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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
運命の赤い糸電話編

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356/491

【公式ギルド最高幹部以外閲覧禁止】S級ダンジョン以上で出現するアーティファクトPart5

 名前:

 バベル・オーブ

(ばべる・おーぶ)

(Babel Orb)


 レアリティ:

 神話級 (Mythic-tier)


 種別:

 アーティファクト / 概念翻訳機 (Artifact / Conceptual Translator)


 効果:

 この小さな球体を所有する者は、半径10メートル以内に存在する、あらゆる「言語」「文字」「記号」を、自らが最も理解しやすい形で完全に認識することができる。


 翻訳は、単なる言葉の置き換えではない。話し手や書き手の真の意図、感情のニュアンス、文化的背景、そしてその言葉が持つ歴史的な重みまでもが、術者の意識へと直接流れ込んでくる。

 これにより、文法体系が失われた古文書や、現在もなお解読不能とされるヴォイニッチ手稿のような、人の知性を超えた謎も、まるで母国語の小説を読むかのように、その意味を完全に理解することが可能となる。


 ただし、この能力はあくまで言語や記号の解読に限られ、言語化されていない思考そのものを読み取ることはできない。


 フレーバーテキスト:


 神は、天に届かんとする人の傲慢を恐れ、

 その言葉を砕き、散らした。


 一つの真実は、無数の嘘へと姿を変え、

 兄弟は、互いを異人として憎み合った。


 だが、神ならぬ人の手によって、一つの小さな星が生まれた。

 それは、失われたはずの、最初の言葉の響き。

 全ての偽りを洗い流し、全ての隔たりを溶かす、ただ一滴の真実。


 さあ、耳を澄ませ。

 世界は、まだ君に語り掛けることを、諦めてはいないのだから。





【極秘 / 閲覧レベルΩ】神話級アーティファクト評価報告書

 文書番号: G7-A882-K13-FINAL

 作成日: 20XX年X月XX日

 作成部署: 国際公式ギルド アーティファクト管理局 特殊遺物評価分析室

 提出先: ギルド最高幹部会


 アーティファクト・クラス: 神話級


 アイテム名: バベル・オーブ(ばべる・おーぶ)


 脅威レベル評価: EX (存在根絶・封印指定)

(本体脅威レベル: E / 解読可能情報による汚染リスク: SSS+)


 現在の状況: 最高幹部会の満場一致による緊急決議に基づき、ギルドの最深保管庫『虚無の聖域』にて厳重に封印済み。関連する全ての研究データは、本報告書を除き、物理的・電子的痕跡を完全に消去済み。


 1. 概要

 本アーティファクトは、所有者を中心とした一定範囲内の、あらゆる「言語」「文字」「記号」を、その背景にある文化的・歴史的ニュアンスや真の意図を含めて完全に翻訳する「概念翻訳機」である。アーティファクト自体は、いかなる物理的・魔法的な攻撃能力も、精神干渉能力も持たない。その本質は、あくまで受動的な「翻訳」と「解読」に限定されており、単体での脅威レベルは、安全Eランクと判定される。

 しかし、本報告書で後述する通り、その能力がもたらす二次的、三次的なカタストロフの危険性は、我々がこれまで観測してきた、いかなる神話級アーティファクトをも遥かに凌駕する。


 2. 市場価値と経済的影響

 本アーティファクトは、最高幹部会による【禁忌指定】とされたため、市場価値は測定不能であり、その取引は未来永劫、許可されない。

 もしこれが市場に流通すれば、その価値は数十兆円規模に達したであろう。しかし、同時に、後述する禁断の知識…特に「賢者の石の生成方法」が解読・流出した場合、世界の経済システムは一夜にして崩壊し、金という価値の尺度は意味をなさなくなる。その経済的影響は、プラスではなく、マイナスに無限大であると評価する。


 3. 社会的・思想的影響の評価:パンドラの箱、あるいは世界の鍵

 当初、我々は本アーティファクトを、人類の相互理解を促進する平和の象徴となりうると楽観視していた。その検証のため、当室は、世界の誰もがその存在を知りながらも、誰も解読できなかった、いくつかの「意味不明な文献」…特に、インターネットの深層部にミームとして蔓延している暗号化されたテキストデータや、その信憑性が長年議論されてきたヴォイニッチ手稿のデジタルコピーなどに、バベル・オーブを使用した。


 その結果、我々は見てはならないものを、見てしまった。


 これらの文献は、意味不明なのではなかった。我々の文明とは異なる、異世界あるいは別次元の言語で記されていたのだ。そして、その内容は、我々人類の倫理観、そして世界の存続そのものを、根底から否定する、冒涜的なまでの知識の奔流だった。

 以下に、解読に成功した、特に危険度が高いと判断された三つの文献の概要を記す。


 文献A:「賢者の石」の生成方法

 これまで、ただの御伽噺だと考えられてきた「あらゆる物質を金に変換する」神話の物質。その、あまりにも具体的で、科学的・魔術的な裏付けのある生成方法が、そこには記されていた。だが、その最後のページに記されていた「触媒」の項目を読んだ時、我々調査班は戦慄した。

「…その生成には、純度の高い知的生命体の魂、一〇〇万人分を、生贄として捧げる必要がある…」

 それは、錬金術などではない。ただの、大量虐殺の儀式だった。


 文献B:「魂の完全消滅アニヒレーション」の発動術式

 我々の世界の理では、死した魂は輪廻の輪に還るとされている。だが、この文献に記されていたのは、その大原則すらも覆す、究極の破壊魔法だった。

 特定の魔力波形と、古代語の詠唱を組み合わせることで、対象の魂を、この宇宙、そしてあらゆる次元から完全に消滅させ、輪廻転生すら禁ずることが可能になるという。それは、ただの死ではない。存在そのものの、完全な「無」への回帰。神々ですら、禁忌とするであろう、究極の魔法。


 文献C:「古き支配者の招来儀式」

 最も危険なのが、これだ。

 この宇宙が生まれる以前から存在するという、混沌の化身。我々の世界の物理法則が通用しない、凶悪な邪神を、この次元へと召喚するための、具体的な儀式の手順が、そこには記されていた。

 それは、ただ世界を滅ぼすための、純粋な悪意の塊。人類が、決して触れてはならない、禁断のスイッチだった。


 これらの情報は、これまで意味不明な暗号の羅列として、世界中のオカルトフォーラムや、好事家たちのウェブサイトに、半ばジョークとして、無数に拡散・コピーされ、蔓延している。

 つまり、危険なのは、バベル・オーブではない。

 我々人類の、飽くなき好奇心そのものだ。

 このオーブは、世界中に埋められた無数の地雷の、その全てを起爆させることのできる、ただ一つの「信管」なのだ。


 4. ギルドとしての公式見解・推奨措置

 以上の観点から、当ギルド最高幹部会は、本アーティファクト【バベル・オーブ】を、脅威レベル**EX(存在根絶・封印指定)**とすることを、満場一致で決定した。


 アーティファクト自体の脅威レベルはE(安全)である。しかし、それがもたらす「情報汚染」のリスクは、SSS級をも遥かに超える、規格外のカタストロフを引き起こしかねない。

 【不動(ふどう)大地(だいち)、ガイアの(いしずえ)】は、世界の戦争の形を変えるだけだった。だが、このバベル・オーブは、世界の「存在意義」そのものを、消滅させかねない。


 我々の責務は、ただアーティファクトを管理することではない。

 人類の『精神的な成長速度』を慎重に見極め、その手に余る力を与えないこと。

 世界の真の守護者として、この重すぎる秘密を抱え、そして、何も知らずに異世界や別次元の話題でキャッキャしている世界を、影から守り続けること。

 それこそが、我々に課せられた、最も重い責務である。


 この報告書もまた、最高機密として、アーカイブの最深部へと封印するものとする。

 そして、当管理局は、本日より新たな極秘任務を開始する。

 ――インターネットの海に散らばる、全ての「危険なテキストデータ」の、完全なる消去を。

 それが、どれほど絶望的な作業であったとしても。


 以上。

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