第386話
【SeekerNet 掲示板 - A級探索者専用雑談スレ Part. 412】
1: 名無しのA級ガンナー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お前ら、今アジールにいる奴いるか!?
酒場が、ヤバいことになってるぞ!!!!!!!!!!!!!!!
2: 名無しのA級ヒーラー
1
どうしたんだ、落ち着け。
また、酔っ払いが喧嘩でもしてるのか?
3: 名無しのA級ガンナー
2
違う!違うんだよ!
アジールで、今、レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴が、お披露目中らしいぜ?
グランドハイストで、出たらしい!
史上初の、公式オークションにかけるらしいから、みんな一度見に行った方がいいぜ?
その、あまりにも唐突な、そしてどこまでも衝撃的な書き込み。
それが、引き金となった。
スレッドは、爆発した。
『は!?』
『マジかよ!あの、伝説のレプリカが!?』
『今すぐ行く!』
その熱狂は、瞬く間にSeekerNetの全ての掲示板へと、燎原の火のように燃え広がっていく。
そして、その情報の奔流は、当然のように、F級のひよこたちが集う、平和なスレッドにも到達した。
【SeekerNet 掲示板 - F級ダンジョン総合スレ Part. 1058】
511: 名無しのスライムハンター
…なんか、A級の先輩たちが、すごい勢いでアジールに集まってるらしいけど、何かあったの?
512: 名無しのゴブリン耳コレクター
さあ…?
でも、なんかすごいお宝が出たって噂だよ。
513: 名無しのF級(新人)
512
すみません、レベル足りないからアジールいけないので見れないけど、何なんです?レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴って。
その、あまりにも素朴な、そしてこの世界の全ての初心者の心を代弁するかのような、問いかけ。
それに、答えたのは、一人の、あまりにも親切な、そしてどこまでも知識をひけらかしたい、C級の先輩だった。
515: 名無しのC級戦士
513
しょうがねえな、新人。
よく聞いとけよ。
ああ、性能を貼るぞ。
[画像:ギルド公式データベースから引用された、【レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴】の詳細な性能]
「名前: レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴
種別: ソルジャーブーツ
レアリティ: ユニーク
物理耐性: 319
エナジーシールド: 20
装備条件: レベル 49, 筋力 47, 知性 47
性能:
・筋力が18%増加する
・物理耐性 +220
・混沌耐性 +19%
・移動速度が25%増加する
・混沌ダメージ以外のダメージを与えることができない
・筋力80ごとに、アタックに1-80の混沌ダメージを追加する
フレーバーテキスト:
飢えた被験体は、完全に力を振るう能力を失った。
だが、栄養を与えられると、彼が触れるもの全てを毒し始めた…」
516: 名無しのC級戦士
513
どうだ、分かったか?
これは、究極的な筋力特化ビルドで、筋力を2000まで積み上げて、混沌ダメージで敵を倒すって性能だ。
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
そして、その静寂を破ったのは、あの新人からの、あまりにも素直な、魂の絶叫だった。
518: 名無しのF級(新人)
なにそれ、ヤバすぎじゃないですか。
その一言が、引き金となった。
掲示板は、騒然となった。
F級も、C級も、そしてA級も。
全ての探索者が、そのあまりにも暴力的なまでの、そしてどこまでもロマンに満ちた、新たな「可能性」の前に、その階級の壁を越えて、一つになっていた。
525: 名無しのC級戦士
ああ、ヤバい。メタゲームが、これ一つで変わる。
誰が落札して、誰が装備するか?
新たなS級、SS級が、誕生するかも知れないぜ。
【SeekerNet - North America Server】
スレッドタイトル: [BREAKING] REPLICA ALBERON'S WARPATH HAS APPEARED. THE META IS DEAD. LONG LIVE THE META.
1: 名無しのSlayer
…終わったな。
何もかもが。
日本のサーバーから、とんでもない爆弾が投下された。
見ろ、これ。
[画像リンク:日本の掲示板に投稿された【レプリカ・アルベロンの戦闘鉄靴】の性能]
2: 名無しのGladiator
1
…What the f**k.
3: 名無しのPathfinder (理論家)
2
落ち着け。だが、気持ちは分かる。
…なんだ、これは。
筋力スタッキングで、フラットな混沌ダメージを追加…?
JOKERがやった、あのDEXスタッキング・スマイトビルドの、STR版だと…?
しかも、ダメージソースは、混沌属性。
つまり、敵の物理耐性も、元素耐性も、完全に無視する。
…なんだ、この化け物は。
4: 名無しのJuggernaut
3
ああ。
しかも、筋力18%増加が付いてる。
スタックすればするほど、加速度的にダメージが伸びていくじゃねえか。
これ、マジで、世界のバランス壊れるぞ。
5: 名無しのWitch
4
ねえ、みんな。ちょっと落ち着いて。
もちろん、私も興奮してるわ。でも、一番重要なことを見落としてない?
このブーツを手に入れた幸運な魔術師さん。
彼、オークションで売るって言ってるのよね?
つまり…。
6: 名無しのSlayer
5
ああ。
世界の、どこかのギルドが。
あるいは、どこかの国家が。
この、「神殺しの兵器」を、その手にすることになる。
…やべえ。やべえよ。
リアルタイムで、軍拡競争が、始まっちまったじゃねえか…。
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも冷徹な分析。
それに、日米の掲示板は、完全に一つになっていた。
国境も、言語も、そしてこれまでの競争の歴史すらも超えて。
彼らは、ただ一つの共通の恐怖と、そしてそれ以上に大きな、興奮に、その身を震わせていた。
これから始まる、神々の、オークションという名の、代理戦争。
その、あまりにも壮大で、そしてどこまでも面白い、スペクタクルの幕開けを。
世界の、全ての人間が、ただ固唾を飲んで、見守っていた。




