【公式ギルド最高幹部以外閲覧禁止】S級ダンジョン以上で出現するアーティファクトPart3
【不動の大地、ガイアの礎】
[画像:古代の遺跡から切り出されたかのような、無骨な黒い石碑。その表面には、剣と拳、そして大樹の紋様が、原始的なタッチで刻まれている。]
名前:
不動の大地、ガイアの礎(ふどうのだいち、ガイアのいしずえ)
種別:
アーティファクト / 領域制御器
効果テキスト:
ダンジョンゲートの周囲やギルド拠点といった、魔力供給が安定した特定の「土地」に設置することで、その土地を中心とした半径数キロメートルに、半永久的な**【原初の領域】**を展開する。
領域内にいる全ての友軍は、銃火器、爆発物、レーザー兵器といった、火薬や高度な科学技術に由来する全ての遠距離攻撃に対して、完全な無敵性を得る。
これらの近代兵器による攻撃は、領域の境界線、あるいは対象に着弾する直前で、まるで時間が停止したかのようにその運動エネルギーを失い、無力化される。
ただし、この効果は、剣、槍、斧といった原始的な武器による攻撃、あるいは格闘術、そして魔法そのものには、一切影響を及ぼさない。
フレーバーテキスト:
英雄は、引き金を引いた。
賢者は、ボタンを押した。
王は、モニターの向こう側から、ただ数字が動くのを見ていただけだった。
そこには、魂のぶつかり合いも、覚悟の重みもなかった。
ただ、効率的な、虐殺があるだけ。
この礎は、嘆いた。
人の堕落を。勇気の死を。
だから、それは世界に告げるのだ。
「火薬の時代は、終わった」と。
「さあ、再び剣を取れ。再び、己が拳を固めろ。
そして、思い出せ。
血と、鉄と、魂の熱量だけが、真の強さを証明するのだということを」
【ギルド最高幹部会 - 内部評価報告書】
アーティファクト・クラス: 神話級
アイテム名: 不動の大地、ガイアの礎(ふどうのだいち、ガイアのいしずえ)
脅威レベル評価: S+ (存在根絶対象。発見次第、即時封印・破壊を最優先とする)
現在の状況: 日米両政府の共同決議に基づき、ギルドの最深保管庫『虚無の聖域』にて厳重に封印済み。
1. 概要
本アーティファクトは、設置された特定領域内の近代兵器(銃火器、爆発物等)を完全に無力化する【原初の領域】を展開する、世界の軍事バランスそのものを根底から覆す力を持つ。その力の根幹は「近代技術の否定」と「原始的戦闘への回帰」という、極めて強い思想性に基づいている。
2. 市場価値と経済的影響
本アーティファクトは【禁忌指定】とされたため、市場価値は測定不能であり、その取引は未来永劫、許可されない。
もしこれが市場に流通すれば、世界の軍事産業は一夜にして崩壊し、計り知れない経済的混沌を引き起こすことは自明である。その価値は、プラスではなく、マイナスに無限大であると評価する。
3. 社会的・思想的影響の評価:賢明なる人類の決断と、我々の責務
先日行われた日米合同の緊急会議において、両政府が最終的に本アーティファクトを「人類には早すぎる力」であると判断し、その封印を決定したことに対し、当ギルド最高幹部会は、深甚なる敬意を表する。
彼らは、目先の戦略的優位性という甘美な誘惑を退け、このアーティファクトが内包する「文明の強制的な退行」という、真の脅威を見抜いた。それは、政治家として、そして何よりも人類の一員として、極めて賢明で、そして勇気ある決断であったと、我々は評価する。
しかし、我々幹部会は、両政府がまだ気づいていない、より深刻な現実を認識している。
それは、この【ガイアの礎】ですら、我々が管理する数多の神話級アーティファクトの中では、まだ「理解可能な」部類に過ぎないという事実である。
この世界には、まだ公開されていない、これ以上のアーティファクトが山程ある現状を、彼らは知らない。
空間そのものを切り裂き、軍隊を丸ごと飲み込む剣。
触れた者の精神を支配し、忠実な奴隷へと変える王冠。
そして、星の寿命すらも、自在に操る砂時計。
神々の戯れは、我々人類の想像を、常に遥かに超えている。
もし、我々がこれらの情報を全て開示すればどうなるか。日本政府とアメリカ政府は、間違いなく発狂してしまうだろう。
彼らは、その制御不能な力への恐怖から、より過剰な管理と規制を求め、世界の探索者たちを不必要な鎖で縛り付けるかもしれない。あるいは、その力を独占しようと、互いに疑心暗鬼に陥り、我々が最も恐れる「国家間のダンジョン戦争」の引き金を、自ら引いてしまう可能性すらある。
4. ギルドとしての公式見解・推奨措置
以上の観点から、当ギルド最高幹部会は、これまでの情報統制の方針を、今後も堅持することを再確認する。
アーティファクトの情報開示は、今回の【アニマとアニムスの円環】や【幻創の絵筆】のように、世界の秩序に有益な影響をもたらすと判断された、「安全」なものに限定する。
【ガイアの礎】のような、世界の理そのものを揺るがしかねない報告するアーティファクトは、今後も厳しく制限する方針は変わりない。
我々の責務は、ただアーティファクトを管理することではない。
人類の『精神的な成長速度』を慎重に見極め、その手に余る力を与えないこと。
世界の真の守護者として、この重すぎる秘密を抱え、そして、危ういバランスの上で踊る彼ら政治家たちを、影から導いていくこと。
それこそが、我々に課せられた、最も重い責務である。
この報告書もまた、最高機密として、アーカイブの最深部へと封印するものとする。
以上。