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ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物  作者: パラレル・ゲーマー
エッセンス編

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【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】中華人民共和国におけるダンジョン管理体制の歴史的転換と、それに伴う地政学的リスクの再評価

【極秘:ギルド最高幹部会以外閲覧禁止】


 件名:中華人民共和国におけるダンジョン管理体制の歴史的転換と、それに伴う地政学的リスクの再評価


 報告部署: 国際ダンジョン情勢分析室

 報告日: 20XX年X月XX日

 脅威レベル評価: B+(直接的な軍事的脅威は低いが、その経済的・戦略的ポテンシャルは、世界のパワーバランスを不可逆的に変質させる可能性を秘めており、最高レベルでの継続的な監視を必要とする)


 1. 序論:龍の覚醒と、世界の変貌


 本日、中華人民共和国政府は、全世界に向けて、自国のダンジョン管理体制を、これまでの準軍事的な国家管理モデルから、完全な民間開放モデルへと移行することを、正式に発表した。

 この歴史的な決定は、数日前に世界中で同時発生した「エッセンス」という新たなことわりの出現に対する、中国政府のあまりにも迅速で、そして大胆な「回答」であると分析される。


 本報告書は、この中国の決断の背景にある戦略的意図を分析し、それが今後の世界のダンジョン経済、及び探索者勢力図に与えるであろう甚大な影響を予測し、我々ギルドが取るべき対抗策の指針とすることを目的とする。


 結論から言えば、この中国の「開国」は、二つの側面を持つ。

 一つは、一四億の民に、自由な挑戦の機会を与えるという、民主主義的な観点からは歓迎すべき「快挙」である。

 だが、もう一つは。

 世界のダンジョン資源の覇権を、その圧倒的な「数」の力で掌握しようとする、新たな覇権国家の誕生を告げる、あまりにも危険な狼煙のろしである。


 2. 背景:閉ざされた楽園とその限界


 今回の中国の決断を理解するためには、まず、彼らがこれまで10年間にわたって堅持してきた、独自の管理体制について、再確認する必要がある。


 A) 人民解放軍による、準軍事的管理モデル

 ダンジョン出現当初より、中国政府は、ダンジョンを国家の厳格な管理下に置くことを選択した。

 全てのダンジョンゲートは、中国人民解放軍専用のものとして封鎖され、民間人が自由に立ち入ることは、固く禁じられていた。

 探索者として活動を希望する者は、人民解放軍の特殊部隊に所属するというていで、厳しい選抜試験を突破し、軍隊式の過酷な訓練を受ける必要があった。

 このモデルは、確かに多くの成功をもたらした。

 規律と統率の取れた彼らの探索者たちは、個々の戦闘能力において、他国の追随を許さない精鋭集団へと成長した。ギルド【青龍】に代表される、トップランカーたちの活躍は、その成功の何よりの証明である。


 B) 民間が受けた「恩恵」と、その代償

 この体制下で、中国の民間人もまた、その恩恵を受けていた。

 軍が管理するダンジョンから産出される膨大な量の魔石は、国家のインフラへと優先的に供給された。その結果、中国の都市は世界のどの国よりも早く魔石エネルギーへの転換を完了させ、国民は安価で安定したエネルギー供給と、それによってもたらされる豊かな生活を享受していた。

 だが、その安定と引き換えに、彼らは一つの重要な「自由」を、失っていた。

 それは、自らの手で、自らの運命を切り拓くという、冒険者としての根源的な自由だ。

 ダンジョンに入るには、中国人民解放軍に所属する必要があるという、あまりにも高く、そして厚い壁。

 それが、この国の探索者人口を、その潜在的な可能性からは考えられないほど、低い水準に留めていた。


 C) エッセンスの出現と、システムの崩壊

 この、完璧に管理された、しかしどこまでも閉鎖的なシステム。

 それが、エッセンスという新たな理の出現によって、一夜にして完全に機能しなくなった。

 エッセンス・ブームの本質は、「質」ではない。「数」だ。

 いかに多くの低ランク探索者が、いかに多くの低位エッセンスを市場に供給するか。その、あまりにも単純な物量こそが、新たな時代のクラフト競争の勝敗を分ける。

 日本の、あるいはアメリカの、名もなきF級探索者たちが、一日で数万、数十万というエッセンスを市場に供給し、世界のメタゲームをリアルタイムで塗り替えていく。

 そのあまりにも速すぎる情報の伝達速度と、市場の流動性の前に。

 中国の、あまりにも硬直化した準軍事的な管理体制は、もはや無力だった。


 3. 決断:「人海戦術」という名の賭け


 この危機的状況に対し、中国政府、そして趙将軍が下した決断。

 それは、これまでの全てを自ら破壊し、そして新たな秩序を創造するという、あまりにも大胆な賭けだった。

 彼らは、気づいたのだ。

 この新たな戦争に勝利するためには、エリート兵士の力だけでは足りない。

 人海戦術が必要になったのだと。


【龍の子基金】の設立。

 民間ギルドの完全自由化。

 その全ては、ただ一つの目的のためにある。

 この国の、一四億の民という、世界最大の「資源」を、探索者市場へと、一斉に投入すること。

 中国は、ダンジョン民間完全解禁という快挙の結論に至った。

 それは、世界の歴史上、類を見ないほどの壮大な社会実験であり、そして我々に対する、明確な挑戦状である。


 4. ギルドとしての評価と、結論


 この中国の決断を、我々はどう評価すべきか。


 A) 民主主義的な観点からの評価

 まず、大前提として。

 一四億の民が、その職業選択の自由と、自らの夢を追いかける権利を手に入れた。

 この事実そのものは、民主主義として、これは歓迎するべき事象である。

 ギルドは、その理念として、全ての個人の自由な探求の精神を尊重する。その観点から、今回の中国の決定を、我々は祝福こそすれ、非難するものではない。


 B) 戦略的な観点からの評価と、結論

 だが、理想論だけでは、この世界の秩序を守ることはできない。

 我々は、冷徹な現実を見据えなければならない。

 中国の民間解禁。

 それが、もたらすであろう、必然的な帰結。

 それは、あまりにも明白だ。

 彼らが、その圧倒的な人口を背景とした大量のF級冒険者の人海戦術で、世界一のエッセンス産出国になることは、もはや目に見えている。

 そして、その潤沢な資源を背景に、彼らが世界のクラフト市場を、そしてメタゲームの覇権を掌握するのに、そう長い時間はかからないだろう。


 結論を、下す。

 新たなダンジョン覇権国家の台頭は、我々が全力をもって警戒しなければならない。

 日本の「中央集権エリート型」、アメリカの「分散サバイバー型」、韓国の「eスポーツ国家モデル」。

 その、三つの極の均衡の上に、これまで世界の秩序はかろうじて成り立ってきた。

 だが、そこに今、中国という第四の、そしてあまりにも巨大な極が、生まれようとしている。

 世界のパワーバランスは、今、完全にリセットされた。

 ここから始まるのは、新たな、そしてより熾烈な冷戦の時代だ。

 我々ギルドは、その調停者として、そして世界の最後の番人として、その動向を最高レベルの警戒をもって、監視し続ける責務がある。


 以上。

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