第378話
【SeekerNet 掲示板 - A級ビルド考察スレ Part. 313】
1: 名無しのA級魔術師
スレ立て乙。
…はぁ。
今日も一日、ギルドのシミュレーターで【持たざる者】ビルドの再現を試みていたが、やはり無理だ。
【魂の水晶】と、あのジュエル。その二つがなければ、あの火力は絶対に再現できん。
我々は、袋小路に迷い込んでしまったようだな。
2: 名無しのA級戦士
1
乙。
ああ、全くだ。
JOKERの出現は、確かに世界のレベルを押し上げた。だが、同時に、我々から「目標」を奪い去ってしまったのかもしれん。
あの頂きは、あまりにも、高すぎる。
3: 名無しのA級盗賊
2
だよな。
正直、最近はダンジョンに潜るモチベーションすら、湧いてこねえ。
どうせ、俺たちがどれだけ頑張ったところで、あの三人の、一日分の稼ぎにもなりゃしねえんだからな。
その、あまりにも重く、そしてどこまでも絶望的な空気。
それが、今の世界の、リアルな声だった。
JOKERという、あまりにも巨大すぎる太陽の光が、逆に、他の全ての星々の輝きを、消し去ろうとしていたのだ。
その、停滞した空気を、嘲笑うかのように。
一つの、あまりにも静かで、しかしどこまでも挑戦的な書き込みが、投下された。
211: 名無しの国際ウォッチャー
…おい、お前ら。
いつまで、日本の天才サマの背中を、指を咥えて眺めてるつもりだ?
アメリカでは、もう新しい風が吹いてるぞ。
212: 名無しのゲーマー
211
は?どういうことだ?
215: 名無しの国際ウォッチャー
211
これを見ろ。
[動画リンク:【The Answer】徒手空拳への、俺からの回答。A級上位、蹂躙ショー]
昨日の夜、北米サーバーで投下された、一本の爆弾だ。
俺は、これを見て、まだ世界は終わっていなかったんだと、心から震えたね。
その、あまりにも意味深な、そしてどこまでも期待感を煽る一言。
それに、スレッドの住人たちが、半信半疑のまま、そのリンクをタップする。
そして、彼らは目撃した。
一つの、新たな伝説が、産声を上げる、その瞬間を。
A級上位ダンジョン【天測の神域】。
その、神々の領域を、たった一人で、そしてまるで嵐のように蹂躙していく、一人のアメリカ親父の姿を。
スキル、【サイクロン】。
そして、その身に纏う、五色の呪いのオーラ。
その、あまりにも圧倒的な、そしてどこまでも美しい、破壊の光景。
それに、スレッドは、爆発した。
『は!?』
『なんだ、このビルドは!?』
『5種類の状態異常を、同時に…!?嘘だろ!?』
その熱狂の、まさにその頂点で。
あの、百戦錬磨のベテランたちが、その戦慄に満ちた、分析を開始した。
ハクスラ廃人:
…おいおいおいおい、待て待て待て待て。
なんだよ、これ…。
【元素を統べる者】と、【尋問】、そして【スキッターボット召喚】…だと…?
このコンボ、強いどころの騒ぎじゃねえぞ。
壊れてるじゃねえか…!
元ギルドマン@戦士一筋:
うむ。
【シークレットオブサファリング】の、「術者自身が状態異常を与えられなくなる」というデメリットを、ミニオンであるスキッターボットに肩代わりさせることで、完全に踏み倒している。
これは、もはやビルド構築ではない。
世界の理の、穴を突いた、天才的な「ハッキング」だ。
ベテランシーカ―:
ええ。
JOKERのビルドも強いけど、このビルドも強い。
そして、何よりも重要なのは…。
このビルドは、「再現可能」だということです。
【魂の水晶】も、【持たざる者】も、必要ない。
金さえあれば、理論上は、誰でもこの領域にたどり着ける。
これは、S級も見えるコンボじゃね?
その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも希望に満ちた、結論。
それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。
もはや、それは賞賛ではない。
一つの、新たな時代の幕開けを告げる、ファンファーレだった。
ギルド達は、JOKERの、あのあまりにも遠い背中を追いかけることをやめ、そしてこの、元素を統べる者、シークレットオブサファリング、スキッターボット召喚、このコンボが強いから、導入しようという、あまりにも現実的で、そしてどこまでも合理的な、次なる一手へと、その舵を切ったのだ。
その日を境に、世界の経済は、再び狂乱の渦へと叩き込まれた。
これまで、数多あるユニークリングの一つとして、せいぜい数億円で取引されていた、【元素を統べる者】。
その需要が、急激に高まり、市場価格が、異常なまでの角度で、天を突き刺すかのように、跳ね上がり始めたのだ。
5億、10億…。
世界のトップギルドたちが、その国家レベルの資産を、惜しげもなく、この小さな指輪へと注ぎ込んでいく。
だが、その狂乱の、さらにその裏側で。
この世界の、本当の「勝者」が、静かに、そして確実に、その富を築き上げていたことを、まだ誰も知らなかった。
【SeekerNet 掲示板 - マーケット総合スレ Part. 521】
111: 名無しの市場ウォッチャー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
また、値上がりしてるぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
【元素を統べる者】、ついに50億の大台を突破した!!!!!!!!!!!!!!!
なんだよ、これ!ただの、バブルじゃねえか!
112: 名無しのA級商人
111
バブルじゃねえ。革命だ。
この指輪は、もはやただの装備ではない。
次世代の、覇権を握るための、「入場券」だ。
50億ですら、安い。
113: 名無しのC級(傍観者)
112
だよな…。
でも、おかしくねえか?
これだけ、需要が爆発してるってのに、マーケットへの供給が、あまりにも安定しすぎてる。
まるで、誰かが、意図的に価格を吊り上げてるみてえに、一日一個ずつ、決まった時間に出品されてるんだ。
不気味だぜ、マジで…。
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも不穏な指摘。
それに、スレッドの有識者たちが、その正体を突き止めるのに、そう時間はかからなかった。
出品者の、そのあまりにも特徴的な、そしてどこまでもプロフェッショナルな出品履歴。
それは、一人の男の、存在を、浮かび上がらせていた。
ハクスラ廃人:
…間違いない。
こいつだ。
ハンドルネーム、『蔵前』。
昔に、この世界の黎明期から、ただひたすらに、ダンジョン産のアイテムの、その価値の変動だけを追い続けてきた、伝説のダンジョン専門バイヤーだ。
奴は、戦わない。
ただ、買い、そして、待つ。
時代の、流れを読み切り、最高のタイミングで、その全てを売りさばく。
それだけで、A級にまで上り詰めた、異端中の異端。
その、あまりにも衝撃的な、そしてどこまでも美しい、プロフェッショナルの肖像。
スレッドは、戦慄した。
そして、その男が、この数ヶ月間、水面下で何をしていたのか。
その、あまりにも恐ろしい真実に、誰もが気づいてしまった。
彼が、仕込んでいたのだ。
世界の誰もが、徒手空拳の夢に浮かれている間に。
彼は、ただ一人、次の時代の「鍵」となる、この指輪を、市場から、静かに、そして完全に、買い占めていたのだ。
その、あまりにも鮮やかな、そしてどこまでも美しい、勝利。
それに、スレッドは、もはや嫉妬すら通り越して、ただ純粋な、賞賛の言葉を送り続けた。
そして、その日の夜。
最後の一個となった【元素を統べる者】が、公式オークションに出品された。
そして、その価格は、世界の誰もが予想だにしなかった、そしてこの新たな時代の幕開けを告げるにふさわしい、一つの象徴的な数字へと、到達した。
【最終落札価格: 10,000,000,000円】
100億円。
その、あまりにも巨大な数字。
そして、その裏側で。
蔵前と名乗る、その伝説のバイヤーは、数十億という、莫大な利益を、その手にした。
彼は、大儲けしたのだ。
その、あまりにも華麗な、そしてどこまでも知的な、もう一つの「英雄譚」。
それに、世界の探索者たちは、熱狂した。
そうだ。
この世界は、ただ強いだけの者が、勝つのではない。
時代の流れを読み、その本質を見抜いた者こそが、真の「勝者」となるのだと。
その、あまりにもシンプルで、そしてどこまでも力強い真実。
それを、世界の、全ての人間が、ただ固唾を飲んで、見守っていた。
JOKERが、アリスが、小鈴が、そしてジャック・ライアンが、その圧倒的な力で世界を揺るがす、その裏側で。
名もなき、しかし本物の「知性」たちが、この世界の、本当の経済を、そして未来を、動かしている。




