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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
クソゲー共同攻略編

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464/491

第447話

【SeekerNet 掲示板 - ライブ配信総合スレ Part. 1158】


 1: 名無しの湊ウォッチャー

 おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 始まったぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 朱雀(すざく) (みなと)君が、配信始めた!!!!!!!!!!!!!!!

 タイトルが、ヤバい!!!!!!!!!!!!!!!!


 その、あまりにも切羽詰まった絶叫。

 それに、スレッドは一瞬にして、トップスピードへと加速した。


【配信タイトル:【初挑戦】A級下位【星霜の書庫】】

【配信者:朱雀(すざく) (みなと)

【現在の視聴者数:3,128,492人】


『きたあああああああ!』

『A級!?ついに、行くのか!』

『B級ソロクリアから、まだそんなに経ってないだろ!?成長速度、おかしいだろ!』

『待ってたぜ!最高のショーを、見せてくれ!』


 その熱狂をBGMに、配信画面に映し出されたのは、冒険者学校の、彼の質素な、しかし綺麗に整頓された学生寮の一室だった。

 そして、その中央で、一人の少年が、少しだけ緊張した面持ちで、ARカメラに向かって、深々と頭を下げた。

 朱雀(すざく) (みなと)

 その、少女と見紛うほど可憐な容姿と、その身に宿す、あまりにも暴力的なまでの力の、アンバランスさ。

 それこそが、彼がこの世界の若者たちを、熱狂させる、最大の魅力だった。


「えー…皆さん、こんばんは。朱雀(すざく) (みなと)です。今回は、A級下位ダンジョン【星霜の書庫】に、初挑戦します。よろしくお願いします」


 彼の、そのあまりにも丁寧な、そしてどこか初々しい挨拶。

 それに、コメント欄が、温かい声援で埋め尽くされる。

 彼は、その声援に、少しだけはにかみながら、続けた。


「えっと、本当は、今回も配信するつもりじゃなかったんですけど…。この前のB級下位【古竜の寝床】の時、配信しなかったら、色々な方に『なんで配信しないんだ!』って、すごく怒られまして…。なので、今回から、ちゃんと配信することにしました」


 その、あまりにも正直な、そしてどこまでも彼らしい理由。

 それに、コメント欄が、爆笑の渦に包まれた。


『wwwwwwwwwwww』

『怒られてやんのwww』

『でも、ありがとう!待ってたぜ!』


 その、温かい空気の中で。

 一つの、あまりにも異質な、そしてどこまでも絶対的な存在感を放つコメントが、投下された。

 投稿主は、この世界の、理そのものだった。


 JOKER:

 見てるぜ。頑張れよ


 静寂。

 数秒間の、絶対的な沈黙。

 スレッドの、全ての時間が止まったかのような錯覚。

 そして、その静寂を破ったのは、湊自身の、素っ頓狂な、そしてどこまでも嬉しそうな、絶叫だった。


「――えっ!?えええええええええええええええ!?!?JOKERさん!?見てるんですか!?いえーい!」


 彼は、その場でぴょんぴょんと飛び跳ね、カメラに向かって、満面の笑みでピースサインを決めた。

 その、あまりにも無邪気な、そしてどこまでも子供っぽい反応。

 それに、コメント欄は、この日一番の、そしてどこまでも温かい、爆笑の渦に、完全に飲み込まれた。

 JOKERの、そのたった一言。

 それが、この歴史的な一夜の、始まりの合図だった。


 ◇


 彼が、そのA級のゲートをくぐった、その瞬間。

 彼の魂に、冷たい、しかしどこまでも馴染み深い枷がはめられたかのような、不快な感覚。

【世界の呪い:全ての属性耐性 -50%】

 だが、彼は動じない。

 B級の死線を、ソロで乗り越えてきた彼の魂は、すでにその程度の理不尽など、日常の一部として受け入れていた。


 ダンジョンの内部は、どこまでも続く、氷と水晶でできた、巨大な図書館だった。

 壁も、床も、天井も、全てが万年氷でできており、その表面には、古代の、しかし決して解けることのない霜の結晶が、美しい幾何学模様を描いている。天井からは、水晶でできた巨大なシャンデリアが吊り下がり、内部に宿る魔力の光で、どこまでも続く書架の列を、幻想的に照らし出していた。

 その、あまりにも静かで、そしてどこまでも美しい、死の世界。


「えーと、ビルドなんですが、解説しながら進みますね」

 湊の、その落ち着いた声が、配信に響き渡る。

 彼は、その神々の領域の美しさに、一切の動揺を見せることなく、ただ淡々と、自らの「仕事」を始めた。

 彼の前方に、最初の敵が現れた。

 それは、古代のローブを纏い、その顔が古文書でできた、異形の司書たちだった。

古文書(こもんじょ)番人(ばんにん)】。

 彼らは、その紙の指先から、鋭い氷の礫を、嵐のように放ってきた。


「まず、敵に【血の怒り】をアクティブにして、リープスラムで飛び込みます」

 湊の体が、赤い闘気のオーラに包まれる。そして彼は、その巨大な両手斧を軽々と担ぎ上げると、まるでバネのように、その場から天高く跳躍した。

 そして、敵の軍勢の、そのど真ん中へと、隕石のように着弾する。

 ドッゴオオオオオオオオオオオオオオンッ!!!

 凄まじい轟音と共に、氷の床が砕け散り、その衝撃波だけで、数体の番人が吹き飛ばされた。


「そして、インティミデーティングクライ、サイズミッククライで、バフします」

 彼が、その小さな口を大きく開くと、竜の咆哮をもかき消すほどの、力強い雄叫びが、二度、連続で放たれた。

 彼の全身から、赤い闘気のオーラがさらに迸り、彼の足元の大地が、まるで生き物のように脈打ち始める。


「そして、ヴォルカニック・フィッシャーで、仕留める。これが、基本ですね。じゃ、どんどん行きますね」

 彼は、そう言うと、その両腕に、狂乱と耐久のチャージを溜め込み、その神々の力を宿した巨大な斧を、大地へと叩きつけた。

 そこから始まったのは、もはや戦闘ではなかった。

 ただ、一方的な、そしてどこまでも美しい「蹂躙」だった。

 大地が、割れる。

 そして、その裂け目から、灼熱のマグマの奔流が、まるで火山が噴火するかのように、凄まじい勢いで噴き出した。

 氷の図書館が、炎の地獄へと、一瞬で姿を変える。

古文書(こもんじょ)番人(ばんにん)】たちは、そのあまりにも理不尽な熱量の前に、悲鳴を上げる間もなく、その紙の体を灰へと変え、そして光の粒子となって消滅していった。

 その、あまりにも壮絶な光景。

 それに、コメント欄は、もはや意味をなさない絶叫の洪水で、埋め尽くされていた。


『つえー!』

『A級下位なのに、無双じゃねーか!』

『なんだよ、この火力…。B級の頃より、さらに上がってねえか!?』

『これが…これが、日本の至宝か…!』


 その熱狂の中心で、湊は、ただ楽しそうに、その蹂躙を、繰り返していく。

 リープスラムで飛び込み、クライをして、ヴォルカニック・フィッシャーを放つ。

 その、あまりにもシンプルで、そしてどこまでも完成された、死のコンボ。

 それに、A級の、あの硬い装甲を誇るクリスタル・ゴーレムたちですら、ただの的でしかなかった。


 そして、彼はついに、その場所へとたどり着いた。

 図書館の、最深部。

 ひときわ巨大な、ドーム状の閲覧室。

 その中央に、それはいた。

 身長は、5メートルを超えているだろうか。

 全身を、黒く磨き上げられた黒曜石の鎧で固めた、巨大な骸骨の騎士。

 その手には、燃え盛る炎をその刀身に宿した、巨大な両手剣が握られている。

 そして、その空虚な眼窩には、憎悪と、そして冷たい知性の光を宿した二つの赤い鬼火が、不気味に燃え盛っていた。

【禁書の番人、アルベリヒ】。

 この、知識の聖域を、永遠に守り続ける、呪われた王。


「はい、という訳で、ボスまで到達しました」

 湊の、そのあまりにも落ち着き払った声。

「じゃあ、こいつもサクサク倒しましょう。えー、事前情報では、呪いということなので、呪いを当たらないように、リープスラムで撹乱します」


 その、あまりにも冷静な、そしてどこまでも的確な、ブリーフィング。

 それに、コメント欄が、熱狂した。

『うおおおおお!ボス戦だ!』

『サクサクwww湊君、余裕すぎるだろwww』


 戦いの火蓋は、切って落とされた。

 アルベリヒが、その巨大な両手剣を、天へと掲げる。

 その切っ先から、おびただしい数の、紫色の呪いの弾丸が、雨のように、湊へと降り注いだ。

 だが、その全てが、空を切る。

 湊の体は、もはやそこにはなかった。

 彼は、そのリープスラムの、神速の跳躍で、その死の弾幕を、まるでダンスを踊るかのように、華麗に、そして優雅に、すり抜けていく。

 そして、彼はその嵐の、その中心へと、完璧なタイミングで、着弾した。

 そして、クライをして、ヴォルカニック・フィッシャーを、ぶち込む。


「――バカナ!」


 アルベリヒの、その空虚な顎から、初めて、苦痛と、そして驚愕の絶叫が漏れた。

 その、あまりにも人間的な、そしてどこまでも滑稽な反応。

 それに、湊は、その美しい顔に、最高の、そして最も無慈悲な笑みを浮かべて、答えた。


「はいはい、そういうのは良いから、早く倒されて下さいね」


 その、あまりにも鬼畜な、そしてどこまでも彼らしい一言。

 それに、コメント欄が、爆笑の渦に包まれた。


『朱雀君、鬼畜wwwww』

『ドSだ、こいつ!』

『でも、そこがいい!』


 黄金の、雷霆ならぬ、灼熱のマグマ。

 それが、アルベリヒの、その黒曜石の鎧を、内側から、完全に粉砕した。

 ワンパンだった。

 王は、消滅する。

 その巨体は、断末魔の悲鳴を上げる間もなく、その存在ごと、この世界から完全に消滅した。

 後に残されたのは、絶対的な静寂と、そしてその中心で、おびただしい数のドロップ品の山を前にして、その勝利の余韻に浸る、一人の少年の姿だけだった。


「――やったー!A級、突破です!」


 彼の、その子供のように無邪気な、そしてどこまでも誇らしげな、歓喜の絶叫。

 それに、コメント欄は、万雷の拍手喝采で応えた。

『おめでとう!』『最高のショーだった!』

 その、温かい祝福の嵐。

 その中で、湊は、ふと、その表情を、曇らせた。

 彼は、自らのARウィンドウに表示された、新たなクエストの通知を、その大きな瞳で、ただじっと、見つめていた。

 そして、彼は、その日の配信を、最後の、そして最も重いため息と共に、締めくくった。


「えー…次は、皇帝の迷宮です。…行きたくないけど、仕方がないので、行きます。お楽しみに…」


 その、あまりにも人間的な、そしてどこまでも正直な、魂の叫び。

 それが、この歴史的な一夜の、最高の、そして最も愛すべき、結末となった。

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