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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
第200369回宇宙トーナメント編
17/50

第17話 「単眼くノ一いざ参る!!!」

次々と予選が繰り広げられ、いよいよ最後の本戦となってしまった。

客席は当然のごとく、とっくに全席埋まっており大阪城ホールは熱気と歓喜に包まれる。

本戦の内容は至ってシンプル。

石よりは柔らかく、ゴムよりは硬いポコンチニウムで作られた舞台で一対一の真剣勝負。

武器は一切使用禁止の喧嘩である。

魔法は使っても良いので、どう使うか・どこのタイミングで使うか・魔法だけに頼らず徒手でどこまで出来るかが重要になってくる。

幸か不幸か、銀之助・パルム・サーシャは全員本戦出場は決まっている。

後は優勝を狙うのみ。

そしてトーナメントの組み合わせが発表された。

女性の部と男性の部は同時に行われる。

舞台の間に大きな仕切りで区切られ、片側の方しか見られない観客は大きなモニターでもう片方の戦いが観戦出来る。移動しても良いのだがあまりにも人が多いのでそれは辛いものがあるだろう。

闘技舞台はバリアーの防御魔法で覆っているので観客には被害が来ないように工夫されている。

スタッフも大変である。

まずは女性の部を見てみよう。


「あ、初手ウチかいな。」


「頑張ってくださいサーシャさん!応援してますよ!」


「頑張るだよ!!!」


マンナとルーヴァに背中を押され、歯を大きく見せニカッと笑いサーシャは控室から足取り勇ましく舞台へと向かった。

ストレッチは既に終えている。


「興奮してきたなぁ〜!ちょい緊張しとるけど。」


表に出る直前でスタッフに止められた。

選手発表があるので少しここで待機して欲しいとのこと。

プロレスやボクシングでよくあるアレだ。


[皆様方!!!レディース&ジェントルメン!!!お待たせ致しましたッッッッッッッ!!!只今より!本戦のトーナメントを始めさせていただこうかと思います!!!!!!]


ウォオオオオオォォォォオオオオッッッッッッッ!!!!!!!!


爆音の拍手喝采と唸り声、興奮の声が混ざり合い会場が揺れる。

予選も面白いがやはり皆本戦のサシのぶつかり合いが見たいのだろう。


[ではでは!!!早速始めましょう!!!赤コーナー!!!セクター・ロックナインからやってきた魅惑の単眼くノ一ッッッ!!!背中が開いているその忍者の服装はそそるものがある!!!!!ファンへのサービスか!??!華麗な動きで相手を翻弄するか!???!!身長170cm体重44kg!!!魔力220万パワー!!!ガーンキュー星人のおおおぉぉ!!!]


[アスカァァァァァァァァァァ・バァァァァトラァァァァァァァァァーーー!!!!!!!]


盛り上がる観客。

そして向こうから歩いてきたのは目をつむり顔を真っ赤にした単眼の女の子。

肩にかかるおさげ髪が特徴で、可愛らしいくノ一の格好をしている。コスプレにも見えるその服の背中は綺麗な肩甲骨が見えている。

柔肌だろう。


「エロいよ!!!背中エロいよー!!!」


「やったれー!!!アスカちゃぁぁぁぁぁん!!!」


「屁こき女をぶっ殺せえええぇぇぇぇぇ!!!!!!!」


絶対最後のボーナやろ。


(くぅ………は、恥ずかしい…。別に背中開いてるのファンサービスでもなんでも無いっての…。)


「続きまして!!!青コーナー!!!歩く度に屁をこく女ぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッ!!!身長158cm!!!体重50kg!!!魔力150万パワー!!!地球人のおおおおぉぉ!!!!!!三木・サーシャァァァァァァァァァッッッ!!!」


スタッフを弾き飛ばしリングの上に走るサーシャ。地団駄を踏み怒っている。


「やっぱしか!!!お前らやっぱしか!!!どいつもこいつも期待を裏切らんのぉ!!!!!もっと他にあるやろがい!!!プリティでボンキュッボンでめちゃくちゃ可愛」


[両選手リングへ!!!]


まだ喋っているのに制止され早く行けと促される。

目にもの見せてやると怒りを溜め、アスカと対峙する。

サーシャは目の前の単眼娘がただの女ではない事は目が合った瞬間わかった。

手を抜いたら一瞬で殺られる。本気でいくしかない。


「アンタ強いな。本気でやらせてもらうで。」


「アタイも。」


高らかにゴングが鳴り響いた。


シュンッッッ!!!


(え…速ッッッ!!!!!)


ゴングと同時にアスカが一気に距離を詰めてきた。

サーシャは咄嗟に両腕でガード。

頭で考えたのではなく反射的に反応したのだ。

そのおかげで前蹴りを防ぐことが出来た。

しかし間髪入れずに蹴りや突きの連撃。

防ぐだけではいつか綻ぶ。

大きく後ろに跳び距離を取るもなんの意味もなくすぐに追いつかれてしまう。


「防ぐだけしかできないんじゃ勝てないよッッッ!!!」


ズザザザザザザッッッッッッ!!!!!!


(アカン!!!速すぎる!!!それにこのままやと…!!!)


形としてもサーシャは追い込まれているが、試合的にも追い込まれていた。

サーシャのすぐ後ろに白いラインが迫る。

ラインオーバーは言い訳無しの一発アウト。

このままでは1回戦敗退。

カフェを畳むことになるだろう。


「これでお寝んねよッッッッッッ!!!」


アスカが拳を突き出した瞬間、それを肩に置き投げた。

見事な一本背負い。

カウンターを狙ったのだ。


「お寝んねはアンタやッッッ!!!」


迫る床。そしてライン。

しかしアスカは分かっていたのか冷静そのもの。


(カウンターかぁ…。まぁ皆考えるよね。)


これで決まった。 

と思いきやアスカは体を捻り回転。

サーシャの腕から脱出し両手をサーシャの頭に乗せ逆立ち。

そして重力のまま後ろに下がり背中を蹴り飛ばした。


「あぇっ?」


「バイバイ♪」


倒れかけるサーシャ。

しかしこちらも根性というものがある。


「ぬうううううぅぅぅぅぅぅらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーー!!!!!!」


無理やり背中を曲げブリッジ。

重力に逆らった。

そしてそのまま足でアスカの顔に蹴りを入れる。

バク転蹴り。

ザシュッッッと鋭い音が鳴り、目の下をカッティング。ボタボタと血が滴った。

盛り上がる観客。

ボーナは残念そうな顔。


「ま、まさかあの体勢で無理やり復帰するとは…。」


アスカが目の下に手をかざそうとしている。

完治とはいかなくても魔法で傷口を覆うつもりなのだろう。

サーシャはアスカに対して思うことがあった。

それを実行するには悪に徹しなければならない。

最初に対峙した時、アスカはサーシャのとある部分を一瞥し眉を一瞬ひそめた。

恐らく気にしているのだろう。

心を決めて口を開いた。

指をクイクイッと動かし煽る。


「さっさと来いや【ド貧乳】。」


それを聞いたアスカは瞳孔を開き血管が軽く浮き出た。


「ま、アンタにはわからんよなぁ…。あ〜あ、肩こってしゃあないわぁ。な〜んでウチこんなおっぱいおっきいんやろう〜。」


急いでリングの真ん中に移動したサーシャ目掛け字の如く目にも留まらぬスピードで殴り始めた。

魔力を一気に血管やリンパ節に流したのだろう。


「な…なんちゅうスピードだ…!!!目で追いかけるのでいっぱいだぜ…!!!」


汗を流すクエスチョナーとグレート。

エメリィは目で追える事に感心する。

ボーナは触覚から電磁波をキャッチするので目では見えないがなんとか状況がわかるらしい。


(痛い痛い痛い痛いッッッ!!!!!なんじゃこの重さは!!!ちゅうか見えへん!!!)


防ぐので精一杯のサーシャ。

腕などはとっくに真っ赤に腫れ上がっている。


〔なぁぁぁぁぁぁぁにがド貧乳よッッッッッッ!!!!!貧乳はステータス!!!希少価値ッッッ!!!どいつもこいつも異星人は乳腫れ病なんか知らないけどバカみたいにデッカイのばっかりッッッ!!!!!!!アンタもアンタで地球人の日本人って人種でしょうがッッッ!!!なんでそんなに胸大きいのよッッッ!!!胸デカいお前らがおかしいんでしょうがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッ!!!!!!!全ッッッ然悔しくないもん!!!羨ましくないもんッッッ!!!あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!〕


コンプレックス丸出しじゃねぇか。

そして攻撃が止み静寂が流れる。

固唾を飲み、観客が見守っていると…。


ドゴオオオオオオオォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!


激しい衝突音が鳴り、誰かがリングの上でふっ飛ばされた。



「サーシャ…!!!……いや違うッッッ!!!」


ズザザザザザザッッッ!!!!!!!!


なんと殴り飛ばされたのはアスカだった。

胸を抑えてゲホゲホと咳を払う。


「な、なんで攻撃の瞬間が………!!!!!」


「た、確かにアンタの攻撃は見えへんかった………。でも………飛び散ってる【血】で大体どう出るか予測できる…。」


傷だらけのサーシャ。

アスカが更に質問すると肩で息をしながら答える。

サーシャが煽ったのはワザとであり、怒らせるためであった。

そうすれば魔法で回復を優先するより目の前のデカチチに怒りをぶつけるだろうと思ったのだ。

とてもではないがアスカの本気のスピードはサーシャでは反応出来ない。

ではどうやってアスカの攻撃を予測したのか。

流れ出ている血である。

アスカは興奮し激昂しているので血圧が上がっているので血は止まらない。

動きを読むには血を利用する他無かった。

まぁその分、血圧が上がれば魔力の流れも上昇するので大きな博打ではあった。

それに煽りに乗らず冷静に傷を治されたら作戦は終わりである。

サーシャの頭脳戦勝ち。

アスカは乗ってしまった事に後悔する。


「ごめんな…変な煽りしてもうて…。おっぱいなんか大きいも小さいもあるけど…その分愛があるもんやで。アスカちゃんも可愛いよ。」


「悪役に徹した訳ね……な!??!!!!」


サーシャの作戦に感心しつつ、また先ほどの超スピードを出そうとした時体に電流が走った。

体自体は動くがあのスピードが出せない。

あの殴られた時だ。

ただ力任せにぶん殴ったのではない。

ツボを押された。

魔力が上手く伝達出来ていない。

あの一瞬での連撃。

舐めていた訳では無いが改めて目の前の相手がツワモノだと認識。

アスカはニカッと笑い空高く跳び印を結ぶ。

手のひらを下に突き出し光の矢を発動。


「避けてみてよ!!!光牙熱尾こうがねつびクナイッッッ!!!」


猛スピードでサーシャを襲う光のクナイ。

数はおよそ300本。


「だらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッ!!!!!!」


殴り蹴り、クナイをはたき落としていく。

しかし数が多く、間に合わない。

体が次々に切り裂かれ刻まれていく。


「うっっっっっとぉしいんじゃアホンダラがッッッッッッッッッッッッッッッーーー!!!!」


床を思いっきり殴り砂煙を舞わす。

スタッ、と降り立ち腰に手を当てるアスカ。


「砂煙で撹乱させたつもりかもしんないけど…。それ、相手の熱に反応するんだよね。だから…」


砂煙が落ち着いていく。

そこに現れるは全身にクナイが深く突き刺さったサーシャが。

魔法が解けクナイが消えるとその部分に穴が空き出血。息が荒い。

アスカは膝を曲げ、両手を地面につけた。

すると背中からまるで天使のような羽が生え、両翼を華麗に広げる。そのために背中の服の部分が開いていたのだ。

そしてグロッキー状態のサーシャを持ち上げ上空200m。

サーシャの両足を上に折り曲げ抱え込み、腹回りを両足でロック。頭部を下にし、そのまま急落下。


「これでフィニッシュよ!!!天空奈落落としッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!」


「なっ!!!!!くそっっっ!!!動かれへんッッッ!!!」


ドッゴオオオオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッッ!!!!!!


サーシャはポコンチニウムの床にまともに衝突。

その威力でリングは半壊。

サーシャは髪の毛が垂れ下がり表情が見えない。


観客席で心配する常連たち。


「サ、サっちゃん………。」


「あんなもん食らっちまったら……もう…。」


「サっちゃぁぁぁぁぁん起きてええぇぇぇ!!!!!!」


トントントントントン…

何か音がする。

横を見ると腕を組み貧乏揺すりしているボーナ。

何故かイライラしている。

他の観客たちはアスカを一方的に応援。


「おいどうしたんだよボーナ…。」


気にかけたグレートの声を無視し、急に立ち上がり大声を出し始めたボーナ。


「こんのクソ女ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッ!!!!!!エリートの僕を倒したくせにそんな相手に負けんじゃねぇよおおおぉぉぉぉッッッッッッッッッ!!!!!!!負けるんならもうここで死んじまえぇぇぇぇぇーーーーッッッッッッッッッ!!!!!」


ビックリしているクエスチョナーたち。


「…………お前どっちなんだよ…。」


サーシャのファンだろうか。それにしても変な応援の仕方だと思うアスカ。


「はは………エリート様に応援されたんじゃ…………負けられへんなぁ…。」


「な!!!まだ意識あるの!!??!!」


「さっきのツボといい…戦い方もそうやけど…それだけじゃない…。スケベ蛸から………この世で一番…強い魔法も…………教えて……もろてな…。」


「頑張れサっちゃん!!!!!!!」


「いつものサっちゃんはもっと強いだろ!!!カフェの看板娘じゃねぇか!!!」


「動いて!!!!!!!!」


「勝つか死ぬかはっきりしやがれッッッ!!!」


ロックしているサーシャが少し揺らめく。

熱が上がる。

なんの魔法だというのか。アスカはその勢いに負け手を離してしまった。

次の瞬間サーシャが起き上がり頭突きを3連発。

右フックにボディブローと連撃を放つ。

完全に油断していたアスカは地球人離れした拳をこれ以上受けまいと羽で風遁竜巻を起こす。

しかしサーシャは両手を思いっきり叩きかき消した。


「はぁ!??!!!!!?」


「この世で一番強い魔法はなぁ…………!!!」


「黙れ黙れッッッ!!!こうなったらもう一回潰したげる!!!」


サーシャのコークスクリューブローを回避し、先ほどのように抱きかかえ空に舞う。

そして天空奈落落としのポジションに持っていった。


(負けるわけにはいかない!!!優勝してママとパパに薬を………!!!みんなに美味しい飲水を……!!!!!)


「終わりだッッッ!!!天空奈落…」


「待ってたでこの時をッッッ!!!」


何をしようと言うのか。

サーシャはアスカ目掛け爆発的な屁を炸裂させた。


ブオオオオォォォォォォォォォォブブブブブッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!


「くっっっっっっっっさぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!」


激臭たまらず思わずロックを解いたアスカを逆に抱え込むサーシャ。


「せやせや、さっきの話なぁ…。この世で一番強い魔法は……………【絆魔法】やねんてさッッッ!!!これで決めたらぁッッッ!!!」


重力のままに下に落下するサーシャ。

アスカが目を覚ました時、目の前には床が迫っていた。


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッーーーーーー!!!!!!!!!」


「掟破りのッッッ!!!【天空奈落返し】ッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!」


ドガァァァァァァァァァァァッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!


地面が崩壊する威力。

砂煙が飛び散り、観客もそれを見守る。

そしてアスカは…………気絶していた。

体を離し、その場で立つサーシャ。

ドサァッと倒れ込むアスカに動きは見受けられない。


カンカンカンカンカンカンカンカンッッッ!!!


ゴングが鳴り響く。

16分22秒。

サーシャのKO勝ちである。

拳を突き出すサーシャ。

逆転劇に興奮し手のひらを返す観客。

胸を撫でおろすクエスチョナーたちに、どこか満足げなボーナであった。









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