第271話
【SeekerNet 掲示板 - 冒険者学校総合スレ Part. 18】
1: 名無しの速報ウォッチャー
おい!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
お前ら、今すぐギルドの公式ページに飛べ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
出たぞ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
冒険者学校、今月の月間ランキングが、たった今、更新された!!!!!!!!!!!!!!!
2: 名無しのE級ヒーラー
1
スレ立て乙!
うおおお、ついに来たか!今月も、どうせC級の中卒組が上位独占なんだろ?
俺も、先月よりは順位上がってるといいなあ…。
3: 名無しのD級戦士
2
だよな。あの人たちの実戦経験は、やっぱ別格だよ。
まあ、俺たち新入生は焦らず、じっくり力をつけていくしかねえさ。
で、1位は誰だったんだ?先月トップだった、あの剣士の先輩か?
4. 名無しの速報ウォッチャー
3
…違う。
…違うんだよ。
お前ら、心して聞け。
俺も、今、自分の目を疑ってる。
バグじゃないかと、3回はページをリロードした。
だが、現実は変わらなかった。
今月の、1位は…。
彼は、そこで一度言葉を切った。
スレッドの全ての住人が、固唾を飲んで彼の次の言葉を待っていた。
そして彼は、その衝撃の事実を、スレッドへと投下した。
5. 名無しの速報ウォッチャー
――1位:朱雀 湊
――ランク:B級
6: 名無しのラノベ主人公
……………は?
7: 名無しのD級戦士
…え?
B級…?
学生が…?
8: 名無しのC級(中卒・21歳)
待て待て待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!!!!!!!!!!!!!
B級だと!?嘘だろ!?
俺たちですら、まだC級で足踏みしてるってのに!
誰だよ、朱雀 湊って!聞いたことねえぞ!
9: 名無しのJOKERウォッチャー
8
おい、お前、マジで言ってんのか?
朱雀 湊を知らねえとか、モグリだろ。
JOKERの配信、見てねえのかよ。
10: 名無しのC級(中卒・21歳)
9
は!?JOKER!?
ああ!あの時の!
B級ダンジョン【古竜の寝床】で、JOKERと会ってた、あの子か!
あの、少女みてえな見た目の…!
11: 名無しのE級ヒーラー
そうだ!あの子だ!
あの時、JOKERさんの配信で初めてB級ボスをソロで倒したって言ってた!
あれが、学校で初のB級達成者になったのか!
すごすぎる…!
その、あまりにも衝撃的な事実。
それに、スレッドは爆発した。
どよめき、歓声、そして信じられないという驚愕の声。
一人の、まだ16歳の少年が。
この、あまりにも高く、そして分厚いB級の壁を、入学からわずか数ヶ月で、たった一人で突破した。
その事実は、この学校の全ての生徒たちの心に、強烈な衝撃と、そしてわずかな嫉妬を刻み付けた。
50: 名無しのビルド考察家
…落ち着け、お前ら。
騒ぐのは、まだ早い。
ギルドの公式ページには、ランキング上位者のビルド詳細も公開されてる。
問題は、そっちだ。
彼が、一体どんなビルドで、この偉業を成し遂げたのか。
それこそが、重要だ。
…今、見てる。
……………
……………………
………………………………は?
その、あまりにも意味深な沈黙。
それに、スレッドが再びざわめいた。
『おい!』『どうしたんだよ!』『早く教えろ!』
55: 名無しのビルド考察家
…なんだ、これ…。
なんだよ、このビルドは…。
あまりにも、玄人好みすぎるだろ…。
彼は、震える指で、その驚愕のビルドの詳細を、スレッドへと貼り付けた。
そして、そのテキストが表示された、その瞬間。
世界の、全ての戦士たちが、戦慄した。
【ランキング1位:朱雀 湊 - ビルド詳細】
クラス:戦士
アセンダンシー:未取得
主要オーラ:
【ブラッドアンドサンド】
【フィニッシュ・オブ・アッシュ】
【元素の盾】
主要スキル:
【ヴォルカニック・フィッシャー】
【インティミデーティングクライ】
【サイズミッククライ】
その、あまりにも専門的で、そしてどこまでも攻撃的なスキルの羅列。
それに、スレッドの初心者たちは、ただ困惑するしかなかった。
『えっと…?』『ブラッドアンドサンド?なんだ、それ?』『フィニッシュ・オブ・アッシュって、炎の爆発起こすやつだよな?戦士が、使うのか…?』
その、素朴な疑問。
それに、このスレッドに常駐する百戦錬磨の猛者たちが、待っていましたとばかりに、その重い口を開いた。
その口調は、呆れと、そして一つの芸術的なビルドを前にした、純粋な感嘆に満ちていた。
85: ハクスラ廃人
だから、てめえらはひよっこなんだよ!
いいか、よく聞け!
このビルドの、本当のヤバさを、この俺が解説してやる!
まず、オーラだ!
【ブラッドアンドサンド】!こいつはな、ただのオーラじゃねえ!スタンス切り替えスキルだ!
ブラッドスタンスの時は、効果範囲が狭くなる代わりに、範囲ダメージが爆発的に上がる!
対してサンドスタンスの時は、ダメージが少し下がる代わりに、効果範囲がアホみてえに広がる!
分かるか?
つまり、こいつは戦況に応じて、単体特化のボス用火力と、集団殲滅用の範囲火力を、自在に切り替えて戦ってるんだよ!
こんな、ピーキーで、そしてどこまでもテクニカルなスキルを、ソロで使いこなすなんざ、正気の沙汰じゃねえ!
まさに、玄人向けのオーラだ!
92: ベテランシーカ―
ええ。ハクスラ廃人さんの、おっしゃる通りです。
そして、そのスタンス切り替えを、さらに凶悪なものにしているのが、二つのウォークライ。
**【インティミデーティングクライ】は、周囲の敵を挑発し、このウォークライスキルにより挑発させられた敵は威嚇される効果を持ちます。(威嚇された敵は受けるアタックダメージが10%増加する)
対して【サイズミッククライ】**は、狭い範囲の敵をノックバックしそのスキル発動を妨害する、そして次に6回使用するスラム系スキルの威力を、爆発的に増大させるバフ効果を持つ。
もう、お分かりですね?
彼は、まずサイズミッククライで敵の足を止め、自らの次の一撃を強化する。
そして、インティミデーティングクライで敵を弱体化させ、その上で、ブラッドスタンスに切り替え、最大火力の【ヴォルカニック・フィッシャー】を叩き込む。
この、あまりにも美しく、そしてどこまでも計算され尽くしたコンボ。
それを、あの16歳の少年が、一人でやっているというのです。
信じられますか?
その、あまりにも圧倒的な解説。
それに、スレッドの住人たちは、もはや言葉を失っていた。
彼らはようやく、この朱雀 湊という少年が、ただの天才ではない。
一つの、完成された「怪物」なのだという事実を、理解した。
121: 元ギルドマン@戦士一筋
うむ。
戦士ソロで、B級かよ。すげーな。
俺が、現役だった頃には、考えられなかった領域だ。
時代は、変わった。
そして、その中心にいるのは、雷帝でも、JOKERでもない。
この、名もなき、しかし無限の可能性を秘めた、若者たちなのだ。
面白い。
実に、面白い時代になったじゃねえか。
その、ベテランからの、最大級の賛辞。
それに、スレッドはこの日一番の、温かい、そしてどこまでも誇らしい熱狂に包まれた。
日本の、冒険者学校から。
新たな、そして本物の「英雄」が、生まれ落ちた。
その事実は、この国の全ての探索者たちの心に、大きな、そして力強い希望の光を灯した。
新しい時代の歯車は、確かに、そして力強く、回り始めていた。
その中心で、一人の少年が、今、産声を上げたのだ。
彼の伝説は、まだ始まったばかりだった。