第404話
【SeekerNet 掲示板 - 楽園諸島ハウジング総合スレ Part. 87】
1: 名無しの島クリエイター
スレ立て乙。
さて、と。今日も、うちのかわいい島とペットを自慢し合う時間だぜ。
2: 名無しのVファン
乙ですー!
昨日のアリアちゃんの配信、見ました?島の温泉で、ペットの白熊「わたあめちゃん」と一緒に入浴してたやつ。マジで天使すぎて、浄化された…。 #うちの子見て
3: 名無しの週末冒険者
2
見た見たwww
あれは、良かったな。仕事の疲れが、全部吹っ飛んだわ。
俺も、娘にねだられて、週末はずっとゴブリンの耳集めてゴールド稼ぎだよ。
娘の部屋に、天蓋付きのベッドを置くまでは、死ねん。
4: 名無しのハウジングガチ勢
…なあ、お前ら。
ちょっと、聞きたいんだが。
俺の、気のせいか…?
5: 名無しのゲーマー
4
どうしたんだよ、ガチ勢ニキ。
また、家具の配置が1ミリずれてて、発狂でもしたか?
6: 名無しのハウジングガチ勢
5
違う!違うんだよ!
さっき、島のレイアウト変更しようと思って、建設メニュー開いたんだ。
そしたら…。
あれ?なんか昨日までなかった「施設」ってタブが、ハウジングに追加されてるな。これ、なに?
その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも不可解な、書き込み。
それに、スレッドの空気が、わずかに変わった。
7: 名無しの島クリエイター
6
は?施設?
なんだそりゃ。
俺のメニューにも、出てるわ…。
昨日までは、絶対なかったぞ。
8: 名無しのVファン
7
本当だ!私のにも!
でも、タブを開いても、「建設可能な施設はありません」って表示されるだけだよ?
バグかな?
9: 名無しのハクスラ廃人
…またかよ。
また、神様とやらの、気まぐれなサイレントアップデートか。
面白い。
実に、面白いじゃねえか。
その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも謎に満ちた、新たな変化。
スレッドは、一瞬にして、トップスピードへと加速した。
誰もが、自らの島の建設メニューを開き、そしてその新たなタブの存在に、困惑し、そして興奮していた。
その、混沌の中心で。
一人の、あまりにも裕福な、そしてどこまでも好奇心旺盛な男が、その声を上げた。
255: 名無しのハウジングガチ勢
…面白い。
俺が、人柱になってやるよ。
この、「施設」ってやつが、一体何なのか。
この目で、確かめてやる。
タブの中には、一つだけ、建設可能なものがあるな。
[画像:島の建設メニューのスクリーンショット。「施設」タブが開かれており、その中に【祝福の塔 - 設計1】という項目だけが表示されている。必要素材の欄には、「ゴールド x 500,000,000」「S級魔石 x 100」「古竜の心臓 x 1」という、あまりにも正気とは思えない数字と素材名が並んでいる]
256: 名無しのゲーマー
255
は!?
ご、5億ゴールド!?
S級魔石100個!?
古竜の心臓!?
なんだよ、これ!国家予算かよ!
257: 名無しのハウジングガチ勢
256
はっはっは!
この日のために、モンスター素材を買い占め、ゴールドを貯め込んできたんだよ。
見てろ、お前ら。
俺が、この世界の、最初の神殿を、建立してやる。
その、あまりにもヒーロー的な、そしてどこまでも金満な宣言。
それに、スレッドは、熱狂した。
『マジかよ!』『行ってこい、石油王!』『歴史の目撃者になるぞ!』
その声援に送られ、彼は、その未知なる建築へと、その最初の一歩を、踏み出した。
◇
数時間後。
スレッドは、固唾を飲んで、勇者の帰還を待っていた。
そして、その沈黙を破るかのように。
あのハウジングガチ勢が、帰ってきた。
その書き込みは、もはやただの報告ではなかった。
一つの、新たな世界の扉が開かれたことを告げる、神の啓示だった。
511: 名無しのハウジングガチ勢
――ただいま。
そして、お前ら。
これは、ヤバい。
マジで、ヤバい。
512: 名無しのゲーマー
511
おかえり、石油王!
どうだったんだよ!
515: 名無しのハウジングガチ勢
512
…神殿だ。
俺の島に、神殿が建った。
[画像:夕焼けのビーチを背景に、天を突くかのようにそびえ立つ、白亜の塔のスクリーンショット。塔の表面には、黄金のルーン文字が刻まれ、その頂点からは、空に浮かぶ二つの太陽の光を受けて、七色のオーラが立ち上っている]
そしてな。
祝福の塔を設置してみると、塔の中に入って、祭壇に触れることができるんだ。
そしたら、なんか、目の前に、見たこともねえウィンドウが開いて…。
[画像:荘厳な祭壇の前に浮かぶ、ARウィンドウのスクリーンショット。【星辰の祝福を選択してください】というテキストの下に、「攻撃の祝福」「魔力の祝福」「守護の祝福」という三つの選択肢が表示されている]
516: 名無しのビルド考察家
…おい、待て。
なんだ、これは…。
祝福…?
518: 名無しのハウジングガチ勢
516
ああ。
試しに、「攻撃の祝福」ってやつを選んでみた。
そしたら、俺のステータス画面に、新しいバフが付いたんだ。
[画像:ハウジングガチ勢のステータス画面のスクリーンショット。バフ一覧の欄に、【攻撃の祝福:アタックダメージ+5%(持続時間:30日)】という、信じられないテキストが表示されている]
なにこれ、バフ貰えるのかよ!
5%だけど、これ強くない?
その、あまりにも淡々とした、しかしどこまでも核心を突いたレポート。
それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。
もはや、それは賞賛ではない。
一つの、世界の理そのものが、根底から覆された瞬間への、畏敬の念だった。
815: 元ギルドマン@戦士一筋
…馬鹿な。
永続的な、バフだと…?
それも、5%?
ふざけるな!俺たちが、何億、何十億とかけて装備を更新して、ようやく捻り出す数パーセントの火力を、島の施設一つで、手に入れられるというのか!
821: ハクスラ廃人
ああ、間違いないな。
そして、このバフの、本当の恐ろしさに、お前らはまだ気づいてねえ。
持続時間だ。
「30日」。
一ヶ月だぞ。
これは、もはやただのバフではない。
一つの、新たな「インフラ」だ。
828: ベテランシーカ―
ええ。
そして、このインフラは、ギルドという、共同体において、最大の武器となりうる。
もし、ギルド島にこの塔を建て、その祝福を、全てのメンバーが共有できるとしたら…?
そのギルドの戦力は、一夜にして、5%底上げされる。
これは、リフト戦争の、パワーバランスを、完全に塗り替えるぞ。
その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも美しい、結論。
それに、スレッドは、再び、歓喜の渦に包まれた。
絶望の淵に突き落とされた、全てのギルドマンたち。
その目の前に、あまりにも眩しい、そしてどこまでも確かな「希望」の光が、差し込まれた瞬間だった。
そして、その熱狂は、やがて一つの、巨大な「ビジネス」へと、その姿を変えていく。
1088: 名無しのA級商人
…おい、お前ら。
話は、聞いた。
その、「祝福の塔」とやら。
建設に必要な、S級魔石と、古竜の心臓。
俺が、言い値で、買い取る。
そして、その建設に必要な、5億ゴールドもだ。
これは、金になる。
とんでもねえ、金になるぞ。
その、あまりにも直接的な、そしてどこまでも純粋な、欲望の宣言。
それが、この新たな時代の、本当の幕開けだった。
世界の、全ての探索者が、その日、一つの共通の夢を見た。
自らの、そして仲間たちの、未来を祝福する、白亜の塔を、その手で築き上げる夢を。
新たな、そして最も熾烈な、ゴールドラッシュ。
その、あまりにも静かで、そしてどこまでも壮絶な、競争の時代の幕開けだった。




