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スペース・ロック  作者: 祈鈴銀
地球と出会い編
12/50

第12話 「エリートの逆襲」

「お前さぁ…舐めてんのか?」


下品にもデスクに両足を組み、葉巻を吹かす男。

小綺麗なリクルートスーツを…ん?これ良く見たら礼服じゃね?

まぁ、それを着こなし相手を睨みつける。

眉間には怒りが顕著に読み取れる皺が寄せられ、目には血管が浮かぶ。

ポーズトッポ組の首領・ゴルズである。

その目線の先には頭を深々と下げる丸メガネの優男。ボーナ。


「…………申し訳ございません。」


良いのはあくまでも見てくれだけである。

様々な手法で土地回収をするのがポーズトッポ組の仕事。つまりは地上げ屋。ヤクザである。

その他にもホストなども経営しているようだ。

ボーナはエリートなのに何故こんな目にあっているのか。

理由はゴルズの後ろにあるホワイトボードに記されている。

成績表。

近日6ヶ月の成績が載っているのだが、ボーナは職場の中でもとくに成績が良かった。

しかし、それは以前の話。

とある時期からボーナは極端に仕事ができなくなっていた。

今月なんてほぼドベである。

理由は簡単。女であるサーシャの喧嘩を買い、完膚なきほどボコボコにされたからである。

エリートはプライドが高い。とくにボーナなんてそのものである。

年下に、女に、しかも得意のボクシングで負けた。それがかなり響いているのだ。

そのせいでここ半年の成績がガクンと下がり、今まさにボスにどやされているという訳だ。


「お前にはよぉ、確かに世話になってる。いや、なってた。エリート魔法学園出身の実力をいかんなく発揮してたよな?」


「……………………。」


「でも今じゃ…どうだ?仕事出来ねぇやつは要らねぇんだけどなぁ…?」


「……………はい。」


「普通だったらお前なんかすぐに消してる。でも今まで良く働いてくれてたからこうやって説教で済まさせてんだ。わかるか?あ?」


「…………………ありがとうございます。」


「こんなもんに長いこと時間かけんのも無駄なのはわかってる。俺は無駄が嫌いだ。だから…わかるよな?さっさと仕事してこい。ノルマをこなせ。あのカフェの土地回収してこいや。」


「……………わかりました。」


「それだけだ。下がれ。」


もう一度深々と頭を下げ踵を返すボーナ。

そこにはいつものエリートの面影は無い。

その光景を眺めニヤニヤする同僚たち。

後輩ですら嘲笑っている。


「あのボーナさんがねぇ…ケケケッ。」


「エリート学園てのも、所詮肩書ってことかよ。」


クックックックック…

ハハハハハハハハ……


ボーナの事だからすぐに言い返すのだが今はそんな気分ではない。

それにすぐ後ろにボスも居る。下手なことは出来ない。

トボトボと歩き事務所を出ていく。

すると葉巻を吸い終わったボスが徐ろに値が張りそうな椅子から立ち上がり歩き出す。

まわりの部下たちはボスの動向を伺っていたが急に胸ぐらを掴まれ壁に押し上げられた。

グエッッ!と声が漏れる。


「テメェもテメェで笑える立場かコラおぃ。アイツはいきなり成績下がったけどお前元より仕事してねぇだろ…。あ?」


「す…………すみません………!!!」


「叱られてるやつ見ていい気分になる余裕あるんだったらお前も動けやドクズ。周りのお前らもだぞ。あのクソボーナみたいにならねぇように日々精進しろや。」


胸ぐらを掴んだ手でそのまま床に部下を叩きつけるゴルズ。

ポケットに手を突っ込みながら事務所を出ていった。

ゲホゲホと咳払いをするヤクザたち。

やはりどこの組織もボスは恐ろしい。






公園のベンチで缶コーヒーを片手に死んだ顔をしているボーナ。

しかし段々とムカッ腹が立ち、一気にコーヒーを飲み干す。


「クソがッッッ!!!クソがクソが!!!!!なんでエリートである僕がこんな目に合ってるんだッッッ!!!!!!!僕はエリートなんだぞ!!!なんでッッッ………なんで!!!!!」


ナレーションはなんでもお見通し。

ここでボーナの経歴を読者のみなさんにお伝えしよう。

ボーナは小学校、中学校とエリートの私立に通っていた。 

因みに4人兄弟であり、弟が2人、妹が1人居る。

両親もエリート大学出身であり、長男であるボーナもそうであるべきと考えを曲げなかった。

何も勉強だけを押し付けていた訳では無い。

時折欲しいものなどを与え、エリートである友達とは遊ばせていた。

しかしその歪んだ教育のせいで近所の団地や普通の一軒家などに住んでいる同世代の子供を見下す性格に育つ。

いじめなどこそしては居ないが、嫌な奴というのは昔からのものであった。

そして偏差値がトップクラスの高校に入った。

しかし、1番頭のいい学校では無かったので両親からは大バッシング。

ゴミ同然の扱いを受けるも、悪いのは自分であると悩まなかった。

それに大学で名誉挽回すればいい。

勿論この流れ、高校には友達という友達はできず鼻につく性格のせいで嫌われていた。

ルックス自体は良いので陰ながらはモテていた。

告白されるのも何回もあったようだ。

しかし何人とも付き合うもその腐った精根のせいで別れを繰り返す。

それに成績の悪い女の子に対しては酷い事を言っては振っていた。

何人もの女の子も泣かしてきたのだ。

そして流れるように一流大学に一発合格。

サークルなどには入らず、超一流会社に就職する事だけを考え過ごしていた。

大学生の生活も今までと変わらない。

その後大学を首席で卒業し、字の如く超一流大手宇宙銀行に就職。

今までの努力が華開く瞬間であった。

が、良いのはここまでである。

今まで培ってきた無駄に高いプライドのせいで職場仲間と何度も衝突。

上司にも偏屈な理由で逆らいまくり、勤務態度しかり成績がだだ下がり。

しかしボーナは自分を認めない社会や会社が悪いという考えが染み付いているので自分を変えるなどの思考は全く浮かばない。

そんな中、昇進の話が会社全体に伝わりより一層仕事に熱を込める。

結果が出るまでノルマなどをこなしつつエリート街道を歩む自分の姿しか頭には無かった。

遂に昇進発表の日、それぞれ選ばれた人間に封筒が配られていく。

ボーナにも渡されたが本人としては至極当然の面持ち。

次々に中身を開いていく。

昇進や更に上に行けるチケットを手に入れ喜ぶ同僚や後輩たち。

しかし、残酷な事にボーナに渡された書類に書かれていたのは地球などというド田舎惑星への移動。

つまりは…左遷であった。

無論黙って受け入れるような男ではない。

怒鳴り散らし、他の同僚たちに罵詈雑言を浴びせ責め立てる。

それに対し上司は嫌ならば解雇と冷たく宣言。

なまじ仕事が出来るボーナに出来る唯一の優しさが左遷だったのだ。

納得がいかないまま会社を出ていく。

そして地球のヤクザ事務所であるポーズトッポ組に入ったという訳だ。

両親からは勘当された。もう自分たちの子どもではないとキッパリ言われたのだ。

兄弟でボーナを心配するのは妹のスンシーだけであったがボーナは一方的に連絡先をブロック。

今は何をしているのかさっぱり分からない。

飲み干した缶コーヒーを思いっきり蹴飛ばす。

ポイ捨て?そんなものどうでもいい。

もう何もかもどうでもいいのだ。

すると大きな音を立てパシッッッ!!!と何者かが空の缶コーヒーを受け止める。


「駄目じゃないかぁ…。地球を汚しちゃ。」


「あ?誰だよお前?」


「僕はディラス。って、そんな事どうでもいいだろう?」


「……………レプティリアンか…。」


丸メガネをかけ、青みがかったスーツを着た目の前のレプティリアン。

キャラが被っとる。


「君にとってもいい話があるんだ。聞いてくれるかい?」


「勧誘か。生憎…そんな気分じゃなくてねぇッッッ!!!!!」


怒りのまま渾身の左ストレート。

しかしこれも軽々しくパシッッッ!!!と受け止められた。

仰天するボーナ。

受け止められたのもそうだが、何よりまず動かない。

まるで岩盤に挟まれたかのように掴まれた拳が動かないのだ。


「大丈夫大丈夫…。君はなんにも悪くない…。悪いのは周りの人間、社会そのものだ。」


「あ………………。」


低目でありつつ、どこか安心感のある声。

一気に不安や怒りなどを振り払うかのような魔性のその声に耳を離せないボーナ。


「だから…全部壊そう。さ、僕の目を見て。」


ディラスと名乗る男の黄色い瞳がどす黒いオーラを放つ。

声だけではなく、目も離せないその恐ろしい神秘に為すすべもない。

次第にオーラがボーナの目に入り込む。

ものの数秒。

ゆっくりと掴んでいた拳を離したディラスがボーナの肩に手を当て耳元で囁く。


「理解できない人間なんて…みんな殺しちゃえ。」


フフフッ……………






時間は夜23時。

ポーズトッポ組の事務所の金庫で門番をする下っ端ヤクザ2人。

眠たいのかフワァと欠伸をしながらスマホをいじったり談笑などをしている。

そこに落ちぶれボーナがやってきたので気だるそうに対応する。


「あん?お前…なんでこんなとこ来てんだよボーナ。なんか用かよ。」


「ボスの言いつけ守ってんのかぁ?仕事出来ねぇやつは要らねぇんだぜ?」


「……………………。」


「……………気持ち悪ぃな。なんか喋れや。」


椅子から立ち上がりボーナの胸ぐらを掴む。


ドゴオオオオオォォォォッッッッ!!!!!


「ゴブァッッッ!!!!!」


ボディブローをみぞおちにまともに食らい吐血する下っ端。

いくら油断してたとは言えこの威力はおかしい。

もう片方の下っ端が飛び蹴りを放つも軽く流され顔面を殴られ床に叩きつけられた。

一発ノックアウト。

前歯が何本かへし折れ、白目を向きのびる異星人たち。

ボーナは慣れた手つきで金庫の扉を開き中に入っていた金を拝借。

そしてスマホを取り出しどこかに電話をかける。


プルルルルルル…………

プツッ…


〘もしもし!!!ゲンコツ一発3000円!!!ワニワニ商会でございます!!!どのような要件でしょうか?!〙


「用心棒を頼む。用心棒長を直接雇いたい。無理なら最精鋭チームを。」


〘あらまぁ!!!親分か最精鋭チームをですか!?因みにお客様…ご予算は幾らほどで?〙


「5億。人数は5人でいい。」


5億…ですか、と電話越しに小さな笑いが聞こえる。

何がおかしいのか聞き返すボーナ。


〘クククッ…お客様ぁ…。申し訳ございませんが…そんなはした金では親分はおろか最精鋭チームを直接雇うなんてのは夢のお話。しかしまぁ…我々が選出した[精鋭チーム]でしたらぁ…考えてもいいですがどうされます?〙


じゃあそれで良いと伝える。

雇う時間は24時間。

つまりは丸一日。

日程は明日。

いきなりではあるが全然対応出来るとワニワニ商会の窓口の男は豪語する。

ワープゲートがあるからだろう。

しかし、ワニワニ商会の事務所は北極星にある。

そこからの地球にワープするのは正規の手続きでは3時間ほどかかる。

銀河政府で決められているのだ。

それにも関わらずこちらに飛べると言うことは違法ゲートを使うのだろう。

そんな事は心底どうでもいい。

あのカフェの従業員3人を片付けられればそれでいい。

契約は電話とLINE友達追加によるやり取りで十分らしいのでちゃちゃっと済ませるボーナ。

ご利用ありがとうございますと電話を終わらし、邪悪な笑顔で微笑むのであった。






「キィィィィィィ!!!!!!クァァァァァァァァッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!」


「どしたんサっちゃんあれ。歯食いしばって南国あたりに居そうな鳥みたいな声出してるけど。」


「なんや生理でしんどいねんてサっちゃん。えっと…PMS?やっけ?生理強いねんて。」  


「ほな休ませたら良かったやん…。なんで働かせとるんよ。」


「お金欲しいて天龍源一郎みたいな声で言うてたわ。ホンマに無理やったらもう帰り言うてるから。」


しかしながら南国の鳥の声を出しながら食べ物を運ぶ姿は珍妙奇天烈。

実を言うとサーシャは文里子と話し合い高校にはちゃんと通い卒業する事を約束をしていた。

毎日エメリィと通っている。

弟たちのお金はなんとかするから学校には行ってほしかったのだろう。親としては当然の思いだ。

そしてコイツらは懲役を終え出所。

前科持ち3人組によるカフェ。

それが返って話題となり客足が少し増えた。

しかしメニューの単価はわざと安くしているので正直黒字とは程遠い。

資本主義がまだマシな方とはいえ、格差が大きい社会。

誰しもが金を持っている訳では無い。

だからこそ、そういう人たちに寄り添うためにメニューの値段を極限までに安くしている。

しかし、どうにかして金を手に入れなければと考える銀之助であるが、打開策が見つからない。


「ごちそーさん。会計頼むぜ大将。」


「サっちゃんアレ大丈夫なんか?歯ぎしりヤバいぞ。」


「サっちゃん学校でも良くあんな感じになってたからなぁ…。心配。」


常連のクエスチョナーにグレート、エメリィが会計を銀之助たちに促す。

いつもありがとうと銀之助に対し、いつも美味いコーヒーをサンキューと言い合う微笑ましい光景。

しかしそれを遠くビルの屋上、望遠鏡で除く怪しき影が3人。


「アイツらがターゲットか…。ギャフフ…。」


「まぁ!!!俺たちからしたら楽な仕事よ!!!」


「早く帰って服買いに行きたいんですけど〜。」


ワニワニ商会のセイエイチームである。

その後ろにボーナとメガネをかけた体こそゴツいがインテリのワニが1人。


「私たちに取っては赤子の手をひねるようなもの。しかし油断は禁物ですよ。セード、イーパンクス、エルカット。」


ボーナが雇ったワニたちのそれぞれの名前だろう。

因みにインテリワニの名前はイルエルドだ。


「わかってるな。あのカフェの店員3人…町田銀之助とパルム、そして三木サーシャ。皆殺しだ。」


「わかっておりますよボーナ様。依頼は遂行致します。では…始めましょうか。」


殺れ。

その一言でビルから飛び降りるワニたち。

それぞれターゲットを絞り狙いを定める。


「…………………。」


「ん?どないしたんなエメリィちゃん。」


「……………いや、なんでもないよ。ほら!お客さんも増えてきたし、頑張ってね銀さんパルくん!!!サっちゃんの事お願いね!」


バイバーイと手を振り店を出ていく3人。

不思議そうな顔をしながら客の対応をする銀之助とパルムであった。

カフェを後にし少し離れた場所まで歩く。


「………良くわかったなエメリィちゃん。俺の耳でも察知出来なかったのによ。」


「タヌキは耳が良いからね。多分狙いはサっちゃんたちでしょ。」


「あんなバカたちが経営する居心地の良い喫茶店を邪魔されるわけにはいかんしな。」


目の前には人相が悪そうなワニ3人。

こちらも3人。

後はもうわかるだろう。


「誰だテメェら?依頼されたターゲットじゃねぇな。邪魔だ、失せろ。」


「そ〜んな訳にもいかんくてな。ダチが狙われてるんじゃそれを助けるのもダチの仕事よ。」


「めんどくさぁ〜。私チョ〜だるいんですけど〜。ネイルとかもしたいのに〜。」


「じゃあ帰れば良いじゃん。じゃないとアナタの綺麗なその爪、ボロボロになるよ。」


睨み合う3人。

ここでは関係のない人を巻き込んでしまう。

移動しようぜとクエスチョナーたちが一斉にイーパンクスたちを掴み空を舞う。


「ワニワニ商会に喧嘩売るたぁいい度胸だ!!!ついでにお前らも片付けてまた金稼いでやるぜ!!!!!」










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