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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
新ビルド装備思案編

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第436話

 その日の東京の空気は、穏やかな凪の中にあった。

 世界は、JOKERという一人の男が成し遂げた「神殺し」の余韻に、まだ浸っている。SeekerNetの掲示板は連日、彼のアルトリウス戦のログ映像を分析するスレッドで埋め尽くされ、その一挙手一投足が、世界の探索者たちの新たな「聖典」となっていた。

 だが、その熱狂のまさに中心にいたはずの男は、世界の喧騒から完全にその身を切り離していた。

 西新宿のタワーマンション、その最上階。

 神崎隼人――“JOKER”は、配信を切った自室で、ただ静かにその戦利品を眺めていた。


 彼の広大なリビングの中央。その空間に、六つの禍々しくも美しい神々の遺産が、ホログラムとなって静かに浮かんでいる。

 それは彼がこの数週間、自らの莫大な資産と、そして命懸けの死闘の果てに、ようやく手に入れた新たな「おもちゃ」の数々だった。


「…ふぅ」

 彼は深く、そして満足げなため息をついた。

「高い買い物だったが、ようやくキーユニーク装備が集まってきたぜ」

 彼の呟きが、静寂な部屋に小さく響いた。

 その言葉通り、そこに並ぶ遺産の数々は、一つ一つが国家予算を揺るがしかねないほどの、神話級の価値を持つものばかりだった。


 彼はまず、その視線を一振りの禍々しい輝きを放つ片手剣へと向けた。彼のARコンタクトレンズが、その詳細な情報を網膜へと投影する。


 レプリカ・ドリームフェザー

 永遠の剣

 品質: +20%

 物理ダメージ: 127 to 202

 要求 レベル 66, 104 筋力, 122 器用さ

 命中力 +475

 65から100の物理ダメージを追加する

 アタックスピードが10%増加する

 アーマー +200

 移動スピードが3%減少する

 命中力 +300

 アーマー450ごとにアタックダメージが1%増加する


 イージス・オーロラ

 チャンピオンカイトシールド

 盾

 品質: +20%

 ブロック率: 32%

 アーマー: 1284

 エナジーシールド: 260

 要求 レベル 62, 85 筋力, 85 知性

 アーマーおよびエナジーシールドが400%増加する

 全ての元素耐性 +10%

 冷気耐性の最大値 +5%

 ブロック率 +6%

 ブロック時にアーマーの2%と同量のエナジーシールドを回復する

 アタックスキルの元素ダメージが20%増加する


 アルファの遠吠え

 罪人の三角帽

 兜

 品質: +20%

 回避力: 935

 要求 レベル 64, 138 俊敏

 指定した4つのオーラジェムのレベル +2

 回避力が100%増加する

 冷気耐性 +30%

 25%の確率で冷却を無効化する

 凍結を付与されることがない

 スキルのMP予約効率が16%増加する。


 (たましい)昇天(しょうてん)

 カーナルミット

 回避力: 252

 エナジーシールド: 52

 要求レベル: 50, 俊敏 39, 知性 39

 性能:

 回避力とエナジーシールドが150%増加する

 カオス耐性 +29%

 敵にヒットした時、ソウルを1つ喰らう(0.5秒ごとに1回まで)

 喰らったソウルの最大数 +10

(ソウルイーター効果を得る)

 ※ソウルイーター効果:

 喰らったソウル1つにつき、攻撃速度と詠唱速度が5%増加する。

 最近ソウルを喰らっていない場合、0.5秒ごとにソウルを1つ失う。

 喰らうソウルの最大数は通常45だが、この手袋の効果で55になる。

 フレーバーテキスト:

 我が名は忘れた。

 我が主君も、我が使命も、とうの昔に深淵の闇に溶けた。

 だが、この両の手だけが覚えている。


「手装備を迷ってたが、アルトリウスが落としたユニークがピッタリハマる性能だったから、これを使うか」

 彼の口元に、獰猛な笑みが浮かんだ。

「…ソウルイーター。敵を喰らい、その魂を自らの力へと変える。面白い。実に面白いじゃねえか。この俺の新しいビルドの、その狂気的なコンセプトに、これ以上ないほどふさわしい」


 そして彼はついに、その視線をこの狂気のビルドの心臓部…二つの、あまりにも異質なアーティファクトへと向けた。

 一つは、彼が雫と共にその危険性を理解しながらも、あえて手に入れた悪魔の試作品。


 ドリヤニの試作品

 聖者のホバーク

 鎧

 品質: +20%

 アーマー: 1587

 エナジーシールド: 272

 要求 レベル 67, 109 筋力, 94 知性

 アーマーおよびエナジーシールドが200%増加する

 最大ライフ +90

 雷ダメージ以外のダメージを与えない

 アーマーは、ヒットにより受ける雷ダメージにも適用される

 雷耐性は、受ける雷ダメージに影響しない

 近くの敵は、プレイヤーと同じ数値の雷耐性になる


 そしてもう一つ。

 その悪魔の鎧の真の力を解放するための、究極の「毒」。


 (にく)なる融解(ゆうかい)

 種別: コバルトジュエル

 アイテムレベル: 86

 リミット: 1個まで

 性能:

 全ての元素耐性 -80%

 全ての最大元素耐性 -4%

 元素耐性の上限は、あなたの最も高い最大元素耐性によって決定される


 そのあまりにも自殺行為にも等しい性能を持つ、二つのアーティファクト。

 それらをJOKERは、まるで愛おしい恋人でも見るかのように、その細い指でそっと撫でた。


「…ああ。揃った。ついに、揃ったな」

 彼の声が、歓喜に打ち震えていた。

「神を造るための、方程式。その全てのパーツが」


 彼はソファからゆっくりと立ち上がると、その六つの神々の遺産の前で腕を組んだ。

 そして彼は、語り始めた。

 自らが組み上げた、あまりにも美しく、そしてどこまでも冒涜的な新たな「神」の、その設計図を。


「――まず第一段階。物理耐性・アーマーを積み上げて、物理への耐性兼、雷耐性の代わりを積み上げる」

 彼の指が、三つのアイテムを指し示す。

【ドリヤニの試作品】、【イージス・オーロラ】、そして【レプリカ・ドリームフェザー】。

「この三つで、アーマー値を極限まで高める。ドリヤニとイージスで、アーマーとエナジーシールドはそれぞれ600%増加。さらに、レプリカ・ドリームフェザーの固定値+200。これだけで、俺のアーマーはA級のタンクですら到達できない、数万の領域へと達するだろう」

「そして、ここが重要だ。【ドリヤニの試作品】の効果。『アーマーはヒットにより受ける雷ダメージにも適用される』。つまり、俺の雷耐性はもはや無意味だ。この鋼鉄の城そのものが、俺の雷への唯一にして絶対の盾となる」


「――第二段階。それをレプリカ・ドリームフェザーでダメージに変換して、周りの雷耐性を極限まで下げて、スマイトをぶち込む」

 彼の指が、今度は鎧とジュエル、そして自らの拳を指し示した。

「俺は【(にく)なる融解(ゆうかい)】を使い、自らの雷耐性をマイナスの極致へと堕とす。A級の呪い-50%と、このジュエルの-80%。合計-130%だ」

「【ドリヤニの試作品】の効果、『近くの敵はプレイヤーと同じ数値の雷耐性になる』。俺のこの-130%という脆弱性が、そのまま周囲の敵全てへの、絶対的な呪いへと反転する」

「そこに、俺のスマイトを叩き込む。雷耐性-130%の敵に、雷の拳を叩き込んだらどうなるか。分かるな?ダメージは、2.3倍だ。それだけじゃねえ。俺のアーマーは数万を超えている。【レプリカ・ドリームフェザー】の効果、『アーマー450ごとにアタックダメージが1%増加する』。つまり、俺の防御力そのものが、そのまま凶悪なまでの攻撃力へと変換される」

「防御すればするほど攻撃力が上がり、そして弱くなればなるほど、敵はさらに弱くなる。その超絶火力で、敵を薙ぎ払う」


「――そして第三段階。高いブロック率の盾でそれを受けて、エナジーシールドを回復させる」

 彼の指が、再び【イージス・オーロラ】を指し示した。

「答えはこれだ、【イージス・オーロラ】。ブロック率32%。そして、その効果、『ブロック時にアーマーの2%と同量のエナジーシールドを回復する』。俺のアーマーが仮に5万だとすれば、一度のブロックで1000のESが回復する。俺は敵の攻撃をその盾で受け流しながら、そのエネルギーを自らの命へと変換し続ける」


「――そして最後の、そして最も重要な第四段階」

 彼の指が、最後に兜と、そしてまだ見ぬ無数の宝石を指し示した。

「あとは、キーとなるスモールクラスタージュエルでMP予約効率をどれだけ積み上げて、オーラを貼れるかだな」

「そのための鍵が、【アルファの遠吠え】だ。これ一つでオーラのレベルが+2され、そしてMP予約効率が16%も稼げる。だが、それでも足りない。残りは、スモールクラスタージュエル。あの小さな宝石に宿る、わずか数パーセントの予約効率。それを6個もパッシブツリーに埋め込み、そして完璧な一点へと収束させる」


 彼は、そのあまりにも壮大で、そしてどこまでも狂気的な方程式の全てを語り終えた。

 そして彼は、その六つの遺産を満足げに眺めた。

 その瞳は、もはやただの探索者ではない。

 一つの完璧な芸術作品を、その完成を前にして、恍惚と見つめる芸術家のそれだった。


「まだまだ発展途上だが、完成したらとんでもないビルドになるぜ?」

 彼はそう言って、心の底から楽しそうに、ワクワクと笑った。

 彼の退屈だった日常は、終わりを告げた。

 新たな、そして最高の「おもちゃ」が、この世界のテーブルに配られたのだから。

 彼の本当の「ショー」が、今、始まろうとしていた。

 彼の魂は、その果てしない可能性の前に、これ以上ないほどの歓喜に打ち震えていた。

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