第367話
【SeekerNet 掲示板 - クラフト総合スレ Part. 221】
511: 名無しの市場ウィッチャー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お前ら、今すぐギルドの公式オークションハウスに飛べ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
出たぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
あのジュエルが!!!!!!!!!!!!!!!
その、あまりにも切羽詰まった絶叫。
それに、スレッドは一瞬にして、トップスピードへと加速した。
オークションハウスの「注目アイテム」欄。
その、最も目立つ場所に、それは静かに、しかし絶対的な存在感を放って、鎮座していた。
一つの、小さな、しかしこの世界のメタゲームそのものを、根底から覆す可能性を秘めた、スモールクラスタージュエル。
【出品アイテム:持たざる者】
【出品者:名無しのB級盗賊】
【開始価格:100万円】
『うおおおおお!本物だ!』
『デリリウムのボスからドロップしたって、あの伝説のジュエルか!』
『出品者、B級の盗賊なのかよ!とんでもねえもん、引き当てやがったな!』
スレッドは、お祭り騒ぎとなった。
誰もが、この歴史的なオークションの、その最初の入札の瞬間を、固唾を飲んで見守っていた。
そして、その戦いの火蓋は、あまりにも静かに、しかしどこまでも熾烈に、切って落とされた。
開始から、わずか数分。
入札額は、あっという間に1億円の大台を突破した。
世界の、トップギルドたち。
彼らが、この小さな宝石の、本当の価値に、気づき始めたのだ。
だが、彼らの計算を、そして世界の常識を、遥かに上回る「熱狂」が、そこにはあった。
30億。
50億。
80億。
モニターの数字は、もはや現実の金銭ではなく、ただのスコアのように、その価値を増していく。
その、あまりにも異常なまでの高騰。
それに、スレッドの有識者たちが、戦慄と共に、その分析を始めた。
元ギルドマン@戦士一筋:
…馬鹿な。
確かに、このジュエルは強力だ。だが、ここまでの価値があるとは思えん。
徒手空拳ビルドなど、あまりにもピーキーすぎる。
なぜ、世界のトップギルドたちが、これほどまでに熱狂しているんだ…?
ハクスラ廃人:
旦那、あんたはまだ分かってねえのかよ。
奴らが、買ってるのはな。このジュエルの性能じゃねえ。
JOKERが証明した、「可能性」そのものだ。
2日で、18レベル。
この、あまりにも常識がぶっ壊れたレベリング速度。
それを、金で買えるんだぞ。
喉から手が出るほど、欲しいに決まってんだろ。
**流石に、今後はこのペースじゃないと思うが、**それでも、このアドバンテージは、計り知れねえ。
ベテランシーカ―:
ええ、その通りです。
まあ、金持ちやギルドは、このビルドを真似しようとするでしょうな。
そして、このジュエルは、そのための唯一無二の「鍵」なのですから。
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも本質を突いた分析。
それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。
そして、その熱狂の、まさにその頂点で。
オークションは、ついにその最終局面を迎えていた。
残り時間、1分。
入札額は、90億円の大台を突破している。
そして、その最後の殴り合いを制したのは、一つの、あまりにも強大な、北欧の神々の名前だった。
【最終落札価格: 10,000,000,000円】
【落札者: Guild_Odin_Asset】
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
そして、次の瞬間。
スレッドは、もはや制御不能の熱狂の坩堝と化した。
『は!?』
『100億!?ジュエル一個に!?』
『オーディンかよ!あいつら、マジで何でも買いやがるな!』
『これで、オーディンの連中も、レベル1からデルヴ無双するのか…。もう、誰も勝てねえよ…』
その、あまりにも当然な、そしてどこまでも絶対的な結論。
それに、スレッドは、温かい、しかしどこか物悲しい、諦観の空気に包まれた。
天才の、そして金持ちの、独壇場。
それが、この世界の、変わることのないルールなのだと。
だが、その空気の中で。
一人の、名もなきクラフターが、ぽつりと、その流れを変える一言を、呟いた。
『…でもさ。』
『JOKERが、本当に凄かったのって、そこじゃなくね?』
『あいつが、ホリー・ミラーのビルドを、リスペクトを込めて「コピー」した、あの瞬間。俺、マジで震えたんだが』
その、あまりにも人間的な、そしてどこまでも本質的な指摘。
それに、スレッドは、はっとしたように、その流れを、変えた。
そうだ。
JOKERの、本当の凄さは。
ただ、強いことでも、運が良いことでもない。
常に、学び続け、そして変化し続ける、その姿勢そのものなのだと。
その、あまりにも美しい、そしてどこまでも希望に満ちた結論。
それに、スレッドは、この日一番の、温かい、そしてどこまでも力強い、賞賛の嵐に包まれた。
天才は、天才を知る。
そして、天才は、自らの才能の価値を、誰よりも理解している。
その、あまりにも美しい、そしてどこまでも残酷な、世界の真実。
それを、世界の、全ての人間が、ただ固唾を飲んで、見守っていた。
彼の、新たな伝説が、また一つ、この世界の歴史に、確かに刻み込まれた、その瞬間だった。




