第418話
【SeekerNet 掲示板 - 総合雑談スレ Part. 1882】
405: 名無しのゲーマー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
タンクニキ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
それで、どうなんだよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
強くなったのか!?
408: 名無しのビルド考察家
405
そうだ!
効果が発動するのは、「移動速度が低下している敵」に対してだけだ!
お前のパーティに、敵をスロウにする手段はあるのか!?
なければ、ただの飾りだぞ、その首輪は!
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも本質を突いた指摘。
それに、スレッドの空気が、一瞬だけ凍りついた。
そうだ。
この宝石は、確かに強力だ。だが、その力を引き出すためには、それ相応の「準備」が必要なのだ。
その、あまりにも当然な、しかし誰もが熱狂のあまり忘れていた事実に、スレッドがわずかに冷静さを取り戻しかけた、その時だった。
当事者である、あのB級タンクが、その全ての懸念を、一笑に付した。
415: 名無しのリフト周回マン
…はっ。
お前ら、忘れたのか?
俺の、クラスを。
彼は、そう言うと、一枚のスクリーンショットを、スレッドへと投下した。
そこに映し出されていたのは、彼の、あまりにも無骨で、そしてどこまでも頼もしい、戦士のスキルツリーだった。
そして、その中心で、一つの巨大な星が、ひときわ強い輝きを放っていた。
キーストーン【揺るぎなきスタンス】。
そして、その効果テキスト。
『地面を揺るがすスキルは、敵を30%減速させる』。
416: 名無しのリフト周回マン
俺の、主力スキルは【グラウンド・スラム】だ。
悪いが、俺のパーティに、足の遅い敵しかいねえんだわ。
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
そして、爆発。
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!』
『なんだよ、それ!完璧なシナジーじゃねえか!』
『天啓かよ!お前、この宝石を拾うために生まれてきたのか!』
その、あまりにも劇的な、そしてどこまでも美しい、運命の悪戯。
それに、スレッドは、この日一番の、そしてどこまでも温かい、祝福の嵐に、完全に包まれた。
そして、その祝福の声に背中を押されるように。
彼は、その新たな力を試すための、次なる一歩を、踏み出した。
425: 名無しのリフト周回マン
…面白い。
じゃあ、もう一周、行ってくる。
この、新しい相棒の実力を、確かめにな。
見てろよ、お前ら。
その、あまりにも力強い宣言。
それに、スレッドは、熱狂した。
『行ってこい、勇者よ!』『伝説の、始まりだ!』
その声援に送られ、彼は、その未知なる冒険へと、再びその身を投じていった。
◇
数十分後。
スレッドは、固唾を飲んで、勇者の帰還を待っていた。
そして、その沈黙を破るかのように。
あのB級タンクが、帰ってきた。
その書き込みは、もはやただの報告ではなかった。
一つの、新たな世界の扉が開かれたことを告げる、神の啓示だった。
511: 名無しのリフト周回マン
――ただいま。
そして、お前ら。
これは、ヤバい。
マジで、ヤバい。
512: 名無しのゲーマー
511
おかえり!
どうだったんだよ!
515: 名無しのリフト周回マン
512
…世界が、変わった。
今まで、あれほど苦戦していた、ランク20のリフトガーディアン。
あいつが、溶けた。
マジで、バターみてえに、溶けていきやがった。
俺の、グラウンド・スラムの一撃。
それに、あの宝石のダメージボーナスが乗って、火力が、体感で1.5倍以上になってる。
もう、何も怖くねえ。
その、あまりにも正直な、そしてどこまでも興奮に満ちた、勝利の報告。
それに、スレッドは、再び歓喜の渦に包まれた。
だが、本当の「祭り」は、ここからだった。
518: 名無しのリフト周回マン
…そしてな。
クリアした後、なんか、見たこともねえウィンドウが開いたんだ。
[画像:リフトクリア後の、オベリスクの前に広がる、報酬選択画面のスクリーンショット。そこには、【試練の要石を入手する】という見慣れた選択肢の下に、第二の選択肢として【伝説の宝石をアップグレードしますか?】という荘厳なテキストが、青白い光を放って表示されている]
…なんだよ、これ…。
アップグレード…?
その、あまりにも未知なる単語。
そして、世界の理そのものが変質したかのような、異常な現象。
それに、スレッドは、爆発した。
『は!?』
『アップグレード!?』
『まさか、育成できるのかよ、あの宝石!』
その混乱の渦の中で、最初にその価値を嗅ぎつけたのは、やはりあの男たちだった。
525: ハクスラ廃人
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
これ、マジかよ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
無限に、強くなれるってことか!?
おい、タンク!早く、押せ!そのボタンを!
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも欲望に満ちた、命令。
それに、B級タンクは、応えた。
528: 名無しのリフト周回マン
525
分かってるよ!
今、押す!
[画像:アップグレード確認画面のスクリーンショット。【伝説の宝石『絶望せし者の残響』をランク1にアップグレードしますか?】というテキストの下に、必要素材として【ネファレムポイント x 10】【高純度魔石 x 100】が表示されている]
…うわ、結構、素材食うな。
まあ、いい。
いくぞ。
その、あまりにも潔い、そしてどこまでもギャンブル狂らしい宣言。
それに、スレッドは、熱狂した。
彼が、その最後のボタンを、タップした、その瞬間。
彼のインベントリが、一瞬だけ、これまでにないほどの、まばゆい黄金の光に包まれた。
そして、再び光を取り戻した時。
そこに表示されていたのは、信じられないほどの、奇跡だった。
[画像:先ほどの【絶望せし者の残響】の詳細情報。だが、その名前の横に、小さく【Rank: 1】という文字が追加され、効果テキストのダメージボーナスが【10.4%】へと、わずかに、しかし確実に、上昇している]
『うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!』
もはや、言葉はなかった。
ただ、魂の絶叫だけが、スレッドを埋め尽くしていく。
彼は、成功したのだ。
神々の領域へと続く、その無限の階段の、その最初の一歩を、確かに踏み出したのだ。
その、あまりにも劇的な成功。
そして、その直後だった。
世界の、あらゆる場所で。
同じような、しかし全く異なる「奇跡」の報告が、上がり始めたのだ。
【SeekerNet - North America Server】
『HOLY S**T! I GOT ONE! A blue one!』
(マジかよ!俺も拾ったぞ!青いやつだ!)
【SeekerNet - Europe Server】
『Gott im Himmel! Ist das... ein legendärer Edelstein?』
(なんてこった!これは…伝説の宝石か?)
その、あまりにも衝撃的な、そしてどこまでもグローバルな、熱狂の連鎖。
スレッドは、もはやただの掲示板ではない。
一つの、巨大な、そしてどこまでも開かれた、黄金郷への地図と化していた。
そして、その地図を、最初に手に入れた者たちが、次なる「富」を生み出す。
世界の、経済が、再び、そしてこれまでにないほどの速度で、動き始めたのだ。
【SeekerNet 掲示板 - マーケット総合スレ Part. 522】
1: 名無しの市場ウォッチャー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
祭りだ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
伝説の宝石、ついにマーケットに出品されたぞ!!!!!!!!!!!!!!!
価格が、ヤバい!!!!!!!!!!!!!!!!
その、あまりにも切羽詰まった絶叫。
それに、スレッドは、トップスピードへと加速した。
公式マーケットの「注目アイテム」欄。
その、最も目立つ場所に、それは静かに、しかし絶対的な存在感を放って、鎮座していた。
【絶望せし者の残響】Rank: 0。
そして、その横に表示された、開始価格。
『10,000,000円』。
『い、いっせんまん!?!?』
『石ころ一つが!?』
だが、その驚愕は、まだ序の口に過ぎなかった。
出品から、わずか数分後。
世界の、トップギルドたちが、そのテーブルへと、なだれ込んできたのだ。
オーディン、青龍、ヴァルキリー・キャピタル。
だが、その狂乱の、さらにその裏側で。
より、静かで、そしてどこまでも確実な「市場」が、形成されつつあった。
B級の探索者たちが、自らが手に入れた宝石を、より現実的な価格で、取引し始めたのだ。
1000万、900万、800万…。
需要と、供給。
その、あまりにも原始的な、そしてどこまでも健全な市場原理。
その中で、価格は、ゆっくりと、しかし確実に、一つの「適正価格」へと、収束していった。
約1000万円。
B級探索者が、パーティで数週間頑張れば、手が届くかもしれない。
だが、決して安くはない。
その、絶妙な価格設定。
それが、この新たなゴールドラッシュの、本当の始まりを告げる、ゴングとなった。
世界の、全てのB級以上の探索者が、その日、一つの共通の夢を見た。
自らの、魂を賭けた、無限の育成ゲームの、その甘美な、そしてどこまでも深い「沼」に、その身を投じる夢を。




