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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
31/50

第31話 「ワニと鉄仮面」

「…………………ねぇボス、今の感じた?」


どこか遠くの宇宙。

豪華なお屋敷のような内装の部屋。

そこに赤毛に青みがかったドレスを着た少女が居た。


「……………………。」


ボスと呼ばれるそのカメのような男はバカでかい図体で玉座に拳で頬杖をつきつつも無言。少女の言葉に反応しない。


「おいおい、せっかくお嬢が聞いてくれてんだぜ。なんか言えよボス。」


こちらは薄紫の長い髪に十字に開かれた鉄仮面を被る男。

足を組みながら本を読んでいたところでボスにつっかかった。


「確かに、大魔王と同じ気配をどこか遠くの宇宙で感じましたね。おそらく………お仲間では?」


「……………………。」


眼鏡をかけた執事らしき男もボスを伺う。

ボスなのか大魔王なのか名称はっきりしろバカチン。

その名称がはっきりしない男は黙ってはいるが口元が少しニヤけていた。

細く何か退屈そうな目も少しだけではあるがピクリと動いたので興味はあるのだろう。


「………確かに感じたな。間違いなくアイツの魔力だろうな。でも……………この程度か…。」


また先程のように目を細める男。

しかし口角は上がったままなので喜んでいる様子である。


「もしかしたらボスの昔の仲間かもしれん。シジジー、座標を調べてそこに進路変更を頼む。」


インコの顔をした男がガッツポーズで喋るもボスが人差し指を立てた。【待て】の合図である。


「まだ行かなくていい。もっと良いプランがあるからよ…。」


ガッガッガッガッガ…………


低い地鳴りのような笑い声を宇宙に木霊させるボス。何わろてんねん。

一体何を企んでいるのだろうか。そして、パルムたちとはどのような関係があるのだろうか…。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


パルムとチェリオスは固く、そして熱い握手を交わした。

ダメージが大きいのでチェリオスは担架に乗せられ処置室へと運ばれた。その時、はっきりと言われたのだ。


[俺に勝ったんだ……………。必ず優勝しろ………パルム………。]


パルムはこの言葉を胸に選手控室へと戻った。

医療スタッフがチェリオス同様に処置室へと案内しようとしたがなんとパルムはほぼ無傷。

厳密に言えば全て癒えていた。

せめて魔力ドリンクは飲んでほしいとの事なので、その場で受け取り飲み干した。

銀之助たちに賞賛され抱きつかれるパルム。

みんな絵柄である。


「お!ヨーベイガーさんにMr.C.Bさんやんな!よろしゅう頼んます!」


「辞めろやめろ!さん付けなんざよ!ヨーベイガーで良いっての!それよりもめちゃくちゃ良い勝負だったぜ!」


「こっちこそ呼び捨てで構いませんよ。僕はパルムさんと呼ばせていただきますが…。確かに!見てて気持ちのいい勝負でした!まずは一回戦!お疲れ様です!」


「まずはお互いに一回戦突破やな!!!決勝で会っても言い訳なしの喧嘩やからの!覚えとけよパルム!」


煤だらけの顔でグッドサインをするパルム。

全員で笑い合うも、次の試合が行われるらしい。

本当はチェリオスも一緒に見たかったが、まだ回復には至らない。

ここは4人での観戦である。


[激しい戦いでしたねッッッ!!!それでは次も同じような戦いを見せてもらいましょう!!!第一回戦Dブロック!!!赤コーナー!!!俺様に砕けないものはそんなに無い!!!一本角が自慢のワニ男!!!かの有名なワニワニ商会の親方!!!身長260cm!体重400kg!魔力30万パワー!惑星キャディからやってきたぁぁぁぁ!!!ヴェルタース!!!]


ウオオオオオオォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


「頑張れ〜!!!親方ぁぁぁ〜!!!」


「捻り潰せええぇぇッッッッ!!!」


「うわ!なんか俺らの試合よりも客盛り上がってへんか!?」


ビビるパルム。


「あんな試合見せられた後だからな。そら期待するぜ。」


「それだけでは無いと思いますよヨーベイガーさん。あのヴェルタースというスペースファイター、かの有名なワニワニ商会のボスなんです。ほら、聴いたことありません?【ゲンコツ一発3000円〜♪】って。」


「悪いな、テレビもラジオも無かった辺境惑星に居たもんでよ。なんも分からねぇ。」


「俺は聞いたことあるで。衛生兵やってた時にラジオでよぉ聞いたわ。アイツも確かちょっとだけあの星間戦争に関わってたはずや。」


はぇ〜と頷くパルムとヨーベイガー。

そして入場してきた男はデカい図体で筋肉が盛り上がったワニであった。

これまたとてつもない咆哮を上げ客を沸かせる。

拳をゴキゴキと鳴らしながらリングに上がり、対戦相手を待つ。


[青コーナー!!!全ては謎に包まれている!!!仮面と甲冑の下には何が隠されているのか!!!身長身長190cm!体重98kg!魔力200万パワー!惑星ラーガからやってきたぁぁぁぁぁ!!!ルーク・タブレットッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!]


「ルークくうううぅぅん!!!カッコイイよおおぉぉぉ!!!!!」


「ルーク!!!ルーク!!!」


ウオオオオオオォォォォ!!!!!!


綺麗なマラソンフォームでやってきた仮面の青年。

客に手を振りお辞儀。

とても紳士的な気持ちのいい男である。

勿論ヴェルタースにも一礼した。


「お前めちゃんこ礼儀正しいんだなッッッ!なんだったら俺様もするしかねぇよなぁ!??!?」


ペコリと頭を下げるヴェルタース。


「礼儀は礼儀で返す…。やはりワニワニ商会のヘッドというのは嘘では無いようですね!!!」


「ガーハッハッハ!!!俺様は部下のバカどもを束ねるために常に本読んでるからなぁ!!!めちゃんこ賢いのよ!!!」


「相手にとって不足は無い!!!よろしくお願いします!ヴェルタースさん!」


ドンッッッ!!!と胸を叩きいつでも来い!と叫ぶヴェルタース。

お互いに拳を合わせ、サイドに下がる。

そして観客を焦らした後、ゴングが高らかに鳴り響いた。


カーーーーーーーーーンッッッッッッ!!!


一気に飛びかかったのはヴェルタース。

大口を開き弾丸のように突っ込む姿はあまりにも恐ろしい。

ルークはこれを紙一重で躱し、ヴェルタースの横腹に膝蹴りを炸裂させた。

しかし。


「なっ……………!!!!!」


(か、硬すぎる…!僕の膝が皮膚で止まってる…!)


「な〜に驚い・て・ん・だぁぁぁぁッッッと!!!!!」


太いセコイヤの木のような両腕を振り下ろしルークを捕まえようとするも、これもまた回避。


「正攻法が駄目なんだったら!!!」


水面蹴りで足を払おうとしたルーク。

狙いは脛である。


ドゴッッッッッッッッッ!!!


「がっっっ!!!」


しかしこれまた攻撃を仕掛けたルークの足に痛みが走った。

人間の脛は本来弱点ではあるものの、空手やさまざまな武道・格闘技ではここを鍛える。

鋼鉄のような脛にダメージはほとんど無い。

ルークも随分と鍛えたのだろうが、通用しないのであれば次の一手をかける他ない。

クルッとこちらに向きを変えるヴェルタース。

その瞬間腹に手を当て気合波を放った。


「浸透勁!俺と同じ技や!」


銀之助と同じ浸透勁の発勁使い。


(外部からの攻撃が駄目なら中身…………ゥオッッッ!!!!!)


バァァァァァンッッッ!!!!!


内側から弾き返された威力で宙を舞うルーク。

そこにバズーカ砲のような右ストレートが飛んできた。

瞬時にそれを掴み体操選手顔負けの動きでヴェルタースの頭部にムーンキックを決める。


「……………………。」


シュウ………と少し煙が出た程度で当然のごとく深手にはならず。

次の一手を考え構え直すルークにヴェルタースは疑問をぶつけた。


「お前ぇ…………なめてんのかぁ?」


「な…………なめてる………だと…!?!」


「さっきからシンプルな近接格闘に持ち込んでるのは、俺の動きを確かめるためだと思ってたんだがよ…………違うなよなぁ?」


「ッッッ!!!!!!!!」


動揺するルーク。

確かに先程から攻撃をしているのはルークの方ではあるが、全て通用していない。

そうとなれば普通アレを使うだろう。

そう、【魔法】である。


「なんで使わねぇんだよ。使えや200万パワーもあるんだからよぉ。まさか使えないなんてこたぁ無ぇよなぁ?」


眉間に皺を寄せているが、少し呆れ顔。

ルークは全身汗だらけで少し震えている。


「魔法は……………その…………ッッッッッッッッッ!!!!!!」


諦めずに連撃を叩き込むルーク。

ヴェルタースは少しだけガードを固め全て受け止めている。


ズガガガガガガガッッッッッッッッ!!!!!


「お前………なんでそんなにビビってんだ?」


「な、なにッッッッ?!!?」


「俺が魔法って言葉言ったときに、少しではあるが筋肉が緊張したなぁ?思いっきり図星突かれたってことだろがッッッッッッッッ!!!!!!」


ボディブロー。 

ルークは両腕で防いだものの、20mほど空中にふっ飛ばされた。

ゴギィッッッ!!!と音が鳴ったので恐らくヒビが入ったか折れたのだろう。 

ガード上からの攻撃。

まともに防ぐことすら出来ない剛力に対して判断ミスをしてしまった。

治癒魔法で骨を修復するルーク。

何故攻撃魔法を使うことを躊躇うのか。


バッッッッッッッ!!!!!!


「なッッッッ!!!この高さを一瞬で!!!!?」


ジャンプしてルークと同じ目線になったヴェルタース。


「色んな異星人たちが集まって喧嘩出来るんだぜ?もっと楽しもうや……………なぁ?」


ルークの頭を右手で、右足を左手で後ろ側の首元にしっかりと合わせるヴェルタース。

そしてそのままリングへと急降下。


「残念だぜッッッッ!!!本気でやらねぇんなら荷物纏めて田舎帰れやお坊ちゃんよぉおおぉぉッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!」


「ウワァァァァァァッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


「北極星砕きッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!」


ドッゴオオオオオォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


激しい衝突音と地響きが会場を揺らす。

北極星砕きと言う名のアルゼンチンバックブリーカー。


「ゴバッッッッッ!!!!!!」


ゴゴギィッッッッ!と鳴ってはいけない音がルークの背中から鳴り大量に吐血。

そしてそのままリングへと倒れ込んだ。

試合続行不可能と判断されゴングが鳴る。


カンカンカンカン!!!!!!!!


6分23秒。


ヴェルタースの勝利。






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