第455話
【SeekerNet 掲示板 - ライブ配信総合スレ Part. 1201】
1: 名無しの市場ウォッチャー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
祭りだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
ガチの、神々の祭りが、始まるぞ!!!!!!!!!!!!!!!
2: 名無しのゲーマー
1
乙。
どうしたんだよ、いきなり。
また、JOKERが何かやらかしたのか?
3: 名無しの市場ウォッチャー
2
違う!違うんだよ!
今すぐ、国際公式ギルドのオークションハウスのトップページに飛べ!
告知が出てる!
来週、とんでもねえモンが出品されるぞ!
その、あまりにも切羽詰まった絶叫。
それに、スレッドは一瞬にして、トップスピードへと加速した。
数秒後、スレッドには、同じ一つの画像が、洪水のように貼り付けられ始めた。
それは、ギルド公式オークションハウスが、その威信をかけて発表した、次回の「目玉商品」の、告知画像だった。
漆黒の背景に、黄金の文字で、ただ一言。
『――マエストロの、新作。』
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
そして、爆発。
『は!?』
『マエストロ!?あの、アレッサンドロ・ヴォルタか!』
『新作!?あいつ、まだ作ってたのかよ!』
『【大変動の掌握】以来か!?ヤバい!ヤバすぎる!』
その熱狂は、瞬く間にSeekerNetの全ての掲示板へと、燎原の火のように燃え広がっていく。
そして、その数時間後。
ついに、その「新作」の詳細な性能が、世界へと公開された。
【SeekerNet 掲示板 - トップランカー専用フォーラム】
スレッドタイトル:【神々の戯れ】マエストロ・ヴォルタの『新作』、オークションに降臨【5兆円スタート?】
1: 名無しのA級魔術師
…来たな。
見ろ、お前ら。
これが、我々が生きる世界の、新しい「理」だ。
[スクリーンショット:【決戦の渇き】の詳細な性能画像]
決戦の渇き
浸潤のワンド
品質: +20%
アイテムレベル: 85
要求 レベル 60, 188 知性
スペルダメージが35%増加する
知性10ごとに1から5の雷ダメージをこの武器によるアタックに追加する
知性16ごとにスペルダメージが1%増加する
筋力および知性 +23
アタックスピードが11%増加する
クリティカル率が25%増加する
その、あまりにも暴力的なまでの、性能の羅列。
それに、スレッドは、一瞬にして静まり返った。
そして、その静寂を破ったのは、この世界の、理を知り尽くした、賢者たちの、戦慄に満ちた声だった。
255: ハクスラ廃人
…おいおいおいおい、待て待て待て待て。
なんだよ、これ…。
ヴォルタの爺さん、またとんでもねえモン作りやがったな。
知性スタッキング用の、ワンドかよ。
それも、なんだこのMODは。
261: 元ギルドマン@戦士一筋
うむ。
【大変動の掌握】が、スペルキャスターのための究極の「左手」だったとすれば、これは、全く新しいビルド…アタッカーのための、究極の「右手」だな。
268: ベテランシーカ―
ええ。
そして、このワンドが想定しているであろう、唯一無二のスキル。
それは、間違いなく…
275: 名無しのビルド考察家
268
【キネティックブラスト】だ。
間違いない。
知性スタッキングで、このワンドを装備したキネティックブラスト。
…少し、計算させてくれ。
……………
……………………
………………………………は?
その、あまりにも意味深な沈黙。
それに、スレッドが、ざわめいた。
『おい!』『どうしたんだよ、考察家ニキ!』『早く教えろ!』
281: 名無しのビルド考察家
…ダメだ。
計算結果が、おかしい。
俺の、シミュレーターが、バグを起こしてる。
なんだ、この数字は…。
火力が、馬鹿みたいに高い…。
その、天才分析官の、あまりにも人間的な、そしてどこまでも正直な、混乱。
それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。
もはや、それは賞賛ではない。
一つの、世界の理そのものが、根底から覆された瞬間への、畏敬の念だった。
そして、その熱狂の、まさにその中心へと。
あの、ハクスラ廃人が、その全ての謎を解き明かす、最後の「鍵」を、投下した。
295: ハクスラ廃人
だから、てめえらはひよっこなんだよ!
いいか、よく聞け!
このワンドの、本当のヤバさを、この俺が解説してやる!
特にヤバいのは、この二つだ!
「知性10ごとに1から5の雷ダメージをこの武器によるアタックに追加する」
「知性16ごとにスペルダメージが1%増加する」
そして、キネティックブラストの、隠された効果テキスト!
「スペルダメージの増減は、その数値の200%が、このスキルによるアタックダメージにも適用される」!
もう、分かるな?
静寂。
そして、爆発。
『は!?』
『スペルダメージが、アタックダメージに!?2倍で!?』
『なんだよ、そのチート性能は!』
298: ハクスラ廃人
ああ!
仮に、知性を2000まで積んだとしよう!
まず、追加される雷ダメージは、200から1000だ!これだけでも、十分に頭がおかしい!
だが、地獄はここからだ!
知性2000なら、スペルダメージは125%増加する!
そして、それが2倍になって、アタックダメージに適用される!
つまり、アタックダメージ250% moreだ!
分かるか!?基礎ダメージが爆発的に上がって、最終的なダメージが、さらに3.5倍になるんだよ!
片方付いてる奴もあるけど、両方はマジで強いぞ!
こんなもん、S級のボスですら、一撃で蒸発するわ!
その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも暴力的な、方程式の証明。
それに、スレッドは、もはや言葉を失っていた。
ただ、そのあまりにも巨大な「理不尽」の前に、ひれ伏すしかなかった。
そして、その議論は、やがて一つの、最も下世話で、しかし最も重要な、問いへと、収束していった。
355: 名無しのA級商人
…で、だ。
これ、いくらになるんだ?
その、あまりにも直接的な問いかけ。
それに、答えたのは、元ギルドマンだった。
彼の言葉は、どこまでも重かった。
361: 元ギルドマン@戦士一筋
…分からん。
だが、一つだけ言える。
このワンド一本で、一つのギルドが、世界の覇権を握れる。
【レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴】が30兆円だったことを考えれば…。
多分、5兆円は硬いだろうな。
その、あまりにも無慈悲な、そしてどこまでも現実的な、鑑定結果。
それに、スレッドは、深い、深い諦観のため息に包まれた。
これは、もはや自分たちには縁のない、神々の世界の、物語なのだと。
だが、その諦観の、さらにその裏側で。
世界の、トップギルドたちの、その水面下では。
すでに、静かな、しかしどこまでも熾烈な、戦争の火蓋が、切って落とされていた。
オーディン、青龍、そしてヴァルキリー・キャピタル。
彼らは、この神の杖を、その手に入れるためだけに、国家予算規模の、資金の調達を、始めていた。
世界の、本当の戦いは、まだ始まってもいなかったのだ。
その、あまりにも壮大で、そしてどこまでも面白い、神々のゲームの幕開けを。
世界の、全ての人間が、ただ固唾を飲んで、見守っていた。




