第288話
【SeekerNet 掲示板 - 冒険者学校総合スレ Part. 25】
311: 名無しのC級盗賊
スレ立て乙。
いやー、マジで世界は広いな…。
さっきまで北米の掲示板で、ホリー・ミラーちゃんのB級ソロクリア配信のログを見てきたんだが、マジで鳥肌立ったわ。
あの、フラスコ投げてるだけでB級ボスが溶けていく光景。
俺たち盗賊の、新しい可能性を見た気がする。
315: 名無しのD級戦士
311
分かる。俺も見た。
朱雀湊君のウォークライビルドも衝撃的だったが、ホリーちゃんのビルドは、また質の違うヤバさがあるよな。
なんて言うか…クレバーすぎる。
318: 名無しのE級ヒーラー
315
ですよね!
私も、早速昨日、雷帝ファンドの100万円で装備を揃えて、試してみました!
ポイゾナスコンコクションビルド!
322: 名無しのビルド考察家
318
おお!人柱乙!
で、どうだったんだ?使用感は。
325: 名無しのE級ヒーラー
322
それが…。
ポーション投げ、強いな。使ってみて、強さがわかったわ。
最初は、操作が難しくて戸惑ったけど、慣れてくるとマジでヤバい。
F級のゴブリンシャーマンなんて、毒のスタックだけでHPがゴリゴリ削れていって、完封できた。
今まで、あんなに苦戦してたのが嘘みたい…。
その、あまりにも正直な、そして興奮に満ちた最初のレポート。
それが、引き金となった。
スレッドは、爆発した。
日本の探索者たちの間でも、ホリー・ミラーのコピービルドが、大流行し始めたのだ。
355: 名無しのC級盗賊
325
だよな!俺も、今C級の【嘆きの聖歌隊】で試運転してるけど、マジで無双状態だわ。
あの忌々しいガーゴイルの壁も、毒の継続ダメージの前じゃ、ただの置物だ。
範囲ダメージで、後衛の幽霊どもも勝手に溶けていくし。
これ、マジで最適解かもしれん…。
361: 名無しのB級タンク
355
おいおい、マジかよ。
俺、あの聖歌隊、パーティでもたまに全滅しかけるんだが…。
それを、ソロで無双…?
ポーション投げ、そんなに強いのか…。
365: 名無しのビルド考察家
361
まあまあ、落ち着け、タンクの旦那。
確かに、このビルドは強力だ。だが、それはこのビルドが持つ、ある一つの「本質」を、皆が理解し始めたからだろう。
それは…。
その、あまりにも思わせぶりな、ビルド考察家の言葉。
それに、スレッドの全ての視線が集中した。
そして、彼はその「答え」を、スレッドへと投下した。
368: 名無しのビルド考察家
――混沌属性攻撃、そのものだ。
これまで、俺たち日本の探索者は、どこか混沌属性を軽視していた節がある。
物理、火、氷、雷。その、分かりやすい四つの属性こそが、王道だと。
だが、JOKERが現れ、そしてホリー・ミラーが現れた。
彼らが、証明したんだ。
この世界の、もう一つの「理」をな。
その、あまりにも的確な、そしてどこまでも本質を突いた分析。
それに、スレッドの住人たちが、はっとしたように、次々と同意の声を上げ始めた。
375: 名無しのD級戦士
368
…言われてみれば、確かに。
JOKERも、ネクロマンサービルドで毒を付与するゾンビを使ってるけど、毒属性自体、強いよな。
俺も、あのB級ボスの古竜マグマロス戦、リアルタイムで見てたけど、最後は毒で削り切ってたもんな。
381: ハクスラ廃人
375
それな。混沌属性攻撃が、強いね。
理由は、シンプルだ。
B級中位くらいまでの敵はな、物理や元素の耐性は高い奴が多い。だが、混沌耐性は、ガバガバな奴がほとんどなんだよ。
つまり、防御を無視して、直接ダメージを叩き込めるってわけだ。
それに、気づいた奴から、次のステージへ行ける。
そういうことだ。
388: 名無しのビルド考察家
381
ああ。そして、その混沌ダメージを、最も効率的に、そして安全に叩き出す手段。
それが、ポイゾナスコンコクションという「答え」だったわけだ。
ヒットアンドアウェイを徹底し、武器に依存せず、そしてフラスコの永久機関でリソースを確保する。
あまりにも、完成されすぎている。
その、あまりにも美しく、そしてどこまでも完成されたビルドの思想。
それに、スレッドは感嘆の声を上げた。
そして、その議論は、自然と次なる「可能性」へと、その姿を変えていった。
411: 名無しのE級ヒーラー
でも、混沌属性が強いってことは…。
もしかして、火炎瓶投げるビルドもあるけど、そっちもいつか注目されたりしてね?
【エクスプローシブ・コンコクション】でしたっけ?あれも、フラスコ投げるスキルですよね?
その、あまりにも素朴な、しかしどこまでも鋭い質問。
それに、スレッドに、一つの重い、そしてどこか伝説の匂いを纏った書き込みが投下された。
投稿主は、滅多に姿を現さない、S級の探索者だった。
425: 名無しのS級(通りすがり)
411
…良いところに、気づいたな、お嬢ちゃん。
その通りだ。
その、あまりにも唐突な、S級の降臨。
それに、スレッドが一瞬にして静まり返った。
428: 名無しのS級(通りすがり)
火炎瓶、知り合いのS級が愛用してるけど、強いぞ。
あれは、混沌(毒)とは、また質の違う強さがある。
炎属性の伸びも、毒と同じように継続ダメージ…炎上ダメージで、強いしな。
一撃の爆発力と、その後に残る炎上のDOT。
そして何よりも、敵の死体が爆発し、連鎖反応を起こす、その圧倒的な殲滅力。
あれは、もはや芸術だ。
まあ、その分、装備への投資額も尋常じゃねえがな。
いつか、お前たちも、その領域にたどり着けると良いな。
その、あまりにも重く、そしてどこまでも優しい、トップランカーからの言葉。
それに、スレッドは畏敬と、そして新たな目標への希望で、満たされた。
だが、その温かい空気の中で。
一人の、現実主義者が、ぽつりと、その流れを変える一言を、呟いた。
455: 元ギルドマン@戦士一筋
…ふむ。
混沌も、炎も、確かに強い。
だが、どうやら若者たちのトレンドは、完全に「投擲」ビルドへと移行したらしいな。
戦士は、ウォークライで斧を投げ(ヴォルカニック・フィッシャーは、見た目が投擲に近い)。
盗賊は、フラスコを投げる。
…なんだか、少しだけ寂しい時代になったもんだ。
剣と盾を構え、正面から敵と打ち合う。そんな、古き良き戦士の姿は、もう古いのだろうか。
その、あまりにもベテランらしい、そしてどこか寂しげな呟き。
それが、スレッドの議論の方向性を、再び大きく変えた。
461: 名無しのD級戦士
455
そんなことないですよ、旦那!
俺は、ずっと戦士一筋です!
JOKERさんみたいな、鉄壁のタンクになるのが、俺の夢ですから!
465: 名無しのC級ヒーラー
461
分かる!
それより、戦士、盗賊と来たら、次は強くてB級に行ける魔術師ビルドが発見されたり?
最近、魔術師クラス、少しだけ元気ないですもんね。
472: 名無しのビルド考察家
465
うーん、そこが難しいところなんだよな。
魔術師ってのは、どうしても「装備」と「ユニークスキル」への依存度が、高すぎる。
魔術師は、ユニークスキルが強い人が使うイメージだからなぁ。
なんか、弱いユニークスキルの人が使う印象が、ないな。
その、あまりにも的を射た、そしてどこまでも厳しい現実。
それに、スレッドは少しだけ、沈黙した。
だが、その沈黙を破ったのは、一人の、名もなき魔術師見習いの、魂の叫びだった。
488: 名無しのE級魔術師
…そんなこと、ねえよ!
俺、ユニークスキルは『一日一回、好きなアイスを一個出せる』っていう、戦闘には全く役に立たないやつだけど!
それでも、絶対にA級まで行ってやる!
俺みたいな、凡人でも、魔術師の頂点に立てるんだって、証明してやるんだ!
見てろよ、お前ら!
その、あまりにも青臭く、そしてどこまでも真っ直ぐな宣言。
それに、スレッドはこの日一番の、温かい笑いと、そして力強い声援で、埋め尽くされた。
『うおおおおお!言ったな、新人!』
『応援してるぜ!頑張れよ!』
『お前が、魔術師の新しい「希望」になるんだ!』
【ユニークスキル:至福のひとさじ】
[画像:キラキラと輝く、氷の結晶でできたティースプーンのイメージ。その先端からは、常に冷たい霧が、ほのかに立ち上っている。]
名前:
至福のひとさじ(A Spoonful of Bliss)
レアリティ:
ユニークスキル (等級:E)
種別:
パッシブスキル / 物質生成
効果テキスト:
術者は、一日に一度だけ、自らがこれまでに味わったことのある、あらゆる種類のアイスクリームを、一つだけ「無」から生成することができる。
生成されたアイスクリームは、術者が記憶している味、食感、そして冷たさを完璧に再現する。
このスキルは、いかなる戦闘能力も持たない。
生成されたアイスクリームは、約一時間で魔力を失い、ただの甘い水へと変わる。
フレーバーテキスト:
灼熱の砂漠を旅する隊商が、最後に求めたのは金ではなかった。
極寒の雪山で遭難した登山家が、最後に夢見たのは故郷の暖炉ではなかった。
彼らが、その有り金全てと、香辛料の袋と、
そして命そのものと引き換えにしてでも欲した、たった一つの宝物。
それは、舌の上で一瞬だけ花開き、
そして儚く消えていく、冷たい、冷たい甘露の記憶。
――世界の価値は、常に気まぐれだ。
そして、時に一杯のアイスクリームは、王の財宝よりも、重い。