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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
過去・腐敗の領域初遭遇編

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327/491

第315話

物語(ものがたり)は10(ねん)(まえ)、ダンジョンが(あらわ)れる当日(とうじつ)(もど)る】

【ダンジョン出現(しゅつげん)()、5ヶ(げつ)経過後】



【2ch 掲示板(後のSeekerNet) - C級ダンジョン総合スレ Part. 88】


 311: 名無しのC級戦士

 スレ立て乙。

 はぁ…。今日も一日、D級墓地で骨拾いだったぜ。

 B級ゲート、出現してからもう一ヶ月か…。

 結局、誰もクリアできてねえんだろ?


 312: 名無しのC級魔術師


 311 乙。

 当たり前だろ。あれは、無理ゲーだ。

 全耐性-30%の呪いだぞ?

 C級ですら、まともに潜れなくなったってのに、それ以上の地獄に、誰が行けるってんだよ。

 トップランカーの連中が、ボス部屋までは行けてるらしいが、そこから先が進まないらしいな。


 313: 名無しのC級盗賊


 312 だよな。

 まあ、B級産の装備も少しずつ市場に出回り始めてるし、それを全身揃えられた選ばれし者だけが、いつかクリアするんだろうよ。

 俺たち凡人には、縁のない話さ。


 314: 名無しのビルド考察家


 313 諦めるな。

 B級産の耐性ルーンも、少しずつ値下がりしてきてる。

 俺も、昨日ようやく火耐性のルーン(小)を一つ買った。

 これで、俺の火耐性も-20%まで回復したぜ。

 一歩ずつ、進むしかねえんだよ、俺たちは。


 その、どこにでもあるありふれた、しかし黎明期の探索者たちのリアルな苦悩と、それでも前を向こうとするささやかな希望に満ちた会話。

 それが、唐突に一つの、あまりにも異質な書き込みによって、断ち切られた。


 411: 名無しの斥候さん

 …あの、すみません。

 ちょっと、聞きたいことがあるんですけど。

 C級ダンジョン【嘆きの聖歌隊】の、三階層目。

 あそこ、なんか変なことになってませんか?


 412: 名無しのC級魔術師


 411 は?変なことって、なんだよ。

 相変わらず、ガーゴイルがクソ硬くて、後ろの幽霊どもがうざいだけだろ。


 413: 名無しの斥候さん


 412 いや、それが違うんです。

 なんて言うか…空気が、紫色で。

 なんか、甘ったるい匂いがするんですよ。

 それに、壁とか床が、なんか血管みたいに脈打ってるっていうか…。


 その、あまりにも奇妙な報告。

 それに、スレッドの空気が、わずかに変わった。


 415: 名無しのゲーマー


 413

 一回、ポータルで帰って入り直してみろよ。


 418: 名無しの斥候さん


 415 それが、何度入り直しても、同じなんです。

 これ、見てください。


[画像:薄暗い礼拝堂の回廊が、不気味な紫色の瘴気に包まれているスクリーンショット。壁の大理石には、血管のような紫色の筋が走り、まるで生き物のように、ゆっくりと脈打っている]


 421: 名無しのC級戦士

 …うわ。

 なんだ、これ…。

 マジじゃねえか…。


 425: 名無しの斥候さん

 ですよね!?

 それで、さっき一体だけ、骸骨の司書に遭遇したんですけど。

 動きが、めちゃくちゃ速くて。

 一撃食らったら、HPが4割近く持っていかれました。

 C級の雑魚の攻撃力じゃ、絶対ないです。

 怖くて、すぐに逃げ帰ってきたんですけど…。

 これ、一体何が起きてるんでしょうか…?


 その、あまりにも生々しい報告と、証拠画像。

 それに、スレッドは一瞬にして静まり返った。

 そして、その沈黙を破るかのように。

 一人の、あまりにも勇敢な、あるいは、ただの無謀な馬鹿が、名乗りを上げた。


 433: 名無しのタンク志望

 …面白い。

 俺、今から行ってくるわ。

 腕試しには、丁度いい。

 パーティメンバー募集。タンクは俺な。

 火力自慢のアタッカー2名と、回復に自信のあるヒーラー1名。

 今から30分後、ゲート前集合で。

 この謎を解き明かして、俺たちの名を、このスレに刻もうぜ。


 その、あまりにもヒーロー的な、そしてどこまでも死亡フラグに満ちた宣言。

 それに、スレッドは熱狂した。

『うおおおおお!マジかよ!』『行ってこい!』『生きて帰ってこいよ!』

 その声援に送られ、数名の有志たちが、即席のパーティを組んで、その紫の闇の中へと消えていった。


 ◇


 数時間後。

 スレッドは、お通夜状態となっていた。

 あの勇敢なパーティは、帰ってこなかった。

 いや、正確には、帰ってきた。

 だが、そのほとんどが、魂を抜かれたかのような、廃人同然の姿で。


 611: 名無しのタンク志望

 …帰ってきた。

 …ダメだ、あれは。

 絶対に行くな。


 その、あまりにも力ない、敗北宣言。

 それに、スレッドがどよめいた。


 612: 名無しのゲーマー


 611 おい!どうしたんだよ!何があった!


 615: 名無しのタンク志望

 …地獄だ。

 あれは、地獄だ。

 中のモンスター、全部がおかしくなってる。

 攻撃力が、異常だ。C級の装備じゃ、耐えられねえ。

 俺の、自慢の盾が、ガーゴイルの一撃で、粉々に砕け散った。

 ヒーラーの回復も、全く追いつかなかった。

 アタッカーの二人は、聖歌隊員の魔法の弾幕に巻き込まれて、一瞬で蒸発した。

 俺は、命からがら、ポータルで逃げ帰ってきただけだ。

 …すまん。俺の、力が足りなかった…。


 その、あまりにも生々しい、敗北の記録。

 それに、スレッドは絶望の空気に包まれた。

 だが、その絶望の淵で、彼は一つの重要な情報を、もたらしていた。


 618: 名無しのタンク志望

 …そうだ。

 死ぬ前に、ARレンズが、エリアの情報を表示してた。

 確か…。


【腐敗の領域(Corrupted Zone)】

 エリア効果: 内部にいる全てのモンスターの攻撃ダメージ +30%


 その、あまりにもシンプルで、そしてどこまでも残酷な、世界の新たなルール。

 それに、スレッドは本当の意味での「絶望」を、知った。

 だが、その絶望の淵に、一つの冷静な、しかし絶対的な声が、響き渡った。


 701: ギルド広報官

 ――有志の探索者の皆様。貴重な情報提供、誠にありがとうございます。

 皆様の、その勇気ある行動に、ギルドを代表して、深甚なる敬意を表します。


 その、あまりにも唐突な、公式アカウントの降臨。

 それに、スレッドが一瞬にして静まり返った。


 702: ギルド広報官

 皆様の安全を確保するため、本日午後10時をもって、C級ダンジョン【嘆きの聖歌隊】を、一時的に、完全に封鎖いたします。

 この新たな現象【腐敗の領域】については、我々ギルドと、政府の専門機関が、責任を持って調査を行います。

 国民の皆様、そして探索者の皆様は、決してこのエリアに近づかぬよう、強く要請いたします。

 なお、今回の調査の様子は、国民の皆様への情報開示と、透明性の確保のため、ギルドの公式チャンネルにて、安全な遠隔ドローンによるライブ映像を配信する予定です。

 調査開始は、明朝6時を予定しております。


 その、あまりにも迅速で、そしてどこまでも力強い、国家の対応。

 それに、スレッドは絶望から、一転して、新たな期待感に包まれた。

 そして、その期待の中心にいたのは、一つの、まだ誰もその真の姿を知らない、謎の部隊だった。


 715: 名無しの事情通

 …おい、お前ら。

 知ってるか?

 政府が、極秘裏に組織したっていう、あの部隊の噂。

 自衛隊と警察の、エリート中のエリートだけで構成された、対探索者用の特殊部隊。

 通称、『D-SLAYERS』。

 今回の調査、間違いなく、あいつらの初陣になるぞ。


 その、あまりにも意味深な、そしてどこまでも期待感を煽る、一言。

 それが、この歴史的な一夜の、本当の始まりだった。

 世界の全ての探索者が、固唾を飲んで、その夜が明けるのを、待っていた。

 新たな時代の、本当の「英雄」が、その姿を現す、その瞬間を。

 彼らの、あまりにも鮮烈なデビュー戦が、今、始まろうとしていた。



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