第325話
【SeekerNet 掲示板 - D級ダンジョン総合スレ Part. 220】
901: 名無しのスロット狂
あのー、すみません!
新しくできたD級ダンジョンの【カジノのモンスターランド】ってとこに行ってきたんですけど。
なんか、【ギャンブラー】のカードが、やたらとドロップするんですけど、これって当たりですか?
その、あまりにも初々しい、そしてどこまでも空気を読んでいない新人からの質問。
それに、スレッドの住人たちは、呆れたような、しかしどこか優しいツッコミを入れた。
902: 名無しの骨拾い
901
新人ちゃん、乙。
【ギャンブラー】は、まあ当たりっちゃ当たりだが、大したもんじゃねえよ。
大抵は、ゴブリンの耳カードになって終わりだ。
まあ、D級なんてそんなもんさ。
気にすんな。
903: 名無しのC級魔術師
901
だな。
まあ、5枚集めて交換してみろよ。
面白いもんが見れるかもしれねえぞ。良い意味でも、悪い意味でもなwww
その、あまりにも先輩風を吹かせた、そしてどこまでも親切な言葉。
それに、新人は素直に従った。
彼は、そのダンジョンで、さらに数時間、狩りを続けた。
そして、その日の夜。
彼は、再びスレッドに舞い戻ってきた。
その書き込みは、もはやただの質問ではなかった。
一つの、伝説の始まりを告げる、ファンファーレだった。
915: 名無しのスロット狂
あの…。
すみません、また来ました。
先輩方に言われた通り、【ギャンブラー】のカード、5枚集まったので、交換してみました。
そしたら…。
なんか、見たことないカードが出たんですけど…。
これ、なんですかね…?
その、あまりにも無邪気な報告と、そしてあまりにも無謀な質問。
それに、スレッドの空気が、わずかに変わった。
918: 名無しのビルド考察家
…おい、待て。
なんだ、そのカードは…。
見たことないぞ…。
920: ハクスラ廃人
918
ああ。
デザインの、解像度が違う。
これは、ただのクソカードじゃねえ。
…新人!早く、効果テキストを上げろ!
その、ベテランたちの、ただならぬ気配。
それに、スレッドの全ての視線が集中した。
そして、その新人は、言われるがままに、その神のテキストを、スレッドへと投下した。
925: 名無しのスロット狂
え、えっと…。
こう、書いてあります…。
カード名:
世界を喰らう五匹の竜 (The Five Dragons That Devour the World)
外見:
薄く削り出された、化石化した竜の鱗のような質感を持つカード。表面には、古代の壁画を思わせる原始的なタッチで、五匹の竜が互いの尾を喰らい合い、一つの歪な円環を形成している姿が描かれている。カード全体が、内側の奥深くで、まるで溶岩がゆっくりと脈打つかのような、鈍い、しかし確かな熱量を放っている。カードの隅には、**(1/5)**という数字が、竜の爪で刻まれたかのように、深く刻み込まれている。
効果:
このカードを5枚集め、「交換!」と宣言することで、神話級クラフトアイテム**【神のオーブ】を5つ**入手できる。
フレーバーテキスト:
一匹目の竜は、天を喰らい、星々の運行を乱した。
二匹目の竜は、地を喰らい、山脈を砂塵へと変えた。
三匹目の竜は、海を喰らい、時の流れを堰き止めた。
四匹目の竜は、命を喰らい、死の安寧を打ち砕いた。
そして、最後の一匹は、己を含む全てを喰らい尽くした。
その絶対的な無の中から、最初の神は生まれたという。
お前が持つのは、五つの魂か。
それとも、世界を創り直す、五つの権能か。
静寂。
数秒間の、絶対的な沈黙。
スレッドの、全ての時間が止まったかのような錯覚。
誰もが、そのあまりにも荘厳で、そしてどこまでも常軌を逸したテキストを、ただ呆然と見つめていた。
そして、その静寂を破ったのは、一人の、あまりにも素直な、そしてこのスレッドの全ての住人の心を代弁するかのような、一言だった。
931: 名無しのゲーマー
…は?
そうだ。
誰も、理解できなかった。
その、あまりにも巨大すぎる、情報の奔流を。
スレッドは、困惑の渦に飲み込まれた。
『なんだ、これ?』『神のオーブが、5個!?』『コラ画像だろ、これ!』
その、混沌の中心へと。
一つの、静かな、しかしどこまでも確信に満ちた声が、響き渡った。
投稿主は、この世界の、誰よりも深く、そして誰よりも正確に、その理を知る、賢者たちだった。
955: 元ギルドマン@戦士一筋
…馬鹿な。
ありえん。
これが、JOKERが引き当てた、あの奇跡の正体だったというのか…?
958: ハクスラ廃人
おいおい、ギルドの旦那。
どういうことだよ!
961: ベテランシーカ―
皆さん、落ち着いてください。
ですが、これは、もはやただの祭りではありません。
世界の、理が、覆ります。
思い出してください。JOKERが【虚空】から引き当てた報酬。それは、【神のオーブ】が5個でした。
そして、【虚空】の効果は、『他の【宿星のカード】がもたらす報酬の中から、いずれか一つをランダムで入手できる』。
つまり…。
――JOKERの当てた神のオーブ×5はこれか!
その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも論理的な、証明。
それに、スレッドは、本当の意味での「爆発」を起こした。
もはや、それは賞賛ではない。
一つの、世界の理そのものが、根底から覆された瞬間への、畏敬の念だった。
JOKERの、あの奇跡。
それは、ただの幸運などではなかった。
この、まだ誰も見たことのなかった、神々のカードの「大当たり」を、あの狂乱のギャンブルの果てに、引き当てていたのだ。
その、あまりにも天文学的な確率。
その、絶対的な事実を前にして。
スレッドの、有識者たちが、その戦慄に満ちた、次なる「予測」を、語り始めた。
1513: ハクスラ廃人
…おいおい、待てよ。
じゃあ、このカードの価値は、どうなるんだよ。
神のオーブ一個が、250億だ。それが、5個。
1250億円。
それを、5枚で割るってことは…。
このカード一枚あたりの価値は、最低でも250億円ってことだ…。
そして、あの新人は、それを、たった5枚の、おそらくは価値の低いカードと交換で、引き当てやがった。
1521: 名無しのB級タンク
いや、マジで夢があるな…。
俺も、明日からカジノに籠もるか…。
1525: ハクスラ廃人
1521
馬鹿野郎。
お前が行ったところで、【ギャンブラー】を1000枚集めても、ゴブリンの耳カードを200枚引いて終わりだ。
これは、選ばれた者にしか、許されない奇跡だ。
だがな…。
彼は、そこで一度言葉を切った。
そして、この世界の、新たな「真理」を、スレッドへと投下した。
1528: ハクスラ廃人
この奇跡は、もはやただの偶然じゃねえ。
お前ら、思い出せ。
少し前に、このスレで誰かが提唱してた、あの仮説を。
『ターゲットファーミング』。
特定のカードは、特定のダンジョンからしか出ない、というあの説だ。
その、最後のピースが、今、はまったんだよ。
1531: 名無しのビルド考察家
1528
…そういうことか!
見ろ!やはり、我々の仮説は正しかったのだ!
ゴブリンの巣では、【|ゴブリン《》の親族】が出る。
【蜘蛛の巣穴】では、【女王の抱擁】が出る。
そして、今回の【世界を喰らう五匹の竜】!
竜って事は、竜関連が出るダンジョンって事か?
その、あまりにも鮮やかで、そしてどこまでも論理的な、逆転の発想。
それに、スレッドは、再び、爆発した。
1545: 元ギルドマン@戦士一筋
ああ、間違いない。
【古竜の寝床】か?あるいは、まだ見ぬS級の竜の巣か?
1551: 名無しの国際ウォッチャー
1545
待て!**アメリカにも、何箇所かあるぞ!**ロッキー山脈の【ワイバーンの渓谷】とか!
**日本にも、何箇所かある!**九州の【龍神の沼】とか!そこか????
1558: ベテランシーカ―
1551
皆さん、落ち着いてください。
いやいや、単純に竜と言っても、種類がありますしな。
カードに描かれていたのは、東洋風の龍か、それとも西洋風のドラゴンか。
あるいは、もっと原始的な、恐竜のような存在か。
その、あまりにも多くの、そしてどこまでも魅力的な、可能性。
その、あまりにも壮大で、そしてどこまでも危険な、新たなゴールドラッシュの幕開け。
それに、スレッドは、もはや制御不能の熱狂の坩堝と化した。
誰もが、その未知なるダンジョンに、思いを馳せた。
そして、そのテーブルに、自らが最初に着くことを、夢見た。
世界のルールは、今、この瞬間も、目まぐるしく、そしてどこまでも面白く、変わり続けていた。
その、巨大な奔流の中心で。
探索者たちの、本当の「冒険」が、今、始まろうとしていた。




