表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
ネファレム・リフト編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

407/491

第391話

 

 その日の日本最大の探索者専用コミュニティサイト『SeekerNet』は、もはやただの情報交換の場ではなかった。それは、一つの巨大な研究機関であり、そして新たな黄金郷エルドラドへの地図を、世界の誰よりも早く描き出そうとする、無数の知性が火花を散らす、熱狂的な戦場と化していた。

 B級ダンジョンから発見された、未知なる鉱脈への入り口、【ネファレム・リフト】。

 その、あまりにも深く、そしてどこまでも危険な闇の底に眠るという、無限の富と、失われた古代の叡智。世界の探索者たちの熱狂は、今やただ一つの目標へと収束していた。

 深淵へ。より、強く、より、速く。


【SeekerNet 掲示板 - B級ダンジョン総合スレ Part. 431】


 1: 名無しのB級タンク

 スレ立て乙。

 さて、諸君。今日も始めようか。我々人類が、神々の気まぐれな悪戯に、どう立ち向かうべきかの議論を。


 2: 名無しのC級(見学中)


 1

 乙です!

 先輩方のおかげで、世界の謎が少しずつ解き明かされていくの、見てて最高に面白いです!


 3: 名無しのA級(お忍び)


 2

 まあ、謎解きというよりは、命がけの人柱報告会だがな。

 今日も、何人がリフトの闇に飲まれることやら…。


 4: 名無しのB級戦士


 3

 だが、その価値はある!

 書き込みを見たB級以上の各国の冒険者達は、B級以上のダンジョンで試練(しれん)要石(かなめいし)が2分の1ぐらいの確率でドロップ事を確認した。

 おかげで、俺のギルドも、ようやくメンバー全員分のキーストーンを確保できたぜ!

 そして、ぞくぞくとネファレム・リフトに挑む。

 今夜、俺たちも初挑戦だ!


 5: 名無しのB級魔術師


 4

 おお!頑張れよ!

 ちなみに、俺のパーティは昨日クリアしてきたぞ!

 ランク1は、マジで楽勝だった。F級のゴブリンとスライムしか出なかったから、鼻歌交じりでクリアできたぜ。

 報酬の1ポイントで、早速カエルのペット交換してきた!可愛い!


 その、あまりにも平和な、そしてどこまでも希望に満ちた成功報告。

 スレッドは、和やかな雰囲気に包まれた。誰もが、この新たなコンテンツが、自分たちの冒険に新たな彩りを与えてくれる、素晴らしい「ボーナスステージ」なのだと信じ始めていた。

 その、あまりにも楽観的な空気を、一人の男の、狂気的なまでの行動が、完全に破壊することになる。


 121: 名無しのリフトジャンキー

 …ふぅ。

 10周目、完了。

 ポイント、55ポイントゲット。

 うめえええええええええええええええええ!!!!!!


 122: 名無しのゲーマー


 121

 は!?

 10周!?

 お前、いつから潜ってんだよ!?


 123: 名無しのリフトジャンキー


 122

 ああ?昨日の夜から、ぶっ通しだが?

 あるB級冒険者は、試練(しれん)要石(かなめいし)をその場で買い取り、どんどんネファレム・リフトをクリアしていく。

 俺だよ、俺。

 ゲート前で、帰還してきた奴らから、キーストーン全部買い占めてんだよ。

 一枚10万。安いもんだろ。


 その、あまりにも常軌を逸した、そしてどこまでも合理的な、狂人の登場。

 それに、スレッドが、どよめいた。


『マジかよ!』

『リフト廃人、爆誕の瞬間じゃねえか!』

『で、どうなんだよ!?奥に進むと、何か変わるのか!?』


 その問いかけに、リフトジャンキーは、待っていましたとばかりに、その興奮冷めやらぬレポートを投下し始めた。


 135: 名無しのリフトジャンキー

 ああ、変わる!変わるぞ!

 クリアする度に、ランクに応じたポイント貰える事が判明する!

 ランク10超えたあたりから、敵のレベルも、C級相当になってきた。

 報酬も、10ポイント!美味すぎる!

 これ、マジで無限に稼げるぞ!

 俺は、今日中にランク20まで行く!

 見てろ、お前ら!


 その、あまりにも熱狂的な、リアルタイム実況。

 スレッドは、その一人の男の、無謀な挑戦に、釘付けになった。

 誰もが、固唾を飲んで、その男の報告を待っていた。

 そして、数時間後。

 彼の、そのあまりにも高すぎたテンションが、唐突に、絶望の悲鳴へと変わった。


 255: 名無しのリフトジャンキー

 …おい。

 …おい、お前ら。

 ちょっと待て。

 やばい。

 マジで、やばい。


 256: 名無しのゲーマー


 255

 どうしたんだよ、ジャンキー!

 ついに、ボスでも倒せなかったか!?


 258: 名無しのリフトジャンキー


 256

 違う!違うんだよ!

 ランク15で、凍傷をしてくる敵と遭遇して、撤退する!

 なんだよ、あいつら!青い骸骨の魔術師の集団だったんだが、一発食らっただけで、体の動きが完全に止まって、そのままハメ殺された!

 ポータルで逃げなきゃ、死んでたぞ!

 ふざけんな!聞いてねえぞ、そんなの!


 その、あまりにも生々しい、そしてどこまでも理不尽な、初見殺しの報告。

 それが、引き金となった。

 スレッドは、爆発した。

「俺もだ!ランク12で、出血が止まらなくなった!」「こっちはランク18で、サイレンス地獄だったぞ!」「炎上ダメージ、痛すぎる!」

 そのほかにも、サイレントや出血や炎上など、様々な敵が出てくる事が判明する。

 リフトの、その本当の顔。

 それは、ただのボーナスステージなどではなかった。

 あらゆるビルドを殺すためだけに設計された、悪意の塊。

 悪魔の、ルーレットだったのだ。


 その、絶望的な空気の中で。

 一人の、冷静な分析官が、その混沌に、一つの仮説を投下した。


 311: 名無しのビルド考察家

 …なるほどな。

 ようやく、見えてきた。

 リフトの難易度は、ランクに応じて、特殊なデバフを付与する敵が出現するようになる、ということか。

 ランク15あたりが、最初の壁。

 凍傷対策がなければ、そこから先へは進めない。

 実に、面白い設計だ。


 その、あまりにも的確な分析。

 それに、スレッドは、新たな攻略の糸口を見つけ出し、再びその熱を取り戻しかけた。

 だが、その仮説すらも、次の瞬間には、覆されることになる。


 355: 名無しのC級ヒーラー

 あのー、すみません!

 今、パーティでランク7に挑戦してるんですけど…。

 なんか、青い骸骨の、凍傷撃ってくるやつに遭遇したんですけど…。


 静寂。

 そして、爆発。


『は!?』

『ランク7で、凍傷!?』

『嘘だろ!?』


 358: 名無しのリフトジャンキー


 355

 マジかよ!

 俺が、あれだけ苦しめられたやつが、そんな低ランクで出るのかよ!


 361: 名無しのB級タンク

 と思ったら、単純なゴブリンだったりする。

 俺、今ランク25だけど、敵はゴブリンとスライムだけだぞ。

 ラッキーすぎるwww


 365: 名無しのリフトジャンキー


 361

 はぁ!?

 なんだよ、それ!

 完全にランダムだな!

 **最初、ランクが関係してると思ってたが、**それも違うのかよ!

 同じようにリフト回してる奴が、低ランクで凍傷してくる敵に遭遇してたわ。

 もう、何も信じられねえ…。


 その、あまりにも混沌とした、そしてどこまでも理不尽な、世界の真実。

 スレッドは、もはやお祭り騒ぎではなかった。

 一つの、巨大な謎解きに挑む、探偵たちの集会所と化していた。

 そして、その謎解きの、最後のピース。

 それを、発見したのは、一人の、名もなきヒーラーだった。


 455: 名無しのC級ヒーラー

 あの…。

 さっき、リフトをクリアした後、試しにオベリスクの前で、お祈りしてみたんです…。

 そしたら…。

 なんか、目の前に、見たこともないウィンドウが開いて…。


 456: 名無しのゲーマー


 455

 なんだよ!早く、言え!


 458: 名無しのC級ヒーラー


 455

 ランキングと、オベリスクで念じる事で、ランキングが見える事が判明する…。

 クリアしたランクと、クリアタイムが、表示してあるな…と、解説する。

 これ、もしかして、ラダーランキングですか…?


 その、あまりにも衝撃的な発見。

 それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。

 そして、その熱狂の、まさにその頂点で。

 そのヒーラーは、最後の、そして最も重要な「爆弾」を、投下した。


 465: 名無しのC級ヒーラー

 おっ、注意書きが書いてあるな。

 なになに?

 ランキングに応じて、1日に1回ポイントが配布される…?

 完全に、ランキングシステムだな、これ。

 あと、「ランキングは、太陽系第3惑星時間で1ヶ月ごとにリセットされる」って書いてあるな…。


 静寂。

 数秒間の、絶対的な沈黙。

 そして、その静寂を破ったのは、この世界の、理を知り尽くした、賢者たちの、戦慄に満ちた声だった。


 815: 元ギルドマン@戦士一筋

 …なるほどな。

 そういうことか。

 日々のポイント稼ぎと、月一のラダーランキング。

 二重の報酬システム。

 そして、月ごとのリセット。

 …これは、ただのダンジョンではない。

 我々を、永遠にこのテーブルに縛り付けるための、完璧に設計された、「無限の競争」だ。


 821: ハクスラ廃人

 ああ、間違いないな。

 神様とやらは、とんでもねえクソゲーを、俺たちに用意してくれたもんだぜ。

 だがな…。


 彼は、そこで一度言葉を切ると、その口元に、最高の、そして最も獰猛な笑みを浮かべた。


 822: ハクスラ廃人

 ――最高の、テーブルじゃねえか。


 その、あまりにも力強い、そしてどこまでもギャンブル狂らしい、宣言。

 それに、スレッドは、もはや制御不能の熱狂の坩堝と化した。

 誰もが、その未知なる、そしてどこまでも面白い、新たなゲームの虜になっていた。

 その、あまりにも巨大な、そしてどこまでも混沌とした、新時代の幕開けを。

 世界の、全ての探索者が、その胸に、確かな高揚感と共に、感じていた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ