表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
19/50

第19話 「狂気の声」

ジュゴオオオォォォッッッ!!!!!


「マ…マジかいなベラニーちゃん…!!!」


ゴングが鳴った瞬間、ベラニーは腕をバカでかい刀に変形させ高速で伸ばしショコラをぶっ刺した。

それまでわずか1秒足らず。

リングを囲っている防壁魔法があるので観客には被害は及ばない。

しかし目の前まで接近してきた刀に白目を剥きションベンを漏らすものがチラホラ。

仲にはファンサービスかの如く喜び触れようとする者も居たが触れることは叶わない。

しかし違和感。

ベラニーはキメラ合成人なので体を変形させ他の物質に変えることが出来る。

形状が刀であれ、ドリルであれ痛覚や触覚などは存在する。

しかし刃の先端部分にものが触れた・刺さった感触が無い。

おっかしいなぁ…と思いデカい左腕からチラッと顔をのぞかせた。

やはり居ない。

するとベラニーがだんだん黒くなっていく。

まるで何かが上から接近し覆うように、影ができたかのように。


「上かッッッ!!!」


上から口いっぱいよだれを飛び散らせ鋭い牙を大口開き接近するショコラ。

ベラニーが左腕を瞬時に戻し避けようとするも右腕に思いっきり噛みつかれた。

ゴキッバキッと骨が砕けるような鈍い音が響く。

そして右腕は噛みちぎられた。


「なっっっ!!!あの子腕噛みちぎられたぞ!!!」


「これアリなのか!??!いくらなんでも惨すぎるぞ!!!」


「うるせぇな。黙って見てろよお前ら。腕持ってかれてもメディカルポッドで治るだろうよ。それに…、この大会の誓約書には【死亡しても責任は負わない】って書いてるしな。死んでも文句は言えねぇよ。」


その前に出血多量などが見受けられるのであればストップがかかるだろうと冷静にクエスチョナーたちに語るボーナ。

サーシャは戦わないので他の選手は興味無いものかと思われたが真剣に見ている。

本人もボクシングなどをやっていたので元々こういうスポーツや武道は好きなのだろう。


(痛ッッッてぇぇぇぇ!!!!!!喰らえボケがッッッ!!!)


ショコラが咥えていたベラニーの右腕が内側から光る。

その後爆弾が爆発したかのような衝撃が走り会場を揺らす。


「威力は結構なもんだが…こんなんで死ぬようなたまじゃねぇだろ…!!!」


爆発魔法で腕を爆破したのだろう。

ベラニーはすぐさまちぎられた右腕を再生。

グーとパーを交互に行い手の動きを確かめる。

最初に左腕で攻撃したのにも理由がある。

ゴングが鳴った瞬間、ショコラの目が一気に野生で相手を食らい殺すかのような強者の目に変わったのだ。

殺気を感じたベラニーはすぐさま攻撃。

それで終わってくれたら良かったのだが当然終わるわけ無く今に至る。

煙が収まりショコラが現れた。


「………無傷…だと…?」


確かに煤のようなものは付いているがダメージが見受けられない。

再生したばっかりの右腕に炎属性の魔法を纏わせ、巨大ドリルに細胞変化させる。

そしてそれを高速でショコラに向け放った。


「ノイズシャッター」


ガガガガガガガガガガッッッッッッ!!!!!


四つん這いのショコラの前に現れた透明の壁。

ドリルが突き刺さるも貫通までには至らない。


「んだよアレッッッ!!!ハッ………!!!音かッッッ!!!」


その通り。

ショコラが出したのは音の壁である。

先程の爆発を防いだのも恐らくこれだろう。

長方形の形に収まった壁のようなものは音波が反響しあい、バラバラに動いているのでドリルの先端が焦点に定まらず貫通しないのだ。

ショコラは尻尾を伸ばしベラニーを下から殴り飛ばし空中に吹っ飛ばした。

ベラニーはどうにか体を回転させ、右てのひらを空にかざす。

空中には今にも迸りそうな電気の固まり。先ほどのアームドリルを放ったと同時に空に向け発射していたのだ。二段構えの戦法。

エネルギーは充電完了。満タンだ。


「真正面が駄目ならコイツァどうよ!!!サンダルク・ベスパーニアッッッッッッ!!!」


電気の固まりは一気に拡散。

これまたデカいサーベルのような形となりショコラを襲う。

激しく揺れ電気も流れ揺れるリング。

観客の皆はそのまぶしさに思わず目をつむる。


「なんちゅう威力!!!5階建ての建物だったら吹っ飛ぶぞ!!!」


クエスチョナーも認めるその威力。

サーシャやマンナも腕をかざし光を防いでいた。


「ハァ…ハァ…、流石にこれは……………なっ!!!!!」


サーベルが刺さっていたのはショコラではなく周りの音の壁。

真正面ではなくドーム状に広がっている。


「ノイズドーム」


スタッとリングに降り立つベラニー。

高威力で放った雷遁も通用しなかった。


(冗談だろ…。これも防がれんのかよ…。……待てよ…、なんで最初の一撃は防がずに避けたんだ…?)


何かを感じたのか、次の一手に出る。


(オレの予想が正しけりゃ…!!!)


「アームドリルッッッッッッッッッ!!!」


「な!!!あの技は通用しなかったはずです!闇雲に攻撃しても体力を消耗するだけです!!!」


「いや、多分からくりがわかったんちゃうかな…。どんな技や魔法にも穴はある。なんか試したいんやろな。」


冷静に戦況を分析するサーシャ。

マンナは勉強になりますと嫌味なく真剣に話を聞いていた。

ノイズドームに突き進むアームドリル。

ショコラは技を解き、高く跳び上がった。


(やっぱりなッッッ!!!)


「テメェの魔法壁!!!魔力が籠もった攻撃しか防げねぇんだろッッッ!!!」


これまた御名答。

ショコラの音の壁は魔力が込められた攻撃意外防げないのだ。

2回目の攻撃であるアームドリルは火遁を練り込んでいた。3回目の攻撃なんて雷遁そのもの。

しかし最初の攻撃と今放った攻撃はシンプルな格闘技。

ノイズドームが破壊されると判断したショコラはその場から離れた、ということである。

技のからくりが分かればこっちのもの。

ベラニーも跳び上がり空中で近接格闘をしようと迫った。


「よっしゃ!!!いけーベラニーちゃん!!!ショコラちゃんも頑張れー!!!」


ウオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッ!!!!!!


盛り上がる会場。

空中で激しく行われる殴り合い。

しかし、やはりというかショコラに分があるようでベラニーはとてもではないが殴り合いについていけない。


(思った以上に速ぇし一々重てぇッッッ!!!)


油断した一瞬。

強烈な踵落としをみぞおちに貰い物凄い勢いでリングに叩きつけられてしまった。

ゴバッッッと吐血。

腹を抑えたいがそんな余裕は無く、ショコラが口を大きく開き次々に技を連発で披露する。


「ボイスライフルッッッッッッッッッ!!!!!」


まるで嵐のような音の弾丸。

当たった箇所は時間差で爆発。

溜まった音波が一気に炸裂するのだろう。

そんなもの当たったらただでは済まない。

縦横無尽に回避に徹するベラニー。

見事なまでに確実に避けている。

しかしそれが返ってショコラの戦闘分析に力を貸してしまっていた事には誰も気が付かなかった。


「ストップボイス」


ビリッッッ!!!!!


激しいダンサーのように動いていたベラニーの動きが完全に止まる。

まるで時間が停止してしまったかのように。


(な…なんだこれ…!!!う、動けねぇ…!!!)


華麗に着地したショコラ。

距離は離れているものの、威圧が凄い。


(これは………【催眠音】かッッッ!!!)


催眠。

音や声を相手の鼓膜を通じ脳に響かせ、中枢神経に作用するものである。

先程のボイスライフルを確実にベラニーは避けていた。しかしその中に通常目には見えず、耳で聞き取ることも出来ない特殊な音波も飛んできていた。

ベラニーは他の弾と同じ性質だと思い避けていたがこれはショコラがベラニーに対し【どこまで聞こえているのか】と確かめていたに過ぎなかったのだ。

そしてそれを避けていた。

ストップボイスは特殊な音波なので、技を放つ時相手を選んでしまう。

ショコラはベラニーにこの技が効くと判断されたのだ。

繊細すぎるキメラとしての能力が仇となってしまった瞬間であった。

しかしこれで終わらないのがキメラ合成人としてのプライド。

ベラニーには父がいる。とはいえ本当の父親ではなく自分を作った博士である。

博士は最初こそ銀河政府に雇われていた所謂ポストドクターであった。

しかし銀河政府も所詮は資本主義から成っている組織。本当の意味では人助けや人情からは程遠い存在であった。博士は口論の末、遂に解雇。

そして今まで貯めてきた貯蓄で人助けに尽力しようとしていた。魔法と科学は世のため人のために在るものだと信じ疑わない博士は身寄りの無い子供や通常の医療なれば手の施しようのない人を無料で助けていた。

ベラニーもその中の1人であった。

博士曰くベラニーは戦争の被害者であり、四肢は爆発に巻き込まれたのか吹き飛び心臓も破裂寸前だったと言う。

そこを拾われ人体実験を兼ねた治療を施されキメラ合成人となった。どこの惑星出身だったのか、自分は何星人だったのかは聞いたことはあるが辛そうな顔をするのでそれ以来聞いていない。そもそもベラニー自身興味もそこまで無い。

幸せな家庭で家族と過ごせるだけで幸せである。

ベラニーには血のつながらない妹や弟などもいるが、ほとんどがキメラである。

そして遂に実験治療に金がかかりすぎたので貯蓄は底をついた。

ベラニーたちは王族や金持ちの異星人が住む惑星などに赴きメイドとして働きなんとか工面しようとした。メイド姿はただのコスプレではないよ!

だが金が追いつかず、渋々今まで助けていた人たちに博士は頭を下げ必ず返すから少し貸して欲しいと伝えた。すると


「結局金かよ。」


「善人ぶってただけで所詮はイカれた科学者か気持ち悪い。」


「金が無いんならさっさと足洗って真面目に働けよ。」


心にもない言葉をぶつけられたのだ。

博士は働かないのではない。働けないのだ。

銀河政府に目をつけられているので思うように動けないのだ。

散々今まで世話になっていたにも関わらずこの仕打ち。ベラニーは殴りかかろうとしたが博士は止めた。


「みんな疲れて病んでいるんだ。それに情けないのは俺だ。身体を治したとて、心までは治せない。………実力不足の俺が悪いんだ。」


(………けんな………。ふっっっっっっざけんなッッッッッッッッッ!!!!!!!なんで親父があんな目に遭わなきゃならねぇッッッ!!!なんで苦しまなけりゃならねぇッッッ!!!ドイツもコイツふざけやがってよぉぉぉぉぉッッッッッッ!!!)


ベラニーは全細胞をフル稼働させ脳に響いた音波を分析していた。

負けるわけにはいかない。

優勝して多額の金を持って帰り親父や姉妹たちに渡さなきゃならない。

こんなところでくたばる訳にはいかない。

全身に血管が浮かぶ。

しかし現実は残酷なもの。

ショコラは首周りにまるでエリマキトカゲのようなエリマキを出し、それを高速で伸ばしベラニーの頭部を包んだ。

そして一気に収縮し自分の元まで引き寄せると両腕でベラニーの腹部を貫いた。


ズボアッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


酷い惨状に口や顔を覆う観客たち。

サーシャも目と口を大きく見開き叫ぶ。


「やり過ぎじゃ止めろやッッッ!!!何しとんねん審判ッッッッッッ!!!!!」


ボタボタと拳から滴り落ちるベラニーの血液。

ショコラはエリマキの中で白目でニタァと笑っている。

そして技が繰り出された。


「グリムリパーサウンド」


エリマキが大きく膨らみ内側で激しい衝撃が走った。

ゆっくりと解かれるエリマキ。

ベラニーは目、鼻、耳、口から大量に出血。

白目を剥きそのまま重力に逆らうことなく倒れ込んだ。


カンカンカンカンカンカンカンカンッッッッッッ!!!!!!!


試合終了。

26分31秒。

ショコラのKO勝ちであった。










評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ