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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
素手スマイトビルド編Part1

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393/491

第378話

【SeekerNet 掲示板 - A級ビルド考察スレ Part. 313】


 1: 名無しのA級魔術師

 スレ立て乙。

 …はぁ。

 今日も一日、ギルドのシミュレーターで【持たざる者】ビルドの再現を試みていたが、やはり無理だ。

(たましい)水晶(すいしょう)】と、あのジュエル。その二つがなければ、あの火力は絶対に再現できん。

 我々は、袋小路に迷い込んでしまったようだな。


 2: 名無しのA級戦士


 1

 乙。

 ああ、全くだ。

 JOKERの出現は、確かに世界のレベルを押し上げた。だが、同時に、我々から「目標」を奪い去ってしまったのかもしれん。

 あの頂きは、あまりにも、高すぎる。


 3: 名無しのA級盗賊


 2

 だよな。

 正直、最近はダンジョンに潜るモチベーションすら、湧いてこねえ。

 どうせ、俺たちがどれだけ頑張ったところで、あの三人の、一日分の稼ぎにもなりゃしねえんだからな。


 その、あまりにも重く、そしてどこまでも絶望的な空気。

 それが、今の世界の、リアルな声だった。

 JOKERという、あまりにも巨大すぎる太陽の光が、逆に、他の全ての星々の輝きを、消し去ろうとしていたのだ。

 その、停滞した空気を、嘲笑うかのように。

 一つの、あまりにも静かで、しかしどこまでも挑戦的な書き込みが、投下された。


 211: 名無しの国際ウォッチャー

 …おい、お前ら。

 いつまで、日本の天才サマの背中を、指を咥えて眺めてるつもりだ?

 アメリカでは、もう新しい風が吹いてるぞ。


 212: 名無しのゲーマー


 211

 は?どういうことだ?


 215: 名無しの国際ウォッチャー


 211

 これを見ろ。


[動画リンク:【The Answer】徒手空拳への、俺からの回答。A級上位、蹂躙ショー]


 昨日の夜、北米サーバーで投下された、一本の爆弾だ。

 俺は、これを見て、まだ世界は終わっていなかったんだと、心から震えたね。


 その、あまりにも意味深な、そしてどこまでも期待感を煽る一言。

 それに、スレッドの住人たちが、半信半疑のまま、そのリンクをタップする。

 そして、彼らは目撃した。

 一つの、新たな伝説が、産声を上げる、その瞬間を。

 A級上位ダンジョン【天測(てんそく)神域(しんいき)】。

 その、神々の領域を、たった一人で、そしてまるで嵐のように蹂躙していく、一人のアメリカ親父の姿を。

 スキル、【サイクロン】。

 そして、その身に纏う、五色の呪いのオーラ。

 その、あまりにも圧倒的な、そしてどこまでも美しい、破壊の光景。

 それに、スレッドは、爆発した。


『は!?』

『なんだ、このビルドは!?』

『5種類の状態異常を、同時に…!?嘘だろ!?』


 その熱狂の、まさにその頂点で。

 あの、百戦錬磨のベテランたちが、その戦慄に満ちた、分析を開始した。


 ハクスラ廃人:

 …おいおいおいおい、待て待て待て待て。

 なんだよ、これ…。

元素(げんそ)()べる(もの)】と、【尋問】、そして【スキッターボット召喚】…だと…?

 このコンボ、強いどころの騒ぎじゃねえぞ。

 壊れてるじゃねえか…!


 元ギルドマン@戦士一筋:

 うむ。

【シークレットオブサファリング】の、「術者自身が状態異常を与えられなくなる」というデメリットを、ミニオンであるスキッターボットに肩代わりさせることで、完全に踏み倒している。

 これは、もはやビルド構築ではない。

 世界の理の、穴を突いた、天才的な「ハッキング」だ。


 ベテランシーカ―:

 ええ。

 JOKERのビルドも強いけど、このビルドも強い。

 そして、何よりも重要なのは…。

 このビルドは、「再現可能」だということです。

(たましい)水晶(すいしょう)】も、【持たざる者】も、必要ない。

 金さえあれば、理論上は、誰でもこの領域にたどり着ける。

 これは、S級も見えるコンボじゃね?


 その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも希望に満ちた、結論。

 それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。

 もはや、それは賞賛ではない。

 一つの、新たな時代の幕開けを告げる、ファンファーレだった。

 ギルド達は、JOKERの、あのあまりにも遠い背中を追いかけることをやめ、そしてこの、元素(げんそ)()べる(もの)、シークレットオブサファリング、スキッターボット召喚、このコンボが強いから、導入しようという、あまりにも現実的で、そしてどこまでも合理的な、次なる一手へと、その舵を切ったのだ。



 その日を境に、世界の経済は、再び狂乱の渦へと叩き込まれた。

 これまで、数多あるユニークリングの一つとして、せいぜい数億円で取引されていた、【元素(げんそ)()べる(もの)】。

 その需要が、急激に高まり、市場価格が、異常なまでの角度で、天を突き刺すかのように、跳ね上がり始めたのだ。

 5億、10億…。

 世界のトップギルドたちが、その国家レベルの資産を、惜しげもなく、この小さな指輪へと注ぎ込んでいく。

 だが、その狂乱の、さらにその裏側で。

 この世界の、本当の「勝者」が、静かに、そして確実に、その富を築き上げていたことを、まだ誰も知らなかった。


【SeekerNet 掲示板 - マーケット総合スレ Part. 521】


 111: 名無しの市場ウォッチャー

 おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 また、値上がりしてるぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

元素(げんそ)()べる(もの)】、ついに50億の大台を突破した!!!!!!!!!!!!!!!

 なんだよ、これ!ただの、バブルじゃねえか!


 112: 名無しのA級商人


 111

 バブルじゃねえ。革命だ。

 この指輪は、もはやただの装備ではない。

 次世代の、覇権を握るための、「入場券」だ。

 50億ですら、安い。


 113: 名無しのC級(傍観者)


 112

 だよな…。

 でも、おかしくねえか?

 これだけ、需要が爆発してるってのに、マーケットへの供給が、あまりにも安定しすぎてる。

 まるで、誰かが、意図的に価格を吊り上げてるみてえに、一日一個ずつ、決まった時間に出品されてるんだ。

 不気味だぜ、マジで…。


 その、あまりにも的確な、そしてどこまでも不穏な指摘。

 それに、スレッドの有識者たちが、その正体を突き止めるのに、そう時間はかからなかった。

 出品者の、そのあまりにも特徴的な、そしてどこまでもプロフェッショナルな出品履歴。

 それは、一人の男の、存在を、浮かび上がらせていた。


 ハクスラ廃人:

 …間違いない。

 こいつだ。

 ハンドルネーム、『蔵前くらまえ』。

 昔に、この世界の黎明期から、ただひたすらに、ダンジョン産のアイテムの、その価値の変動だけを追い続けてきた、伝説のダンジョン専門バイヤーだ。

 奴は、戦わない。

 ただ、買い、そして、待つ。

 時代の、流れを読み切り、最高のタイミングで、その全てを売りさばく。

 それだけで、A級にまで上り詰めた、異端中の異端。


 その、あまりにも衝撃的な、そしてどこまでも美しい、プロフェッショナルの肖像。

 スレッドは、戦慄した。

 そして、その男が、この数ヶ月間、水面下で何をしていたのか。

 その、あまりにも恐ろしい真実に、誰もが気づいてしまった。

 彼が、仕込んでいたのだ。

 世界の誰もが、徒手空拳の夢に浮かれている間に。

 彼は、ただ一人、次の時代の「鍵」となる、この指輪を、市場から、静かに、そして完全に、買い占めていたのだ。


 その、あまりにも鮮やかな、そしてどこまでも美しい、勝利。

 それに、スレッドは、もはや嫉妬すら通り越して、ただ純粋な、賞賛の言葉を送り続けた。

 そして、その日の夜。

 最後の一個となった【元素(げんそ)()べる(もの)】が、公式オークションに出品された。

 そして、その価格は、世界の誰もが予想だにしなかった、そしてこの新たな時代の幕開けを告げるにふさわしい、一つの象徴的な数字へと、到達した。


【最終落札価格: 10,000,000,000円】


 100億円。

 その、あまりにも巨大な数字。

 そして、その裏側で。

 蔵前と名乗る、その伝説のバイヤーは、数十億という、莫大な利益を、その手にした。

 彼は、大儲けしたのだ。


 その、あまりにも華麗な、そしてどこまでも知的な、もう一つの「英雄譚」。

 それに、世界の探索者たちは、熱狂した。

 そうだ。

 この世界は、ただ強いだけの者が、勝つのではない。

 時代の流れを読み、その本質を見抜いた者こそが、真の「勝者」となるのだと。

 その、あまりにもシンプルで、そしてどこまでも力強い真実。

 それを、世界の、全ての人間が、ただ固唾を飲んで、見守っていた。

 JOKERが、アリスが、小鈴が、そしてジャック・ライアンが、その圧倒的な力で世界を揺るがす、その裏側で。

 名もなき、しかし本物の「知性」たちが、この世界の、本当の経済を、そして未来を、動かしている。

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