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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
HP講義編

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315/491

第304話

物語(ものがたり)は10(ねん)(まえ)、ダンジョンが(あらわ)れる当日(とうじつ)(もど)る】

【ダンジョン出現(しゅつげん)()、4ヶ(げつ)()

【B級ダンジョンゲート出現(しゅつげん)()、1ヶ(げつ)()


【2ch 掲示板 - 雑談スレ Part. 52】


 121: 名無しのリーク情報通

 面白い話、聞きてえか?

 アメリカの、ジョンって男の話だ。


 123: 名無しのC級戦士


 121 ジョン?誰だよ、それ。

 アメリカのトップランカーか?


 125: 名無しのリーク情報通


 123 ああ、B級だ。

 そいつが、この世界の理を、一つひっくり返したかもしれねえ。

 これは、ギルドの最高幹部会でも、まだ極秘扱いの情報だ。

 信じるか信じないかは、お前ら次第だぜ。


 その、あまりにも思わせぶりな前置き。

 それに、沈黙していたスレッドが、再びざわめき始めた。

 そして、その情報屋は、一つの、あまりにも衝撃的な事件の顛末を、スレッドへと投下した。


 128: 名無しのリーク情報通

 数週間前、アメリカのネバダ砂漠でな。

 ジョンとかいうB級の兄ちゃんが、ダンジョン帰りに、嵐の中でトラック事故を起こした。

 正面衝突だ。相手は、巨大なトレーラー。

 普通なら、即死だ。

 だがな…。


 彼は、そこで一度言葉を切った。

 スレッドの全ての住人が、固唾を飲んで彼の次の言葉を待っていた。


 131: 名無しのリーク情報通

 HPは魔力を持たないものには高い防御性能を持つらしい。4トントラックとぶつかってもHP半分削れて無傷らしいと。


 その、あまりにも常識外れの、そしてどこまでも具体的なレポート。

 それに、スレッドは爆発した。


『は!?』

『無傷!?トラックとぶつかって!?』

『HPが、物理防御になるのかよ!なんだよ、それ!』

『嘘だろ!そんなの、ありえねえ!』


 その、あまりにも当然な、否定と困惑の声。

 だが、その流れを肯定するかのように。

 また一つ、新たな、そしてより確信的な情報が、投下された。


 155: 名無しの市場ウォッチャー

 …おい、釣りじゃねえかもしれんぞ。

 アメリカ政府と日本政府は、B級の魔石を利用して防御結界の作成に成功したとの未確認の情報も出てた。

 俺のギルドの、上層部の人間から聞いた、確かな筋の情報だ。

 そして、その証拠がこれだ。


 彼は、一枚のスクリーンショットをアップロードした。

 それは、ギルドの公式な魔石買い取り価格の、内部データだった。

 そこには、B級の魔石の価格だけが、異常なまでの赤い矢印と共に、前日の10倍以上の価格へと跳ね上がっている、生々しい記録が残されていた。


 158: 名無しの市場ウォッチャー

 B級の魔石の買い取り価格がいきなり上がったし、ありえない話じゃないなと。

 政府が、研究のために、市場に出回る全てのB級魔石を、買い占めてるんだ。

 間違いねえ。


 その、あまりにも説得力のある、市場からの「答え」。

 それに、スレッドはもはや、疑うことをやめた。

 後に残されたのは、ただ、この世界の理不尽なまでの奥深さへの、純粋な畏敬の念だけだった。

 そして、その畏敬の念は、やがて一つの、より根源的な疑問へと、その姿を変えていった。


 255: 名無しの吟遊詩人

 …なあ、お前ら。

 思い出してみろよ。

 俺たちが、最初に手にした、あのF級の魔石。

 その、フレーバーテキストを。


『神が天から火を盗んだプロメテウスを、罰したように…』


 あの時、俺たちは、それをただの詩的な表現だと思って、笑っていた。

 だが、今なら分かる。

 あれは、詩なんかじゃなかった。

 預言だったんだ。

 魔石が万能性過ぎてヤバいな。フレーバーテキストの通り、マジで新しい火じゃねぇか。

 エネルギー問題、食糧問題、そして今度は、絶対的な物理防御。

 この、たった一つの石ころが、俺たち人類の、全ての課題を、解決しようとしている。


 261: 名無しの哲学者


 255 ああ。

 そして、その事実は、俺たちに一つの、あまりにも重い問いを突きつける。

 この、あまりにも都合の良すぎる奇跡。

 これを、ただの偶然だと、本当に言い切れるのか?


 その、あまりにも本質的な、そしてどこまでも哲学的な問いかけ。

 それに、スレッドは、これまでのどの熱狂とも違う、静かな、そしてどこまでも深い思索の海へと、その姿を変えていった。

 誰もが、考え始めていた。

 この世界の、本当の「創造主」の存在について。

 そして、その静寂の海に、一つの、あまりにも大胆な、そしてどこまでも美しい仮説が、投下された。

 投稿主は、これまで一度も書き込みをしたことのない、匿名のユーザーだった。

 だが、その言葉には、確かな、そして揺るぎない信仰の光が宿っていた。


 301: 名無しの神学徒

 …皆さん、少しよろしいでしょうか。

 私は、この世界の真理について、一つの答えにたどり着いた気がします。

 うーん、実際、神々だと思うか?

 神々が、人間を憐れんで、ダンジョンを出現させたんだ。

 そう、考えれば、全ての辻褄が合うのです。


 考えてもみてください。

 魔石は、人間に都合が良すぎる。

 エネルギーになり、食料になり、薬になり、そして今度は、絶対的な盾にもなる。

 あらゆる事に使えるのは、やり過ぎ感すらある。

 まるで、出来の悪い子供に、親が答えを教えてやるかのように。

『お前たちが抱える問題は、全てこれで解決しろ』と。

 答えを教えて貰ってるようなものだと語る。


 なぜ、神々は、そこまでして我々を助けようとするのか。

 分かりません。

 あるいは、我々には理解できない、もっと大きな目的があるのかもしれない。

 あるいは、ただ、純粋な、慈悲なのかもしれない。

 ですが、一つだけ確かなことがあります。

 我々は、試されている。

 この、あまりにも大きな力を、正しく使うことができるのかどうかを。

 B級の呪いもまた、その試練の一部なのでしょう。

『力に溺れず、知恵を使い、この壁を乗り越えてみせよ』と。

 神々は、我々にそう、語りかけているのではないでしょうか。


 その、あまりにも荘厳で、そしてどこまでも希望に満ちた、一つの「物語」。

 それに、スレッドは、もはや反論すらできなかった。

 誰もが、そのあまりにも美しすぎる仮説に、心を奪われていた。

 そうだ。

 そう考えれば、この理不尽な世界も、少しだけ、愛おしく思えるかもしれない。



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