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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
ニュース記事編

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ニュース記事解説:国際公式ギルド、その無限の財源 — なぜ彼らは気前よく払えるのか

「ギルドは、どうやって儲けているんだ?」

 SeekerNetの片隅で、ある新人が呟いたその素朴な疑問は、多くの探索者が一度は抱きながらも、そのあまりの巨大さ故に思考を停止させていた「世界の謎」であった。

 我々が日々持ち込む魔石や素材の高い買い取り価格。世界中に存在する支部施設の維持費。そして、各国の政府にすら支払われるという、天文学的な上納金。その全てを賄い、なお有り余るほどの莫大な利益を、ギルドはどこから生み出しているのか。


 その答えは、彼らが単なる「探索者の互助組織」ではないという、単純明快な事実にある。

 国際公式ギルド。その真の姿は、ダンジョンという新たな理の上に築かれた、**世界の経済、インフラ、そして未来そのものを支配する、唯一無二の超巨大複合企業体メガコングロマリット**なのである。

 その収益構造は、複雑に絡み合った6本の巨大な柱によって支えられている。


 第一の柱:『精製』と『変換』 — 世界最大の資源メジャー

 ギルドの最も基本的かつ、最も巨大な収益源。それは、探索者から買い取った「原石」を、ギルドにしかできない技術で「宝石」へと加工し、その価値を100倍、1000倍にしてから、国家や超巨大企業へと売りさばく**「製造業」と「卸売業」**の側面である。


 魔石の『高純度精製』プラットフォーム:

 世界中の探索者が日々持ち込む、何億、何十億という数の低級魔石(F~C級)。ギルドはこれらを、一見すると市場価格通り、あるいはそれ以上の高値で買い取っているように見える。週末冒険者たちが手にする数十万円の稼ぎは、ギルドの懐を痛めているようにすら思えるだろう。

 だが、それは巧妙な幻想に過ぎない。

 ギルドの地下深く…国家レベルの機密区画には、S級のユニークスキルを持つ職人たちと、古代文明の技術を解析して作り上げた**【魔力圧縮炉】が存在する。彼らは、買い取った1万個のF級魔石を、この炉でたった1個の超純度のA級魔石へと精製することができる。

 F級魔石1個の買い取り価格が仮に5万円だとしても、原価は5億円。対して、精製されたA級魔石1個が、国家の防衛結界や、次世代兵器の開発部門に売れる値段は、50億、100億を下らない。ギルドは、大量取り扱いの業者向けのプラットフォームを介して、常に安定した需要と供給のバランスを保ち、この圧倒的な「付加価値」**によって、莫大な利益を上げ続けている。


 モンスター素材の『価値変換』アーティファクト:

 ギルドは、ゴブリンの耳やスライムの核といった、一見価値の低いモンスター素材も、安定した価格で買い取っている。これもまた、慈善事業ではない。

 ギルド本部の最深部には、その存在自体が最高機密とされる、一つの神話級アーティファクトが存在する。その効果は、「モンスターの素材を、全く別の素材に変換する」。

 例えば、探索者が持ち込んだ1トンの「ゴブリンの耳」を、このアーティファクトにかけることで、10キログラムの「オリハルコン」や「ミスリル」といった、有用なレアメタルに変換することが可能なのだ。探索者から二束三文で買い取ったゴミの山が、ギルドの手にかかれば、文字通り金銀財宝へと姿を変える。この錬金術こそが、ギルドの独占的な資源市場を支える、もう一つの心臓部なのである。


 第二の柱:『手数料』と『広告』 — 世界のインフラプラットフォーマー

 ギルドは、物理的な資源だけでなく、この世界の「情報」と「商業」のインフラをも完全に支配している。


 公式オークションの『絶対的手数料』:

(かみ)への挑戦権(ちょうけん)】が36億円で落札された時、世界は熱狂した。JOKERが【フラクチャーオーブ】を1500億円で売りさばいた時、世界は震撼した。

 だが、その狂乱のテーブルで、常に、そして確実に笑っていたのは誰か?胴元であるギルドだ。

 億円程度の取引も多く、時には1兆円の落札も珍しくないこの神々の遊び場。その全ての取引において、ギルドは落札価格の5%を手数料として徴収する。1500億円の5%は、75億円。たった一度の取引で、中小国家の国家予算に匹敵する額が、ギルドの金庫へと、合法的に、そして自動的に流れ込む。この膨大な手数料こそが、ギルドのキャッシュフローを支える、最も分かりやすい収益源である。


 ARコンタクトレンズ・プラットフォームの『情報税』:

 探索者が当たり前に使用しているARコンタクトレンズ・プラットフォーム。これもまた、ギルドが提供するインフラサービスの一つだ。SeekerNetの閲覧、マーケットでの取引、仲間との通信。その全ての情報が、このプラットフォームを経由している。

 そして、そこに表示される広告は、全て公式ギルドを通して出す必要がある。装備メーカー、フラスコ飲料会社、そして冒険者学校のCM。その全てから、ギルドは莫大な広告料を得ている。

 さらに、JOKERのような人気配信者が得る、ダンジョン配信の広告料も、その一部はプラットフォーム使用料としてギルドに還元される。ギルドは、世界の探索者という、最も購買意欲の高い巨大な市場への、唯一の「窓口」を独占しているのだ。


 第三の柱:『リスク』と『未来』の金融商品化 — 世界唯一の中央銀行

 そして、これがギルドの最も恐るべき側面である。彼らは、もはやアイテムの売買差益などという、ちっぽけな現物取引だけで利益を上げているのではない。彼らは、探索者の「リスク」や「未来」そのものを金融商品化し、世界の富を支配している。


 探索者生命保険『パラディン・トラスト』:

 A級、S級のトップランカーは、一人一人が国家予算レベルの価値を持つ「歩く戦略兵器」。彼らが万が一死亡した場合、所属するギルドや国家が被る損失は計り知れない。そこで、国際公式ギルドは彼らを対象とした超高額の生命保険商品を独占的に販売している。

 各国のトップギルドは、所属するエース探索者の命に、年間数十億、数百億円という莫大な保険料をギルドに支払い、もしもの時に備えるのだ。ギルドは、全世界の戦闘ログデータから、特定の探索者が特定のダンジョンで死亡する確率を小数点以下10桁まで算出できるため、保険料を常に利益が出るように設定可能。もちろん、トップランカーが本当に死ぬ確率は極めて低いため、支払われる保険料のほとんどが、そのままギルドの純粋な利益となる。


 アーティファクト投資信託『ゴッドハンド・ファンド』:

【神のオーブ】や【フラクチャーオーブ】といった神話級アイテムは、もはや個人や一介のギルドが気軽に手を出せる価格ではない。そこで、ギルドはこれらのアーティファクトを「証券化」する。

 ギルドが、オークションで落札した神話級アーティファクトを信託財産とし、その所有権を1億口などに細分化して「受益権」として販売するのだ。世界の富裕層や中小ギルドは、1口数千万円から、この「神の所有権」の一部を購入することができ、そのアーティファクトが生み出す利益(例えば、【創生(そうせい)心核(しんかく)】が生み出すA級魔石の売却益など)の配当を受け取ることができる。ギルドは、その莫大な運用資産の管理手数料として、年間数%を徴収。リスクを分散したい富裕層と、資産を安定的に増やしたいギルドの双方の需要を満たし、何もしなくても兆単位の資産がギルドの金庫に流れ込み続ける。


 結論:なぜギルドは『王』であり続けられるのか

 これら6本の柱が、相互に、そして有機的に絡み合うことで、ギルドの絶対的な収益構造は完成する。

 彼らは、探索者がダンジョンで活動すればするほど、その全ての行動…モンスターの討伐から、アイテムの売買、情報の閲覧、そして自らの命の保証に至るまで、その全ての局面で利益を上げ続けることができるのだ。


 だからこそ、彼らは気前よく払う。

 探索者への高い買い取り価格は、彼らがより深く、より危険なダンジョンへと挑むための「投資」である。

 政府への莫大な上納金は、彼らがこの世界のインフラを独占し続けるための「ライセンス料」である。

 この莫大な財源があるからこそ、ギルドは、探索者と、そして国家との間に、誰も逆らうことのできない、完璧な共生関係(あるいは、支配構造)を築き上げているのである。


 ギルドは、もはやただの組織ではない。

 この、ダンジョンという新たな理の上に生まれた、世界の「理」そのものなのだ。




この話は読者からの疑問から生まれました読者に感謝!

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