厚い鎧と変わったのだ。

それだけではない。

ルーヴァは右腕で殴ってしまった。

いくら鉄の腕になったとはいえ、最初のディアの鎧を殴った時に骨が砕けていた。


「……………ミスっちまったな…。」


ベラニーが眉を寄せる。


「終いね。」


ディアは鎧を解き、ルーヴァの身体を氷漬けにした。

頭部と左肩だけ露出した状態まで凍らされ、身動きが取れないルーヴァ。

ディアは右腕に氷の刀をまとい、ルーヴァの首元に当てた。


「…………………………参っただ…………。」


カンカンカンカンッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


ルーヴァを凍らせていた氷をバラバラに砕きルーヴァを解放。ディアは静かにその場を離れた。


19分1秒。


ディアの勝利。










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